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お説教じゃーい



「落ち着いたんならお座りなさい」


「はい……」


「うむ……」



 雨でぬかるみまくっているけれど、二人はそこに座り込んだ。

 膝部分を開脚してるタイプの正座なので良しとする。

 ここで胡坐を掻くようなら見本として私まで正座しないといけないところだった。


 ……うん、雨も弱まってきたね。


 雷も遠のいたらしく、ガルドルの拘束も緩まってきた。

 巻き付きは痛くないようしてくれていたけれど、縋るような手が物凄い力を込められていたのだ。

 一応肉体部分にそんな力を籠めたらボキッと逝くのを理解するだけの理性はあったようで、被害に遭ったのは服だけだが。

 良かった伸びないように魔法が付与されてる服で。



「いやあ、二人に声が届いたようで良かったよ」



 落ち着いたガルドルに離れてもらい、私は二人の前に立つ。



「危うくガチで服用しないといけないとこだったから」


「というか喜美子! 何故あんな事をしたんですか!?」


「お前ら二人が勝手に話進めてチャンバラ始めたからだよ」



 にっこり笑って言ってやれば太勇は小さく縮こまった。

 うんうん、素直でよろしい。

 ペット躾ける時はペットがやらかした事を忘れない内にきちんと叱らないといけないし、怒っているか怒っていないかを教える為にもそこはキッチリしなくてはならない。

 彼らはペットじゃ無いけれど、怒ってますよというのは多少オーバーにでも伝えなくてはだ。

 実際はそこまで怒って無いが、それはそれとして勝手に誤解して話を進めた事については多少ちょっぴりそれなりに不愉快だったし。

 お前らは惚れた子が他の人に顔についたゴミ取ってもらってるのを遠くから見てキスしてると誤解するタイプのヤツか?



「……そも、服用したところで我らが止まらぬ可能性を考えなかったのか。あまりにも危険過ぎる手ではないか」


「少しずつハードル上げてっても反応しない可能性が高いならいきなりの大音量レベルが良いかなって」



 目覚ましアラームだって段々とボリューム上がる系は慣れて聞き逃してしまう事もある。

 それなら多少心臓がビックリする事は仕方がないと割り切って、最初から大音量のをセットした方が良い。

 大音量アラームは良い夢だろうが悪い夢だろうが一発パンチで吹っ飛ばす並みの威力があるから。



「それにまあ、二人ならアレで止まると思ってたしね」



 そう、止まるだろうなという根拠はある。



「まずザラームはどれだけ憎いって言っても愛しさを抱くくらいには人間が好きだから、自分の憎しみ優先して目の前で死のうとする人間を放置はしないだろうって。そこで自分の憎しみ優先するならとっくに人間滅びてるだろうし」


「む…………」


「んで太勇はちょいちょい私に告白染みた事を言ってて、それなりに重いのもわかってる。んで私を守ろうとして剣を抜いたのもわかってる。

 なのに私が死のうとしてるのを無視して戦い続行するなら恋だ何だは戯言だって事になるよね。戦い優先しちゃってる時点で論外。でもあの熱量からしてそれは無いなって思ったからああ言った」


「んんん…………」


「双方思っていた通りに私を、人間を愛してくれていたようで良かったよ」



 愛を利用すると言うと言い方が悪くなるが、その部分を利用させてもらった。

 人間というのは生き汚いので、生きる為ならその辺の手段は選ばない。



「さてお二人さんや。まずは何を真面目にガチなバトルをしとるんですかねってところですよ。言葉喋れるんならまず話し合え。人間全部が出来るとは言わないけど、一応私だって話し合いくらい出来らぃ」


「……貴様が裏切ったからではないか」


「俺はこの魔王が喜美子にヤバそうな気を向けてたので……」


「頭があって頭蓋骨粉砕してるわけでも無く脳みそ空っぽなわけじゃないなら情報精査。つまらん誤解で全部台無しにする気ですか。それぞれでっかいモンを背負ってる立場なんだからちゃんとやって」


