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地味にしっかり仏教系

あけましておめでとうございます。



 翌朝、それも朝食もまだという早朝に屋敷へと来客が来た。

 否、来客というのは違うかもしれない。

 玄関扉の前に立っていたのは、申し訳なさそうな顔をした青のアソウギだったからだ。



「……昨日は赤の私が本当にすまなかった……」


「あ、うん、まあ別に何か問題ってわけじゃないから良いけど……えっと、中入る?」


「失礼しても良いかな……?」


「どうぞどうぞ。仮契約とはいえ奴隷だし」


「……本当にご迷惑を……」



 仮契約とはいえ奴隷だしこの屋敷をホームくらいに思って良いよという意味のつもりだったが、青のアソウギは申し訳なさそうに真ん中の右腕で頭を抱えていた。

 実際そこまで反省される程の迷惑は被ってないと思うんだけど。


 ……というか個人的には無傷なアソウギが気になる……。


 回復が早いのか怪我をしなかったのか早めに切り上げた結果なのかどれだろう。

 原種、全体までは窺えなかったが相当にサイズ大きそうだったのに。


 ……あ、でもアソウギも本来はゆじゅん? とかいう大きさなんだっけ。


 最後の時も戦隊物のラストで出て来る合体巨大メカみたいな大きさだったが、本来はキロレベルの大きさらしいのでまあそれなりに戦えはしたんだろう。多分。

 そういえば最近の戦隊物はサッパリ見てないけれど、最近もまだラストは巨大メカでドッカンコースやってるんだろうか。

 光の戦士の方は男も宇宙人も人魚もプリティでキュアキュアな戦士になったと噂で聞いたくらいで、他はサッパリ情報が無い。

 まあ今は異世界なので、こっちには根本的に情報が無いんだけど。

 全然調べてないのと根本的に存在しないっていうのは大きく違うけど、知らない側からすればあんま変わんないんだなあと実感する。



「昨日は本当にすまなかった。黄色の私が素早く朝の仕込みを終えて時間が出来たから謝罪に来たんだ」



 クダが朝食を準備している音がキッチンから聞こえて来るリビングで、青のアソウギはソファに座ってそう頭を下げた。

 対応を客用にすれば良いのか身内用にすれば良いのかわからなかったので応接室ではなくリビングに通したのだが、



「もしかして、仮奴隷契約解除したい感じかな?」


「いやそれは全然! 全く!」



 物凄い勢いで否定された。

 他のアソウギに比べて青のアソウギとは顔を合わせた回数は一番少ないけれど、ここまで感情的だっただろうか。

 そう首を傾げると、青のアソウギは照れ臭そうに前の左手を口元に持ってきてコホンと誤魔化すように咳ばらいをする。



「……すまない、何と言えば良いのかわからないというか、私はあまり他人との交流が無くてね。休みの日にその辺を散歩している事が多いものだから、効率的な会話がいまいち苦手なんだ。仕事はやりたくないから黄色の私に任せているし」


「そこ、やりたくないってハッキリ言うんだ……」


「やりたくないのは事実だからね」



 わあい良い笑顔。



「まあ話くらい全然聞くよ。まだ朝食まで時間あるし」


「お前様、あまり頭を動かすなよ」


「はーい」



 髪を整えてくれているカトリコに注意されたので頷かずに声だけで返事をしておく。

 客が居る前で髪を整えるのはどうなんだという感じだし、私としては別にそのままでも良いのだけど、私の髪型を整えるのが好きなカトリコからするとそこは譲れないらしい。

 あとアソウギに関しては客じゃなくて奴隷仲間という部分があるから、というのもあるだろう。



「それで、何から話す?」


「そうだね……まず、私達は戦闘種族というところから話させてくれ」


「どうぞ」


「私たちはとにかく強い相手と戦いたくなってしまう。だから昨日はつい暴走してしまったし、巻き込んでしまった事を申し訳ないとは思うけれど、無理やりにでもついて行った事や原種と戦えた事に後悔はない」


