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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第4章 有名バリスタ編
81/500

81杯目「過集中の領域」

 ――大会3日目――


 この日はWLAC(ワラック)の決勝だ。いつものように起きてから目覚めの筋トレを始めた。


 目覚ましよりも少し早く起きてしまった。もう何度目だろうか。


 いつも目覚ましが鳴る前にボタンを押してしまい、うるさいノイズを阻止するかのように起き上がってしまう。璃子と柚子は旅の疲れを癒すようにスヤスヤと寝ている。いつもより睡眠時間が長い。余程疲れていたようだ。僕の前ではいつも平気そうな顔をしているが、璃子は時々僕を心配させまいと空元気になることがある。今はゆっくり眠ってくれ。


「……ん?」


 ――あっ、起きた。目覚まし時計のボタンを押す音が原因だろうか。


 璃子が目を開けると、上半身をムクッと起こす。パジャマのボタンが豊満な膨らみまで開いていた。前々から思っていたが、やっぱ璃子のはでかいな。


「お兄ちゃん、何でさっきから胸ばっか見てんの?」

「き、気のせいだ」


 僕は咄嗟に目を斜め上にして誤魔化そうとするが、あの立派な果実の吸引力には流石に敵わない。


 目が……目が勝手にっ……谷間に向いてしまうっ!


「お兄ちゃんのエッチ」


 璃子が無表情のジト目で思ったことを包み隠さず言った。


「エッチな体してる方が悪いんだよ」


 顔を赤らめ、そっぽを向きながら申し訳程度の反論をする。


「今日は決勝が終わったら、チョコ巡りって約束だからね」

「やっぱり覚えてたか」

「忘れるわけないよ。チョコが私を待ってるんだから」

「……あれっ、2人共起きてたの?」


 僕らの会話に反応するように柚子は欠伸をしながら体を起こした。


 いつもは先端まで手入れが整っている柚子の髪も、この時は若干ボサボサになっている。こういうだらしない姿の女って、何故かいつもより可愛く見えるんだよな。


「――大会の時は朝早く起きないといけないんでね。朝食行ってくる」

「待って。財布の紐はお兄ちゃんが握ってるんだから、どっか食べに行くんだったら一緒に行こうよ」

「そうそう、あず君だけ美味しいものを食べに行こうなんて、そうはいかないんだから」


 ツッコむとこそこぉー!?


 璃子も柚子もここの味にハマってしまったのか、眠気よりも食い気だ。ホテルを出ると、ケルンの町並みを散策しながら店を探す。やっぱ空いてる所がいいなー。


 ――ん? 良しっ、ここは僕の勘を信じてあのカフェに行ってみよう。


 カフェの朝食は美味いんだよなぁ~。


 ここもそうであると願いたい。近くのカフェで軽食セットを食べてから決勝に臨むことに。決勝までは時間がある。最初に目に留まったカフェ・カクテルという店に入ると、朝食セットを注文する。


 しばらくすると、スキンヘッドでカジュアルな格好をした男が朝食セットを3人分持ってくる。


「君、アズサハヅキだろ?」


 この店のマスターらしき人が英語で話しかけてくる。


「うん、そうだけど……」

「アズサに会えるなんて嬉しいよ。ゆっくりしていってくれ」

「うん、ありがとう」

「今日の決勝も頑張ってくれよな。いつもラテアート動画見てるよ。まるでコーヒーが生きているみたいだったよ。応援してるぜ」


 ここのカフェのマスターが僕を知っており、僕のラテアート動画を褒めてくれた。


 朝食セットは当店自慢のブレンドコーヒーとホットサンドだった。


 小腹を空かせた人には丁度良いかもしれない。


 ……うん、いけるな。このとろけたチーズとハムとレタス、絶妙なバランスだ。でも美味さの割にあんまり客が来てないな。昼以降が書き入れ時か?


「ここのホットサンド美味しいね」

「うん、サクサクしてて食べやすい。でも日本のパンより硬いね。しかもちょっとパサパサしてるし、あんまり焼けてないのかな?」

「西洋人は日本人よりも唾液の分泌量が多いから、多少パサパサしてても気にならない。だから日本のパンは水分多めでモチモチしてるわけだ」

「「へぇ~」」


 何度も外国に行っていたこともあり、外国のパンには慣れていた。


 このブレンドコーヒーはキリマンジャロとモカを組み合わせたものかな?


