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黄金の都市 オルデリカ

1.


国の中心に位置する大森林を超え、数時間経つと例の学院がある都市が見えてきた。

「うひょー!あれすげぇな!おいクラフ!お前も見ろって!」

ラーマの隣で腕を組んで寝ていたクラフがめんどくさそうに起きる。

「―こりゃあすげぇな。」

眠気が覚めるほどの絶景だった。

四方を壁で囲まれてはいるものの、その壁を優に越す建物が数多に広がっていた。

否、この二人にはそのちっぽけな壁さえも新鮮だったのである。

「―ちょっと二人とも、そんなジロジロと見てたら田舎者っぽいでしょ。もうちょっと冷静を装いなさい。」

そうミニリカが、景色に熱狂してる二人に水を指すと、

「なんだよ、めんどくせぇ女だな。それだから彼氏の一人や二人出来ねぇんだよ。」

ラーマが言い返す。

「あ、あのねぇ!あんな田舎町で良い男見つけろってのが無理な話なのよ!」

そうミニリカが憤慨する。

しかし、少しばかり傷付いたであろうクラフが追い討ちをかける。

「ああごめんな、冴えない男でよ。」

「―そういう意味で言ったわけじゃ...」

ミニリカがクラフを一瞥し、そっぽを向く。

「まあそんなことはさておき、夢の魔法学校に入学だぜ。どんな毎日が待っているのかなぁ、グヘヘヘ。」

「ちょっとあんた、気持ち悪いからここで降りてくれる?」

ミニリカが引き気味でラーマに言う。

急に何かを思い出したようにラーマが話を変える。

「てかよぉ。クラフってどうやって魔法の呪い解いたんだ?てか誰が呪いを掛けてたんだ?」

呪いのことも知らなかったミニリカが、そういえば、と再び関心を向ける。

「ああ.....」

沈黙が続く。

自分の親に掛けられていたなんて言ったら複雑になると予測できるからだ。

それがあの神人の息子と知られては今の関係を維持できるかも不安だ。

そのための沈黙だった。

「で?誰が掛けていたの?私達幼馴染みでしょ。言えないことも打ち明けてきたじゃない。」

そう感情論よりの関係論よりの何かで無理やり扉を開けようとしてくるミニリカに何処かが痛む。

「―言えないんだ。分かってくれ―」

そう思っていると―

「まあ良いじゃん。いくら俺たちが親友以上の関係でも言えない事はあるんだし、それを言わなきゃ幼馴染みじゃないってのもおかしいだろ。逆にそういうのを感じ取って、そっとしておくのも幼馴染みの役目って言うもんだろ。」

普段は腑抜けた事ばかり言っているラーマが珍しく良いことを言う。

「―そうね...でもいつか言ってくれたら嬉しいかも。」

そう無理に作った笑顔で、ミニリカが話を切る。

「―次は終点、東オルデリカ駅―」

「次みたいね。」

そうミニリカが言うと、三人が降りる準備を始める。


2.


駅を出ると、白い石灰で塗り固められた外壁の家が規則正しく、まるで計画都市のようにして建ち並ぶのが目に入る。

「―こりゃあ、またすんげぇな。」

「これもオルデリカのまた一つの魅力ね。」

とミニリカが空を指して言う。

「な、なんだありゃあ!?」

クラフが驚いて見た先には、さっきまでは無かったはずの数千の気球で空中に浮かび上がる城塞都市があった。

「なんかこう、男の心をくすぐるよな!」

ラーマが目を見開いて言うとクラフが、うんうん、と頷く。

それを見たミニリカが、はぁ、と溜め息をついて言う。

「はい、みんな。続きはまた今度。こんなの学校行く時とかに、なんなら何処からでも見えるんだから良いでしょ。」

クラフがエミリカに尋ねる。

「―で、これからどうすんだ?」

「もう夕方だし、今日は予めうちの父さんが予約しておいたホテルに泊まって、その次の日から学校の寮にってことになるかしら。入学式のある明日からじゃないと寮が開かないって言うのよ。」

そう事情を説明すると、

「―マジかー、ホテルに泊まるのなんて久しぶりだな~。俺の卵が出来た時以来かな~。」

「―あんたマジでキモいわよ。」

ラーマの言葉にミニリカが真剣に言う。

「まあともかく早く行こうぜ。飯食える時間も決まってるっぽいからな。」

そうクラフが先頭を歩くと、二人が付いていく。


「いやぁ、ごちそうさま。美味しゅうございました。」

「あんた、言葉遣いも洗練されてキモくなってるわね。」

そう、いつものようにミニリカとラーマが会話をしていると、そうそう、とミニリカが話を変える。

「クラフとラーマは男二人で一部屋。私は女だから一部屋で良いよね?」

クラフが承認しようとすると、ラーマが渋く言い返す

「そりゃぁあきまへんなぁお嬢ちゃん。わしゃあ男やから女やからぁ言うて区別するんはいかんと思うてるんや。ここは平等にジャンケンで勝ったやつが一部屋丸々使って良いようにせんとなぁ。」

「―あんたねぇ!」

ミニリカが反論しようとするが、言い返せないのか渋々承諾する。

「私絶対に負けないから。結果は変わらないわよ。」

そういうミニリカにラーマが

「それを俗に言う『フラグ』って言うんですよ、お嬢ちゃんっ。」

そう言うとミニリカが声を大にして言う

「じゃーんけーん―!」


結果はラーマの一人勝ち。

クラフとミニリカが同じ部屋になった。

「なんか、すまねぇな。冴えない俺で。」

そう言うと、

「まだあの事引きずってんの!?終わったじゃない!」

そうミニリカが少しだが怒る。

「―ていうか、お前って俺のことどう思ってる?」

―今思っていることがとっさに口に出てしまった。

言い直そうとしていると、


「―好きだよ。」


そう、ミニリカが言った。


「―え?」


驚いていると、コホンと咳をしてミニリカが補足する。

「-幼馴染みとして、よ-」

ああ、そうか、と思っていると、

「あんた、今日ちょっと変よね。まあラーマもだけど。今からお風呂入るし、なんかの拍子で裸とか見られたら嫌だからもう寝て。」

そうミニリカが言う。

「おう、そうだな。ちょうど眠くなったし、そうさせてもらうわ。」

そう言うと、ベッドに仰向けになり目を閉じる。


-また明日が始まる-




第二部の幕開けです。一日開けさせてもらいましたが今日からちゃんと書いていきます。

感想よろしくお願いします。

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