「まあそういう種族なら仕方ないよね」



 オタクだってコミケで想定予算よりもお金を使ってしまったとして、後悔する事はない。

 あるのは買い逃しと買い忘れの後悔くらいだ。


 ……だってこの本にはこれだけの価値があるって思ってお金出して買ってるわけだしね。


 コミケに行ったら作者へのお布施気分で金を撒く気分で私は買う。

 それによって作者がもっとそういった作品を出してくれるかもしれないし、なにより紙媒体として手元に残せるのはめちゃくちゃ喜ばしい事なのだ。

 一応数年経過すればウェブ公開してくれたりもするけれど、アレは公開してるサイトが万が一閉鎖にでもなったら失われるので安心出来ない。

 紙媒体なら五百年経過しても残る可能性あるし。


 ……うん、仕方ない!


 オタクは最早そういう生き物なので、阿修羅だって戦うのはもう本能だろう。

 神作品を見たら感謝といいねを捧げるオタクと同じ。

 そこに理性は無く、本能で動いている。

 まあそこを同一視してるってなると、アソウギよりも仏教徒の方に怒られそうだが。

 私の場合は信仰先神道だし、神道は基本他の方を推してても許されるし、日本なんて外国の神も日本の神もそうじゃないのも隣人扱いなのでその辺がとってもラフ。

 でもそのくらいが良いと思う。


 ……宗教戦争だ何だって言うけど、そういうところで偏見や争いが生まれるんだもんねえ。


 障碍者がどうのこうのとか、性別のアレコレがどうのと言うけれど、そんなもんは神道と同じように全部ごっちゃで良いだろうに。

 クリスマス祝ってチキン食って年明けに初詣して甘酒飲んで死んだらお寺で供養してもらって寿司でも頼め。

 それが日本だ。


 ……うーん、改めて冷静になると闇鍋になってないのが不思議な程のごちゃまぜ感……。


 とはいえ多神教ならそんなもんだろう。

 カレーにちくわ入れようがこんにゃく入れようがキノコ入れようが美味しいならそれで良いし、栄養価上がるなら尚良いし、それをご飯で食べるもナンで食べるもそのまま食べるも自由なのでそれが良いと思う。

 人様に迷惑掛けず、地獄に落ちるような事をしなければ、好きに生きれば良いだろう。

 ニューハーフだって美人になってたりするなら目の保養が増えて良いだろうしさ。

 結局通りすがりならガワしか見てないんだし、綺麗になって本人が満足ならそれで全然良いと思う。誰か殺して盗んだ金で整形したわけじゃないならそれでよろしい。

 神話だって性転換くらい普通にしてらあ。

 何なら獣とのアレソレとか近親とのアレソレとかも大渋滞起こしてるので、ヤベェ一線越えてなくて他人様に迷惑掛からなければ好きにやってて良いと思う。


 ……うん、通りすがりの人を襲う露出狂はアウトだけど。


 興奮度合いに差があるのかもしれないけれど、痴漢も露出狂もそういうプレイが可能なお店に行ってどうぞ。

 金を払って合法でやれ。

 酒飲みに行った時に勝手に同席してきた変な人を追い払ってくれたストーカーさんが一緒に飲んでくれた時にそんな愚痴を言っていたのを思い出す。

 何か派手な美女だったからそういう系のお仕事してる方だったんだろうか。

 名前も知らないから職に関してはマジ知らないけど。



「……随分とあっさり、種族なら仕方ないと言ってくれるんだね」


「事実じゃない?」



 こっちの思考は大分脱線していたが、そういうものだ。

 ケンタウロスに二足歩行しろって言っても種族的に無理みたいなものだろう。

 人間に六足歩行しろって言われても無理みたいなものだ。

 根本的に構造からして不可能コース。



「…………まあ、そうだね。実際こういった……うん、言葉を選ばないで言うと私達は戦闘ジャンキーなんだよ。種族的に」


「めっちゃ言葉選ばない言い方してきた……」


「ふふ、事実だから」



 綺麗に笑うなあこの戦闘ジャンキー。



「そんなわけで、私達としては首領(ドン)の奴隷になった事についてを後悔はしていない。寧ろそのお陰で、時間制限有りとはいえ楽しく戦えて嬉しかった。私や黄色の私も、やっぱり戦闘種族だからね」


