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インドア系暇潰し



 アクセサリー類の買い物などをしてから数日。

 ニウの搾乳についても契約期間が終わった為、久しぶりにゆっくりタイムだ。


 ……どうせ搾乳するっていうお仕事あるならついでにーって色々やってたしね。


 殆どはちょっとしたお手伝い依頼なのでお小遣い稼ぎ程度だったが。

 さておき、完全なるフリーデイ。

 寂しいのはクダとイーシャが討伐に出てしまっている事と、カトリコが服屋の仕事に行っているという事だろうか。


 ……まあ、クダとイーシャに関してはちょっと場所が遠いみたいだったから仕方ないか。


 ランクはまだエメラルドランクなものの、スピネルランクまでの依頼を受ける事が可能。

 そしてスピネルランクの魔物討伐がちょっと距離のあるところに出たとかで、二人は行ってしまったのである。


 ……やたらと移動の早いトレントって話だっけ。


 木の魔族は前に露店で出会ったエントのアルボルが居たけれど、木の魔物となるとトレント呼びになるらしい。

 あと耐久度もかなり違うんだとか。


 ……エントは知能がハッキリしてるから防御も強いし、炎への耐性もある……んだよね。


 クダ達が受ける事にしたので、一応違いとかを教えてほしいとリャシーに聞いたらそう答えてくれた。

 つまりトレントは炎耐性が無く、動きも単調という事となる。

 なので火をつければ話が早いようなのだが、



「人里から離れた位置にある上、人間の足では踏み込みにくい位置に居るとの事で……しかも他のトレントに比べると比較的知能が高いのか、他のトレントに指示出しまでするようなんです」



 というわけで、クダとイーシャが出たわけである。

 クダなら物理的に森を焼かずともピンポイントに狐火で燃やす事が出来るし、森での動きも慣れたもの。

 イーシャの方も馬に人間の上半身がついている巨体とは思えない程軽やかに動くし、ケンタウロスにとって森はホームだから寧ろ動きやすいくらいだと言われた。

 要するにイーシャが囮として場を錯乱させつつ、クダが確実に仕留めていく感じらしい。

 どちらも夜の活動可能派だし距離もあるので早めに出よう、と昨日には既に出てしまった。


 ……スムーズに片付けたとしても、戻ってくるのは今日の日暮れ頃かな?


 人間の足だったら片道で数日掛かると言われた距離なので、人間というお荷物を抱えていない二人なら仕事含めた往復は二日で充分だろう。

 イーシャもクダもかなり足が速いし。


 ……私が居たら耐久度とか酔いとかイーシャの背に乗り続ける体力とかの問題で色々終わるからね!


