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ほら、私だって幸せになれたのですもの。
年の離れた人の後妻だったけれど、でも、格上の辺境伯に嫁いだのよ?伯爵家の私が。行き遅れなのに。
格下の子爵家でも男爵家でもなく、同格の伯爵家でもなく。一つ上の侯爵家でもなく。二つも上の辺境伯家に嫁いだのよ。
そうそう、王都から離れているのも、もしかしたら、社交界の噂の的にならないようにと配慮されていたのかもしれませんわ。
「もしかすると、この方になら嫁いでもいいです、この方は嫌ですと具体的に話をすれば聞いてくださるかもしれませんわ」
ぽんっと手を打つ。
何を言っているのという顔をされた。それも、全員に……あれ?
「いえ、ほら、リストですわ。皇太子が婚約するまで婚約話が保留になっているのでしたら、色々な人の噂を集め……そうですね、この学園に通っている生徒だけでも、見ていれば横暴な人であるとか、真面目な人であるとか、女性に対して思いやりがあるだとか、色々分かりますでしょう?それに、ご兄弟やご親戚など、学園に通っていらっしゃらない方のお話も、聞き集めることもできるんじゃないかしら?」
エリエッタに相応しい男はどこじゃー!っていうの、もしかしなくても他のご令嬢にとっても一緒よね。
「情報を集めておきましょう!そのうえできちんとご両親にプレゼンすれば婚約者を決めるときに考慮していただけるかもしれませんわ!少しでもこの方ならいいなぁと思う人……そう、例え年齢が少々離れていようと、少々太っていようが剥げていようが性格が良い方……良いと思いません?そういう方を探しておきません事?」
私の言葉に、レーゼレーラ様が口を半開きにして驚いた顔をしている。
「……確かに……、絶対に嫌だという方もいれば、この方ならばという方もいるかもしれませんわね……恋愛結婚ではなくとも、少しでも幸せになれる相手を選べるなら……私、ガリガリな方よりも少しふっくらとしている方が……ほら、ガリガリの方って、神経質そうで。ふっくらとしておっとりとした方の方が一緒にいて安心できそうですもの」
「分かります!そうなんですよね!」
レーゼレーラ様の言葉にぽっちゃり先輩がちょっと嬉しそうな顔をし、男爵令嬢が同意の声を上げた。
……亡くなった主人は……。主人のことを思い出して、思わず声を張り上げる。
「ガ、ガリガリでも神経質ではなくて周りの人にとても気配りができる素敵な方もいらっしゃいますわ!忙しく働いているとか、単に太れない体質だとか……」
病気でやせ細っていた。……まぁ、病に倒れる前の肖像画が太っていたかと言えば、どちらかと言えば細身だったので、病のせいばかりというわけでもないでしょうが……。