「うむ……」


「はい……」



 ちゃんと返事をしたので良しとしよう。

 私の場合は背負う分だけしか背負ってないし、どっちかというと背負われてる側だけど、国レベルのものを背負ってる側が感情に呑まれて大暴走はアウトだと思うのだ。

 神話でも誤解や嘘からとんでもない悲劇的展開になったりしてるでしょうが。学べ。



「ではザラーム、私が裏切ったと認識しましたが何故でしょう」


「……そこの勇者と仲が良さそうに話していた」


「あの時太勇が話してた相手シュライエンだったけどね」


「まあ確かに」


「ぐっ」



 シュライエンがボソッと肯定したのも聞こえたのか、それとも記憶を思い返せばそうだったと気付いたのか、ザラームは呻き声を上げた。



「まあ一応、仲良いのは否定しないよ。故郷同じだし、同じタイミングでこっち連れてこられたし、その後向こうから声掛けられてお茶したりとかしたし」


「やはり貴様は我を裏切っていたのか……!?」


「雨に打たれて体冷えてんでしょうがクールダウンして。そもそも私に声掛けたのザラームからだかんね」


「む」


「あと何度か話したりもしたけど、私はザラーム相手に勇者の話を振った覚えは無い。したかもしれないけどあんまり個人的な事は言ってないでしょ。個人情報だし」


「……それはそうだが、それで我の事を勇者に告げていない事には……」


「一般的な魔王像しか知らないみたいだったから太勇にも魔王については言って無いよ。どっちかというと私は聞き役の方が多かったし」



 ねえ、と太勇を見る。



「太勇、私と話しててザラームの名前出てきた?」


「いいえ」


「魔王について、私は何か話したっけ」


「いいえ。ルーエが魔王については最後に教えると言ったというのは俺から伝えましたが、だからといって先に魔王についての真実を伝えようとはしませんでした」


「ルーエなりの考えがあるなら私が崩すわけにもいかないし、個人的なアレコレを私が言って良いのかわかんなかったからね」



 で、と今度はザラームを見る。



「人外は感覚的に嘘か本当かわかるみたいだからお察しだと思うけど、私も太勇も嘘は吐いてないわけよ。私はザラームについてを密告したりしてません」


「……うむ、そのようだ、な……」


「勝手に誤解して勝手に燃え上がって勝手に殺意漲らせたザラームはどう思いますか」


「…………愛しい人間を信じ切れず、そのような疑いを持ってしまった事を恥に思う」


「うん、反省してるならよろしい」



 過ちを認めて今後無いようにしてくれるならそれで良い。

 これで同じ事を繰り返すようならお前脳みその容量無いんかとなるが、ちゃんと改善されるならこれは過ちではなく必要な経験だったとなるのだから。

 誰だったかは忘れたけれど、偉人も確かそう言っていた。



「んで太勇も。守ろうとしてくれたのはありがたいけど即攻撃に移るのはどうかと思う。戦闘始めるのはともかくとして、説得するのを心がけて。首を狙うな」


「う……すみません。魔物の討伐が多かったので、このサイズの相手となるとつい討伐対象に……」


「なら仕方ないね。そこはルーエの責任って事にしちゃおう」


「え、私かい?」


「討伐だけじゃなくて色んな種族との模擬戦用意するとかあったと思うの」


「…………ふむ、それもそうだね」



 納得が早くてありがたい。



「ま、とりあえず纏まったなら良し。クールダウンしてくれたわけだしね。そもそも私は密告とかしないってのを覚えてくれれば良いよ。もし言うなら堂々と言う」


「それはそれでどうなのだ……」


「魔王としてどうなんだという行動を取ってしまったザラームさんは何かご意見が?」


「……無い。すまなかった。だから敬語をやめてくれ」


「怒ってますよの意味で敬語っぽくなってただけだけど、了解」



 ちゃんと冷静になってきているらしく、空が晴れてきたのでもう大丈夫だろう。



「勇者と魔王としての今後についてはお互いで話し合ってね。あと公園も修繕。可哀相な有り様になってるんだからほら見てよあの辺。完全に土が捲れてる」


「うわ……冷静になってから見ると酷い事に……」


「…………あれでも抑えたぞ」


「抑えてたとしても出た被害は出た被害だからね」


「……まあ、大して労はせぬから良いが……」


「よろしい」



 むすっとしているザラームにかむかむと手招き。

 不思議そうに頭部を近付けたザラームの頭を撫でる。

 うむ、ふんわりしているようでしっかりした髪だ。

 いつもならもうちょいふんわり感があるんだろうけど、今は濡れてるからふんわり感皆無だなあ。



「なっ、ずるい!」


「んじゃこっちおいで」



 手招くまでも無く一瞬で太勇が手の届く範囲に来たのでその短く切られた髪の感触を楽しむようにして撫でる。

 ちょっとちくちくするが芝生撫でてるみたいで良いね。



「よし、このくらいで。喧嘩ちゃんと止めれて良い子に出来ました。後は」



 後は話し合えと言おうとした瞬間、新しい声がした。



「…………これは、何事……?」



 そこに居たのは、マリクだった。

 いつも通りに風通しが良さそうな格好をしていて、魔法で防いだのか雨宿りでもしていたのか、その体は濡れていない。



「……一体何が……」


「いや、ちょっとこの二人がヤンチャして」



 困惑したように周囲を見渡しながらやってきたマリクにそう説明して二人を見ると、太勇の方が驚きに目を見開いてマリクを見ていた。



「な…………っ!」



 思わずと言ったように、太勇が立ち上がる。



「何でこんなところに居るんだ国王!?」


「えっ」



 この場面で国王と呼ばれて当てはまるのはマリクだけ。

 思わずマリクを見れば、いつも通りに凪いだ顔。

 その通りだからこの顔なのか何言ってんだコイツという意味でこの顔なのかわからん。



「…………ルーエ?」


「うん、そちらが我が国の若き国王だよ」



 ルーエは当然のように肯定する。



「一応キミコも最初に顔を合わしているはずだけれどね?」


「あんな混乱真っ最中に顔覚えられるわけないじゃん……」



 っていうか今ここ、勇者と魔王と国王が揃ってる事になるわけで。

 何これ国交会議の現場か何か?



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