酔っ払いは素面の時には想像しないことができると思うのは何故?
「あはは……前は会社の先輩に騙されて、化粧品とか買う羽目になって、その借金を返し終わったら、今度は……あはは!」
涙を流しながら、コンビニで買ったチューハイを飲みながらヒールを脱いで、バッグに押し込んでストッキングのまま歩く。
「痛いのは、足の裏より心の傷〜。あぁー歌うなら、『トスカ』の『歌に生き、恋に生き』なんだけど、私は、『騙されて』『借金返済の為に働き、生活の為に働き』だわぁ……。折角返し終わったのに、また今度、兄嫁が健康食品だって。一日一包〜二包。一月30包が18000円だって! 送料手数料別〜!」
あははは!
泣きながらグビリと飲むが、喉に通らない為、口から外し缶を振った。
「ありゃ〜、もうない。やっぱり350ml缶じゃ足りないか〜。500mlにしておけばよかったかなぁ」
缶もバッグに仕舞うと歩き出す。
少しふらふらとしているが、吐くこともなく、それに涙で濡れていても、行く方向は分かっているのか、比較的安全な歩道を歩いていく。
「……本当にね〜。彼氏にも捨てられて愚痴る前に、営業かよ! ばかやろう〜!」
と吐き捨てた。
小姑と呼ばれ、借金返済の為実家住まいで居心地の悪いと言うのに、悪気なさそうに追い詰める。
「結婚できなくて悪いか〜!」
一応、ここでクダを巻くのは、歩道があり、公園や駐車場が近くにあって明るいが、住宅地から離れているからである。
幾ら何でも、自分の家の前では近所迷惑と苦情で居心地がますます悪くなる。
そう思うと涙が止まらなくなった。
「私……もう疲れちゃった……。あーぁ。誰か、私を飼ってくれないかなぁ……」
呟いた。
と、目の前にアメリカンショートヘアっぽい、銀色の毛の強い仔猫が飛び出した。
「えっ? えっ? ちょっ!」
車道に走り出る仔猫に驚くと、荷物を投げ捨て追いかける。
「待って! 待って!」
住宅街から車が近づいてくる。
しかも、仔猫はそれに向かって走っている……?
「あぁぁ! 待ちなさいよ〜!」
見つけたからには死なせるものか。
仔猫に手を伸ばし、ヒョイっと公園の芝生目掛けて投げた私は、真正面でクラクションを鳴らす車とお見合いした。
「あ、ダメだわ〜これ。死んじゃうやつね」
そう呟くと、ドーンと身体にぶつかり、身体が空を舞った……ような気がした。