やる気のない勇者の冒険
「この先だよな、村がある場所っていうのは」
「そうですね。このへんのはずです」
俺ら勇者一行は次の村に向いながら進んでいた。まあ一行といっても二人なんだが……
俺は普通の旅人だったものの、ちょっと寄った町で勇者の素質審査というなんとも疑わしいテストを興味本位で受けたところ100%素質があるという判断が出て、その結果、王に魔王討伐を命じられた。ちょうど俺も魔王に用があったため引き受け、実際は、あまりやる気はしていないがこんな冒険に出ることになっちまったってわけだ。
あと隣にいる少女は魔法使いのスノウ、いろいろあって俺の冒険についてきているいわゆる相棒みたいな存在だ。
「何かはわからないがこのへんは雰囲気が重いというかなんというか悪いな」
「そうですか? わからないですが、まあこのへんでは盗賊団らしきものが見られるという、情報も入っていますし、 なぜだか近くに魔法を使った痕跡ありますね」
「そうかそんなものがあるのか?そういえばお前魔法使いだもんな」
「はい。そうですよ。私は立派な魔法使いなんですから」
「自分で自分を立派っていうのもなんだけどな」
「えへへ。そんな褒められちゃうと困りますよ」
「いやまったく褒めていない」
こいつはまあ優秀な魔法使いかもしれないが、実際相当のバカでドジだ。例えば、魔物がでてきた時に長ったらしい呪文を唱え始め、最後の最後でくしゃみをするようなドジっぷりだ。普通は、魔法使いは頭がいいはずなんだが。
「あっ!村が見えてきましたよ」
「そうだな」
なんだかんだで、話をしていると村が見えてきた。いろいろこの辺は腑に落ちないことがあるがわからないことはわからないしいいだろう。
俺たちは早く休みたかったためか足早に村の敷地に足を踏み入れる。その瞬間―――
「ここを動くな。持っているものを捨てろや」
いきなり物騒な歓迎をされたものだ。
「何だいきなり」
「お前ら、このへんの盗賊団やな。ついにこの村に攻撃してくるんだろう? そうやろ」
なぜだかはわからないがざっと15人以上いる男にこんぼうや鉄の棒など様々の武器を持たれて、周りを囲まれている。
「まあ落ち着け、俺らは盗賊団でもないし悪人でもない」
「いや明らかにお前は悪人顔やろ」
そうだそうだと一斉に男たちが騒ぎ立てる。
俺もいきなり初めて会った人間、それも大勢のむさいおっさんどもに悪人顔のことを言われるとは、なんというかいろいろ通り越してむなしい。
「待ちなさい」
俺がひどく落ち込んでいると大勢の男の後ろから綺麗な声が響き渡った。
「ロイズさん、なんで止めるんすか? 攻撃される前に攻撃するべきじゃないすか?」
「確かに、それが本当に盗賊団だったらです。そして多分その人たちは盗賊団じゃないです」
「ですか明らかに悪人顔すよ」
「悪人顔かもしれないけど、盗賊団だったらこんな真正面から入ってこないはずですしそんな幼い子供も連れていないはずです」
ロイズと言われた女と、俺に悪人顔といった男とで俺らをおいて勝手に話が進んでいる。隣にいるスノウは「私は、幼い子供じゃないです」と一人で暴走している。そして今日俺は何回、悪人顔言われればいいんだ。流石に俺のカビの生えかけているハートも壊れてしまいそうだ。
「迷惑をかけました。あなたは、盗賊団ではないですよね。うちの村人が迷惑をかけてすみません」
「いや大丈夫だ。どうせ悪人顔だけどな」
「本当にすみません。お詫びに、気持ちですが手料理を作らせて歓迎させてください」
「ちょっと待ってくれ、スノウお腹すいているか?」
「少し……」
「ということらしいのでご馳走になる。すまんな」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。家こっちですので付いてきてください」
そういわれ俺たちは、言われるがままついていった。
「お邪魔します」
俺は、旅人だったからこういうところに招待されて歓迎されるのはもう慣れたもののスノウは、初めてな様子でキョロキョロと周りを見わたしている。
「明かりが消えそうですね」
ロイズはロウソクを見つめている。たしかに明かりの火が弱まっているようだ。
明かりを付けるのにマッチでも持ってくるのかと思った瞬間、なにか呪文のような言葉を唱えると手から火を出し明かりをつけた.
