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義息子リードル視点

 ☆リードル視点☆


 学園に入学して2年。

 一年半前に領地に戻っただけで、それからはずっと妹にも義母とも会っていなかった。

 父に頼まれていた薬を義母に渡さなかったことが胸に引っかかり、顔を出しにくかったのだ。

 ……お義母様が、若返ってどこかへ行ってしまうことが嫌だった。

 他の誰かに微笑み、抱きしめる姿を想像するとたまらなかった。誰かに取られたくないと思うのはおかしな感情だろうか。

 学園に通い始めて知った言葉がある。

 シスコンだ。妹に寄り付く虫を排除しようとする者たちがいる。とすれば、僕の感情もおかしなものではないのだろう。

 どうやら僕はマザコンというやつらしい。

「もう、〇〇様ったらマザコンでしたのよ!デート中も、お母様ならそんなことはしないだの言わないだの、すぐに比べるんですの」

「まぁ、最低ですわね!男は少なからず皆マザコンだとは言いますが、比べられるのは我慢なりませんわ!」

「ですが、逆によい側面もありますわよ。お母様のことを褒めておけば機嫌がいいんですもの」

「何て賢いんですの?その手がありましたか!」

「それにマザコンの男性は母親に似た女性を好きになると言いますし。お母様を研究すれば意中の殿方を攻略するヒントになりましてよ」

 色々な人の言葉が耳に入るようになると、僕以外にもマザコンは多く、特殊なことでもないとホッとした。


 今日は、妹のエリエッタとお義母様が王都の屋敷に到着する日だ。

 こんな日くらいずっと家にいて迎えたいのに……。

「どうしたリードル。やけに今日はソワソワしているな?」

 皇太子アレクサンドが新入生を迎えるための準備を完璧にしたいと張り切っているせいで……。

「殿下、妹が領地から到着するのです」

 殿下がニヤッと笑った。

「そうか。確かお前に似た妹が入学すると言っていたな。お前に似ているというからには、随分と美人なんだろうな」

 殿下の言葉に背筋がゾッとする。

「妹は殿下にあげませんよ?皇太子妃のちの王妃にして苦労させる気はありませんから」

 これだけ僕のことをこき使う殿下だ。きっと皇太子妃になる女性も色々と忙しく動き回ることになるだろう。

 社交の場に出て外交の一翼を担うのも皇太子妃の役割だ。

「やだなぁ。苦労なんてさせないよ。それに、兄が反対しようとも皆のあこがれる女性最高位だよ?なりたがらない女性がいるとは思えないけど」

「殿下、残念ながら殿下の周りにいる女性たちは、地位を欲している欲深い者ばかりですのでそう感じるだけです。実際は学園に通うほとんどの女性は王妃になりたいと考えてはおりません」

「それは地位的に俺との婚約を望もうとも叶わないと思っているからじゃないか?もし、俺が婚約者にと望めば二つ返事すると思うぞ」

「はいはい。殿下、良いことを教えてあげましょう。男性はマザコンで女性はファザコンらしいです。女性が好きになる男性は父親に似ているそうですよ。もちろん父親との折り合いが悪い女性はその限りではないでしょうが。人には好みと言うものがあります」

「何だと?俺のようなイケメンを父親に持ってる女性など、そんなにいるわけがないじゃないか……。それは困った」

 ……どこまでも自信過剰の発言をする殿下にため息を漏らす。

「なんだよリードル。ちょっとした冗談じゃないか。俺だって分かってるんだよ。俺が皇太子って地位じゃなきゃ、お前や騎士団長ほどモテないって。それに、王妃になるというのは女性の最高位であるのは間違いないが、その分女性の中では最高に責任が重く忙しく精神的大変だということも……。できるなら、好きな女性には苦労させたくない」

 自信過剰な発言ではなかった。そうか。好きになった女性に苦労をかけることが決まっている……それは確かに、辛いかもしれない。せめて、王妃になりたいと思っている女性であればと思うのも当然のことか。女性はだれも王妃になりたいだろうというのは殿下の願望から出た言葉なのかもしれない。

「というか、リードル、お前何を納得したみたいな顔をしているんだ。否定しろ、否定」

 は?否定?

「お前や騎士団長ほどモテないって謙遜して言ったつもりなんだぞ?」

 がくがくと両肩をつかんで揺さぶられる。

 ……なんだかめんどくさい人だ。

「はいはい。殿下は見事な黒髪にエメラルドのような緑の瞳。整った顔に、鍛えられた体をしています。あと数年すれば騎士団長と肩を並べるほどの剣の腕前になるでしょうし、皇太子という地位がなくとも女性たちのあこがれの的で間違いないです」

 エメラルドのような瞳が僕の顔をじーっと見ている。言葉の続きを待っているように。

 ……。

 あ!

「美しいと言われても男らしさに欠ける僕や、27歳になるというのに婚約者がいないおじさん騎士団長よりも、皇太子殿下のほうがモテますよ」

「ははは、そうかな?いやいや、リードルのような男を好む女性も多いぞ?」

 殿下が満面の笑みを見せる。……まったくめんどくさい。

 まぁ悪気もないし本気でもない、こうして息抜きをしているだけだと分かっているので付き合いますけど。

「で、お前も婚約がまだだろう?誰か気になる子はいないのか?どんな子が好みなんだ?」

「……考えたこともないですね。男性は母親に似た人を好きになるというので母親みたいな女性が好みですかね?」

「マザコン?いやだが、シスコンタイプもいるぞ。妹や姉みたいな女性が好きだという。あと、逆に絶対に母親や姉妹のような女性はごめんだというタイプも……」

 え?そうなのか?妹と義母の姿を思い浮かべる。うーん。家族を恋愛対象として見ることなんてそもそも無理な話だよなぁ。

 似ている人を見たら何か感じるものはあるのかな?

 会話を続けながら仕事をこなし、なんとか夕食前に屋敷に戻ることができた。


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