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「だ、だめですよ、エリエッタは殿下には差し上げませんっ」
エリエッタを殿下の魔の手から守ろうと背中に庇う。
「あははは、じゃぁリアちゃんを貰おうかな?」
殿下が私に手を伸ばした。
「あげません」
さらに私の前にリードルが出た。
「くはははは、いやいや、面白い。今後ますます学園生活が楽しみになって来たよ。おっと、講堂についちゃったみたいだね。新入生はあっち、俺のリードルはそっちだから。じゃぁ、またね!エリエッタちゃんにリアちゃん」
殿下が楽しそうに去っていった。
「ちょっとあなた達」
制服のリボンの色が緑の女生徒たちが5人やってきました。
リボンの色で学年が分かるとリードルが言っていた。私たち新一年生は赤。2年生が黄色。最上級生の3年生が緑だったはずだ。
と、いうことは目の前にやって来た5人は最上級生ということだ。
「カイン様に近づくなんて新入生の癖に生意気なのよっ!」
お?
おおお?
「そうよそうよ!ちょっと微笑まれたからって、気に入られたと勘違いしないことね!」
いや、気に入ったといわれたので、勘違いではないと思いますが。
そんなことよりも……!
これは、絶好のリードルの婚約者候補選びの参考資料作りのチャンスじゃないですか?
「あの、お名前教えていただいてもよろしいですか?」
まずは5人のうち中央にいる女性に尋ねてみる。
「はぁ?あなた、この私を知らないというの?失礼よっ!」
「スイマセン、王都に足を運ぶのは初めてのことで……」
知っていて当たり前なんだろうか?
似顔絵が出回っているわけでもないので、会ってもいない人が誰かなんて分かりませんよ……。
紫がかったプラチナブロンドに緑の瞳の上級生がふっと小ばかにしたように笑った。
「田舎者なのね。なら仕方がないかしら?教えて差し上げなさい」
彼女のことばに、右隣に立っていたふっくらした先輩がずいっと一歩前に出た。
「この方は、皇太子婚約者候補筆頭である、レーゼレーラ侯爵令嬢様よ」
「まぁ!皇太子婚約者候補ですか!それは存じませんでした。あの、それでレーゼレーラ様ご自身も婚約を望んでいらっしゃる……つまり、皇太子殿下に好意をお持ちということでよろしいでしょうか?」
ということは、リードルの婚約者候補からは排除する存在ということね。
「カ、カイン様に好意……」
私の言葉に、レーゼレーラ様が頬を染め、ちょっと口ごもる。
おや。これは本当に好きなのねぇ。うんうん。皇太子妃の地位に目がくらんでるだけと言うわけではなさそうです。




