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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第4章 有名バリスタ編
86/500

86杯目「人混みの中のデート」

 もう大会は終わったというのに、こいつらのせいでうるさい。


 昔から報道陣というのは、相手の人権を考えないことに定評がある。


「あのっ、少しだけインタビューいいですか?」

「世界大会への抱負は何ですか?」


 報道陣を無視しながら、会場の別のブースまで歩く。


 僕が参加していたJCTC(ジェイクトック)は昼頃には終わっていた。


 ここにずっと居座っていたのは、別のブースで行われていたバリスタの大会を観戦していたからだ。今回の予選も決勝も不思議と不安はなかった。


 会場では何度か声をかけられた。何故こういう時だけは自制心よりも好奇心の方が勝るのだろうか。あいつらの生態をもう少し詳しく調査する必要がある。


 ここには世界中からたくさんのコーヒーが集結する大規模な『ジャパンコーヒーイベント』が開催されており、大会はイベントの一環で行われているのだ。


「ふぅ、やっと抜け出せた」

「結構人がいたね」

「今から真由と合流して飯でも食うか」

「カフェ巡りはしないの?」

「今日はなし。東京はもう何度もカフェ巡りしてるから、ここら辺はもう全部行った場所だと思うし、璃子の好きなチョコ巡りでもいいぞ」

「じゃあ銀座のカレー食べたい」

「銀座のカレーね。じゃあそこにするか――」


 東京は地元岐阜市の次に居座った時間が長い場所だ。もう十分カフェ巡りをしている。銀座のカレーとはお目が高いな。まあ僕も食ったことなかったんだけど。僕らが人気のない会場の端っこにいると、その近くをキョロキョロしながら会場で何かを探している真由の姿が見える。


 茶髪のショートヘアーにグレーのパーカー姿である。


 真由と目が合うと、急に可愛らしい笑顔で近づいてくる。


「あっ、やっと見つけたー」

「どうしたの?」

「どうしたもこうしたもないですよー。大会が終わったら一緒に昼ご飯食べに行こうって言ってたんですから、そりゃ探しますよ」

「……! そういえばそうだった」

「お兄ちゃんは報道陣から逃げるので精一杯だったもんね」


 僕、璃子、真由の3人で会場内を歩きながら積もる話をする。


「あず君、優勝おめでとうございます」

「ありがとう。あのさ、一応親戚なんだし、敬語は使わなくてもいいぞ」

「……うん、分かった。でもしばらくは慣れないかも」

「同級生か後輩にしか使ってないからだろ。璃子にはタメ口なのに、僕には使ってくれないし、なんか距離を置かれてるみたいに感じたというか、もっと気楽に話してくれていいんだぞ」

「そうだったんだ。あず君は誰に対してもタメ口だね」

「相手によって態度変えるの苦手だし、縦社会が嫌いでね」

「本当は差別とかしたくないんだね」

「何? 差別主義者だと思ってたの?」

「番組のインタビュー見てたから、そうは思ってないよ」

「つき合う相手は選んだ方がいいぞ。僕みたいになるから」


 真由が言うには、大半の人は僕の過去の話に同情してなかなか僕に話しかけないらしい。


 僕が通わされていた学校が特定され、インターネット上で思いっきり叩かれていた。こんなことは望んでない。ただ、同じ過ちは繰り返さないでほしい。そもそも校則で多様性を禁止しているのが迫害の根本的な原因だ。いくら叩いたところで、今の教育システムを変えない限り、被害に遭う天然茶髪が後を絶たないだろう。せめて価値観のアップデートくらいはしてほしいものだ。


「あず君は何で色んなバリスタの大会に出てるの?」

「店の宣伝のためだよ」

「僕には自分を知ってもらうために色んな大会に出ているように見えるけど」


 自分を知ってもらうためか。確かに自分を知ってもらえれば会いたいと思う人は店に来るだろうし、宣伝の手段としてはありかもしれない。


「店が潰れたら僕の居場所がなくなるからな」

「だとしても、宣伝は十分にできてると思うけど、それじゃ足りないの?」


 真由は宣伝が十分なのに宣伝しているという理由で自分を知ってもらうためだと思ったらしい。僕は思い立ったらすぐ行動する一方で、石橋を叩きながら歩く側面もある。以前はいくら宣伝してもラッシュが途絶えるとすぐ赤字になる地盤の弱さを露呈したこともあり、継続的な宣伝をするようになった。