 文字通りのお荷物になってしまうのでお留守番である。

 こちらを気遣って二人が本気を出せなくなっても問題だし、知能がそれなりに高めなトレント相手に人質になってしまったらと考えるとお留守番が最善となった。

 あの二人なら人質には絶対させないだろうが、人質にさせるまいという足手纏いを庇いながら戦うというのは、こう、ハッキリ言ってハンデでしかないわけだし。


 ……私の無力な非戦闘員っぷりは私が一番わかってるから、尚の事ねえ……。


 幾らアクセサリーや服で底上げしようと魔法の力が備わろうと一般人である事に変わりなし。

 戦闘ともゲームの中以外では無縁のまま生きて来たので、単純に攻撃のやり方がわからないとも言う。


 ……攻撃どころか防御もサッパリだよ。


 身を丸くする以外の選択肢が無い辺りお察しである。



「にしてもどうしよっかな」



 ぶらぶらと町中を適当に歩く。

 今日は何だか微妙に皆浮足立ってる雰囲気だが、どっかでバーゲンでもやってるんだろうか。


 ……カトリコお仕事だし、クダは七十五分の一姿で居てくれるけど、この姿の時って基本的に居てくれるだけだしねー……。


 まあクダは元々あんまりどこそこ行きたいは強くないが。


 ……ううん、たった一日なのに寂しいって思う辺り、馴染んでるなあ……。


 夜寝る時にクダのもふもふが無いのはちょっぴり寂しい。

 カトリコは居るけれど吊り下げ式ベッド使ってるし、七十五分の一クダは小さいので潰さないかハラハラしてしまう。

 イーシャは体格や生態からして一緒に寝た事は無いけれど、イーシャが居る事による安心感が物凄かった事を今回知った。


 ……そりゃあれだけ強いイーシャがほぼ寝ずに番をしてくれてるってなれば安心だよね。



「しかし本当にどうしたもんか……」


「何か、お困りですか?」


「うおうっ!?」



 耳元からの声に思わず飛び跳ねて背後を見れば、見慣れた巨体があった。



「あ、ガルドル。お久しぶりです」


「ふふ、そうも日にちは経っていませんよ」



 しゅるりと舌を出したガルドルは、声色だけで笑う。

 髪があるとはいえ顔は殆どが蛇なので、瞼の動きが無いのだ。

 というか瞼が無い。



「シュライエンはその後、絡んできていませんか?」


「ないです。っていうか多分ガルドルの言葉で出てったと思うし、コーダと話した感じからするともう……」



 ……あれ?