 ブレンドは今まであまり触れたことがないし、その内研究した方がいいのかもしれない。シンプルな味を追求したいならシングルオリジンがお勧めだが……。


「アズサ、コーヒーの味はどうだい?」

「うん、申し分ない。この店の書き入れ時は昼か?」

「いや、それが全然売れないんだ」

「全然売れない?」

「ああ、売れてるカフェなんて一握りで、俺はその一握りに入れなかったってだけさ。今年中にこの店を閉めようと思ってる。でもこの店最後の年にアズサたちが来てくれて良かったよ」

「メニューには問題ないのに、何で?」

「今年に入ってうちより安い『大手チェーン店』が近くに建っちまった。自由競争とはいえ、安さが売りの大手チェーンのカフェができちまったら、うちみたいな個人店はあっという間に淘汰されちまう」

「確かにそれは問題だな」


 大手コーヒーチェーンには1つ問題がある。


 これのせいで腕の良い個人がやってるような隠れた名店が淘汰されているのだ。うちも近くにカフェチェーンができたことで、倒産寸前にまで追いやられた苦い経験がある。決して他人事ではない。


 葉月珈琲は『世界一のバリスタ』を輩出した店舗として差別化を図ったことで生き延びた。だがほとんどの店舗はあっという間に飲み込まれてしまうんだろう。


「――マスター、僕、ここの店を宣伝したいんだけど、いいかな?」

「それは願ってもないことだけどよ。いいのか?」

「うん。僕も大手チェーン店に苦しめられた経験があるからさ」

「ありがとう、助かるよ」

「この店の名前と住所をメモしてもいいかな?」

「ああ、構わないよ。俺はヨーゼフ・ケンペル、よろしく頼むぜ」

「よろしく。宣伝するまで店潰すなよ」

「分かってるって」


 ヨーゼフが気さくに笑う。なかなかノリのいいおっちゃんだ。


 他の客に対しても気の利いたトークや面白いジョークで賑わせている。僕にあんなマネはできない。面白いだけじゃなく、美味いコーヒーを淹れられる人がいるカフェが潰れていいはずがない。


 咄嗟に持ってきたメモにこの店の情報を載せた。日本に帰ったら、今までに行った店全部の宣伝をしてみようと思う。これで効果があるかどうかは分からないけど、何もしないよりはマシだ。


 個人事業主って、それだけで何だか好感が持てる。僕自身がその立場だからというのもあるが、個人事業主ってのは、みんな人一倍信念が強い人だと思う。会社組織に適合できなかった人たちだ。じゃなきゃ自分から行動しようとは思わない。リスキーではあるが、この手の人たちにとっては集団の中にいる方が遥かに辛いのだろうと、この店の味を心に焼きつけながら余韻に浸った。


 しばらくの間、ここのマスターと話しながら朝食を食べていると。他にもたくさんのドイツ人が周囲に集まってくる。いつも動画見てるよと何度か言われた。


 朝食を食べ終わると、カフェ・カクテルを後にし、会場へと向かった。


 今まで行った店の情報を全て覚えていた。僕に美味しい料理やコーヒーを提供してくれたお礼と言っては何だが、宣伝させてもらうことにしようと考えた。


 当時の僕は動画を3日に1回のペースで投稿していた。天然色素から作った食用の着色料を使ったラテアート動画を投稿してみたら、これが見事にヒットし、やがてマネをする人まで出てきた。


 この大会でも桜に合うピンクの天然色素から作られた着色料を使っている。


 JLAC(ジェイラック)の時は僕以外誰も使っていなかった。今の着色料は安全だし、味にも特に変化はないのだが、何より1番好きな色であるピンクを使えるのが嬉しかった。


 ただ、人によっては色が味覚に影響を与えないとも言い切れないし、店で出すことはまずない。あくまでも大会と練習と動画でしかやらない。僕らが会場に着き、しばらくの時間が経つと、決勝に進んだ6人が控え室に集められた。決勝でもやることは同じだ。昨日は少し気の迷いがあったが、今日は何の迷いもない。僕の迷いを璃子と柚子が断ち切ってくれた。僕は1人で戦っているわけではないのだ。


