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「ええ、リードル……もちろん、愛してるわ」
リードルの髪をそっと撫でる。
「僕がどんな男でも?」
「え?ええ、もちろんよ」
「嫌わない?」
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「どうしたの?リードルを嫌うようなことはないわ。だって、私はリードルを信じているし……もし、人を殺してしまったとしても、リードルが理由もなく人を殺すわけはないと思っているから。何があったって、嫌いに」
むぐぐっ。
口をふさがれました。
ああ、ダメ。リードル。いくら挨拶でも……慣れないことは……その……。
今日は寝ぼけているわけじゃないよね?
なんで……。
あ!
もしかして、人を殺すなんて、信じてるといいながら、そんなことするわけないのに、たとえ話でもそんなこと言われたら怒るよね。
もう、これ以上言うなって口をふさがれたってことかしら?
リードルは賢いいい子だものね。
失言をした私を責めるようなことをせずに騙させる方法を選んだということよね……。
いやいや、もう失言しないので、いい加減口をふさいでなくてもいいですよ?これじゃぁ、挨拶というよりも、まるで恋人同士のキスみたいじゃないですか。……まぁ、結婚してるけど私は恋人同士のキスなんてしたことがないので知りませんけど。
そう言えば、恋人同士は舌を絡め合うとかなんとか本で読んだような?ということは、長さは関係ないということですかね?あくまでもこれは親しい者どうしが交わす挨拶の延長上?
そうよね。
リードルがそっと離れて不安そうな顔で私の目を覗き込んでいる。
「嫌いになっていない?」
言葉をさえぎられたくらいで、嫌いになるわけないのに。
「ふふ、もちろん今日も愛してるわリードル!さぁ、鍛錬に向かいましょう!朝日の中体を動かすと気持ちいいわよ!」
ベットから飛び出すと、リドルもベッドから降りて、私の体をぎゅーっと抱きしめます。
「どうしたの、リードル。何か怖い夢を見たの?何をそんなに不安がっているの?」
「好き。好き。ずっと一緒にいたい。離れたくない。もうずっと、このまま学園にも行かずに2人で部屋に閉じこもっていたい……」
「リードル?」
私が死ぬ夢でも見て不安がってる?
……思えばリードルは5歳になる前に実の母親を失っている。私が嫁ぐ半年ほど前だということだから、5歳になる前だろう。エリエッタは2歳のときで、あまり実母のことは記憶にないかもしれない。だけれど、リードルは5歳に近ければ……覚えているんだと思う。
母親が死んだときのことを。
母親が息を引き取ったときのことを。
そして、それから数年後には父親が病に倒れ、いつ命を失うか分からない状態で過ごして……闘病の末やはりなくなってしまった。
死なないで!と、願って願って願って……それでも目の前から消えていった命……。大切な家族を二度も見送ったリードル。
「大丈夫よ。リードル。私はこう見えて、頑丈で強いからね?そうそう簡単に死なないわ。少なくとも、20歳若返ったのだから、最低でもあと20年は健康で元気に生きらっるのは知ってるでしょう?」
ぽんぽんとリードルの背中を叩くと、リードルが小さくため息をつく。
「そうじゃない……」
はい?そうじゃない?




