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時の魔法使いは眠りたい〜魔王や覇王や勇者になった弟子たちに執着されて眠れません〜  作者: 光流
第三章 魔法使いと黄金龍

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32 小瓶の薬

 薔薇園の四阿あずまやで、コトコトと複数本の小瓶が目の前の机に並べられていく。


「魔法を使える者はその力の強さにもよりますが、魔法で掛けられる状態異常を無効化したり、一般の薬が効かなかったりすることが多いのです。ですので、私の魔法薬はそういった魔力のある者でも作用するような精神的または身体的な効果がある物が多くなっています」

「ふむふむ……」

「たとえば、これはお目覚め薬といって、どんなお寝坊さんでも清々しく目覚めることのできる効果があります」

「おお~!」


 ラファエルが指さした瓶は青く透き通る綺麗な色の薬が入っている。


(まさに私に必要なものではないか!)


「こちらは、素直薬と言って、訊かれたことには嘘がつけず何でも答えてしまいます」


 次の薬は乳白色に少し濁った色をしていた。ごくっとエリサは思わず唾を飲み込む。


(絶対にルークの前では飲まないようにしないと……)


 秘密を抱えているエリサには恐ろしい薬である。


「こちらは、ほろ酔い薬と言って、お酒を飲んでも酔えない者のために作りました。お酒を飲んだ時の楽しさや全能感のみを味わえる二日酔いや悪酔いなどもない薬です。こちらが一番大人気ですね」

「へー!」


(私もいくらお酒を飲んでも酔えないんだよ。身体が自動的に状態異常を無効化してしまうみたいで)


 黄色く透き通っており一見栄養飲料のような見かけである。その隣にあるのは、真っ赤な毒々しい色をした薬である。血液に見えなくもなく何となく飲みたくない。


「そしてこちらが忘れたことを思い出せる、そうだった薬です。例えば、あれ、何しようとしてたかな?とか、あれ、何を探してたんだっけ……などという瞬間に飲むとその忘れた事柄が思い出せます」

「良いね!! けっこう頻繁にあるよ!」

「これも根強い人気のある薬なんです。見かけは不人気なんですが……」


 ふふっ……と小さくラファエルは笑う。最後に指さした瓶は琥珀色で、黄色のほろ酔い薬より少し色が濃いがよく似ている。効果も似たものなのだろうか……と興味津々で見つめる。


「これは、魔法薬と言えばの定番中の定番……惚れ薬です」

「えっ!?」

「とはいえ、1時間しか効果は続きません。目の前の人に1時間だけ恋します」

「えーっ! 1時間だったらあんまり意味がない気がするけど……」

「ふふっ……」


 ラファエルは少し悪戯っぽく笑った。


「ええ……ですので、恋人や夫婦たちの間でまんねり解消の媚薬として使われることが多いんです」


 清純な雰囲気のラファエルから媚薬と言う単語が出てきてドキッとしてしまうエリサである。


「へー……」


(私には必要ないな……ただ、成分はとっても気になる。中身がどうなっているのか研究させてもらおう)


「これら全ては魔王様から許可をいただきましたので、サリーに差し上げます。ただし! くれぐれも! 魔王様の面前でのみ使うことを約束してください」

「うん、分かったよ。こんなに色々とありがとう」

「いいえ! シドのこと含めサリーには多大な迷惑を掛けていますから。こんなことはお詫びにすらなりません」


 しゅんとしてしまったラファエルに対してエリサは声を掛ける。


「そんなこと言わないでよ。君が引け目に思うことは何もない。友だちになって市場に行ったり美味しいものを食べに行こうと言っていたじゃないか」

「……サリー……私もサリーと一緒に出掛けたいです」

「うん!」


 そうして、エリサはラファエルに説明してもらった魔法薬を木の小箱に説明順に並べて詰めてもらった。


「ありがとう。ラファエル! また今度、作るところも見せてほしいな。色々と他の薬の考案も手伝いたい」

「もちろん、サリー! 私も二人で作れたら楽しいです! 使った効果についてもぜひ感想を聴かせてくださいね!!」

「うん!」


(せっかくだし早速今晩の夕食のときにでもほろ酔い薬を使おう)



 今日の夕食はステーキにサラダ、スープにパンといった内容である。何故か、魔導具に頼らず時間のある時はルーク自ら作るのだ。料理が好きなのかもしれない。そして、広い食堂で二人で食べるのである。エリサは、うきうきとラファエルから貰った木箱を取り出す。


「それは、ラファエルが言っていた魔法薬か……。危険がありそうなものは除外したが」


 少し渋い顔をするルークに止められてはかなわないと、急いで小瓶を取り出そうとする。焦ったせいか木箱を床に落としてしまった。慌てて小瓶を拾い上げる。幸いなことにどれも割れていない。


「今日はほろ酔い薬を試そうと思う」

「サリーは成人しているのか?」

「私の国では15でお酒は解禁だったよ。それにこの魔法薬はお酒の害がないんだよ」


 小瓶の蓋を開け、濃い黄色・・・・の魔法薬をワインに注ぎ込む。少し躊躇するも思い切って飲み込んでいくと意外なことに無味無臭なようでワインの風味は変わっていない。


「うん、美味しい」


 エリサはにっこりと笑うとルークの顔をみた。



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