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本当に色々開けっ広げだなあ



 依頼をクリアしたので町へと戻り、ギルドの受け付けへと顔を出す。

 クダは既に戦闘終わったから、と付与される能力等の都合で既に着替え済みだ。

 町に適した能力、町の外に適した能力とあるらしい。



「あの、依頼達成したんですけど……」


「了解しました。ではこちらへ移動してください」



 葉っぱの手で示される方へと移動する。

 こっちは何だか人目につきにくい位置だ。



「受け渡しは納品内容によっては他の方の迷惑になる場合があるのでこちらとなっています。魔物の丸々一体分の体のように解体が必要だったり、血生臭かったりする系はまた別室へ移動していただきます」


「ああ、衛生的にも公的な場でやるのはアレですもんね」


「いえ、人間種族に具合を悪くされる方が一定数居まして。冒険者ならまだ多少大丈夫なのですが、依頼しに来た方が具合を悪くしたり、そんな死体が置かれた場所に自分が頼んだ品を置くなと叫んだり、まあ面倒な事が起きたらしく」


「オウ」


「元々ゴブリンの死体が山積みになっても移動が面倒だし邪魔臭いし、というのも事実だったので、じゃあ解体用の場所で出してもらう事にした方が面倒は少なくて済むか、という感じで今のシステムになったそうです。衛生的には魔法でどうにかなりますが、手間は少ない方が良いかと」


「凄いハッキリ言いますね……」


「隠して何か良い事があるわけでもありませんので」



 まあそうなのだろうが、中々に情報がオープンだ。

 人外からすればただの事実でしかなく、いちいち気にするような事でも無いから、というのもあるんだろうが。



「さて依頼の品ですが、オパールランク依頼の薬草採取と花採取とスライム討伐ですね。討伐に関してはギルドカードの提示をお願いします」


「あ、はい」



 ギルドカードを渡せば、あっという間に作業が終わったらしくすぐに返される。



「はい、確認しました。目標数を達成しているので討伐依頼は完了したと判断します。では次に、薬草と花ですが」


「薬草はこれで、花はこっちです」


「…………はい、確かに。数は目標数より多いので、余った分はこちらで買い取りと致しますか? 魔物の討伐数に関してはボーナスがつく事はありませんし、こちらでの買取も依頼とは別枠なので正規値段かつ安価となりますが」


「じゃあ買い取りでお願いします」


「了解しました。では三つの依頼を達成したという事で四百ゴールドの報酬となります」


「あ、あと」



 アイテム袋から、クダが持っていた瓶に詰めたスライムの残骸である粘液と魔石を取り出す。

 瓶はどうやらこういう採取用のヤツらしかった。

 どうも魔物によっては血すらも結構な値段だったり、採取でどこそこの水を汲んで来たり、というのがあるらしく一応必需品枠ではあるとのこと。

 必要なアイテムについてもその内聞かなくては。


 ……今は流石に情報量でパンクしそうだから無理だけど。



「魔石はともかくスライムの残骸、っていうか粘液って買い取り」


「していますが、丁度ペリドットランクでの採取依頼でスライム粘液を求めている物があります。それを受注した事にして納品とした方が依頼達成となるのでギルドとして助かります」



 あ、依頼書のデータはこれですね。

 サンリはそう言って魔道具によるものなのだろうホログラムを表示した。


 ……依頼人は……娼館って書いてあるんだけど。



「依頼人も品を手に入れる事が出来、キミコは依頼達成として実績と報酬が手に入ります。正直依頼の報酬の方が売却金額より良いお値段なのでそちらを推奨します。ギルド手持ちの品として提供する事も可能ですが、依頼の取り消しなどをすると依頼人もギルドも両方手間なので」


「あ、はい、じゃあそれでお願いしたいんですけど……娼館って?」


「金で性欲を発散する事が可能な施設です。植物系は花粉が多くなる時期などに利用する事があります」


「いえそこではなく」



 というか利用とか言って良いのかと思わなくも無いが、花粉と言われても人間にはサッパリなのでまあ良いか。



「施設についてじゃなく、どうして粘液を欲しがってるのかなって」


「ここは人間系の娼館であり、そこまで高級系ではありません。人間系は性行為の際、潤滑剤を多量に使用した方が受粉側の負担が少なく済みます」



 受粉側て。

 いやわかるけれども。



「上質な潤滑剤は上級スライムによるお肌に優しい粘液等なのですが、当然質に合わせて値段が変化します。なので安価にスライム粘液を大量に仕入れ、自分のところである程度調整した方が安く済むと考えたのでしょうね」


「それって大丈夫なんです? この粘液、普通に地面にでろんとしてるのを拾ったわけですけど……」



 クダが一応魔法でひょいっと動かして瓶詰めしてくれたとはいえ、地面と接触した時があるのは事実だ。

 衛生的には良からぬのでは。


 ……しかも元は魔物だしさあ。


 上級スライムがどうのこうのと言っていた以上問題無い部類なんだろうが、ちょっと気になる。



「不要物は魔法で除去出来るので問題ありません。調整に関しても安い娼館ならよくやっている事です。主に粘度の調整程度ですし、現状問題らしい問題は起きていないので大丈夫かと。潤滑剤を使用するような人間用娼館を使用した事が無いので使用感は知りませんが」


