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「それで、先輩、あなたはどうなのでしょう?」
レーゼレーラ侯爵令嬢よと教えてくれたふっくらした先輩に尋ねる。
「はぁ?」
「お名前をお伺いしても?私、本当に誰が誰なのか分からなくて……教えてください」
ふっくら先輩のさらに右隣に立っていた女性がカッとなって、手に持っていた扇子の先を私に向けた。
「あなたね!レーゼレーラ様が侯爵家のご令嬢だと今聞いたばかりでしょう?女性ではこの学園で一番上の偉いのよ!」
彼女の言葉に、今まで黙っていた右側の二人も口を開いた。
「まさか、社交界に出たこともない田舎者はそんなことすらご存知ありませんの?いやだわ。王族が一番偉いことすらご存知ないのかもしれませんわね?」
いや、知ってます。
「ああ、それなら皇太子殿下は雲の上の存在で話しかけることすら不敬だということも知らなかったとか?」
ああ、それは……。素直に白状する。
「実は、皇太子殿下だということを知らなくて……うっかり失礼なことを言ってしまいました」
あれは失敗だった。皇太子のお気に入りのリードルがいたから取り立てて問題にされることも無かったんだと思う。
「殿下のことも存じ上げなかったというの?まぁ!いくらなんでも頭が足りなすぎるのではなくて?」
はい。考えが足りなかったのは認めます。
「これだから田舎者は。とにかく、王族が一番偉いと言うことは分かってるのよね?」
こくんと頷く。
「その次に偉いのは、公爵家の者です。現在公爵家は2つ」
それも知ってますよ。
「そして、その次に位が高いのは侯爵家……つまり、レーゼレーラ様となります」
「つまり、それがどういうことなのかお分かり?」
「位の高い者が発言を許すと言うまで黙っているのが暗黙のルールですわっ」
「それなのにさっきから許されもしないのにペラペラと!」
「このちんちくりんが!謝罪しなさいっ!さぁ!」
だんだんとヒートアップして早口でまくし立てる4人。同時に口を開くこともあり、上手く聞き取れません。
「田舎者なので、教えていただきたいのですが、あなた方4人のお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
「はぁ?あんたね、今のこのちんちくりんに言ったこと聞いてなかったの?」
「そうよ、あんたもね、ちょっと美人だからって殿下に話しかけられたからって図に乗らないことね!」
はぁ?
それは違うでしょう!
「あなた、名前を教えてくださいと私が言ったこと、聞こえませんでした?」




