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最初から最後まで蚊帳の外だった気分だよ



 突然の爆弾発言に思わず暴言を吐きそうになってしまった。

 頭を振って水を飲んで意識リセット。

 よおしツッコミ気分でうっかり暴言吐いたりしないぞおう!



「で、なんて?」


「だからお前が主側になって一発奴隷契約結ぼうぜっつった。黄色の俺も青の俺も拒絶してねえし良いだろ」


「せめて意味を教えて!?」



 あとそんなあっさり納得しないでもうちょっと拒絶しようよ黄色のアソウギも青のアソウギも!



「別に理由なんざ良いだろ。俺が問題無けりゃお前が望む時に役立ってやるよ。バトルとか」


「私別に好戦的じゃ無いし」



 皆には討伐依頼を受けてもらう事が多いけれど、それは本人達が好んで選んでるものであって私が命じてるわけじゃない。

 一体私はどんなヤツだと思われてるんだ。

 私はポケットに入るモンスターに指示を出して目が合ったら即バトル! なんて事はしないのに。

 やってもゲームの中だけじゃい。



「……金寄越せとか言ってるわけじゃねえぞ?」


「わかってるよソレは! 単純に理由が不明なんだってば!」


「体感時間」



 赤のアソウギはけろっとそう言った。

 思ったよりあっさり。



「体感時間の為に、奴隷契約?」


「別に奴隷契約じゃなくても人間の体感時間がわかれば丁度良いってだけだ。が、法力で諸々やんのもだるいから奴隷契約にしちまえば楽だろって思ってよ。お前奴隷使いだし」


「だるいって……」


「これでも法力使いとしては優れてっから、攻撃以外も雨乞いやら戒めやらは使えるぜ。他人と繋がるタイプの法力があんまり得意じゃねえだけで」


「得意じゃないんだ」


「正義が誰かと繋がってちゃおしまいだろ」


「だったら奴隷契約もアウトだし、正義ってそもそも繋がる事が正義なような」



 キング牧師も非暴力主義を掲げて正義を為そうとしていた。

 正義とはつまり手を取り合う事で、お互いの首を絞めようとするのは違うと思う。

 ってかさっき赤のアソウギ自身がそんなことを言ってたじゃんね。



「俺は手を取り合うタイプじゃなくて、正義の為に戦う存在だ。まあ戦うの方に傾きがちだが」


「駄目じゃん」



 戦い優先したらそれはもう正義じゃないのでは。



「うっせ、大衆に迷惑は掛けねえよ。とにかくそういうわけで戦う事に夢中になると時間を忘れちまうから危ねえんだっつの。急にパン屋休んだのにそっから百年くらい無断欠勤はアウトだろ。正義としてもアウト」


「百年の無断欠勤はもうクビが確定してると思うなー……」



 っていうかパン屋が現役で営業してるかも謎だ。

 全種族対応だったから、百年くらい全然平気な人外店主さんの可能性高いけど。

 仮に百年以上の寿命じゃ無くとも、次の代が出ればパン屋は存続するだろう。

 でもだからって百年の無断欠勤は確実にアウトコース。



「だから奴隷契約で繋がりを結んで、人間の体感時間を参考に時間を測る。そうすりゃわかりやすいからな!」


「自慢げに言われても……他の種族とかじゃ駄目なの?」


「まず阿修羅族にとっての一昼夜はこっちの世界の百年だ。ちなみに俺らは千年生きる」


「待ってそれ阿修羅的な考え方で千年!? 人間基準で千年!?」


「人間基準の千年なんざ生まれて十日でサヨナラだろうが。俺ら基準で千年だよ」


「うっわ時間の概念がエルフよりも雑……」


「雑じゃねえ豊富と言え! お前らがせかせか生き急ぎ過ぎてるだけだっつの!」



 否定は出来ないけどそれが人間なので。

 限られた時間内に頑張れるかどうかが人間です。

 まあ大半は何もせずだらっと生きてだらっと死んで、頑張ってる人の嘆きの理由になるんだろうけど。

 いや本当申し訳ない。



「ちなみにそこの原種も無駄だ。五百年くらいなら人間基準のひと月感覚だからな」


「まあそうなるだろうな」


「何かわかりあってるし」



 拳を交わすまでもなくわかりあってる。

 じゃあもうバトらなくて良いんじゃと思うけれど、戦闘種族からしたらここからが本番なんだろう。

 確かに勉強して内容把握するのと試験や仕事でそれを活かすのは違うよね、とも思うのでわからんではない。


 ……戦いってそんな考え方で良いのかな……?


