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っていうか……。もしかしてそんなに私は頼りなさそうなのかな。まぁ、いちおう年下で小さくて子供みたいに見えるかもしれませんし。
でも、こう見えて人生経験豊富な大人です。いえ、社交界には出ていないし学園にも通っていなかったから人生経験は豊富ではないですね……恋愛も未経験だし……あれ?私って、大人なくせに、人生経験薄っぺら……?経験豊富な部分は……子育てのみ?
……さすがに、殿下は、子育ての悩みなんてないですよね……あれ?あれ?
「くくく。相談し合ううちに、親しくなっていくというシナリオもありだねぇ」
シナリオ?
「リードルとはそんな感じで親しくなったんですか?」
「あ?いや。相談もなにも、リードルは結構ずけずけと容赦ないよ。……あ。まさかそっち系?リアちゃん見た目は全然リードルと似てないけれど、中身はリードルと似てるって感じか?」
ん?
「殿下、もしかして、私、リードルに似てますか?見た目は似てなくても……似てるって思う部分あります?だとしたら、嬉しい」
そっくりな親子ねって言われるの憧れ!
血がつながっていないけれどやっぱり親子だねって……言ってもらえる日が来るなんて……!
ワクワクドキドキしながら、殿下の言葉を待つ。
殿下の言葉が返ってくる前に、音楽が止まった。
ファーストダンス終了だ。二人で横並びになって皆に向かってお辞儀をすると、拍手が沸き上がる。そして、次の音楽の前奏が始まると、徐々にダンスフロアに人が出てくる。
「もう1曲どう?」
殿下の言葉に返事を返す前に、リードルがやってきて私の手を取った。
「リア、次は僕と踊ろう!」
「まてよリードル、まだリアちゃんと話を」
リードルとダンス?確か最後にリードルと踊ったのは……。
私の身長にリードルが並んだくらいだったわね。
初めて踊ったのは、リードルが5歳。小さな小さなリードルが、背伸びをしながら私の手を取って踊った姿を思い出してほっこり笑顔になる。
「話はあとで僕が義妹の代わりにいくらでも聞いてあげます。ほら殿下、あっち。殿下と踊りたくて待ってる人がいっぱいいますよ」
殿下がちらりと会場を見てため息を漏らす。
「あー、分かったよ。じゃぁね、リアちゃん」
えええ、ちょっと、生殺しっ。
私とリードルが似てるって言ってくれないの?
まるで本物の親子のようだねって、その言葉をください!
「あ、そうだ。さっきの話の続き」
殿下が立ち去ろうとして振り返った。お、おお、おおお。
「俺さ、リードル大好きなんだよね」
はぁーーー?
その言葉が聞こえる範囲にいた女性陣が何とも言えない悲鳴を上げた。
違う、そうじゃない。私の欲しいのはそんな言葉じゃないです。
「はぁ?殿下、いったい何の話をしてたんですか?」
リードルが迷惑そうに顔をしかめる。
「リードルが女だったら間違いなく結婚してた」
にぃっと笑って殿下は去っていった。




