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別の自分

警察内でとある警官二人が話していた

「先輩、ちょっと前に交通事故がきっかけで記憶喪失になった女性がいましたよね?」

「ああ、今は施設で過ごしているみたいだけど」

「それと同時に、女優が行方不明になった事件もありましたよね?」

「赤川愛実のことか?」

「そうです。これはあくまでも自分の予感ですが、その記憶喪失の女性って赤川愛実なんじゃないかと。時期もかぶってますし、事故現場も彼女の恋人が住むマンションの近くですし…どうでしょうか?」

「お前バカか?赤川愛実ならこないだ復帰したぞ」

「えっ?そうなんですか?」

「ネットに載ってたぞ。ニュースぐらいチェックしておけ」


愛実が失踪してしばらくしたある夜、事務所の電話が鳴った。

電話に出たのはその日残業をしていた他のタレントのマネージャーだ。

「はい、○○プロダクションでございます」

電話の相手は何も話さない。

いたずらだと思い電話を切ろうとしたら

「私…赤川愛実です」

震える女性の声が聞こえた。


愛実失踪のニュースが流れてから優香は愛実のことが気になっていた。

「愛実さん、どうしたのかな?大丈夫なのかな…」

心配しているうちに、愛実に初めて会ったときに抱いた感情がまた湧き上がっていた。

「私と似ている彼女は芸能人として成功、でも私は…」

そのうちこんなことまで思いついてしまった。

「もし…私が愛実さんになったら…愛実さんとして生きていったら」


要するに自分が赤川愛実になりすますということなのだ。

確かに顔は似ているのでなりすますのは簡単かもしれない。

でももし本物の愛実が現れたらどうにもならない。


それでも優香はリスクよりも愛実になって生きていくという道を選んだのだ。


そしてある日ついに優香は決行した。

置き手紙を置いて会社の寮を出ていき、電車に乗って東京に向かった。

着いたと同時に美容院で雑誌で見た愛実と同じ髪型をして、デパートで服と化粧品を購入し、愛実になりすました。

もし本物の愛実と勘違いされて声をかけられないようにマスクで変装もした。


そしてスマホで愛実の所属事務所を調べて、非通知にして電話をかけた。

失踪のニュースで愛実はスマホを置いて行方不明になったと出たので、それまで持っていた自分のスマホは電源を切りゴミ箱に捨てた。

それは優香にとっては、過去の自分との別れを意味していた。


しばらくして、待ち合わせ場所のファミレスに女性が現れた。

「愛実?無事だったのね」

見覚えのある人だった。

確か愛実のマネージャーの人だ。

その女性は、席に座るなり優香の手を握り

「よかった…もう会えないんじゃないかと思っていたから」

と涙ながらに話した。

優香は愛実とマネージャーの仲の良さに感心すると同時に、なりすましたことへの申し訳なさも感じてしまった。

でもその感情はこれから捨てていかないと。

優香ではなく愛実として生きていくのだから。


翌日、事務所の社長に謝罪をしに行ったが、逆に社長から

「あまり休ませてあげなくてごめんね。しばらく休もうか」

と暖かい言葉をかけられた。


社長の言葉通りに数ヶ月の休業と復帰に備えてレッスンを受けた。


そして復帰すぐの現場で

「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

と頭を下げたら

「愛実ちゃん!おかえりなさい!」

「大変だったのね。もう無理しないでね」

といろんな人から声をかけられた。


(愛実さんってたくさんの人に愛されてたんだな…)


優香は改めて愛実がうらやましくなった。

そしてその期待や思いに裏切らないようにしようとも。



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