「それは何より」


「ただ、かなりごり押しというか強引にそんな事をさせてしまったから、謝罪はしなければと思って。私達は首領(ドン)の奴隷になった事を悪用する気なんて無いけれど、やり口が完全に悪徳な手続きだったし」



 アレやっぱり悪徳なアレコレ系の手続きに近い展開だったのか。

 通りでストーカーさん達にちょいちょい言われてた忠告が脳裏を過るわけだ。



「んー……まあ、クダもノリノリだったし他も止めなかったから良いと思うよ。数多いし今更今更」


「止められる状況じゃねえってのもあったろうけどな」


「あの二対の目に直視されて平然としてるマスター様と、立ち直りが早いクダが異常なのだと思います……」



 机を拭いたりコップを出したりと朝食の準備を手伝い始めたシュライエンとリャシーにボソッと零された。

 否定出来ないけど過ぎた事は気にしない。

 過去に食べた物を思い返したところで今空いてるお腹が膨れたりはしないからね。



「とにかく私としては、昨日色々と赤の私がごり押してしまった事についての謝罪と、奴隷契約の続行についてを話したかったんだ。今後も原種と定期的に戦おうと約束したから、奴隷契約はそのままで居てほしくて……そうなると暴挙についての謝罪もちゃんとした方が良いだろう?」


「色々あったのと衝撃が強かったのもあって何が暴挙だったのかって感じだけどねえ」



 お陰でその直後通りすがりのデカイ魔族にさらっと声掛けれたし、その人がまさかの四天王だったと発覚しても全然動揺しなかったが。

 驚く程にメンタルがフラットだった。

 今思うとあの出会いは相当驚く出来事だったと思うのだけど、色々あり過ぎて麻痺してたからしゃーなし。



「んーと……じゃあ、今後はどうする感じ?」


「どうするって……登録の事かい? 一応黄色の私が店に事情を話して昼のピーク時前まではシフトに空きを入れてもらったから、ギルドへ行って登録するくらいの時間はあるよ」


「いやそれもそうなんだけど、こっちに住むかどうか。籍だけ奴隷登録して今まで通りの生活コースか、しっかり奴隷としてこっち住むか」



 ふむ、と青のアソウギは後ろと真ん中の両腕を組み、前の右手を顎に当てて真顔でシンキングタイム。



「…………私は他の私に比べて正直者でね。黄色の私はあまり本音を言いたがらないし、赤の私も同様だ。遠慮だったり、恥ずかしいからという理由だったりと言わない理由については違いがあるが、まあ言わない事実に変わりはない。対して私は結構本音で話す。それもあってこうして謝罪の場には私が来たわけだしね」


