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ということを心配しているのなら、騎士団長と結婚したいみたいなことはエリエッタはないわね。だったら、別にどうでもいいや。
2限の授業が終了し休み時間になると、男女とも教室から一斉に生徒たちが外に向かう。
「あら、皆さんもしかして、剣術の……訓練場に?騎士団長が見たいとか?」
エリエッタが急いで出て行く生徒たちを見送り呆れたように声を出した。
「ふふ、廊下に見えるのはうちのクラスの生徒たちだけではないようですね」
別のクラスも……もしかして、2年生も3年生も……。
お?
と、言うことは、皆が訓練場に注目しているということは、この時間皇太子の周りの人間少ないんじゃない?
「ちょっと生徒会室行ってくるね」
「え?お義母様?お兄様に用事なら家に戻ってからでも……」
いや、皇太子殿下に用事で……。リストを返してもらいに……と、言えないですよねぇ。
「用事じゃないの……えーっと、そう、毎年騎士団長がくるとこんな感じなのかとか、昼食に食堂がまともに使えるのかとか……聞いておこうと思って」
「ああ、そうですね。もし騎士団長が食堂で昼食をとるなら酷い騒ぎでしょうね……。ほんっと、迷惑よね。騎士団長来なければいいのにっ」
エリエッタがプンスコしている。そんな顔も可愛いですが、美人が台無しですよ。
「確か、生徒会室は訓練場と逆方向……偶然会うこともないですよね……。行ってらっしゃいませお義母様。私も他の方に騎士団長の一日のスケジュールを確認しておきますわ。午前中でさっさと帰ってくれればいいのにっ」
あらあら。なんであんなに嫌っているんですかね?
結局はっきりした理由は教えてもらえなかったけれど。
生徒会室は、ぐるりと教室を回っていくと結構な距離がありますが、中庭から校舎と校舎の間の細い抜け道を通ると近いよとリードルに教えてもらっています。
……生徒会の仕事を抜けて1年生の教室にそこを通って何度も様子を見に来ているみたいですし、リードルにあったらどうしよう。
皇太子に用事だと言うと、何の用事だ、自分もついていくって言いますよね。運よく皇太子殿下だけにばったり会わないかしらね?
と抜け道に入ると向かい側に人影が。
誰だろう?
抜け道の幅は人が3人が並んで通るのがやっとだ。2人で並んでこちらに向かっている人影は男の体系のように見えた。
とっさに身を隠す。
いや、条件反射みたいなものですね。校舎内に悪い人はいないけれど、リードルが言うにはいつ悪い人に出会うか分からないから、知らない人とはなるべく距離を取った方がいいと言われているので。特に男には気をつけろと。
王都怖い。
制服着ている男なら安全だと思うなと。まぁ何かあれば殺すけどとか……いや、冗談でも殺すなんて物騒なこと言っちゃいけませんって叱っておいたけどね。冗談じゃないから大丈夫ですって、再び冗談を言うから、リードルの笑いのセンスは笑えない。真面目過ぎるのかしらねぇ?
「あははは、ざまぁみろだよ!」
「だなぁ。3限目だろう?騎馬訓練」
「無様に馬から転げ落ちてみっともないところ見せればいいんだよっ!」
「本当だよ。いつもいつも偉そうに!」
はい?
騎馬訓練?
馬から落ちる?
どういうこと?
そんなこと、予言できるなんてある?
落ちることを知ってるとかある?
「バレたらどうするんだ?」
「はぁ?俺らがやったなんてバレるわけねぇだろう。あんなに大量に生徒が入れ代わり立ち代わり周りをウロウロしてんだ。犯人なんて見つけられるわけねぇだろ」
犯人?
バレる?




