44
実際にどのような人なのか、見て回らないと。
うちの子の嫁や婿になるなら、私も仲良くなれそうな人のほうがいい。
皇太子や王女という可能性もあったとしても、……それ以外という可能性だってある。
そうそう、もし、本当にエリエッタが皇太子妃になるなら、ほかにも侍女が必要だし。私の同僚になるかもしれない子爵令嬢や伯爵令嬢もいるわけですよねぇ。仲良くなれる子がいいに決まっている。
人となりを知って損はないわよね。
えーっと、まずはどこから見て回ろうかしら?
皇太子妃を目指しなさいと親に言われている子たちは、もしかすると将来皇太子妃になれなかったら侍女になれと言う可能性はある?それはない?うーん、難いなぁ。
ドシンッ。
ひゃうっ。人にぶつかってしまったようです。
書類を見ながら前を見ていなかったから。
「ご、ごめんなさい」
「ああ、リアちゃん」
慌てて頭を下げると、目の前にいたのは皇太子殿下!爽やかな笑顔を浮かべています。
ああ、いい人なんだよね。俺様にぶつかるとは失礼なやつだ!みたいなことも言わないし。あまつさえ……。
「わわわ、殿下、大丈夫ですから、私がっ」
ぶつかった拍子に落として床に散らばっている紙を拾い集めようとしてくれている。
殿下なのに!
「……何、これ?」
殿下が拾った紙を手に動きを止めました。
「ぎゃーっ!」
よりによって、皇太子派リストを手にしてます。
「あー、いやぁ、そのぉ……」
冷や汗が垂れます。
「この子たち、俺に声かけてくる子たちだよね?何?恋のライバル調査?」
うっわー。いいとこついてくる。
「リアちゃん、もしかして俺に気が合ったの?こんなことしなくたって、リードルの妹なら大歓迎。さぁ、婚約しようか」
いやいやいや、いやいや。
「殿下っ」
殿下が私の手をつかんだ。
「恋のライバル調査じゃないです。リードルお義兄様が好きな子かどうか知りたいだけで、殿下のことが好きな子のことはどうでもいいんですっ」
ぺしっと振り払うよ用に殿下の手を振りほどくと、落ちた紙拾いを再開する。
「……ふぅーん、残念。でも、このリストのこのカッコの中の名前なに?あと、二重丸ついてるの」
……どうしよう。これは……女の子たちの秘密を話すべきか……。
「俺に知られるとまずいこと?リアちゃん、教えてよ」
じりじりと殿下が私の方へと近づいてくる。
壁に背中が当たったところで、殿下が私の逃げ場がないように、壁に両手をついて、私をその間に閉じ込めた。
うひゃー。どうする、私。
「殿下……一つ質問がございます」
「何?一つと言わずリアちゃんの質問ならいくらだって答えてあげるよ」