「お前魔法使うことがきるのか」
「そんなに驚かないのですね。確かに私は魔法を使うことはできますが、こんなのさっきのことぐらいでしか使わないし宝の持ち腐れですよ」
そう言って、ニコッと笑う。
この女相当綺麗だな。若いし、髪も綺麗で顔も整ってている。それに――― 巨乳だ。
「なんかいやらしい顔してますよ」
少し巨乳に気を取られていたことがスノウにバレたようだ。。スノウ、仕方がないだろう男は巨乳が好きなのだから、と心の中で抗議をしておく。それを口に出した瞬間、何かが終わることは避けられない気がする。
ロイズはこちらの視線に気づいたこともなく、料理を作りにキッチンの方に行った。
そして少し時間が経ちお腹が本格的に空いた俺らの前には、冒険の最中には食べられないような豪勢な食事が並んでいた。
「すごい料理ですね」
「ああ素直にすごいと思う」
新鮮な野菜のサラダやお肉の丸焼き、揚げ物などいろいろある。
「これ全部食べていいんですか?」
「はい」
「いただきまーす」
この、すごい料理を目の前に隣のバカはテンションが上がっているようだ。
「いただきます」
そう言い一口、口に含む。
「おいしいです」
「ああうまい」
見た目だけいいというオチはなく、すごくうまい。こんなまともなものを食べられたのはいつぶりだろう。 毎回村や町に付く道のりでは通りかかった魔物をケツから串をさし焼くだけの料理を食べたりしているため、こんなにいい飯はたしかにうれしい。
「ふー食べましたね」
「ああ食ったな」
お腹に入るだけ、ものを入れた気がする。今ほんの少しでも何か口に入れたら、えらいことになりそうだ。
「美味しかったですか?」
「ああ、ありがとなすべてうまかったよ」
「ありがとうございます」
「それはよかったです。それでなんでうちみたいな村を訪れたのですか?」
ロイズは興味があるのか、顔を少し近づけ聞いてくる。
「まあ、簡単に言うと俺らは勇者なんだわ、ここは魔王城の道のりで通りがかったっていうだけの話」
「流石にそんなのでは、騙されませんよ」
「まあそうだろうけど、一応勇者なんだわ、これくそったれの王から渡された証明書」
そう言って、あのじじいから渡された証明書を見せる。
「へぇー本当なんですね」
「そんなに驚かないんだな」
「まあ一般の人と雰囲気から違うから何かあるのだろうなと思っていましたから」
「そんなのあったか?まあ今日はいろいろ悪いな、俺らはそのへんの宿にでも泊まって少しこの村に滞在させてもらうから」
そういい席を立つ。
「もう行くんですかー」
「ああもう行くぞ」
意外と簡単に宿は見つかり、俺らはすぐに眠りについた。俺らといっているが、隣にスノウはいない。スノウから言わせると、「野宿じゃないときくらい、一人で眠らさせてください」といことらしい。まあ俺が眠っている一個、角のとこで寝ているのだけれど……女っていうのは、いまいちわからないく難しいものだ。そんなことを考えているといつの間にか眠りのそこにおちていった。
朝起きると、外が騒がしい。
俺は朝が嫌いではない。でも目覚めの悪い朝というのはあんまり気持ちの良いものではない。俺は布団から上がって、声のする方に耳を澄ます。
「昨日もまたやられたらしいよ」
「まじかよ、この村も終わりだな。住みにくい村でもなかったが、こうなっちゃな」
「まあそこまで未練があるわけでもないし、そろそろ出ていくか」
「そうだな、荷造りしねぇと」
「話は変わるけど昨日この村に、勇者が来たらしいよ」
「そうなのか、まあ実際偽物だろ」
「いや本物らしいよ、みんな言っているもの」
何かわからないが、話の内容から村が襲われたらしいな。何に襲われたのかはわからないが。
「うううん」
村人の話を聞いてると、スノウが起きたようだ。
「少し村を見て回るぞ」
「えっ早いですよ。こんなに朝早いんですよ」
「いや、完全に太陽が上にあるぞ、なぜだかわからないが俺も寝坊したようだ」
「珍しいですね」
「まあそんな日もあるときはあるだろ」
