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引き続きアーノルド
「って、年齢詐称?……そ、そういうこともあるのか……だとすると……12歳の可能性があると」
「12歳どころかもっと若いかもねぇ。皇太子殿下在学中に学園に通わせようという話も良く聞いたわよ」
「と、いうことは……私が27歳で、彼女が3年生なら10歳差……1年生では12歳差になるとは思っていたが……もしかしたら、それ以上に年齢差があるという可能性が……」
「はぁ?年齢差が何だって言うの?というか、まずはどこの誰かというのが問題でしょう?本当にお義姉様の子なのか、ただの他人の空似なのか」
「た、確かにそうだな……。もし、お義姉様の娘なら、お義姉様が今どうしているかの話も聞けるだろうし……それにしても、そうか……今12歳なら、15歳も年齢差があるのか……」
はぁーと、自分でもわけがわからないため息を吐くと、妹がハッと目を見開いた。
「ちょ、お兄様、シスコン……シスコンすぎるっ、さすがに引く、引くわ。引いた。いや……こわっ」
「は?何いってんだ?お義姉様が好きなのはお前も一緒だろ?お前だって相当なシスコンだぞ?だいたい、自分の産んだ娘にお義姉様の名前から文字をもらってつけるか?シェリアお義姉様の名前からシェリをもらって、シェリナとか。やばいだろ?」
「うるさい!お義姉様のようなかわいい娘に育って来たんだから、お義姉様の名前のを貰ったおかげよっ!……そんなことより……なるほどねぇ。お兄様がなかなか結婚しない理由も分かったわ……っていうか、まだ先が長そうね……はぁー……。早く結婚してくれないと、面倒なのよね。お兄様を紹介してくれって声が。もう、結婚はいつでもいいから婚約したら?」
「は?婚約?そんな相手はいないよ」
「……はぁ、なるほど。目を閉じて、未来の婚約者の顔を思い浮かべてごらんなさい」
なんだよ、その怪しげな占い師の言葉みたいなのは。
と、思ったもののなぜか妹の言う通り目を閉じ、未来の婚約者の顔……を思い浮かべようとしたら、なぜか……。
お義姉様の顔が浮かんだ。あれは私が8歳。お義姉様が18歳くらいの時だろうか。
「アーノルド、騎士になりたいって言ったわよね?そんなへっぴり腰ではいつまでたっても上達しないわよ。いい、こうよ。剣を持つ手はこう。手だけで振るんじゃないわ、剣は体の先なの。剣は体の一部。手で物を動かしているという感覚じゃだめなの」
そうだ。騎士になりたいと言った僕に、お義姉様はよく剣の指導をしてくれた。結局15歳になって、お義姉様が出て行くまで一度も勝てなかったなぁ……。強かったなぁ。お義姉様。
「ねぇ、お兄様、誰が思い浮かんだ?好みはどんな女性?」
「うん……もしかしたら、私は強い女性が好きなのかもしれない……」
「はぁ?まさか、自分より強い女性とか言わないよね?そんなの国内にはいないでしょう、結婚する気ないわね!」
妹が呆れた顔をしている。
……ああ、もしかすると、本当にそうなのかもしれない。
頭が上がらないような強い女性を求めているのかもしれないなぁ。




