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悪魔憑き  作者: azl
序章
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序章 第五話

*グリモワール

グリモワールには何らかの呪文が記載されている。同じ呪文であっても精霊によって威力が異なり、精霊固有の呪文が記載されることもある。

 ジーノとマリアが出会ってから二年が経ち、フィンチ家は公爵の地位に昇格しその地盤は盤石なものとなっていた。

 ジーノも体付きががっちりし、その肉体もそこそこ逞しくなった。可愛らしかった容姿も多少変わり中性的な印象を受ける。尤もその顔つきはどちらかと言うと未だ可愛らしいものであるため、頼れる男性という印象は抱き難い、人によっては女性と間違えることもあるだろう。

 が、今はそんな事はどうでも良い。今日はジーノの十五歳の誕生日である、精霊契約の儀が昼頃執り行われる運びとなっていた。


「いよいよね」

「だな」


 マリアのベッドに腰掛けたジーノがそう言う。彼ら二人の仲はこの二年の間に非常に深まっていた。陽の光が苦手なマリアを気遣って、ジーノはいつも彼女の部屋にやって来ていた。たまに散歩に出かける事もあるが大抵は部屋の中で過ごしている。


「どんな精霊が付くのかしら。ジーノは良い人だしきっと良い精霊が付いてくれるわよ」

「俺としては兄さんみたいな天使の系譜の精霊だと嬉しいんだけど・・・。まぁ数も少ないし難しいだろうね」

「分からないわよ、諦めるにはまだ早いわ」


 自信無さげなジーノを慰めるマリア。

 そんなジーノ、そういえばと思い出し、彼は今日までお預けになっていたある事について尋ねる。


「ところでマリア、俺が精霊契約をする日に君の精霊について教えてくれるって話だったよね」


 ジーノがマリアにそう尋ねた。

 これを一番初めに聞いたのはマリアが十五歳だと聞いた時だ。その時はジーノが十五歳になって、精霊契約をする事になったら教えてあげると言われていた。そしてあれから二年、いよいよその答えを知る日が来たのだ。


「勿論、ちゃんと覚えてるわ。とは言っても私の精霊、あなたに見せた事があるのよ」

「え?本当?」

「えぇ、本当。ちなみに今も見えてるはずよ」


 クスクスとマリアが笑う。しかしジーノにはさっぱりわからない。


「参った、お手上げだ」

「ふふ、正解はこれよ」


 そう言ってマリアはいつも掛けている赤い片眼鏡を外し、机の上に置く。


「眼鏡?」

「眼鏡ではない!!」

「痛てっ!!」


 覗き込んだジーノの鼻を片眼鏡が蹴り飛ばした。余りの事態に動転するジーノだったが、よ〜く見てみると片眼鏡のフレームの円周上に四肢と頭がくっついているのに気が付いた。


「え?頭!?じゃあこの眼鏡が本当に?」

「そうよ、普段は頭と手足を閉まってもらって片眼鏡として使ってるの。この子は元々仮面の姿をしてたんだけど、私のために姿をモノクルに変えてもらってるのよ。白い方とは違ってよく見えるの」

「そうである!!敬い給え!!」


 そう言って胸を張る虫眼鏡。体のサイズは自由に変えられるらしく、つい先程よりも大分巨大化して五十センチメートル程になっている。ちなみに髪と鼻はない。


「こいつ名前は何ていうの?」

「ジンよ。ほら、挨拶なさい」

「うむ、某の名はジン!!マリア嬢の契約精霊である!!」


 尊大な口調でそう言う精霊、ジン。割とハキハキ喋るタイプなのでその声は聞き取りやすい。

 一度開放されたが最後、普段の静寂っぷりが嘘かのように喋りだす。彼(彼女?)はお喋り好きなのだ。


「ジンか。ちなみに本の色は何色なんだ?」

「黄色だよ。ね、ジン」

「うむ、某は高貴なる光の使い手なり!!」

「へぇ、ちなみにこいつは純粋な精霊で良いんだよな?」

「うむ、某は天使の系譜ではない!!だが賢い精霊である!!」

「本当かぁ?全然そうは見えないけど」

「見えないけど賢いのよぉ、これでも」

「うむ、某は賢いのである」


 そう言って威張るジン。実際知識量は相当なものでそれこそ学者や博士にも匹敵し得るだろうが、残念ながらその精神は見た目相応の子どもっぽいものであり、落ち着いた悠々とした精神というのは手に入らなかったらしい。


「賢い割には落ち着きが無いね」

「そうなのよね。さて、それじゃあジン。ジーノの所に良い精霊が来るようにお祈りしてあげて」

「ふんっ、良い精霊が来るよう祈ってやろう。だが勘違いするな、某だけでなく貴様も祈れ。良い精霊が良い人の所に行くというのは全くの迷信である!!悪い奴の所に良い精霊が行く事もあるし、良い奴の所に悪い精霊が行く事もあるから結構面倒なのである!!」


 ジンがそう言う。祈ってはいたが余計な事も言った、彼はお世辞を言うには少々稚すぎた。そしてジンがジーノに発破?の言葉を掛けた所でマリアの部屋がノックされる。


「ジーノ殿、お時間です」

「分かった。今行く」


 そう答えてジーノがベッドから立ち上がる。


「頑張ってね。良い知らせを待ってるわ」

「はは、ジン曰く運任せみたいだけど頑張るよ。明日の朝一番に教えに来るから、楽しみに待ってて」

「うん、それじゃあね」

「あぁ」


 そんな短い別れの挨拶を交わす二人。最後にサヨナラのキスをした後ジーノは部屋を出ていった。

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