そう言って、出かける格好に着替える。「なんでいきなり着替えているんですか」とスノウが騒いでいるが、まあいつものようにスルーする。
外に出てみると、何か村人たちが集まっているようだ。昨日の俺を悪人顔呼ばわりしたやつやさっきの話し込んでいた村人、ロイズや村長らしき人が何十人も集まっている。
「おめぇらなにやっているんだ」
そう言い近づくと一斉に村人がこちらを見た。そうすると、いきなりさっきよりざわざわとうるさくなる。
「あんちゃんさ、勇者なんだろ、俺らの窮地なんや助けてくれやしねぇだろか」
そう、口を開いたのは俺の目覚めを悪くしたさっき村人。
「ああ一応勇者らしい、俺はなりたくてなったわけじゃないけどな、ピンチってなんだよ」
それはな、と饒舌に話し出す。
「最近この村を、魔物が襲ってくるんや。しかもとても大きくて強そうな奴。俺らはまだ死人こそ出ていないがけが人は結構出ている。俺らじゃ命が惜しくて戦いやしない。このままじゃこの村も終わりだ。勇者は正義の味方なんだろう。助けてくれよ」
こいつの話が終わった瞬間、助けてくれぇ。正義の味方さん。と俺を担ぎ上げてくる。
「おめぇらさ、ふざけてるのか? なんで俺がそんなことしなくちゃいけねぇんだ」
村人たちはそう言われるとは思ってなかったらしく、驚いた顔をしている。
「勇者さんさ、俺らの終わりなんだよ。助けてくれたっていいじゃないか」
「こっちはさっきも言ったように勇者になりたくてなった訳じゃない。その仕事するんだったら村から3万Gだ」
そう言うと、村人たちは「おかしいだろ」「鬼畜」などと言い始めてくる。
1Gでパン一個が買える値段だ。たしかに3万Gは高いかもしれないが、一応俺は村で3万Gといった。この人数だったら簡単ではないものの払える値段だ。
「3万Gって馬車を変えるほどの値段じゃねぇか。勇者のくせに」
「お前らさ、本当にクズだな」
こいつはさっきの会話で、俺らじゃ命が惜しくて戦えないといった。意味しては努力していないってことだ。ほかの意味で捉えると、大げさかもしれないが勇者だったら、死ぬかもしれないけどいいだろうと捉えることもできる。そしてこいつらは勇者さんだから、正義の味方などといって担ぎ上げる。挙句な果てに、妥当の交渉を持ちかけると、さっきまで担ぎ上げていたものの一瞬で罵倒だ。
「俺はさ、お前らみたいな人間は嫌いだ」
そう言って俺は、剣を抜き突きつける。
「おい、それはないだろう。仮にも勇者だろう」
「勇者だろうがなんだろうが、気に入らねぇやつは切るだけだ」
俺は、そのまま剣をぶっさす。
《ザシュ》
剣は、こいつの隣の木に刺さった。
「少し手が滑ったようだ。3万払いたくない奴はこの村から出て行け。そっちのほうが魔物にもやられる心配もなくいいだろう」
皆が騒いでる中そう言い俺は、あの宿に戻った。
「スノウはよく止めなかったな」
「いや絶対あの場面で刺さないと思いましたよ。意外と勇者さんは発想とかはダークですけど、意味なく人を傷つけないですからね」
「確かに最初から傷つけないつもりだったがあの村人たちにはイラついていたけどな」
「あの3万G要求だって、意味があってやったんですよね」
「まあな。ああやればこの村より少しの金の方が、重要ってやつはこの村からいなくなるってことだ。簡単に自分の村を捨てられるやつなんて村にいる資格がないんじゃないかと思ったんだ」
「そうなんですか」
《トントン》
そんな話をしていると、扉をノックされた。
「入っていいぞ」
そう言うと、居たのはロイズとよぼよぼのじじいだった。
「なんのようだ」
「あの3万Gを持ってきました」
お金を持ってきたロイズは少し震えている。
やはりさっきのはやりすぎだっただろうか。
「俺に失望しただろう。あんなことは言うし、勇者なのにお金をももらうなんて」
「――いやーめちゃくちゃかっこよかったです」
絶対嫌われてどんな罵倒が来るかと待ち受けていた俺だったが、意外な返答に目を丸くした。
「確かにあの威勢の良さはかっこよかったのう」
