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「我儘よね……。きっと王女様が嫁いで来たら、王族だもの。侍女もたくさん連れてくるでしょうし、生まれてくるための乳母も家庭教師も立派な人がつくでしょう?私の居場所などあっという間になくなってしまうわ……」
「あ、そういうこと?」
「そうだわ、エリエッタ。もしあなたが皇太子妃になったら、私を侍女として連れて行って。義妹設定の私を侍女として連れて行くのはおかしいかしら?おかしいのであればどこか別の人の養子に入り直して……。皇太子妃の侍女は貴族である必要があるでしょう?だから辺境伯の屋敷で働いているうちの侍女は連れて行けないもの。ね?」
エリエッタの頬が緩んだ。
「お義母様が私の侍女……それって、ずっとずっと一緒にいられるってことよね?私が結婚しても、ついてきてくれるってことよね?」
にやぁとエリエッタが笑った。
「皇太子殿下と結婚なんて絶対ないと思っていたけれど、まさかそんな利点が……くっくっく」
それから、ふと笑うのをやめてエリエッタはまた何かをつぶやいた。
「あら?もしかして、お義母様が皇太子妃になって私が侍女になっても一緒にいられるっていうことなのでは?お義母様の赤ちゃん……うわぁー、やばい。そうぞうしただけでやばかわいい!やばばばばっ!どうしよう、どうしよう、どうしよう!」
何かをつぶやき、うっとりしながら頬を染めうるんだ眼で、顔をブルブルと降り始めるエリエッタ。
あら?恋する乙女の目?
これは、もしや、本当に皇太子のこと……?
この日から学園で3人が別行動する時間が増えたので、レーゼレーラ様の元へと情報を聞きに足を運ぶ。
「レーゼレーラ様、例のあれはどうです?」
「リア様。ふふふ、ほら、見てください。すでに学園の勢力図は完成いたしましてよ」
レーゼレーラ様が机の上に紙を広げる。
「こちら、親に皇太子妃を目指せと言われている生徒ですわ。カッコの中は他に好きな人がいる場合の名前ですわね。それから本人にも皇太子妃になる意思がある場合は名前に二重丸が付けてありますわ」
「す、すごいわけ、レーゼレーラ様。さすがです。これはとても分かりやすい……」
エリエッタのライバルになるであろう女性リスト一覧。
「それから、こちらは婚約者がいる女性一覧、カッコの中は婚約者ですわ。それから、婚約者のいない女生徒。カッコ内が好きな人の名前。特定の好きな人がいない場合は、好みの男性のタイプが書いてありますわ。二重丸がついている子たちはリードル様のファンです」




