表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/22

【本編13】 暗殺者を嵌めよう


 数週間後──。


 リリアーナが私邸の部屋で読書をしていると、コンコンとノックがあった。


「はい」


「お嬢様、大旦那様から手紙が届きました」


「どうぞ」


 リリアーナが部屋の中から応えると、いつものようにオルカが部屋に入って来た。


「お嬢様、こちらです」


 オルカがそう言ってリリアーナに手紙を渡すと、リリアーナはすぐさま手紙を開けた。


 しばらく手紙に目を通すと、リリアーナは口を開く。


「オルカ。良い知らせよ。お父様が口説いていた人物が、こちらの陣営に加わってくれた」


 それを聞いてオルカが応える。


「では予定通り、国王を陥れる作戦の遂行ですか?」


「ええ。その通り。みんなに計画実行を伝えて」


「かしこまりました。ですが、その前に片付けることがあります」


「片付けること?」


「お嬢様、窓の外をご覧下さい」


 オルカがそう言うと、リリアーナは二階の窓から外を見た。


 公爵家の私邸らしく窓からは広大な庭が見える。


「何があるの?」


 リリアーナは庭を見るが、オルカの意図に気づけない。


「庭のオークの木に隠れています。巧妙に隠れていますが、眼鏡をかけた男がいます」


 リリアーナは凝視する。


「あら、本当だわ。スパイかしら? 人の家の庭に入り込むなんて大胆ね」


「ええ。この三日間ずっと屋敷を調べているようです」


「え。なぜ捕まえないの?」


「あちらから仕掛けて来るのを待っているんですよ。ただの不法侵入で捕まえてもすぐに釈放されてしまうので」


「でも暗殺者だったらどうするの?」


「ご安心下さい。あれはきっと暗殺者です。身のこなしから分かります」


「はぁ!? なら余計に危ないじゃない!」


「大丈夫。私にお任せ下さい。既に準備は整えていますから」


 オルカは余裕の笑みで言った。





 夜も更けた頃──。


 グランデストラーダ家の屋敷の明かりは消えて、家の者は皆、眠ったようだ。


 その屋敷の前の通りには、黒衣に身を包んだ三人の男がたたずんでいた。


「──手はずどおり、一階の窓から侵入する。娘の寝室は二階だ。準備はいいな? ヴォルペ、タッソ」


 そう、眼鏡をかけた男が言うと、ヴォルペと呼ばれた髭の男が応える。


「カプラ隊長、ターゲット以外はどうするんです? メイドとか執事とか」


「邪魔になるなら排除だ。ただし銃は使うな。近所に音が響く」


「了解です」


 ヴォルペがそう言うと、タッソと呼ばれた顔に傷のある男が呟いた。


「でへへ。メイドを殺せるなんて、何ていい仕事だぁ〜」


 と、いやらしい笑みで言うとヴォルペが呆れて言う。


「カプラ隊長、何でオレはこんな変態と組まにゃならんのです?」


「人手不足なんだ。仕方ないだろう。目的さえ達成できればいい」


 と、眼鏡のカプラが言うと、タッソが口を開く。


「隊長〜。娘もオレにやらして下さいよ〜」


「いやダメだ。お前に任せると快楽殺人犯の現場になってしまう。

 あくまでこれは金銭目当ての強盗殺人に見せかけなくてはならない」


「むふ〜。残念〜。まあメイドで我慢しますわ〜」


「おい、タッソ。メイドもやり過ぎるなよ」と、ヴォルペ。


「ああ〜。善処するわ〜」


 そう言いつつも、タッソがニヤニヤするのを見てカプラは呟く。


「はぁ……胃が痛い。何でこんな奴が私の部下なんだ? 私はつくづくついてない」


 そうため息をつくとヴォルペがカプラに言う。


「カプラ隊長、同情します。もたもたしてると胃に悪いですから、さっさと終わらせて帰りましょうや」


「ああそうだな。では行くぞ二人とも。油断するなよ」


 カプラがそう言うと、三人はグランデストラーダ家の庭へ足を進めた。





 三人の刺客は真っ暗な庭を突っ切り、一階の窓を割ってグランデストラーダの屋敷に忍び込んだ。


 廊下の灯りは数点だけ点いており、うっすら先が見える程度の明るさだ。


「……静かですね」


 髭のヴォルペが言う。


「好都合だ。すんなり娘の部屋まで行ける」


「ああ〜。メイドちゃ〜ん」


 タッソは我慢できなくてニタニタ笑う。


 カプラはそんなタッソを無視して先導し、一向は二階へ向かう。


 と、階段を上がった時だった──。


「そこにいるのは、誰!?」


 廊下の先から声が聞こえてきた。


 カプラが声の主を見ると、暗くてよく見えないがメイド服を着ていることは見てとれた。


 すると、カプラの背後にいたタッソが走り出す。


「いた! メイドちゃ〜ん」


「あ、待てタッソ! 一人で行くな!」


 カプラが呼びかけるもタッソは止まらない。


「ちっ。ヴォルペ、追うぞ! ああ、胃が痛い……」


「了解! たく、あの変態が!」


 カプラとヴォルペもタッソに続く。


 すると、メイドは叫びながらある部屋に入って行く。


「リリアーナお嬢様! 大変です! 賊でございます! 賊でございます!」


 それを見てカプラが言う。


「しめた! あの部屋は娘の部屋だ! タッソ、その部屋へ入れ!」


「へへ〜い」


 タッソは一目散に走り、メイドの入った部屋に追いついた。


 そして、メイドがドアを閉めようとする寸前にタッソはドアノブを掴んだ。


 タッソは強引にドアを開けて、部屋の中に入る。


 後から来たカプラとヴォルペも続いて中に入った──。


 カプラが部屋の中を見ると、正面のカーテンがまず目に入った。


 カーテンに誰か隠れている。


「ふっ。それで隠れたつもりか。カーテンの下からスカートの裾が見えているぞ。リリアーナ嬢」


 カプラがそう言うと、背後でバタンと音がした。


 カプラは振り返る。すると、ドアが閉められていた。


 ドアを閉めたのはメイドだ。先程、カプラ達が中に入った時、メイドはドアの陰に隠れていたのだ。


 だが、三人はその姿に驚愕する──。


「な、何だ、お前は!?」


 カプラは驚きを隠せない。


 そんな一向にメイドは口を開く。


「ようこそお客さまぁ。本日お世話をさせていただくメイドのゴメルでぇす。どうかゴメリンとお呼び下さいませぇ♡」


 三人の背後にいたのはメイドだった。が、しかし──。


 メイドは、身長2mを超える筋肉隆々の大男だったのだ。

【一口メモ】

 今回は微妙ですね。でも次回はオルカの活躍回になるので引き続き読んで欲しいです。


【後書き】

 読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