 ワールドバリスタチャンピオンの称号も、今となっては過去の栄光だ。


 いつうちの店が飽きられても不思議じゃない。バリスタオリンピック優勝くらいしないと、本当の意味で世界一のバリスタになったとは言えない。僕が色んな大会に出ることで、うちの店が某日本人メジャーリーガーくらいの知名度になれば、バリスタの頂点に君臨したと言っていいだろう。


 そうなるまでの道のりは険しいだろうが――。


 一応真由には説明しておいた。


「だから宣伝をやめるわけにはいかないわけだ」

「不安なんだね……」

「うん……今人気があるからとは言っても、それがずっと続くとは限らないからさ」

「ちゃんと店のことを考えられるなんて凄いよ。僕は自分のことで精一杯だからさ」

「真由はやりたいことはあるか?」

「一応あるよ。テーマパークが好きだから、テーマパーク関係の仕事に就きたいんだけど、具体的にどうすればいいかが全然分からなくて困ってる……うちの親は大学までは卒業して、何でもいいから好きな仕事を見つけろって言うんだよね」

「実家の温泉旅館は継がないの?」

「うん。うちの旅館はお兄ちゃんが継ぐことが決まってるし、僕は保険みたいな扱いなんだよね。大学以降の進路には全然口出ししてこないし、もし職が見つからなかったらニートしててもいいって言われてるけど、できれば好きな仕事に就いてほしいみたい」


 フリーダムすぎるだろ。ていうか羨ましい。大学まで行かされるのがネックだけど、その後はニートとして生きるなり、好きな仕事をするなり、自由にしてていいんだろ?


 他の人が聞いたら間違いなく嫉妬する。1人暮らしを希望する息子に4LDKの家をポンッと与えられるくらいの家だ。もう好き放題できるじゃねえか。僕と代わってほしいとは言わないが、お金も時間もあるのに、やりたいことが具体的に決まってないなんて勿体ねえ。


「……羨ましい」


 璃子が物欲しそうに真由の立場を見上げた。


「でも自由すぎるのって、ある意味監獄にいるようなものだよ」

「えっ、何で?」

「ある程度制約でもあった方が決めやすいというか、僕の場合は選択肢が多すぎて、どれにすればいいか全然分からないというか、それはそれで考えものだと思うよ」

「僕はやりたいことが決まってるけど、今までは制約が強すぎて自由になれなかった。危うく誰かに決められた道を歩かされるところだったけど、今はようやく制約が弱まってきたし、とことん好き放題に生きてやるって思った……不自由だったからこそ、自由の尊さが分かるのかも」

「いっそのこと、既定路線を歩いてる方が楽かもしれないよ」

「自分の将来を誰かに決めてもらうことに抵抗ないわけ?」

「自由時間があるなら別にいいかな。休暇だって、普段仕事してるから休暇って感じられるわけだし」

「それは嫌なことを仕事にしてる人の発想だな。僕は好きなことさえできれば、休暇なんて別にいらないし、どっかに遊びに行きたいと思い立った時に行くべきだ」

「僕よりもあず君の方が自由だね」


 真由は愛想笑いをしながらこっちを見て話す。このままだと惰性で就職コースだな。


 3人で東京都内の銀座のカレーとやらを食べに行くことに。


 璃子は真由と仲良しそうに話していた。僕は空や町並みを見ながら歩いている。既に何度か来たこともあり、道は覚えていた。どこを見渡してもビルばかり……初めて東京に行った時、夜の街並みを美羽の家から見た時はとても綺麗だと思ったが、今はすっかり見飽きている。