「あ、そういう理由が」



 確かにその方が良いかもしれない。

 謝罪に保護者が来た感もあるけれど、当人だと感情的になり過ぎる場合もあるので、という事もあろう。臨機応変で良いと思う。

 というかキッチンから良い香りしてきててお腹空いた。



「よし出来た」



 どうやらヘアセットが終わったらしく、満足気なカトリコは後ろにセットしてあった止まり木から降りて机の方へ戻しに行った。

 どんどん良い香りが強くなってきてお腹鳴りそう。



「そういうわけで私は本音で言わせてもらうが、叶うならここに住みたい。何なら他の奴隷達がしているように首領(ドン)とスキンシップもしたい」


「どうぞ」



 想定よりもあっさりした返答だったのか、青のアソウギはきょとりと目を丸くした。



「本当に良いのかい? 食事量はそこまででも無いけれど、場所は取るよ?」


「イーシャとガルドル見てから言ってどうぞ」



 アソウギよりも彼らの方がデカイ。



「スキンシップも慣れてるし、こっちが壊れるような事しなければ良いよ。逆方向に関節バキッとしたり強度試そうとして強く握ったりしなければ全然」


「流石にソレは知ってるからしないよ。戦うべき相手じゃない相手にそんな事をしたらこっちも傷付いちゃうしね。戦う時は全力だからそんな事を気にする余裕はないけれど、そうじゃない時にやらかしてしまうのは力加減が出来ていない未熟者の証拠だから」


「あれ? 傷つくって傷つけちゃった事実に心が傷付くんじゃなくて自分が未熟者って事に矜持が傷付く感じ?」


「だって人間はすぐ死ぬから、五十年か五百年か早まるくらいはまあ、よくあるかなって」


「おおう……人外計算……」



 寿命が長い人外によくある計算ですね。

 事実だから何も言えないけどさ。

 シュライエンは何かを言いたそうにしているが、エルジュにステイステイと撫で宥められて唸り始めた。

 どっちに文句言えば良いのかわからなそうな唸り方だ。

 やっぱりシュライエンはまだスキンシップが苦手らしい。



「んーじゃまあ、朝食終えたらそのままギルドへ行って登録コースで良いかな?」


「ああ、それでお願い出来るかな。元々荷物はアイテム袋に詰めて野宿してるからすぐこっちへ移れるよ」


「移れる以前の問題! えっ、野宿!?」


「町の外にある川の周辺が静かで良いよ」


「しかも町中野宿じゃなくて町外野宿!? それ野生生活って言うんじゃないの!?」


「瞑想に丁度良いし、滝があるからいつでも修業が出来る」


「成る程仏教徒!」



 途端しっくりしてしまった。

 仏教徒のイメージが修行僧過ぎて一瞬にして違和感が遠くのお空へサヨナラバイバイ。

 相手が阿修羅だと思うと尚の事その光景が想像出来てしまうし。

 プリンセスが森で動物達と戯れる級にしっくりくる光景が浮かぶ。



「では、食事中に私がここで待っていると焦らせてしまうかもしれないから、玄関辺りで待機していようか? 庭があるようだったから、そこで座禅をして時間を潰しても良いけれど」


「一気に仏教らしさ出してくるじゃん……」


「っていうか一緒に食べたら良いと思うなー、クダは」



 出来上がった料理をテーブルに用意し終わった様子のクダがそう告げた。



「今までの様子からするとパンオッケーだし酒も飲むし他にも色々食べてるみたいだから精進料理じゃなくても良いかなーって事で、普通の朝食だけどね。この人数だと一人分増えるのも変わらないからもう作っちゃった」



 テーブルの上を確認すれば、確かに一人分多く用意されている。

 いやまあそれ以前にそれぞれ食べる量結構多いので、人数把握が難しい量の差が出来上がってるけど。

 量が少ないのは私とエルジュとリャシーとシュライエンくらいだろうか。

 アソウギ用のはこのくらい食えるだろと言わんばかりに結構しっかりめに盛られてる。



「……青のアソウギ、どうする? 私としてはもう仲間だし一緒に食べても全然良いと思うんだけど……あ、もう朝ごはん食べてたりした?」


「いや、食事はまだだし、首領(ドン)が……いや、殿様が良いのなら同席させてもらうよ。黄色の私なら遠慮するだろうし赤の私なら拒否するだろうが、私は正直者だからね」



 にこ、と青のアソウギが笑う。



「あと修羅道の食べ物はとても美味しいけど最後の一口だけ何故か泥味になるから、人間道……この世界の食事に勝る物は無くってさ。こちらの食事は美味しいから、食べる機会があるなら是非ともご相伴に預かろう」



 最後泥味になるって何ソレ修羅道こっわ。



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