さっきまで話さなかったじいさんも、なぜだか俺を褒めている。老化で頭でもやられたのだろうか。
「お前ら俺が怖くないのかあと村人を追い払っちゃったような形になっちゃったけど、よかったのか」
「いえ全く、逆に清々してますよ。やっぱりこの村を愛している人は居なくならなかったし、邪魔だった人だけ居なくなったんで」
考えたことだったが、ここまでうまくいくとは。
「まあ受けた仕事はきちんとこなすから」
「はい、頑張ってください」
そういい、ロイズとよぼよぼなじじいは、自分の家に戻ったようだ。
《ざわざわざわ》
「もう夜だな」
「そうですね」
俺らは、出没するらしき地点をロイズから聞かされてなんとも薄気味悪い森で待機していた。風に木が揺さぶられて不気味だ。小心者だったらすぐに逃げ出すだろうな。
「魔物ってどんな魔物なんですかね」
「案外、うさぎのでっかい奴とかだったらいいんだけどな」
「いや、そんなの可愛いものと戦えませんよ」
「大丈夫だ。もとから戦力に入れていないから」
「ひどいですよ、もう」
(グラグラ)
地面が揺れ、魔物の声らしき声が聞こえた。
《ぐわわああっあああおう》
「そろそろお出ましのようだ。絶対死ぬなよ」
「はい」
そういい魔物の声のした方向に二人は走り出す。
いた。
たしかに大きい。魔物は二本足で立ち、毛むくじゃらの大男ってところだ。大きさは俺らの身長の十倍ってほどの大きさ。頭に角が生えていて、確実に友好的なやつではないというのがわかる。
「大きい」
「感心している場合じゃない」
魔物は、手を振りかぶって攻撃してくる。
《ダァン》
あいつが振り下ろした地面に大きな穴を作った。あの一撃を受けただけで死んでしまうだろう。
人の10倍の大きさのため威力も10倍ほど。そんな親切設定やめてほしい。
相手は相変わらず大きいため、手を振り回しているだけで驚異になる。
だがなぜ、こんなでかい魔物の気配を感じることができなかったのだろうか。まだまだ俺も未熟みたいだな。
「スノウ、あの攻撃なんとか止められないか」
「頑張ってみます」
そう言いスノウは呪文を唱え始める。
《ルマートノモマ》
そう言った瞬間、少しだが魔物の体が止まる。
俺は、その隙を見逃さず俺は魔物の懐まで突っ込む―― が魔物はすぐに治りまた暴れだす。
「ちっ、意外としぶとい」
「そうですね。あの魔法ですぐに解除してしまうだなんて」
「あんましゃべっていると、舌噛むぞ」
「そんなドジじゃ、あ――」
「どうした」
「舌を噛みました」
「スノウは、期待を裏切らないな」
バカは俺のそんな嫌味を全く聞いてないで痛い痛いと騒ぎ立てている。
「すまん、邪魔だ」
そういい俺はスノウの腹にパンチを叩き込む。
そうするとバカは静かになって倒れ込む。
「まずは一体目倒したぞ」
なぜか言っていて、虚しくなるのでやめよう。
スノウを乱暴に危なくないところまで、投げ飛ばし体勢を立て直す。
考える間もなく魔物は突っ込んでくる。なんとか受け流すものの少しぶつかってしまう。魔物は思ったより強いようだ。
「でも、やられてばっかじゃかっこ悪いよな」
魔物が殴るために突き出した腕の上にのっかり顔面に向い走る。
魔物もいきなりの牛若丸の真似事みたいなことをされて、流石に魔物も慌てている。でもそこまで馬鹿じゃないのか腕から振りほどこうとめちゃくちゃに動かす。
「頭良いじゃねぇか、俺の相棒よりいいと思うぜ。でも俺は顔面狙いじゃないんだよ」
俺は、にやっと相手にされたらたまらない笑顔を作り相手の心臓の近くで剣を振りかざす。
魔物は、なんで今お前がここにいるという顔で呆然としている。まああくまで俺の想像だが。
「終わりだ」
俺は持っていた剣を相手の心臓に投げた―――
《ぐぉぉぉおおおおぅ》
「もう死んでいるだろうから、聞こえないだろうがなぜあそこにいたかのネタバラシは、さっき俺が乗った時、咄嗟にとった行動の腕を振った遠心力の力を俺のジャンプ力で向きだけ変えてお前の心臓近くまで飛んだってだけの話だ。ここまでうまくいくなんて俺も実際思っていなかったがな」
