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10歳ですでに婚約者がいる子もいるというのに、うちの子……二人ともまだ婚約も調っていなかった。
親として失格なのでは?これは……素敵な相手を見つけてあげなければ!いえ、もちろん恋愛の末結ばれるというのが理想ですが、貴族の結婚というのはそればかりではありませんし。
そうよ。私にはまだやり残したことがたくさんありました。
子供たちが良い伴侶を見つけて幸せな結婚をして、そして……孫の顔を拝む!
お義祖母ちゃんですよぉと、孫をあやすまで……死ねません!……いえ、80歳や90歳のお婆さんじゃないので、死にはしませんが……。
孫たちに囲まれる生活を両目を瞑って想像して見る。
うっとり……。
確かに、今までも十分幸せでしたけれど、今以上に幸せな気持ちになるかもしれません。
「お義母様、一緒に頑張りましょうね!(うっとりした顔をしている。素敵な恋愛を想像したのかな?)」
「ええ、頑張りますわエリエッタ!(エリエッタの素敵なお婿さんと、リードルの素敵なお嫁さんを捕まえるために頑張らなくちゃ!)」
うんと、張り切りが声にも現れたのか、それとも若返って声帯も元気になったのか、自分でも驚くほど通った声が出ました。
「……あ、やっぱりあんまり頑張らなくても、いいかな……」
エリエッタが急に声のトーンを落としました。
……?
「あ、そうね。エリエッタならそこまで頑張らなくたって、モテモテで、むしろ変な男から守るほうを頑張らないといけないわね!大丈夫!お義母さんがついてるからね!」
トンっと胸を叩くと、エリエッタがうんと頷く。
「そうね、私が守らなくちゃ。お義母様を……」
え?ちょっと聞き違いかな?私を守らなくちゃ、お母様がと言ったんですね?
ええ、ええ。もちろん。こう見えて、私も実年齢37歳の大人ですし。義弟妹の面倒を含め子育て歴20年のベテランですよ。
子供の幸せのために、子供を守ることにかけてはプロフェッショナル。安心して任せてください。
ああ、でも……。
脳裏に可愛い義弟の言葉が浮かびます。「小姑付きだなんて、結婚相手も見つからないよ」と言われたんでした。
ううう、ううう、口うるさい姑がいたら、余計に結婚相手が見つからないって言われそうです。
いえ、待ってください、もしかして、うるさくしすぎてお嫁さんやお婿さんに嫌われたらあっという間に追い出されるルートですね……。
孫に合わせてもらえない……だけは、いやですっ。
ううう、そうだ。うん、そうだわ!私も学園生活を通して、義母だとバレないように、友達になればいいんだわ。
「エリエッタ、学園では私のことはお義母様ではなく、シェリア……呼びにくいようならリアとでも呼んでね」