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「で、アン、あなたは皇太子殿下狙いなの?」
「ええええっ、いえ、違います。そんな男爵令嬢の私が皇太子妃になろうなどと思ったことなど……」
あら、尋ね方が悪かったかしらね?
「えーっと、皇太子殿下とお義兄様どちらが好きか教えていただける?それとも別に婚約者や思いを寄せる方がいれば教えていただきたいわ」
「え?カイン様派か、リードル様派かを確認されたいということでしょうか?それは、その……お二人に近づく人間には容赦しないと……?」
容赦しないって、なんでしょう。レーゼレーラ様……。
「ああ、そう言えば、皇太子妃候補の筆頭でしたわね。レーゼレーラ様」
そりゃ、他の女性が近づいたら嫌ですよね……。
「ひぃっ。申し訳ございません。それは、そうだったらいいなぁという個人的な希望で……その、エリエッタ様やリア様をさしおいて私が筆頭だどとおこがましいことを……っ!」
なんでしって?
「希望なの?そうなの。好きすぎて本当でもないことを……希望を口にしてしまっていたの!」
驚いて声を上げると、レーゼレーラ様が涙目になった。
「も、申し訳……ござ……」
「そんなにも、皇太子殿下のことが好きなのですね!その気持ちは本物なのですわね!素敵ですわ!」
「え?」
「ほら、貴族では地位目当てで相手のことを好きでもなんでもなく近寄る方もいらっしゃるでしょう?親の都合での政略結婚も盛んですわ。その中で好きな気持ちに正直だなんて!レーゼレーラ様、頑張ってくださいませ」
私の言葉に、エリエッタが続けた。
「そうそう。私もリアも皇太子妃になるつもりはこれっぽちもありません。むしろ、さっさと誰かと婚約して私やリアが婚約者にさせられるのを防いでいただきたいのですわ。そのために、おか……リアは皇太子妃になりたいと思っている女性が誰なのか知りたいと思っているのですわね。あとお兄様を好きな女性に関しては……将来義姉になる可能性がある分けですしどのような方か私も興味がありますわ(ろくでもない人間なら徹底的につぶします)」
レーゼレーラ様がぽかーんと口を開いて私とエリエッタの言葉を聞いていた。
「あ、あの……皇太子妃にお二人はレーゼレーラ様を推すということでしょうか……?わ、私も、そのお父様に皇太子殿下に気に入られるように命じられていて……」
「命じられている?それは、殿下のことは好きではないけれど、親があわよくば娘を王妃にしたいと思っているということでしょうか?」
よくあるパターンよね。そんな地位目当ての女性と結婚したら……きっと、殿下はあまり幸せになれないでしょうね。それ以上に……。
生まれてくる子供が親に愛される未来が想像できない。不幸になる子供ができるなんて、そんなの、許せないですっ。
「あなた自身はどうなの?皇太子妃になりたいかなりたくないかではなく、殿下のことを好きなの?そこが大切だわ!」
と、詰め寄るとレーゼレーラ様が小さくため息を吐き出した。
「この子は幼馴染で2歳年上の伯爵家3男がずっと好きなのよ。でも3男ですから爵位を継ぐことはありません。平民に嫁がせるつもりはないと親には反対されています」
「か、彼は、騎士になるために今頑張っています。騎士爵をもらえれば平民ではなくなります」
伯爵令嬢が泣きそうな顔をする。




