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31 目覚めと反省

 エリサは目覚めて数日が経っていたことに気付き驚いた。ルークから貰った一夜薬を飲んで夢も見ずによく眠れた。それほど眠ってしまったのは、ここ最近は魔力を使ってもそれほど多くの時を眠っていないせいかもしれない。


 そんな訳で、取り立てて一夜薬についての効果やその影響などは気にしていなかった。ただ、目の前に今にも死にそうなほど落ち込んだ顔をしているラファエルがいる。その両肩には白いフサフサの毛玉が左右それぞれに乗っている。シロタマとシラユキである。


「申し訳ありません。一夜薬のせいでそんなことになるとは……」

「いやいや、ラファエルのせいじゃないよ」

「久しぶりね、サリー」

「うん、シラユキ。また会えて嬉しいよ。シロタマも」

「ボクもまた会えて嬉しいよ、サリー」


(魔法薬の作成が得意な魔人ってラファエルだったんだ! 他にどんな変わった効果のある魔法薬が作れるのかも気になる!)


「むしろ、ラファエルの作る薬に凄く興味があるよ。色々と試させてくれないかな?」

「えっ!?」


 ラファエルの顔色がどんどん悪くなり汗をだらだらとかく様子である。ちらちらとエリサを眺め意を決したように頭を下げる。


「申し訳ありません! 魔王様に許可を得ないと……」

「……そっか」


 嬉々として頼んでしまったエリサであったが魔王軍幹部のラファエルの作る薬だ。大変貴重だろうし図々しいことを言ってしまった……と少ししょんぼりしていると、ラファエルが居ても立ってもいられないというように立ち上がった。


「大丈夫です。サリー。直ぐに許可をもらってきますから!」


 そう言うとふっと転移魔法を使って消えてしまった。思わず呆然とするエリサである。シラユキとシロタマは空中に取り残されてふわふわと浮かんでいる。


「あの子ったら思いついたら猪突猛進なんだから……」

「そこが良いところでもあり、心配なところでもあるよね」


 ラファエルの親のようなことを言う白い毛玉の二匹は、ふわふわとエリサの側に飛んで寄ってきたので手のひらを差し出した。二匹が手のひらの上に乗ると、その毛は天鵞絨びろうどのように滑らかでぷよぷよと柔らかく何とも言えない心地良さがある。


「君たちは、ラファエルとは昔からの知り合いなの?」

「そうなの。あの子がまだ人間だったもっと小さい頃から見守ってきたのよ」

「そう。ボクたちは木霊のような精霊に近い存在なんだ。まだ実体もなかった頃から一緒にいるよ。他にも何体か仲間がいるんだ」


(魔獣ではなかったのか……気配も変わっていて面白い。魔人や闇の精霊の愛し子とは何とも不思議な存在だな)


「ラファエルが小さい頃からということはシドとも知り合い?」

「あの男!!」


 シラユキが怒ったように手のひらでぴょんぴよん飛び跳ねる。とても気持ちいい。


「昔から要注意と思っていたのよ! 私たちのラファエルを檻の中に閉じ込めるなんて! しかも鳥籠の形の檻よ!? 悪趣味にもほどがあるわ。あの粘着男! いつか、やらかすんじゃないかと思っていたわ!」

「う~~ん、ボクには彼の気持ちも分かってしまうかな……」

「なんですって!? これだから雄は!! この裏切り者!」


 シラユキの毛玉の中の目玉が吊り上がり、きっとシロタマを睨みつける。シロタマはわたわた焦ると目を伏せた。


「ボクは裏切ったりしないよ〜、怒らないでよ。シラユキ」

「まったく!! しょうがないわね」


 ふーっと息を吐き切り替えたシラユキはエリサに向かって話し出した。


「シドのこともよく知っているわ。むこうはアタシたちなど眼中にないみたいだったけど……。ラファエルは昔からシドのことを理想として憧れているの。アタシから見ればとっくに追い越していて振り向く必要もないわよって思うんだけどね」

「……そうか。君たちは小さい頃からラファエルを見守ってきたんだね」


(少し羨ましい。私とリュプスはそのような関係ではないし。……ふとなぜか昔飼っていた賢い白い犬を思い出す)


「それより、サリー。貴方が眠ってしまって大騒ぎだったのよ。ラファエルに一夜薬について問われた魔王様はそれはそれは恐ろしいほどの怒りをまとっていて、アタシはその日が命日かと思ったものよ」

「えっ……そうだったの」


(ただ、よく眠る体質なだけなのに、そんなに迷惑を掛けてしまったのか……それなのに他の薬も試したいだなんて、私はなんて図々しいんだ)


 エリサが反省しているところにラファエルは満面の笑みを浮かべ頬を紅潮させ現れた。


「サリー!! 許可が出た魔法薬は使っても良いとのことです」


(なんて良い子なんだ。……うっ……心苦しい)


「ありがとう。ラファエル。眠っている間にとても迷惑をかけていたみたいでごめんね。薬のせいじゃなく、昔からよく眠る体質で私のせいなんだ」

「いいえ!! 私の作った薬ですのでやはり私に責任が。……魔王様に確認したところ使って良い薬を選んでいただきました。ただ、使用は魔王様の面前でのみとのことです」

「そっか……分かったよ。ありがとう、ラファエル」

「それでは、早速……」


 ラファエルがおもむろに取り出していく複数の小さな硝子の小瓶にエリサの目は釘付けになり思わず身を乗り出していた。


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