On the way back 帰宅
掲載日:2020/10/17
死と不在のうたです。
遠くの丘の稜線に
白い雲がかかる
うねる丘の斜面を
金色の西陽が照らしだす
振り返れば
収穫あとの麦畑
平坦な地平線に日が沈む
牧場の羊を逆光に浮かばせて
そんな景色の真ん中を縫って
バスは私を帰宅させる
ふたりで作り上げた生活の場へ
あなたが守ったマイホームへと
最期を迎えたホスピスを過ぎ
入院した大病院を訪ね
あなたの育った町に着き
バス停下りたらいつものコンビニ
「駅」、「市役所裏」、「もうおまえの匂いがしそうだ」
「5分前」、「買い物済んだ?」、「道路渡った?」
ショートメッセージの応酬が
繰り広げられることは二度とない
「まだかよ?」と振り向く姿を
たそがれに貼り付けて
姿を見ると駆け出していた自分を再生する
「待たなくていいって言ったのに」
返事はいつもぶっきらぼう
「なんでだよ?」
一日のうちで一番饒舌なあなたと
歩いた川沿いの道
青い橋の架かったうちへの道




