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夕食の時間になりました。
「お義母様、パーティー会場を抜け出したあと、どこにいたんですか?」
リードルに尋ねられて、返答に困る。
こそっとその辺の棒っきれを拾って振っていたなんて、子供に恥ずかしくて言えるわけがない。
まさか、いい年齢した義母が「私、将来は騎士になりたいの!」とか言いだしたら引くだろう……。
うん、引くよね。だって、実年齢37歳よ?そろそろ孫の顔を見てのんびりする年齢よ?
……おっと、そうそう。孫の顔を見るのも私の夢ですからね?
でもね、もしかしたら……辺境伯家から追い出され、一人で残りの人生を生きていく可能性もあるわけじゃない?
実家にも頼れない、嫁ぎ先にも居られないとなったら……もちろん金銭面では生きていく分は亡くなった主人にはもらっているけれど。でも一人で寂しく生きていくのって……考えただけでも泣きそうになる。
孤児院で子供達の面倒を見ようかとか色々考えてはいますが……。
騎士になって働くというのもありだと思うんです。
「えーっと……学園は広いのね?あちこち見て回っているうちに迷子になってしまいましたわ」
と、適当に言い訳しておく。
「ま、迷子?」
リードルが大声を上げる。
「お義母様大丈夫だったのですか?一人でウロウロするから迷子になるんです。ちゃんと今度から私に声をかけてくださいっ!」
ん?
エリエッタの言葉に首をかしげる。それ、親が子供に言う言葉なのでは……?あれ?
「そうです。一人で歩いていて悪い人に連れて行かれたらどうするつもりですか!」
ん?
リードル、それも、子供が親に言うことばとは違う……。あれ?
「エリエッタ、リードル、大丈夫よ?学園に悪い人なんていないでしょうし。そもそも私を連れ去る意味もないですよね?」
ダンッと、音を立ててリードルがテーブルに手をついた。
「何を言っているんですか、お義母様っ!悪いやつは死ぬほどいますよっ。お義母様を連れ去りたくて仕方がない奴は……意味とかじゃない、本能でそう思うやつが……!」
え?
「わ、悪いやつが死ぬほど?……本当なの?」
「そうですわ。お義母様。王都ですもの。犯罪者も変態も勘違いしたやつも思い違いしたやつも頭のおかしな人間も溢れているに違いありませんっ!」
ガーン。
そう言えば、聞いたことがありますね……王都は治安が悪いところもあると……。
仕事を求めて王都に来たものの、仕事が見つからなかった人間が犯罪に走ると……。帰る場所もないためそういったやからが居つくため、どうしても王都は治安が地方よりも悪くなるとかなんとか……。
「た、大変だわ!リードル、エリエッタ、気を付けるのよ!お義母様が守ってあげるから!」
鍛錬、鍛錬をしなければ……。
騎士になるとかならないとかそんなの二の次三の次。
大切な子供をこの手で守ることが何より大切だわ!
「いやいや、危ないのはお義母様ですわ!もうどれほど噂を耳にしたことか!かわいい新入生が入って来たって。どこの誰でどうしたら近づけるだろうとかなんとかっ」
「なんと?エリエッタ!それは本当か?どこの誰だ。くそっ」
ん?
お義母様……疎い。
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