「そこまで言わんでも大丈夫です」



 人外だからかあけっぴろげが過ぎる。

 いやまあ、人間から見た花粉がエロ系かわからないように、植物系から見た人間エロが理解不能というのもあるのかもしれないけれど。





 結果的に四つの依頼を終える事となり、ペリドットランクの採取依頼分の百五十ゴールドもプラスでゲットすることが出来た。

 他にも売却出来た魔石などが売れたのはありがたい事だと思いつつ、依頼書が貼られた掲示板の前で待っていたクダのところへと戻る。



「お待たせ、クダ」


「ううん、依頼書見てたから待ってないよ。でも撫でてくれると嬉しいかな!」


「りょーかい」



 差し出された頭をわしゃわしゃ撫でれば、尻尾が元気にぶんぶん振られた。

 クダは髪の毛も結構他の毛と同じような質感なので、撫でてて違和感も無い。

 撫でやすくて良い事だ。



「ところで、何か良い依頼でもあったの? 流石にまだレベル高い依頼は出来ないし、既に日が暮れそうだから今すぐに次の依頼っていうのは無理だと思うよ」


「あはは、流石に今すぐとは考えて無いって。明日とかの次回に受けるのに良い依頼は無いかなーって見てたのと、やっぱりランクによって報酬の値段が全然違うなーって」


「え、そんなに違うの?」


「見ればわかるよ」



 確認すれば、確かに違った。

 EのトルマリンランクからDのエメラルドランクまではコツコツやる必要があると言っていたが、エメラルドランクからは明確に値段が上がっている。

 具体的には倍以上。



「……この値段差は一体……」


「トルマリンランクまではお小遣い稼ぎのテンションで出来る依頼で、エメラルドランクからは本格的な依頼が入ってくるからかな。それなりの怪我を負う可能性が出て来るからお値段高めなの」


「あー」



 まあ確かにお小遣い稼ぎとガチ冒険じゃ値段は変わって来るか。

 採取だって探すのが大変だったりちょっと危ない立地だったりする場合もあるだろうから、お値段が上がるのはわかる。



「って、うわルビーランクからまた値段跳ねあがってる!」



 エメラルドからスピネルまでも結構値段変化があったが、スピネルからルビーの差も中々にヤバい。

 Bランクであるルビーランクからは桁が変わってるし。



「ルビーランクからは命の危険も出て来るから、かな。採取の依頼で討伐目的じゃなくても危険な魔物が居る土地に行かなくちゃいけなかったりとかだから」


「ルビーランクからサファイアランクが中々厳しいっていうのもわかる気がする……」



 ここも値段がまた相当に変化してきている。

 サファイヤランクの採取依頼、二千ゴールドて。

 採取一つの依頼でこのお値段と考えると物凄い。

 そりゃあこれならルビーランクの依頼二つやった方がまだマシ、となるだろう。


 ……上級ともなると、ランク一つ上の依頼ってだけで命の危険度かなり変化するだろうしなあ……。



「んでトップのダイヤモンドランクだけどさ、サファイアランクの倍以上のお値段だよね」


「危険度やレア度が高いからね。でも一発で稼げる額が多いだけで命の危険度はすっごく高いから、正直言って真面目に働く方が安定感はあるんだけど。言っちゃうとルビーランクからは高額に見えて割に合わない」


「ああ……冒険者感あるわ……」



 ロマンとお宝を追い求める感じのアレ。

 大当たりなら一攫千金チャンスだが、駄目だったら命が終わるヤツ。


 ……私は博打好きってわけでもないしルーエから貰った資金もあるし、程々に出来る範囲の依頼をこなしていく感じがベスト、かな。


 見捨てられたら破滅一択なクダも居るので、出来るだけ堅実に行きたい所存。





 明日の具合にもよるので、明日以降の依頼は明日以降見ようという事でギルドを出て、ギルドと提携しているという宿屋へと到着して無事チェックインを済ませる事が出来た。

 外から見てもわかる程の広さがある宿な上に色々設備も整って破格のお値段、ではあるがギルドと提携しているからこその破格のお値段なのだろう。


 ……リャシー曰く、依頼の手数料としてギルドがかなりの額を貰ってる、んだっけ。


 そのお陰で利用出来るなら良い事だろう、多分。

 それに広さに関しても、巨人系含めた全種族に対応しているから必要な広さというだけのようだし。

 広すぎても困るので、人間用の部屋を用意して貰えるのはありがたい。



「それで、飯はどうする?」



 そう言って笑うのは、この宿屋の主人であるホンゴ。

 魔物のゴブリンとは違い、人間と共生している魔族のホブゴブリンらしい。


 ……ホブゴブリンってゴブリンの親玉なイメージあったけど、こっちじゃ違うんだ。


 ホンゴは緑の肌に茶髪という、ゴブリンらしいようなそうでもないような見た目。

 まあ見分けがつきやすいのは良い事だ。



「食事っていうのは夕食ですよね」


「時間的にはそうなる。人間用メニューならコレだから、食いたい料理あるなら言いな。値段はギルドと提携してるだけあって安いが、持ち込みじゃねえ分の代金はしっかり取るから財布としっかり相談しろよ?」