「ガルドル、コーダ……えっと雇われ衛兵って言ってたけど、衛兵とかの方からあの人の動向についてとか」


「ええ、聞かれたので去って行った方角なども含め説明しました。お値段に応じて、ですが」


「……ぼったくりました?」


「ぼったくり前提の店なので」



 もし人の顔をしていたら圧のあるにっこりとした笑みを浮かべていたんだろうなあという声色だった。


 ……でもやっぱぼったくりなんだ……。


 本当に何の店してるんだろうこの人。

 いやでも何の店だったとしてもぼったくりしてるなら情報料として金寄越せにはなるか。


 ……仮にバーとかやってたとしても、情報欲しいならそれだけの酒を頼むかそれだけの金を今寄越せ、ってなるよね。


 なにせぼったくりがぼったくるのはお金なのだし。



「つまりあの人、シュライエンが私に絡んでないって事も」


「知ってますが、様式美というものですよ。大丈夫だとわかっていても、首領(ドン)視点で大丈夫だったかどうかをしっかりと確認したい、というのもありますからね」


「成る程。お陰様で無事です」


「それは良かった」



 しゅるり、とまた舌が覗く。



「ところでどうしたものかと呟いていましたが、何かお困りごとでも?」


「ぼったくりはちょっと」


「しませんよ」



 一応お金はあるもののそう断ると、ガルドルは明らかに笑っている声色でそう言った。



「可愛らしい人間、それもお気に入りの首領(ドン)からお金をせしめるなど」


「……そこまで親しくない人外が相手だったらどうしてました?」


「ぼったくる以前に話し掛けもしませんね。相手の困りごとを先に知っていて、解決策の案などがこちらにあるのであれば別ですが」


「わあい正直ぃ……」


「嘘を吐くメリットがありませんので」



 わかりやすくて良い事だけど、明け透けが過ぎる気もする。

 まあ人外の正直っぷりは今更か。



「それで、首領(ドン)のお悩み事は?」


「今日はオフなんでどうしよっかなーって」


「他の奴隷の方は? 胸元に居る小さな管狐を抜きにした他の奴隷についてですよ」



 ちょっぴりお茶目な感じの言い方に、少し笑う。



「クダとイーシャはトレント討伐、カトリコは服屋でのお仕事です。継続で頼まれてた依頼も契約期間が終了したので暇だなーって歩いてたんです」



 ニウにはめちゃくちゃ楽できるから契約期間を伸ばしたいと言われたが、ギルドの方で取る手数料も馬鹿にならないようなので断った。

 またキツくなったら依頼してくれれば応える、とも言っておいたが。


 ……友人として普通に手伝う感覚でやっても良いけど、そうなると友達の搾乳をしに毎日ニウの家に行くって事になるんだよね……。


 お仕事でやる分にはまだしもお友達となるとハードルが爆上げになるの何なんだろう。

 多分やる内容が掃除とかの家事手伝いじゃなくて搾乳だからだと思う。

 お友達の牧場に居る牛の搾乳であればまだしも、牛獣人のお友達の搾乳手伝い、なわけだし。

 エロ漫画でやってろよと言いたくなる業務内容だ。

 実際はニウが牛寄りという事もあって牛の搾乳に限りなく近い為、エロさはほぼ無いけれど。



「つまり、首領(ドン)は暇潰しをお求めという事ですね?」


「そうなります」


「ではどちらをお望みでしょう」


「どちら、っていうのは?」



 ガルドルは右手を開く。



「インドアか」



 言いつつ、左手も開かれた。



「アウトドアか」


「……暇潰し方法ですか?」


「その通り。依頼以外の暇潰し方法をお求めと判断しましたので、とりあえずインドアかアウトドアかを。

 インドアならば良さげなカフェや読書、アウトドアならオススメ観光スポットや店を紹介しますよ」


「これチップ取れる情報では……」


「はは、まさか」



 蛇の表情がわからないので変化しているようには見えないが、ガルドルは笑っているとわかる声色で言う。



「お金を取るつもりならチップどころじゃなくぼったくりますよ」


「わあい私超綱渡り」


「ええ、可愛らしい人間でなければぼったくられているところですから気をつけましょうね。まあ人外であれば態度や気配からその辺りを察する事も多いのですが」


「わあい……」



 人間で良かったやら良くないやら。


 ……んー、でもどうしよ。


 どちらを選ぼうかちょっぴり悩むが、やはりインドアをチョイスだろうか。

 元々生活必需品以外を買い物する事はあまり無いし、休日は出歩くよりもごろごろする方を選びがちだった私だ。


 ……というかストーカーさん達が私以上に私好みの新作とかをリサーチして購入して今までのと入れ替えておいてくれるから、買う必要が無かったというか……。


 時々発売前に仕込まれていたりしたのは、服屋関係のストーカーさんでも居たのかもしれない。

 こちらはストーカーさんについて聞かないようにしていたので、誰がどういう職種かなんてサッパリだけれど。

 さておき、インドアを提示したガルドルの右手を取る。



「インドアな方で。時間潰しやこっちの常識や王道を知るのに良さそうだし、オススメの本とか教えてもらえると助かります」


「了解しました」



 ではいきましょう、と蛇らしくするりとした動きで手を絡められる。

 そのまま下半身をくねらせながら進み始めたガルドルに手を引かれて慌てて足を動かした。


 ……恋人繋ぎだよねえ、これ。


 しかし相手は人外で、蛇だ。

