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【本編4】 第一王子への作戦開始



 二ヶ月後──。


 リリアーナとシルヴィアは馬車で宮殿に向かっていた。


「あー、緊張するー」


 馬車の中。上等なデイ・ドレスをまとったシルヴィアが言った。


「ちょっと、オリヴェーロさん。貧乏ゆすりはおやめになって。品がないですわ」


 と言うのはリリアーナ。今日のリリアーナは公爵令嬢らしく、クリノリン・スタイルのドレスをまとっている。


 だがリリアーナの姿は決して華美ではない。


 リリアーナは、宮廷では真面目で根暗と評判。その評判に沿うように落ち着いたデザインのドレスだ。


 そして、リリアーナにいさめられたシルヴィアが応える。


「あぁ、すいません。にしてもさ、あんたボスだよな? 変わり様が凄すぎて信じられないよ」


 それを聞いてリリアーナは微笑む。が、目は笑っていない。


「オリヴェーロさん。ボスって何のことかしら? わたくしはリリアーナ・ディ・グランデストラーダ。公爵家の令嬢ですわよ」


「あ、ああ、そうですよね」


 シルヴィアはリリアーナの気迫にたじろぐも、リリアーナは続ける。


「オリヴェーロさん。海はお好きかしら? 貴女が口を滑らせるなら、いつでも海へ連れて行って差し上げますわよ。海の底へ」


「ひ、ひー。すいませんすいません。あなたは公爵令嬢で、私は一介の貿易商人ですぅぅぅ」


「ええ。分かればいいのよ。分かれば。貴女のこと、信用しているから」


「は、はい。頑張ります……」


 そう言うと、シルヴィアはうつむいてしまう。萎縮してしまったようだ。


 そんなシルヴィアを見かねてリリアーナが口を開いた。


「はぁ……。オリヴェーロさん。緊張しすぎよ。元気出して。馬車の中では普段通りでも許してあげるから」


「あ、ありがとうございます。あ、あのさ、前から気になってたことがあって。聞いてもいいかな?」


「何かしら?」


「何で第一王子をターゲットにしたんだ?

 あんたは悪い奴を標的にするタイプだ。

 だけど、第一王子には悪い評判は聞かないぜ?」


 そこで、リリアーナは真顔になって答える。


「民衆には知られていないけど、第一王子は金の亡者なの。宮廷では有名よ。

 第一王子は、あらゆる業界と癒着して不当に私財を肥やしているの」


「でも、あたしらにとっちゃ雲の上の話だ。

 たとえ癒着で稼いでいたとしても、普通の民衆には関係ない」


「……そうでもないわ。貴女が育った貧民街はなぜなくならないのかしら?

 なぜこんなにも格差は生まれている?」


「生まれた時の身分が違うんだ。仕方ないだろ?」


「そうね。でも格差が広がるのは王族が怠慢だからだわ。

 貧民街では仕事に就けず、パンさえ買えない人達で溢れている」


「ああ、そうだ」


「それは悪政のせいなのよ。

 例えば、王族が公共事業を作って貧しい人達を雇えば格差を少しは抑えられる。

 なのに、王族が事業を発注するのは自分達の息がかかった企業だけ。

 特に第一王子はひどい。

 財政大臣の第一王子は、自分が作った会社に公共事業が発注されるよう手を回し、私利私欲をむさぼっている」


「そうだったのか……。あたしはそこまで知らなかった」


「第一王子は新聞社や警察の上役に袖の下を渡している。だから貴女が知らないのは無理もないわ」


「だからあんたが、貴族でありながら王族に立ち向かおうってのか」


「ええそう。それがわたくしの使命」


「ふ。気合い入ったぜ! いや、入りました。グランデストラーダ様。是非、私の商談にご期待下さい」


「ふふ。期待していますわ。オリヴェーロさん」


 と、そこで馬車が止まった。


 馬車のドアが外から開かれる。ドアを開けたのは執事を務めるオルカだった。


「宮殿に着きました。お嬢様」


「ええ、ありがとうオルカ。さあ、行きますわよオリヴェーロさん」


「はい。グランデストラーダ様!」


 そして、馬車を降りたリリアーナは毅然と宮殿を睨んで発する。


「さあ、毒を以て毒を制しましょう」

【一口メモ】

 グランデストラーダはイタリア語で「偉大なる道」だそうです。


【後書き】

 読んでいただきありがとうございます!

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