俺は、死んだ魔物にネタバラシをするが、当たり前のように声が帰ってくるわけがない。
だが、魔物が青く光り出し粒子になって飛び散り出す。
「ただの魔物じゃなかったのか」
粒子になった理由は、人が作り出した魔物だったってことだ。
「まず、あのバカを探しに行くか。」
さっきとっさになって投げた方向を探す。
「いない」
確実に投げた方向に魔法使いの姿は、なくなっていた。
あいつ、どこいったんだ。
「あっ魔物を倒したんですか……」
「ああ、ロイズか倒したぞ。汗だくになってどうした?」
「……大きい音が聞こえたから、咄嗟に走ってきてしまいました。倒せてよかったですね。お祝いしましょう。こちらについてきてください!」
スノウのことも気になるが、あいつはなんだかんだ大丈夫だろ。
「ああ、わかった」
ついてきたのは、森の中にある一つの小屋。
「こんなところでやるのか」
「はい。とっておきのパーティのなると思います」
中は思ったよりも大きいようだ。しかも豪勢な料理が並んでいる。
「これ全部、ロイズが作ったのか」
「はい。頑張りましたよ。冷えないうちに食べましょう」
この料理たちは見た目は本当に美味しそうだ。
「ああ、作ってもらったんだし食べないとな」
「はい、召し上がれ」
いただきますと挨拶をして飯を食べる。
「ああうまいよ」
「よかったです全部、勇者さんのために作ったんですから」
結局、俺はロイズが作った料理を食べ尽くした。
「じゃあ、そろそろあなたの体にお礼をしないとね」
そういい、ベッドに手招きをする。
「いやいいよ。それでロイズ、いや今回の黒幕と呼んだほうがいいか」
「えっどういう意味」
「すべて、ロイズがしくんだことだろう、魔物の件も今から俺を殺そうとするのも」
えっという顔から、フフフと不気味な笑顔にかわる。
「全部わかったみたいですね。なんでわかったんですか」
「まず、ロイズが魔法を使えることがわかったことが一番大きい。他にも思い出してみるとロイズの言葉にはいくつかの不自然な点がある。さっき大きな音がしたから走ってきたって言ったが遠くに聞こえないし、近くにいたら汗を尋常じゃないほどかかないよな。あれは召喚魔法なんてレベルの高い魔法をしたからそれに体力を取られた証拠。あとは、俺をこの街にいさせて魔物と戦わせようとしていただろ。それは、昨日の記憶を思い出すとよく分かることだ」
「じゃあ素直にやられてください。皆さんこいつやっちゃってください」
そういうと、ぞろぞろといかついむさいおっさんたち入ってくる。こいつら格好からして盗賊団だな。まためんどくさいのがきたことだ。
「こんなに歓迎してくれる人いらないのに、本当にすごいパーティなこと」
「じゃ、勇者だがなんだか知らないが死んでもらうから」
ガハハハと笑いながら、むさい男の中の一人がおのを振りかぶってくる。
「俺も舐められたもんだな」
おのを剣で簡単に防ぎ力で押し返す。そしてよろめいたところに一発、蹴りをぶち込む。
「てめぇら、ひとりずつかかってきても絶対倒れないぜ」
「しゃらくせぇ、全員で囲みやっちまうぞ」
「判断はいいな、でも経験が甘い。こっちは昔からこういうことは慣れているからな」
「はぁはぁなんで倒れないんだ」
《バタ》
俺が相手してから少し、立っているのは俺とロイズだけになった。
「え! ざっと10人はいたんですよ。なんで死んでないんですか」
「じゃあ私がやるしかないですね」
《ファイヤーボール》
ロイズは呪文を唱え手からすまじい炎をだして凝縮されて炎がたまになり投げつけてくる。
だが俺は剣で叩き消す。
「火事にでもなって火傷したら危ないだろう」
「う、うそ」
「ロイズはさ、なんで俺を狙ったんだ。村の人まで迷惑をかけて」
「……だって、この村じゃ魔法が使えたって、全然目立やしないしなんにもならないですから。私はただ平凡に暮らして平凡に生きて平凡に死ぬのがいやだったんですもん。勇者を倒せば少しは有名になり平凡から抜け出せると思いました」
