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時の魔法使いは眠りたい〜魔王や覇王や勇者になった弟子たちに執着されて眠れません〜  作者: 光流
第三章 魔法使いと黄金龍

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33 恋と媚薬

 ルークの顔が輝いている。いつも端正な顔立ちだとは思っていたが、改めてよく見ると、とても美しく魅力的で惹きつけられる。


(……あれ? 見え方が何だかおかしい。目がおかしいのか……これが酔っ払うということなのかな?)


「どうした? サリー。大丈夫か?」


 とても魅惑的な声が響いてくる。ごしごしと目を擦りルークをもう一度見つめる。心配そうにこちらを見るルークは、いつも通りなのにどこか違う。白皙の美貌は顔を曇らせても陰ることのない輝きがあり、その黄金色の瞳は魅惑的に輝く。どくどくっとエリサは鼓動が速くなり、呼吸も浅く小刻みになることに気付いた。


(動悸、息切れがしてくるなんて、魔法薬が身体に合わないのだろうか?)


「サリー……何だか顔が赤い……もう、効果が出てきたのか?」

「うん……なんだかそのようだけど…………なんだろう……この感じは……検証して貴重な魔法薬をくれたラファエルに効果を報告しないと……」


 お酒を飲むと楽しくなったり、嬉しくなったり、気が大きくなったりするような気持ちになると聴いていた。だから、大人は皆、日々の疲れや憂さを忘れたく飲むのだろうと……。エリサは首をひねる。楽しくない訳でも、嬉しくない訳でもないが……それよりもむしろ……。


「心臓がどきどきする」


 エリサは己の胸を押さえ鼓動を確かめる。早鐘のように打っている。昔から落ち着いていたエリサであったので、これほどに鼓動が騒ぎ立てることはほとんどない。これが酔っぱらうということだろうか……とエリサは首を傾げた。


「俺もお酒を飲んでも酔うことはないので、よく分からないけど……楽しいのか?」

「ルークは酔っ払ったことがないの?」

「……ああ。己の理性が少しでも緩むことは耐え難く感じるから。それにしても、サリーは酔っぱらっているというより熱でもあるのではないか? 酒で顔が赤らむというよりは突然真っ赤になって目も潤んでいる……大丈夫か?」


 ドギマギしているエリサにいぶかしく思ったのかルークは観察するようにまじまじと見てくる。その視線に、身体がびくりと反応する。エリサは頭に血がのぼり顔がますます紅潮していくのが自分自身でも分かる。


「……顔がどんどん赤くなっている」

「うう……それ以上こちらを見ないでくれ」

「…………」


 顔を伏せても視線は感じ続ける。ちらりと一瞬目をやるとルークはじっとこちらを見ている。居てもたってもいられずにエリサは席を立った。ふと、目の端に映った魔法薬の入った小瓶を見やると、目が釘付けになった。黄色い魔法薬の入った小瓶が残っている……。


(……ということは、私が飲んだのは黄色ではなく琥珀色の魔法薬ということに? 琥珀色の魔法薬の効果はなんだったっけ? そういえば、最後に説明してくれたものだった気がする……私が使うことはないだろうと……)


「……た、大変だ!?」

「どうしたんだ?」


 愕然がくぜんとルークの顔を眺める。やはり動悸がひどい。ルークも少し焦ったように心配そうにこちらを見やる。今にも席を立ちそうだ。


「間違って惚れ薬を飲んでしまった」

「…………」


 沈黙が落ち二人で無言のまま見つめ合ってしまう。


「……フッ……アハハハハハハッ」


 ルークがこらえ切れないと言うように笑い出す。しばらく呆然とするエリサをよそに笑い続けていたが、ようやく何とか笑いを収めたルークはエリサを見つめる。


「それで、君は今、どうなっているんだ?」


 ルークはにこっと笑い立ち上がった。エリサは驚き手を前に差し出して精一杯止める。


「こっちに来ないでくれ」


 ルークは肩を竦め、ゆっくとエリサを観察するように眺める。とても楽しそうでその顔も素敵だと思ってしまうエリサは自分自身が嫌になる。


「魔法薬の効果を検証したかったんだろう? 色々と反応を試してみるべきでは?」


 ゆっくりとルークは笑顔を浮かべながら近付いてくる。


「だ、だめだ……近寄っちゃだめだ!! 心臓発作が起きるよ!」

「起きない」


 一歩一歩ゆっくりルークが歩いてくるので、エリサは一歩一歩後退していく。その状態が暫く続いた後、抵抗して後退あとずさりするエリサよりも一足飛びに早く近寄ってきたルークはエリサを軽く抱き寄せると、悪戯っぽく笑みを浮かべ反応を伺う。エリサはルークの腕の中で硬直した。そして、ルークが鍛え上げられた体格をしていることに腕の中で気付く。見上げると思わぬ近さにある顔に驚くも昔にはない男らしい凛々しい顔立ちに動揺してしまう。


「あわわわわ……」

「……この反応は悔しいような、嬉しいような複雑な気持ちだ」


 ルークが独り言のように何かを呟くが、エリサは動揺のあまり聞いていなかった。腕の中で伝わる体温に感情が高まっていく。


「なんでそんなに意地悪をするんだ」

「ああ。すまない。自分でもこんな側面があったなんて新たな発見だ」

「魔法薬の効果は1時間で切れるんだ。放っておいてくれないか」

「……そんなもったいないことは出来ない。せっかくの貴重な魔法薬の効果を検証して報告するのだろう?」


 エリサは自分が涙目になっていることに気付き、より恥ずかしさが込み上げてくる。見上げるとこちらをまじまじと見つめるルークの蜂蜜色の瞳がとろりと熱くとろけるかのように水分を増して輝いている。



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