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私をはさんで右側にリードル。左側にエリエッタ。
3人そろって行動することが学園の風物詩になってきた入学後1カ月。
こ、これはまずいのでは?
いくらなんでもこんな状態では青薔薇会のメンバーと内緒の話もできやしない。
さすがにあなたたちの婚約者候補に相応しい人たちの情報をかき集めてるなんて言ったら、嫌よね?
さらに……。せっかくこんなに男女がたくさんいるというのに、家族で四六時中行動していたら出会いもくそもないのでは?
いくら、2人を守りたいと思っていても……これではいけません。親離れできないのはリードルやエリエッタではなく、子離れできないのは私の方でしょう。
その日の夕食時に、家族会議を開きました。
「リードル、入学から1か月たちました。私やエリエッタも学園生活に慣れて来ましたし、そろそろ一緒にいなくても大丈夫ですよ?」
「そうよ!お兄様!私とお義母様の一緒にいなくても大丈夫よっ!休み時間に来なくてもいいし、昼食は別々に食べればいいし、登下校も一緒じゃなくてもぜーんぜんいいんですわよ!」
エリエッタがリードルに高らかに言い放つ。
うんうん、エリエッタもいつまでもリードルに頼ってはいけないと思っていたようですね。
「うっ、ぐぐぐ……」
リードルが閉口した。
「ほら、リードルのことが大好きな皇太子殿下がいつも呼びに来るでしょう?さすがに……いくら好かれているからって、殿下に呼びに来させるのも……」
「あれは、呼びに来てるんじゃないっ!僕のことなど口実で、会いに……あー、くそっ。そうだよな。口実を作らせて、これ以上あいつがお義母様と話をするのも……確かに得策じゃない……」
最後の方が声が小さくてもにょもにょとしている。
「分かりました……でも……僕は、お義母様と学園で会えないのは寂しい……だから……家で、もう少し一緒にいる時間を……」
なんてかわいいこというんでしょうね。
「ええ、もちろん。なんなら、朝の鍛錬も一緒にする?ちょっと早起きしないといけないけれど……」
リードルがにやりと笑った。
「ええ、ぜひ!朝が苦手なエリエッタとは違って、僕は早起きも問題ないですから」
「わ、私だって、早起きくらいっ、早起きくらいっ」
「ふふ、エリエッタ。無理しなくていいわよ。鍛錬ですもの。早起きしても、エリエッタには退屈な時間だと思うわ。あなたはしっかり良く寝ていなさい」
エリエッタが寂しそうな顔をする。
そうよねぇ。1カ月たったといっても、まだ1カ月。リードルはすでに2年は王都で暮らしているけれど、エリエッタは新しい環境でまだ1カ月しか経っていないんですし。不安もありますよね。