 僕はあと何回ここに赴くことになるのだろうか。


「うわ……人がいっぱい」


 銀座のカレーレストランへと赴いたが、そこには帰れと言わんばかりに、カラフルに見える長蛇の列ができており、並ぶ気すら衰退させるほどだ。前から真由、僕、璃子の順番で、僕を挟むように2人を配置し、僕の前後を見知らぬ日本人からガードする。


「僕、並びたくないんだけど」

「カフェの時は並んでたよね?」

「そ、それは――」

「入店まで30分くらいみたい」

「2杯分注文するか」

「あず君って結構食べるよね」

「食べる時はガッツリ食べる」


 他愛もない話をしていた時だった――。


「あっ、葉月梓だ」

「えっ、マジで? 日本人だけ店に入れない差別主義者だろ」

「ああ、昔いじめられた腹いせに入店禁止って、過去を引き摺りすぎだよな」

「今日も大会で優勝したってさ」

「へー、あいつって恋人とかいんのかな?」

「いないだろ。変態オカマ野郎で差別主義者な奴がモテるわけない」


 言いたい放題だな。こっちの事情も知らないくせに。だから人前には出たくないんだよ。噂が尾鰭をつけて1人歩きしてるみたいだが、みんな付け焼き刃な情報を鵜呑みにしすぎな。


 嘘を嘘と見抜ける人でないと、ああやって情報に振り回されることになるんだよな。


「あず君、気にすることないよ。アンチがいるのは人気者の証拠だから」

「人気者にはなりたくなかったな。僕はただ、生き残るのに必死だっただけだし」

「アンチと遭遇したら、余計に心を閉ざすのが分からないのかな?」

「それが分からないから、目先のことしか考えられないんだ」


 ガラス越しに店内を見た。銀色のカレー用ソースポット、そばに置いてある皿に盛られた白米。あの時点で美味いのが分かる。だからカレーは怖いんだ。


 あのトロトロしたルーだけで、白米が何杯も食えそうだ。


「日本のカレーって、何でとろみがあるんだろうね」

「元々カレーはスープが主流だったんだけど、イギリス海軍の食事メニューになった時、揺れる船の上でも零さす食べられるようにとろみをつけた。その状態で日本に伝来したから、日本のカレーにはとろみがあるって言われてる」

「よく知ってるねー」

「まーた出たよ、お兄ちゃんの知識自慢」

「親切に教えてやってんだろ」


 30分後、ようやく店内へと入った――。


 真由が店員とやり取りをして席に案内される。


 幸いにも端っこに近い席だ。やっぱこういうとこが落ち着くんだよなー。メニューを見てから店員を呼び、僕がチーズカレーを注文すると、璃子と真由もそれに合わせる。注文を済ませてしばらく待つ。


「さっきの店員、明らかに調子が悪そうだったな」

「何で分かるの?」

「目がとろーんとしてたし、あれは間違いなく寝不足だな」

「葉月珈琲だったら帰らせてるところだね」

「きっと忙しいんだよ」

「忙しいのは言い訳にならない。うちは明らかに寝不足な人とか、病気かなんかで調子の悪い人は絶対キッチンには立たせない」

「何か理由でもあるの?」

「調子が悪いとパフォーマンスが最悪になるから、当然淹れたコーヒーとか、作った料理とかだっていい加減な味になる。うちにやってくる外国人観光客は、遥か遠方から、体力、時間、資産を消耗して、飛行機や車に乗って、わざわざ岐阜まで来てくれるんだ。職人たるもの、旅の疲労を重ねてまで来てくれた人たちにいい加減なものは出せない。だからうちの店はスタッフの健康管理を徹底してるわけだ」

「毎日8時間睡眠とか、調子が悪い日は休めとかね。私も結構言われたなー」

「――あず君のお店が何で人気なのか、少し分かった気がする」


 ふと、真由が微笑みながら囁く。


 僕は当たり前のことを言っているだけなのだが、そんなに感銘を受ける必要があるか?