 ふうむ。



「クダは何食べたい?」


「主様が食べたい物複数あって決まらないならクダの分も合わせて頼んでシェアするけど、そうじゃないなら適当で良いよ。あ、でもネズミ揚げは食べたいかも」


「あんの!?」


「あいよ、ネズミ揚げな。うちは一皿七匹で五十ゴールド」


「あんの!?」


「狐系妖怪の好物としちゃあ定番だし、ギルドと提携して全種族対応謳ってる以上はな。ただ飯代は部屋代とは別になってっから胃袋以上には頼むなよ」



 ……とんでもねえな……。


 とんでもないが、全種族対応ならそういうものなのだろう。

 狐の好物が油揚げというのも、元々はネズミ揚げだと聞いたことがある気がするし。

 シェアは無理としても一先ずネズミ揚げは確定のようなのでその分の代金は先払いし、己はメニューを開く。



「んん、私は……あ」



 メニューを見てもどれが良いのかわからずいると、ふとザグテがくれたあけびを思い出した。



「そういえばあけびがあるんだけど、これを持ち込みで料理してもらう事って」


「出来るぜ。値段は材料の量と食う量で変動すっけど」



 変動というのは、五つあるあけびを用意して料理された六つのあけびを食べようとすればその分他の材料や調味料代が必要、という事だろう。

 しかし五つのあけびを用意して、料理された三つのあけびを食べる場合は二つが余る。

 その二つは宿屋側に提供される事となるが、あけび分として材料費や調味料代は賄われるので金銭的に浮く。


 ……だっけ?


 ちまちま聞いた話でそういうシステムだったはず。

 まあ五つのあけびといっても一つは中身を食べたので皮だけだが。



「あけびは四つと、皮だけのが一つ。これ提供する場合は」


「肉詰めとか作れるぜ。中身はデザートとして出せる。あとはお前、キミコだったな。キミコが食える数次第ってとこだ」


「成る程」



 肉詰めとなると結構ボリューミーだろうから、二つあれば充分そうだ。



「じゃあ、肉詰め二つで。あとは提供します」


「おう、そんならあけび料理の方は無料な。あ、一応聞いとくが動物の肉で良いよな? 魔物の肉だと無料とか無理なレベルの代金になるぜ」


「魔力がどうとか聞いたけど流石にわかんないんで、動物の肉で…………聞いときたいんですけど何の肉です?」


「人間用だからニワトリ」


「よしセーフ! それでお願いします!」


「ハハ、全種族対応なんだからちゃんと人間用にも対応してるっつの」



 思わずガッツポーズをすると、カラカラ笑ったホンゴにガシガシと頭を撫でられた。

 人外は人間の頭を撫でる癖があるんだろうかと一瞬思うが、人間だって犬猫の頭を撫でがちなのであれと同じテンションだろう。



「あけびの肉詰めとネズミ揚げ、んでもってデザートにあけびの身で良いな? 今から作っから席で待ってろ。ディーネ!」


「……ん」



 ホンゴの呼びかけに、他のお客の空いた皿を回収していた女性がこちらへ来た。

 見た目は人間に見える美女だ。



「コイツは俺の嫁さんで、ナリは人間だが種族はウンディーネだ」


「えーっと……水の?」


「おう。水の精霊で、他の精霊とはテレパシーみたいな会話が殆どだったみたいで未だに口数が少ない。まあ意志疎通が出来ねえわけじゃねえから気にすんな。ディーネ、コイツら席に通してやれ」


「……ん」



 頷いたディーネは回収した皿をカウンターの向こうに居るホンゴに渡し、ふらりと歩きだす。

 ついて行っていいものか様子を窺うとすぐにこちらの姿を確認するよう振り向いたので、ついてこいという事らしい。



「……ここ……」



 通された席に座れば、ディーネは壁近くに置いてある空のコップに指先から出した水を入れた。



「……人間にはわからない……かもだけど…………ウンディーネの出した水は、魔力が含まれてるから…………」


「ありがとうございます」


「……ん」



 すっきりさせるレモン水みたいなものかと解釈してお礼を言うと、ディーネは表情をほころばせて頷いた。



「……料理、出来たら……運ぶから、ね。……代金、貰ってるから、食べ終わったらそのまま……で。回収……するから……」


「わかりました」



 頷くと、ディーネは壁近くの階段を指差す。



「……宿泊、部屋は……二階だから……。シャワー、と……小さい浴槽、あるけど……毛詰まりと水の出しっぱなしは、メ、ね」


「はい」


「ん、良い子……」



 可愛い言い方する人だなと思いつつ頷いたら、よしよしと頭を撫でられた。

 犬猫は撫でられる事に慣れたような仕草をする事があるが、この頻度で撫でられていたら己もそのレベルで慣れそうだ。



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