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そっかぁ。好きな人と両想いなんだ。親が反対してるんだ。……なんだか貴族の恋愛って大変だ。
「カイン殿下が、婚約者をおきめにならないうちは、まだ皇太子妃になれる可能性があると誰かと婚約させられずに済んでいますが……」
レーゼレーラ様が辛そうな視線を伯爵令嬢に向ける。
「私も同じようなものです。皇太子妃になる可能性があるから、まだ誰とも婚約していないだけで……殿下が婚約すれば、すぐにでも誰かと婚約を結ばれるでしょう」
誰か……か。
「その、誰かとは?」
「分かりません。私ももう17歳です。本当なら、そろそろ婚約が調っているような年齢です。20歳を過ぎては行き遅れと言われ、好条件の相手は見つからなくなるでしょう……」
うわぁ。20歳でも行き遅れって言われちゃうの?そりゃぁ、25歳だった私は行き遅れもいいところね。よく結婚できたわね。
いや、後妻だったから、すでに跡取りとなる子供もいたから結婚できたってことかなぁ。
「本当は、私も気持ちに区切りをつけ、お父様を説得して婚約者を探した方がいいのは分かっているのです。行き遅れてからでは……」
さめざめとぽっちゃり先輩が泣きだした。
「私も……です。皇太子に見初められなければ、お前など20も年の離れた男のところに嫁ぐしかないんだからなと言われています……」
「あら?何故それで泣く必要がありますの?」
思わず首を傾げた。
「何故って、親子ほど年の離れた人のところなんて……」
さらに首を傾げた。
「年齢が離れていたって不幸とは限りませんでしょう?ねぇ、エリエッタ」
事実私はとても幸せでしたし。エリエッタの顔を見るとエリエッタが嬉しそうに笑った。
「ええ、もちろん。私のお義母様はお父様と親子ほど年が離れていましたが幸せですし……後妻ですが、血のつながりのない私とお兄様を本当の子供以上にかわいがってくださり……私も、本当に幸せで、お義母様が大好きですわ」
まぁ!なんて嬉しいことをエリエッタは言ってくれるのだろう。
抱きしめさせて!今すぐに!ああ、でも一目があるし。泣いちゃいそうなのもぐっと我慢。
「そうですわね……。年が近くて見目麗しい上位貴族の方と結婚しても幸せとは限りませんものね……。愛情もなく、夫婦で共に別に何人も愛人を作って……子供は使用人に任せきりということも珍しくはありませんもの」
悲しそうな顔をしているのはレーゼレーラ様が、そういう家庭に育ったからなのだろうか?
そうよねぇ。
「条件だけ良くても不幸になる結婚もあれば、条件は悪いけれど幸せになれる結婚もあるのよねぇ……難しいわね」
エリエッタやリードルの婚約者選び……本人の気持ちが第一だけれど。不幸になる芽だけは詰んであげたい。
いいえ、不幸になる芽など、焼き払ってくれますわ!
私の可愛い子供達を不幸にするようなやからは、死に値するどころじゃないわよっ。
「皆様のご両親も、子供であるあなた方が幸せになれれば嬉しいはずですわ!そうに違いありません。皇太子妃を目指させるのも、きっと皇太子妃になったら幸せになれると思ってのこと。年の離れた人のところにでも嫁がせようとするのは、平民になっては不幸になるだろうと思ってのこと!」




