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「休みの日に、一緒に買い物に行きましょうか、エリエッタ」
「本当?お義母様?行く!行きます!」
「ぼ、僕もっ」
「リードルは確か生徒会の仕事があったはずでしょう?」
エリエッタがリードルの顔を見て笑っている。
「エリエッタ、それから学園ですが……1カ月過ごして分かったことです。校舎内では悪い人はいないみたいです。だからそんなに不安がって私にべったりしてなくてもいいわよ」
「え?お母様……?」
「そろそろ私も、女性トップとしての仕事もしないといけないはずですし……」
青薔薇会のメンバーと会って、情報交換しなくちゃですし。
「それなら私もご一緒いたします!」
「いえ、エリエッタ。あなたに任せたいことがあるの。……どうやら、学園に通っている女生徒たちは、お互いにお茶会を開いて行き来しているようなの。社交界デビューして舞踏会へ足を運ぶ前に、お茶会で皆様と親しくしておいた方が色々教えていただけるはずです。あなたに、辺境伯令嬢として誰のお茶会に足を運べばいいか、お茶会を開くならだれをお招きすればいいかなど、考えていただきたいのです」
エリエッタがちょっと考えるそぶりを見せる。
「それは、重大事案ですわね……ヘタなお茶会に参加するわけにはいきません(その家の子息がハエのようにお義母さまの周りを飛び回りだしては一大事)虫よけ準備はしなければ……」
ん?エリエッタって、そんなに虫は苦手じゃなかったと思いますが……。
庭でのお茶会で虫が飛び回ると確かに落ち着かないし。なるほど。色々もう考え初めているのね。
次の日。
目覚めると、リードルの顔が目の前にあった。
今日はリードルはしっかり目が開いている。
「おはよう、リア。愛してるよ」
「おはよう。リードル」
もしかして、今日から一緒に鍛錬すると話をしたから早起きして私が起きるのを待ってくれたのかしら?
でも、何でベッドに入ってるの?
私が寝ているの見たら、二度寝したくなっちゃった?
上体を起こしてリードルの頬に軽くキスをする。
おはようの挨拶だ。
リードルが私の腕を引っ張った。上体を支えていた腕を引っ張られたせいで、そのまま体がベッドの中に再び沈む。
ちゅっ。
リードルが私の頬にお返しのおはようの挨拶。
「ねぇ、リア。リアは僕のこと愛してる?」
リードルの青い目に私の姿が映っている。
……学校では、この1カ月の間にリアと呼ばれるのには慣れてきた。
だけれど、やっぱり家の中だと変な感じがする。
お義母様と呼ばれないのにはなれないし……。
少しだけ、私の可愛い義息子が知らない人みたいな気になってしまう。そんなことはないのに。親子じゃなくなったみたいな距離を感じて……。寂しくなる。
子離れしなくちゃいけないと思っていても……やっぱり寂しい。




