45
「殿下は……その、結婚に愛は求めますか?好きな人と結婚して自分も愛されたいですか?」
殿下の目が少しだけ揺れた。
「……ねぇ、リアちゃん、リアちゃんは俺が君のこと好きだと言えば、俺を愛してくれる?」
殿下の愛を乞うような切ない声に、まるで親の愛情を求める子供のように思えた。
「……私、正直恋愛のことはよくわからないんです……ただ……家族になれば、家族のことは愛します」
義弟妹のことも、夫のこともリードルとエリエッタのことも。皆、愛しい。
「ああ……。リードルやエリエッタのことを、リアちゃんはとても大切にしているよね。……いいなぁ、そういう愛も」
殿下がちょっと遠い目をした。
「俺さぁ、結婚って義務だと思って。それ以上でもそれ以下でもなくて。愛とかなんて期待してなくて……俺も、好きになる自信なんて無くて……」
「殿下は優しい人ですね。好きにならないと相手に申し訳ないと思っているんですね……。恋愛感情を持てないことに罪悪感を覚えるんですね……それはきっと、王妃様と陛下が愛し合っているのを見て育ったからでしょうか」
陛下たちのことなどよく知らないけれどなんとなくそう思った。
「でも、幸せの形は……色々あるんです。私も……いえ、リードルとエリエッタのお義母様は後妻ですが、夫との間に恋愛関係は無かったですが、家族として幸せに暮らしていましたから……。お互いを思いあえる関係であれば、そこに胸を焦がすような情熱が無くても……幸せなんじゃないでしょうか」
殿下と私との距離がさっきより近くなってません?真っすぐ伸ばしていた殿下の腕が降り曲がっている。
ちょ、逃げ場がさらになくされているのは何故?
気に障ること言った?
「ほ、ほら、えっと、友達……例えば殿下、リードルのこと好きって言ってたじゃないですか?恋愛とかでない好きでも人って嬉しいし満たされるし、あの……」
「リードル?……ああ、そうだ。確かに。そばにいてほしいと思うのは何も恋人ばかりじゃないよな……」
殿下の腕が壁から離れたと思ったら、私の背中に回った。
ひぃー、逃げ場ゼロ。
さらに何か問題発言しちゃいました?
「家族になれば愛してもらえるかな……」
それは誰に?
リードルに?私かエリエッタと結婚すればリードルは義兄という家族になるけれど……。
リードルも家族は大切にするだろうから。
でも。もうすでにリードルは殿下のこと大切な人だと思っているはずですよ。2年間届いた手紙には直接的な言葉では書いてないけれど、殿下を大切にしているのは伝わる内容でしたもの。
まぁでも……。
「あのリストですが……。殿下の周りに来る生徒の……」
愛に飢えているのなら、教えちゃってもいいかなって。




