続く。
ヨウスケが、明らかに嫌悪感を示すようになった。昨日は一緒にプレステをした仲だった。僕は昨日自分が何をしてしまったかを考えた。ヨウスケが出してくれたポテチを食べ過ぎてしまったことくらいしか、思い浮かばなかった。
ヨウスケ、お前のこと嫌いらしいよ、と近藤が僕に言った。こんなことをわざわざ言ってくるのは、よほど無神経なやつか、僕のことが嫌いなやつくらいだ。僕はやはり、ヨウスケに嫌われたのだ。近藤は他には何も言わず、ヨウスケの元に向かって行った。ヨウスケはクラスのみんなから好かれていた。
人から嫌われるのは一瞬だ。大して仲のよくない相手だとなおさら。話したこともない相手に嫌われていることもある。僕は木村に、ガム食べる? と聞いた。今は大丈夫らしい。嫌われた後に人に優しくしたくなるのは、猿みたいだと思った。起立、と声がして、仕方なく、しかし、どこか助けられたような気持ちで立ち上がった。
人に嫌われると、自分は人から嫌われる人間なんだと思って、生きていかなくちゃならなくなる。もちろんずっとそう思いながら生きていくわけじゃないけれど、ふとした時に思い出す。そういうことはすでに経験していた。僕は授業を受けながら、そんなことを考えていた。だから、授業をほとんど聞いていなかった。人から嫌われると、馬鹿にもなってしまう。全く、いいことが一つもない。僕が弱い人間だからこんなことになってしまうのだろうか。黒板に書かれた文字が、うまく読めない。
目の前にはグラスが二つある。テーブルクロスにはシミひとつない。白い。僕と彼女はグラスを掴む。
「乾杯」
「お誕生日おめでとう」
「祝ってくれてありがとう。初めてだよ、こういうの」
「当たり前でしょ、彼女なんだから」
掴んでいるグラスが、とても細く感じる。今にも倒してしまいそうなほどに。
「あのさ、俺と一緒にいてくれて、ありがとう」
「どうしたの急に?」
「ちょっと、思い出してね」