 この世で最も無意味な生き方をしているのは、睡眠不足な人間である。集中したい時に眠気が襲ってくるし、寝たい時に寝られないし、当然パフォーマンスは最悪である。授業中や仕事中に眠たくなるような人は、とっとと家に帰ってベッドで寝た方がいい。


 こんなことも分からない無能に働いてほしいとは思わない。


 葉月珈琲では、無能行動は犯罪なのである。


「お待たせしました。チーズカレーでございます」


 僕らの目の前に3人分のチーズカレーのルーと白米が置かれた。


「あぁ~、良い匂い」

「美味しそうですね」


 カレー用ソースポットを持ち上げ、黄色と茶色の輝きを放つルーを白米にかける。これがルーと白米による運命の出会いなのだ。目の前に置かれたスプーンを手に取り、音を立てずに白米とルーをバランス良くすくい、口に頬張った……脳内にズドーンと雷が落ちる。


 何だこれはっ!? モッツァレラチーズとルーを融合しただけで、これほどまでに美味くなるというのかっ!? それにこの白米、ルーの濃厚さを一層引き立たせている。


 これをカレーと呼ぶなら、僕が今まで食べてきたものは何だったんだっ!?


 自然と表情が微笑んだ――ほっぺが落ちるどころか溶けそうだ。


「あず君、凄く美味しそうに食べるね」

「まあね~。うぅ~ん、幸せだぁ~」

「こんなに上機嫌なお兄ちゃんを見たの久しぶりかも」

「これでコーヒーがあったらなー」

「私はコーヒーより水が飲みたいよ」

「同感」


 気がつけば璃子と真由の机に置いてあったコップから水がなくなっている。


 しかも2人揃って辛さで顔が青褪めている。


「あの、水をください」

「畏まりました」

「そんなに辛いか?」

「うん、中辛ってこんなに辛いと思ってなかった。お兄ちゃん、よく平気でいられるよね」

「辛さには慣れてる。学生時代の辛さに比べれば、これくらい全然大したことない」

「お兄ちゃんは人生の辛さと苦さを知ってるもんね……」


 人は苦難や困難や災難に遭うと、不思議と強くなる。


 元々辛いのも苦いのも苦手だったが、今はまるで平気だ。むしろ今までが酷すぎた。


「また葉月珈琲の甘いコーヒーが飲みたいなー」

「うちはいつでも歓迎するよ。あっ、でも日曜と年末と大会期間中は閉まってるからな」

「璃子さんにお店は任せないの?」

「璃子はコーヒーを淹れられるようにはなってきたけど、マスター代理を任せるのは、まだまだ先になりそうだな。コーヒーの声が聞こえるようになるまでは」

「大変そうだね」

「アロマを頼りに熱湯の量を調整しないといけないから、そこが凄く大変だけど、最近は少し分かるようになってきたよ」


 璃子が自信ありげな表情を浮かべる。


 早くできるようになって僕を安心させたいのだろうか。不思議とそんな気がした。


「でもマスター代理を務めるようになったら、あず君の存在が来る理由になってる人たちは、みんな来なくなっちゃうかもしれないよ」

「それくらいで来なくなるような人は、最初から客の内にカウントしてねえよ。僕としては来る理由が僕じゃなくて、店になってほしい」

「じゃあ店の宣伝もずっと続けるの?」

「そうだな。当分は宣伝を続けることになると思う」


 特に何もしなくても、継続的に客が来てくれる地盤を手に入れるまでは、絶対に宣伝を止めるわけにはいかない。それに僕の人生も懸かってる。大会は出ているだけで店の宣伝になる上に、自分の実力も分かる一石二鳥のイベントだ。もし自分の得意分野を発揮できる大会があったら、出ることをお勧めしたいくらいだ。うちの店は他よりも少ない予算で始めた店だし、10人が座れる程度の広さしかない。