 しばらくして僕の出番がやってくる――。


「それでは第4競技者、日本代表、アズサーハーヅーキー!」


 全ての準備が整い、リハーサルも終わらせていた。


 後は本番をやり抜くのみ。会場中が僕に注目する。


「タイム。今回は花をテーマにカプチーノでチューリップ、マキアートで薔薇、デザインカプチーノでは桜を描こうと思う。どれも僕の好みで選んだものだ」


 右手の()()()()を上げて合図し、タイムカウントが始まる。


 決勝では今まで以上に集中し、歓声が全く聞こえないゾーンの領域に達していた。


 自分でも不思議に思うほど集中していた。僕は過集中のために周りに気づかず、それで怒られることが多かったが、今はその過集中が武器として活きている。


 緊張していても集中することができた。


 やっぱりここが――僕の居場所だったんだ。


 チューリップは店で描いているものより繊細なもので、この時はシンメトリーを意識した。マキアートも過集中だったのか、針の穴に糸を通すように描くことができた。薔薇は不規則な花弁を描くようにミルクピッチャーからスチームミルクを細かく落とした。


 これも今まで以上に良い出来栄えで、ここまで本番に強い自分に驚いた。


 最後はデザインカプチーノで描く桜だが、これはエッチングが重要だ。小さな丸を5つ描き、エッチングで5つのハートを作る。仕上げにピンクの着色料だが、ただ色塗りをすればそれでいいわけではないのだ。5つのハートで囲い込んだ後、それぞれのハート下半分だけをピンク色に染めるのがコツだ。全部ピンクで染めるよりも、半分だけピンクにした方が白とピンクの2色になり、それが目の錯覚で薄いピンク色に見えるため、より本物の桜に近づくのだ。


「プリーズエンジョイ、タイム」


 時間は7分56秒、どうにか間に合った。


 デザインカプチーノ以外をいかに早く終わらせるかがポイントだ。


 この時、会場にいるみんなが終わる直前まで競技を見るのに集中しており、終わってからしばらくはスタンディングオベーションだった。璃子と柚子、そしてディアナからも拍手を送られた。


 拍手がようやく終わると、またしてもインタビューを受けた。


「今日は昨日よりもずっと集中してたねー」

「そうだな。自分でも何であんなに上手くできたか分からない」

「こんなに細かく描いているのに、コントラストがハッキリしているね。今までにない素晴らしいラテアートを見せてもらったよ」

「ありがとう」


 決勝後のインタビューでは、賞賛の言葉を貰った。


 インタビューでここまで言われたのは初めてだ。


「ここまで芸術性とリアリティーを追求した作品は見たことがない。まるで本物をそのまま置いたみたいに見えるよ。アズサにとって、ラテアートとは何かな?」

「飲める芸術、飲める遊び心かな」


 他にも着色料を使った鮮やかなデザインカプチーノを描いた人もいたが、鮮やかさでは負ける気がしなかった。絶対に譲ってはいけない。結果発表までの間、観客席から他のバリスタを見届けることに。


 ――やっぱり君は僕にとって最高の女だ。僕に輝ける居場所を与えてくれてありがとう。君には本当に感謝しているよ。これからもよろしくな、最愛の恋人よ。


 他のバリスタも決勝なだけあり、いつも以上に本気モードだ。決勝という舞台で緊張しすぎて力を発揮できない者もいたが、常に大勢から見つめられている状況に耐えてこそ真のバリスタだ。繁盛している店では常に多くの客に見られることになる。


 人から見られることには慣れていた。店が繁盛してくれたお陰だ。


「アズサってやっぱり凄いね」


 隣に座ってきたディアナに話しかけられる。


「どこが?」

「バリスタとしてだよ。アズサの競技中は、みんな夢中になって仕上げが済むまでは誰も一言も発しなかったんだ。それくらいアズサには人を惹きつける何かがあるってことだよ」

「僕としてはあんまり惹きつけたくはないんだけど」

「知ってる」


 ディアナが僕の左腕に抱きついてくる。


 柔らかいこの感触、ディアナは痴女か何かなのか?


