共鳴する二人
1.
「―!」
布団が汗でベットリ濡れていた。
強迫観念に終われてるわけでもない。
悪夢にうなされていたわけでもない。
汗で汚れた布団を洗うところからクラフの朝は始まった。
夏真っ盛りで太陽がギラギラと光線を放つ。
そんな中洗うために注いできたバケツの水で顔を洗い、朝の支度を済ませた。
昨日と同じようにアグレスの町に向かおうと靴を履いていると、聞き慣れた嗄れた声が聞こえた。
「もう行くのか?」
「おうよ。」
キーフ爺にクラフが返事をする。
「-」
短い間のあとでクラフは出掛けた。
2.
「今日は直で宮殿だな。」
そういいながら例の石畳を歩きながら向かっていると、あの魔女を遠くに見つけた。
クラフが走って向かうと。どうやら買い物をしているらしい。
しかし店の人も例の怖気により一向に出てこないらしい。
それを見据えたクラフが機転を利かせて言う。
「金さえくれれば買ってやってもいいけど。」
魔女がニッコリと笑う。
「そうなん!?お姉さん嬉しいわぁ。」
そう言ってお金を渡した。
「―はい。」
そう言って紙袋とお釣りを同時に渡す。
「はい、これはお姉さんからのお礼。」
と言われ渡されたのはリンゴだった。
クラフは貰ったあとで入れるものがないことに気づき、結局手で持った。
「-急で悪いんだけど今日例の呪いを掛けたやつ探せねぇか?」
クラフが本題に入る。
「ーええよ。」
あっさりだった。
その瞬間、魔女の手からほうきが現れる。
それを軽く叩くと顎で、乗って、とジェスチャーを送る。
二人がホウキにまたがると魔女が唱える。
「エ・ウィーラ。」
すると突如風がしたから吹き上がり二人を押し上げた。
「―すげぇ。風魔法も使えんのか?」
そういうと、
「魔祖が一つの属性しか使えんとでも思うた?」
―そうだった。彼女は魔法使いの最高峰にいる人間なのだ。
そう思い出したクラフが辺り一面に広がる畑に目を向ける。
「どう?きれいやろ?まあ毎日こんな景色見よったら飽きるけど。」
そう魔女が言うとクラフが、うん、と頷く。
その空から見える1つ1つの景色がクラフにとっては新鮮だった。
しかし、そんな感動も終わりを告げる。
「んー?ここら辺な気がするけどなぁ。」
1時間ほど飛び回っていた二人が向かう場所はクラフにとっては見慣れた景色だった。
「―嘘だ。」
クラフは察した。人間のカンジョーのキビをも捉えることの出来る人間がここまで来て分からない筈がなかった。
「ここまでにしよう。」
「えぇ?ここまで来てなんでなん?」
あれほど犯人探しに血眼になっていたクラフが今や完全に萎縮しきっているのをどうも腑に落ちない顔つきで見る魔女。
「まぁ分かったわ。さすがに相手の嫌がる顔を見て楽しむなんていう趣味は持ち合わせてないからなぁ。」
と渋々了解した。
「ここで下ろしてくれ。借りは絶対に返す。」
俯きながらも言葉の重みを感じた魔女が頷く。
「じゃあ、うち行くからね~。次会ったときは絶対よ~」
といって魔女が去った。
すると直ぐに、クラフその場所に向かって走り出した。
「―なんで。なんで。なんで。なんで。なんでなんで。なんで。なんで。なんでなんで。なんで。なんで。なんで。ーーーーーーーーーーー。」
見慣れた場所を小道を走りながらその場所にたどり着く。
―そこはクラフの家だった。
中に入ると、意外にも早く帰ってきたクラフにキーフ爺が言う。
「今日は何かあったのか?」
そんなことには耳も傾けずに本題に入る。
「―俺の呪い解けよ。」
今回はちょっと短めになりました。
感想ください。