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 森の奥には魔女がいて、何でも願いをかなえてくれる薬を作っているという……。けれど、それは物語の話では?

 そうは思ったけれど、エリエッタが期待に満ち溢れた顔で私の顔を見ている。

 飲め、飲めと目で訴えている。

 ガラスの小瓶を持ち上げると、瓶の下から1枚の小さな紙切れが出てきた。

 シャリアへと書かれた文字は確かに亡き夫のものだ。

 紙切れを裏返せば、ただ一言「幸せを」とだけ書かれている。

「あのね、この薬は本当はお兄様が成人した時に渡すように言われていたの。早く飲んで」

 私の幸せを願って残してくれた薬。

 蓋を開けると何種類もの花をまぜたような香りがぱぁっと広がる。瓶に口をつけて薬を飲む。

「お兄様ったらお義母様を失うのが嫌だなんて子供みたいな理由で引き延ばして……」

 私を失う?

 手に取った小瓶に視線を落とす。

 まさか、毒?

 ごくりと薬を飲み込むと、かぁーっと体が熱くなり、そしてすぐにぐんっと寒気に襲われる。

 体の隅々まではっきりとぞわぞわと何か虫が這いずるような気持ち悪さに襲われる。

 どうなっているの?本当に毒なの?

 5分だろうか。10分だろうか。時間の感覚があやふやになる。気持ち悪さが次第に収まってくると、エリエッタが天使のように美しい顔をほころばせて笑った。

「お義母様かわいい!」

 かわいい?

「ねぇ、そう思うわよね?すごくかわいい!」

 興奮気味にエリエッタが侍女に話しかけて同意を求めている。

「ええ、シャリア様はとても可愛らしいです」

 侍女が頷く。

 可愛い?一体どういうこと?あの薬は何だったの?

「ほら、お義母様見て!」

 エリエッタに促され、鏡に視線を向ける。

 そこには、エリエッタよりも頭半分ほど背の低い少女が映っていた。

 茶色の髪に、薄茶の瞳。目鼻立ちは全体的に小ぶりながら、バランスよく配置されている。何よりふっくらと柔らかそうな頬とくりっとした瞳で、髪の毛の色も相まってリスのような可愛らしさがある。

 美人と言うわけではないが非常に愛らしい顔をした少女だ。

「あれ……誰かに似ているような……」

 どこかで見た顔と、呟くと鏡の中の少女も同じように口を動かした。

「え?何、何?」

 驚いて鏡を指させば、少女も鏡の中から指をさす。

「似てるも何もお母様だもん。これね、お父様が手に入れた若返りの薬。20歳くらい若返るんだって!だから、今のお義母様は私と同じ年でしょ?」

 いえ、違うわ。20歳若返ったら、リードルと同じ年。17歳よ。と、頭の中で冷静に計算する。

「これで、一緒に学校に入学できるね、お義母様!」

 エリエッタが嬉しそうに私の腕を取った。

 いや、えっと、ちょっと待って。どういうこと?



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