 腕を持つ蛇からすれば指を絡ませるような繋ぎ方が通常という可能性もあるので、あまり深く考えないでおこう。

 というかそもそも自分はそこまで人との距離を持たない方だった事もあり、女友達と出歩く時は恋人繋ぎが多かったので、あんまり忌避感も無い。


 ……温度低いのもあってか嫌な感じ無いし。


 しっとりしていてすべすべしていてひんやりしているという、何かこう、シルクの布手袋に包まれたひんやりした物って感じ。

 いや普通にガルドルの手なのだけれど、触り心地とひんやり感がシルクっぽい。

 しかし指先にある鱗の感触からすると革製品みたいな気もしてくる。


 ……うーん、蛇人(へびんちゅ)に対して革製品っぽいはアウトかなあ。


 人間に対して骸骨っぽいと思うようなものだろうか。

 いや、それはそこまで酷くも無いような。

 ううむ難しい。



「ああ、ここですよ」



 少し這ったり歩いたりして到着したのは、結構広い本屋だった。

 中に入れば、それなりに幅を確保した上で本棚が詰められた空間が広がっている。



「流石に全種族対応ではありませんが、人間サイズに対応した本が売っている店です」


「……ちなみに全種族対応だと?」


「巨人サイズの本や小人サイズの本が取り扱われてますね。小人サイズであればこういう店でも取り扱えるので、冊数こそ少ないですが本棚の下などに置いてありますよ。ほら」



 指で示された下の方を見れば、確かにあった。


 ……あーそっか、人間サイズの本棚にすると腰より上の高さじゃないと取れないし見づらいっていうのがあるから……。


 その為か、人間サイズの本が置かれているよりも下の段にはお人形遊びに使うような小さな本がミッチリと詰まっていた。

 日本の本屋同様に下の部分を本の在庫入れにも使っているようだが、外と中の間に発生するスペースを使って小人用のをセットしているという感じ。



「ちなみに人間サイズの在庫を取り出す際にその部分を引き出しますが、小人用の本棚は固定されるよう魔法が掛かっている為、開けても小人サイズの本が周囲に散らばる、という事はありません」


「成る程……!」



 丁度考えていた疑問を綺麗に拭い去ってもらえた。

 在庫を出す度にヤバい地震が起きた並みの被害が出るのではと思ったが、流石は魔法のある世界。

 キッチリと対策がされていて安心である。


 ……人間サイズから見たら小人用の本が散らばるくらい何でもないけど、それって巨人から見た人間サイズの本が散らばった図と変わりないって事だもんねえ……。


 本棚が倒れてきたら本に埋もれて圧死しかねないという懸念事項。

 地震の時、棚の近くに居るのは危険だというアレだ。

 人間サイズで見たら超危険なので、小人サイズからしたら小人サイズの本は適性サイズな為、さぞ危険だろう。


 ……人間だって広辞苑サイズが一冊でも直撃したら大ダメージだよ。



「さて、それでは暇潰しに良さそうな本を探しましょうか。どういった本をお望みですか? 専門書とか?」


「声色から察するに私が読まないジャンルってわかった上で言ってません?」


「言ってます」



 知ってた。



「まあ専門書を無しにして、アウトドア派でも無いなら……風景画もあんまりでしょうか? インドアでも念写や絵として見るのは好きという方もいらっしゃいますが」


「あー、私そういうのってあんまり……」



 ポストカードなどを見ても写真っぽいとか風景だなあとか、そのくらいしか思えないのだ。

 実際に行った場所などであればこういった事があったなあと思い出を蘇らせることが出来るけれども、そうじゃない場合は背景以上の印象を抱けない。

 そして漫画とかではキャラと会話に集中してしまうので、背景とかはサッパリだしほぼ気にしない。

 バトル漫画でキャラの立ち位置がこうでこう動いたからこの動きなのか! とかもサッパリだ。

 普通に会話に夢中で次のコマ次のコマとなってしまうのでそんなの考えて読んだ事など無い。



「好みを言うなら、小説とかですかね。こっちの文化についての常識が足りてないので難しいのは理解出来る気がしませんが、面白いヤツなら夢中になって時間も潰せそうですし」



 面白かったら何度も読みたくなるので尚の事良い。



「ふむ……文化の勉強を兼ねているのであれば、恋愛小説など如何でしょう。

 様々な人の生活を垣間見れますし、なにより種族によって常識が違う為告白法も変わってくる、という描写も多くありますよ」


「おお、面白そう!」


「恋愛小説はこちらの棚ですね」



 本屋の店員さんかと思う程把握しているガルドルに示された棚を見る。

 気になったタイトルの一冊を棚から引き抜いてみれば、ライトノベルとは違うしっかりした小説のようだった。

 まあ日本独特のキャラクター感満載な挿絵が載っていても驚くので、シルエットで登場人物を表しているのが小説っぽくて良いと思う。

 何かこう、お上品な感じだ。雰囲気が。


 ……あ、内容も面白そう。


 軽く中身を確認してみたら、エルフの貴族が人間に恋をする物語のようだった。

 うっかり後半までチラ見してしまったが、人間との年齢差で色々大変で紆余曲折悲喜こもごも、という内容っぽい。

 これは買いとして、次に気になったタイトルを手に取る。

 人外があまり居ない村で呪いによって顔だけがカエルになってしまった青年が、村人達に追い出されて路頭に迷っていると、通りすがりの種族ごた混ぜ冒険者パーティに助けられるという話らしい。