「意外と理由は、以外と子供だな。いやまだお前実際子供だもんな」
ロイズは確かに綺麗だが、実際まだ若い。パッと見20超えているようにも見えるが、よくよく見ると15、6だろう。
「子供って言わないでください」
「でもお前がやったことはいけないことだってわかるよな」
俺は戦いながら真剣な顔で、ロイズの顔を見つめる。
「有名になりたかったら、俺を殺すとかそんなちっぽけなものじゃなくて自分ですごいことをしてみろ、まだわかんねぇかもしれないが、お前はすごいやつだよ。昨日会っただけの人間が簡単に言えるわけじゃないが、料理はうまいしすごい魔法も使える。そんな人間だったら、俺らが驚くようなすげぇことができるはずだ」
「私はどうすればいいかわからない。こんな大変なことをしてしまったし」
「みんなだって真剣に謝れば許してくれるはずだ」
「わかりました。いろいろ頑張ってみます」
《バタ》
ロイズは、そう言うとそこに倒れこんだ。
「ロイズ!!」
慌てて近づいてみると、過労で倒れたようだ。
「運んでやらんとな」
「ふう、なんで俺がこんなことをしているんだろうな自分でも全くわからないぜ。自分のキャラがつかめなくなってきた」
俺がいる場所は村長の家だ。言い方を変えるとこいつの家だ。
俺はこいつを家に返すため、背中におぶりこいつの家を村人に聞き回った結果、あの俺に3万Gを渡す時に、ロイズと一緒にいたよぼよぼじじいが村長で、しかもその娘がロイズらしい。
「おい、ここを開けろ」
《ドンドン》
「もっと、丁寧にやることはできないんですか」
「うるさい。犬に連れ去られたくせに」
実はこのバカは、俺が投げたところで気絶をしていて犬に引きずり回されていたようだ。少し心配した俺の方がバカのようだ。
こいつには一応ロイズのことは、話しておいた。
「なんじゃ」
ノックの少しあと扉が開きじじいが顔を出した。
「いや、こいつの話をしにきた」
「ロイズじゃないか、勇者さんたちロイズがどうしたのですかね」
俺らは、ロイズがやったことをすべて話した。
「そうなんですか、この子がね。わしはこう見えて年とっていてね。いろいろ心配をこの子にかけてしまいましたし、わしのせいかもしれないな」
心の中で、明らかにおめえはじじいだろコラって思ってしまったことは、墓まで持っていこう。
「案外普通だな、俺てっきり「わしのロイズがそんなことするわけないだろう」とでも言うと思ったんだがな」
「わしは勇者さんのことを一目見た時から信じられる人だとおもっていたからのう」
「この人、いわゆる両刀使いってことなんでしょうか」
「そんなこと知るかぁ、ケツがむず痒くなってきちまっただろうが」
少し話がそれてしまったため話を元に戻す。
「あと、こいつが起きたら十分叱ってやるだろうが、きちんと許してやれよ」
「ああ、お前みたいな若僧に言われなくても、親としてはできておるよ。まあわしは若く見られることがおおいからのうワハハハ」
《ボギュ》
「ふまんほう、いればがぁでてしまっはわい」
やべぇ、ここまでご年配の方を殴りたくなったのは初めてかもしれない。今すぐ、丘の上に埋めてやりたい。
「勇者さん、顔、顔、ひどいことになっています」
「最後に忘れていた。この3万G返すわ。考えたら俺らには質素がちょうどいい。この村のために使ってくれ」
「ほぉほぉほぉ、勇者さんはすごいおひとじゃな。また村にこい。今度はきちんと歓迎してやるわい」
「ああ、ロイズによろしく」
俺は、話が終わったとたんた疲れが出てきた。
「今日は疲れた。今日この街をでるつもりだったが、あのじじぃで戦いの3倍は疲れた。またあの宿に泊まって、行くとするか」
「そうですね。そうしましょう」
スノウは、今日は犬に引きずり回されたハズなのに元気があるようだ。その元気を少しでも頭に回して欲しいものだ
「つきましたよ」
そんなことを思って足を進めていると、宿に着いたようだ。
俺らは、そうとう疲れていたためか飯を食いのんびりしているとすぐに睡魔が来てその睡魔に従い重いまぶたを閉じた。