 わからんではないとか言ったけど駄目だわからん。



「まあ、別に良いのではないですか?」



 戻ってきたガルドルが、エルジュの魔法によってカゴ内へと帰還する。

 濡れている部分は移動範囲外だったらしく、カゴ内がべっちょべちょになる事は無かった。



「人間的に考えるなら、色々と都合が良いから名前だけそこの店に籍を入れさせて欲しい、みたいなものです。こちらとしても格が上がるので問題は無いかと」


「ええー……そういうもん?」


「わりと」



 確かに奴隷使いに奴隷として仕えるのは、感覚的には会社に就職みたいなものだと言うけども。


 ……んー、でもガルドルが奴隷になる時に、奴隷使いとしてじゃなく革命家として考えたらって言われたんだよね。


 革命家として考えると、名前だけ革命軍に入れといてくれと言われた状態。

 あまり詳しいわけではないが、革命のアレコレを思い出すと、活動に参加は出来ずとも応援したり支援したり名前だけ貸したりする人も居た。

 今回の場合は名前を入れる理由が何かおかしいけれど、それで何か問題があるわけでも無い。



「……じゃあ、まあ、詳しい事は後日詰めるとして、それで良いかあ……」


「よっしゃあ!」


「でも奴隷契約ってギルドで登録か、書面での仮契約とか」


「書面ならちゃちゃっと書いたのがここにあるよー!」


「クダ準備良いね!?」



 視線集まった時は流石に怯えてたのに、回復が早い。



「よし、んじゃこれで」



 法力とやらによるものなのかサッパリだが、赤のアソウギがカゴの外から指を動かしただけで書面にアソウギの名前が書かれた。

 何ソレ。



「はい主様」


「はぁーい……」



 そういえばストーカーさんには時々わけのわからない書面にほいほいサインしないようにと注意されたりしたなあ、と思いつつサイン。

 大丈夫、展開はわけわからないけれど書面自体は怪しくない。



「ではいざ早速修羅道へと誘おうではないか!」


「クハ、動くのは久しぶりだが、問題は無いぞ」


「いや待って待ってその前に私達を陸まで届けてね!?」


「あ、そうだったな」



 今気付いたように頷いた赤のアソウギが、ずずずと音を立てて大きくなった。

 十メートルとかそういう次元じゃない大きさになっている。

 何コレ空飛んでる飛行機から飛行場見た時の目線?



「おらよ。パンはそっちで食っとけ」



 エコーの掛かった声でそう言いながら、赤のアソウギは指先で摘まんだカゴを巨人街の入口にある門のところへ置いた。

 そしてそのまま、姿を消す。

 文字通りに姿がマジに消えた。

 まるでテレポートするみたいに消えたが、同時に門の位置からでも見えるくらいに海が一瞬荒れていたので、多分原種と共に修羅道とやらに行ったのだろう。

 海底に沈んでいた山のような大きさであり万里の長城もかくやという長さの原種が一瞬で消えれば、そりゃあ波くらい立つのは当然。

 寧ろ津波にならなかった事をありがたがった方が良いレベル。


 ……っていうか結局修羅道って何だろう……。


 六道系の何かなのはわかるけどそれ以上がわからん。



「…………ええと、お帰りなさい……?」


「ただいまでーす」



 見張りをしているルゴナが全身の目を困惑したようにパチクリさせつつそう告げたので、とりあえず応える。

 尚、こっちもわりと困惑しているので何か問われても何も真っ当に応えられる気がしない。



「神話的な存在は、自身の伝承に関わる分野になると突然ああいう理解の範疇を超えた思考や解釈、行動を起こすからな……」



 ぼそりと呟かれたカトリコの言葉が、今回の件の本質を突いているような気がした。



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