 村の外では顔だけ獣な獣人も居るから顔だけカエルなくらい全然普通、と受け入れられ、実際町へ行ったらまったく気にされもしなくてそのまま素敵な奥さん見つけてカエル顔のままハッピーになってく感じっぽい。

 ラスト周辺では寧ろ村の外の広い世界に気付かせてくれたからとカエル顔を誇るくらいにまでなっていた。

 これ面白そうだから買おう。



「こちらもオススメですよ。青年に助けられた少女が青年の押しかけパートナーになる話です。殆どは冒険譚なのですが、時々淡い恋路が混ざってくるところも人気です」


「……冒険者として知っておいて損は無い情報もあるよって事だったりします?」


「おや、首領(ドン)は随分と僕の傾向を理解していますね。その通りです」


「あはは、それなりに顔合わせて会話してればガルドルが色々親切だってのはわかりますって。じゃあそれも買いでー……」



 受け取ろうとしたら何故か軽く身をくねらせて避けられた上にこちらが持っていた二冊を持っていかれた。



「重いでしょうから、僕が持ちますよ」


「あ、では、お願いしよう、かな……?」


「ええ」


「ありがとうございます……?」



 断るのも何だし、実際本はぶ厚めだし、店内にはカゴなどが無いので困惑を隠しきれないながらもお礼を言っておく。

 ありがたいのは事実なのだ。



「さて、他には?」


「え、あ、いや、うーん……三冊あるし、分厚いからそのくらいですかね。まずはそれらを読んでからまた買おうかなって」


「わかりました。では会計をしてくるのでお待ちください」


「はー……いやいやいや私の本ですよね!?」


「可愛らしい人間に貢げるチャンスを潰すと?」


「驚いたみたいな声色ですけどわざとですよねソレ!? 尻尾の先でこっちの足掴んで身動き取れないようにしてますもんね!? 驚くどころかガルドル自身は普通に動いて既にお会計してますもんね!?」



 というか店員も会計すんな。

 それが仕事なんだろうけども、店員さんからすれば品物が売れればそれで良いんだろうけれども!



「あの! 私が支払いますんで! ちょっと!?」


「残念ながら既にお会計は済んでしまいましたよ。あ、こちら商品です。今から僕に支払うというのはお断りしますね」


「ぐぬう……」



 人外達がわりと意思強めというのはわかっている。

 優しい親戚の兄ちゃんみたいなところがあるものの、人間を可愛がるという点に関してだけは揺らがないのだ。

 そこ揺らがないってのはどうよと思うが、犬好きが犬を可愛がるチャンスを逃さないというのもわかるっちゃわかるので何も言えない。


 ……アレだよね、推しに貢げるチャンスがあるなら貢ぐ感じ……。


 本当、気持ちがわかるだけに断れない。

 ストーカーさんが時々カフェで相席してきて軽く会話して楽しんで気付いたら先に会計済ませてる、という事も何度あったか。



「…………って、アレ?」



 受け取った本は、三冊では無かった。

 六冊あった。



「……何か、多くないです?」


「僕のオススメの本ですので、良ければ」



 布教用は実質タダみたいなオタク論だろうか。

 いやでもそういう空気は感じないので、単純にオススメというだけなんだろう。



首領(ドン)が好みそうなテイストを選んでありますよ」



 そう言われたので確認してみたが、本は三冊とも裏社会系のラブロマンスのようだった。

 どの辺が私の好みそうなテイストだと断ずるに至ったんだろう。



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