「よし、いくか」
「そうですね」
俺らは、朝早く起きると旅の準備を完了させていた。
「もう、あのじじいと会いたくないから早く行くぞ」
「どんだけ苦手意識持っているんですか」
「犬と猿が気が合わないように水と油が合わないように、俺とあのじじいも気が合わないということだ」
「よくわからないですが、その目が本気なことは伝わってきました」
「そうか、じゃ早く行こう」
俺らはそう言ってとことこと歩き始めた。
「ふう、この村いろいろあったな」
「そうですね、結構疲れちゃいました」
俺らは、この村に入ってきた場所で立ち止まった。ここは、一番最初に盗賊団だと間違えられて武器を突きつけられた場所だ。
そこで――
「待ってください」
そう、こうやって助けられたんだったよな。なんかちょっと違う気がする。
「って、ああ」
声をかけられた方に振り返る。
「はぁはぁ、まだ行っちゃダメ」
ロイズがそう言いながらこちらに全速力で向かってきた。
「ロイズか」
「なんで見送ろうと思ったのに先行こうとしちゃうんですか、しかも時間早すぎです」
「いや、いろいろあってな」
すべて、あのじじいの責任だ。
「まだお礼もなにもしていないんですから」
なぜかもじもじとしている。
そういい、いきなりキスをしてきた。
「ファーストキスですよ。これですべての迷惑がチャラになりおつりがくるはずです」
「えーなんでいきなりキスなんですか」
スノウが、騒いでいるが世間の常識でスルー
「そうだな、女のファーストキスほど高いものはないしな」
「私決めましたよ。しっかりと勇者さんに言われたとおりどんなことをやるか考えましたよ」
「なにをやるんだ」
「私、勇者さんの仲間になり魔王を倒しに行きます」
俺はてっきりこの街を大きくして都市にします。とかが思っていたものだから、度肝を抜かれた。
「いいですか?」
「俺の仲間になりたいんだったらカレイとヒラメの違いがわからないとダメだぞ」
「わかりますよ。だったら大丈夫ですね」
「なかなかやるな。俺はてっきり難しすぎるんでやめますと言い出すものだと思っていたからな」
「絶対、わざとそんな簡単な問題出したでしょう」
スノウが、無視されても負けずに質問してくる。流石に無視しすぎるとかわいそうだ。こういうのもひきぎわが重要だしな。
「じゃあスノウは、わかるのかよ」
「そんなの簡単ですよ。右がヒラメで左がカレイですよね。えっへん」
「本当、期待を裏切らない安定な魔法使いだこと」
「でしょう」
「ああ完璧に間違えているぞ」
「とてつもなく恥ずかしいです」
「大丈夫だ。お前はいつも恥ずかしいことばっかりしている人間だから。というかそんな存在が恥ずかしいから」
「全くフォローになってませんよ」
それはわかるんだな。
「それでだ。本当にロイズは、このわけのわからない冒険についてくるのか、実際魔王なんているかわからないし平凡かもしれないぞ」
「いえやっぱり、あなたたちを見ていてこれは平凡にはならないなと思いました」
「そんなに意思が硬いんだったら分かった。ちょうど頭のいい魔法使いが欲しかったしな」
「うわーキャラがかぶる上に私より頭良いなんて」
「大丈夫ですよ。魔法使いさんは、いいキャラしていますから」
「……ありがとうございます」
いきなり後輩からフォロー受けているよ。大丈夫かこいつ。
「じゃ、そろそろ出発するか」
「おーい、わしがお見送りに来たぞ、勇者殿」
「やばい、俺らの天敵が来たから走るぞ」
「えっあれ私のお父さん」
可哀想にあれがお父さんか、確実に孫がいる年齢だぞ。
「いやあれは確かに天敵だから」
「急ぐぞ」
「はい」
俺は、さっきこの冒険は平凡になるかもしれないといったが心の中ではこの冒険は退屈しない日々になると思い始めていた。
初心者の作品でしたがどうでしたが、面白いと思ってくれたら嬉しいです。
感想とレビューお願いします。
自分の作品が面白いかわからないので。
また違う作品も書くかもしれません。
その時まで、それでは