 休日以外はいつも行列だ。お金が貯まったら今よりも店を大きくして、客がもっと入れるようにしようと思った。親の借金も返したし、次の目標は予算の確保だ。


 僕らは銀座のカレーを完食し、満足した顔のまま店から出た。


 2杯も食べたけどまだ食べ足りない。行列がなかったらまた行こうかな。


「いつ帰るの?」

「もう帰ろうと思ってる。ここにいる理由もないし」

「じゃあお土産買って行こうよ。お父さんにもお母さんにも買っていきたいし」

「じゃあ僕、良いデパート知ってるから一緒に行こうよ」

「うーん、まあいいか」


 僕は璃子と真由に押されて東京都内のデパートまで赴いた。


 ゲームセンターに行ったり、お土産を買うために買い物もした。


「あの、写真撮ってもいいですか?」

「駄目……」


 また声をかけられる。本当に僕って有名なのか?


 名前だけが広まって実態が伝わっていないからこそ、こんなにも声をかけられるのだ。


 これはバリスタの地位が低いことを示唆している。


「また声かけられたね」

「多分あの人はバリスタでもコーヒー通でもない人だ。コーヒーを通じて僕を知った人は、僕の実態を知ってる人が多いけど、口コミだけで僕を知った人は、僕が病気持ちだってことを知らない」

「じゃあさ、お兄ちゃん自身を動画で発信してみたらどうかな?」

「それいいねー。あず君の人となりが分かれば不用意に声をかけてくる人も減らせると思うよ。やってほしいなー。僕毎日見るよ」

「それは嬉しいけど、どうやったらいいのやら」

「あず君は最近ゲームとかもやってるから、ゲーム実況とかどうかな? 今はゲームの動画とか配信とかも話題になってるみたいだし」

「ゲーム実況かー。一度やってみるか」


 真由に勧められ、個人チャンネルでゲーム実況を始めることに。僕を知ってもらう目的なら当然タイトルも日本語にしないといけないわけだが、果たして大丈夫だろうか。


 ずっと楽しみ続けていたのか、あっという間に時間が過ぎていく――。


 東京の町はオレンジ色の夕日に染まっていた。


「今日は楽しかった」

「それは良かった。今度は千葉にも遊びに来てよ。案内するからさ」

「真由の職場に行って、アトラクション全部回りたい」

「じゃあ一緒に園内のホテルに泊まろうよ。そうすれば全部のアトラクションを回れるよ」

「それいいなー、じゃあ今度行こっか」

「お兄ちゃん、そこ日本人いっぱいいると思うよ」

「……あ、あんまり人がいない時に行こうかな」


 真由は高校を休んでまでここに来てくれたばかりか、某夢の国のバイトもシフトを調整してくれた。また真由と遊びに行きたいな。真由もコーヒーファンだし、こういうイベントには度々来るらしい。


 家が千葉なら東京に行く度に会える。


「じゃあ僕、こっちだから。じゃあね」

「うん、じゃあね」

「またねー」


 真由は東京の人混みの中へと消えていく。璃子と真由とのデートは凄く楽しかった。


 店で仕事してる時も凄く楽しいけど、デートはまた格別だ。


 ずっと独り飯オンリー主義だった昔に比べれば進歩したのかな?


 だが身内以外の人とのデートには抵抗がある。特に飲み会とかは絶対に行きたくない。もはやここにいる意味を完全に失った僕は帰りたい衝動に襲われる。真由が帰った途端に、僕はここが人混みの街東京であることを思い出す。夢から覚めたようだ。早く岐阜に帰りたい。


 東京駅から電車に乗り、璃子を盾にしながら、いつも通り車両の端に陣取り、窓の外を眺め、今日のことを思い出す。帰ったらゲーム実況の準備から始めるか。


 今日優勝したことで、また明日から一段と忙しくなりそうだ。最近は国内予選を見に来る外国人も増えてきたみたいだし。車両の端の角にいる僕を璃子にガードさせる。この大会に璃子を連れて来る意味はあまりないようにも感じたが、身内がいると、それだけで安心する。


 璃子は僕の精神安定剤にして、生きる第六感なのだ。


 段々と空が暗くなる中、僕と璃子は岐阜に帰宅するのだった。

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