「あの、当たってるんだけど」

「あっ、済まん」


 ディアナが顔を赤らめながら抱きつく腕を解いた。


 自分のしていたことをようやく自覚したのか、そっぽを向いてしまった。


 待ちに待った結果発表の時間がやってくる。


 スタッフに呼ばれて会場のステージに上がると、競技用の作業ステーションや道具はすっかり片づけられており、ステージ上にはファイナリスト6人と司会とインタビュアーだけだった。


 順位の低い順に名前が発表されていく。


 僕は残り3人の中に残る。心臓バクバクだった。いつ名前を呼ばれてもおかしくない。司会が既に順位の書かれたメモ用紙を読みながら進行が進み、僕とベルギー代表の2人のみになる。


「第2位は……」


 この瞬間はもう何度目だろうか。何度やっても慣れないし緊張する。


 だがここまでやってこれたのは本当に奇跡だ。今思うと、全然体力のない僕がずっと戦い続けられたのはコーヒーへの純粋な愛からかもしれない。


 愛は限界をも超える。僕はそれを身をもって思い知るのだ。


 そして――。


「ベルギー代表――」


 ベルギーの国名が発表された瞬間に会場が湧き、名前はこの声援にかき消されてしまう。ベルギー代表の国名と名前が呼ばれたことで、僕のワールドラテアートチャンピオンが確定する。


 ラテアートの世界でまた頂点に君臨した。


「やったあああああぁぁぁぁぁ!」


 両腕でガッツポーズをした。璃子も柚子もお互いを抱き合って喜んでいる。


 2人はすぐに身内への優勝メールを送る。


「今年のワールドラテアートチャンピオンは、日本代表、アズサーハーヅーキー!」


 他のファイナリストたちと抱き合いながらお互いの健闘を称え合う。


 インタビューのマイクが僕に向けられた。


「大会が終わればみんな仲間だ。僕にとって他のバリスタは同じ職業の仲間であり、鎬を削り合うライバルでもある。最高の舞台で最高のバリスタたちと一緒に競技ができたことを誇りに思う」


 階段状になっている優勝トロフィーを受け取った。その頂点には黄金のミルクピッチャーが僕を祝福するように輝いている。ここまでくると、もはやトロフィーコレクターだな。


 WLAC(ワラック)は熱狂の渦の中で幕を閉じた。


 ようやく大会から解放され、しばらく余韻に浸っていた。


「お兄ちゃん、優勝おめでとう」

「おめでとう。初めてあず君が優勝する瞬間に立ち会ったけど、現場にいると、こんなに興奮するものなんだね。なんか感動しちゃった」


 璃子は慣れている様子だったが、柚子は感極まって涙を流す。優勝が余程嬉しかったようだ。岐阜にいるみんなも、今頃は喜んでくれているかもしれない。僕は本当に幸せ者だ。


「アズサ、優勝おめでとうっ!」


 ディアナが抱きついてくる。この時はハグを受け入れた。柔らかい感触にもそろそろ慣れてきた。


 この時はもう夕方だった。僕、璃子、柚子、ディアナの4人で早めの夕食を済ませる。


「あず君、チョコ巡りはどうするの?」

「チョコ巡りは明日だ。明後日には日本に帰る。いいな?」

「うん、明日が楽しみになってきた」

「チョコ巡り?」

「僕は初めて訪れた場所でカフェ巡りをするのが趣味で、璃子はチョコ巡りが趣味なんだ。大会前はカフェ巡りで色んなカフェを回っていたから、今度はチョコレート専門店へ行こうと思ってるんだよね。やっぱどこへ行っても、好きなものには目がないからさ」

「なるほどな、私もそういう趣味はあるぞ。私もアズサの店に行きたくなった」

「あのさ、日本語話せるんだし、僕のことはあず君でいいぞ。みんなからはいつもそう呼ばれてるし」

「分かった。あず君、私に素敵な一時を過ごさせてくれて……ありがとう」


 ディアナは大胆にも、僕に抱きつきながら頬に優しくキスをする。


 璃子も柚子も見慣れないのか、顔が真っ赤になっていた。


「あの、ディアナさん、その表現はちょっとストレース過ぎやしませんか?」

「ストレートに表現しないと分からないだろう。私は……あず君が好きだ。愛してる。前々から言おうと思っていたんだが、私と結婚を前提につき合ってほしい」

「「「!」」」


 ――えっ!? 何でここで告白なんだっ!?


 しかも結婚前提って……結婚とか好きじゃないんだけどなー。


「……えっと、あのさ、僕見た目女っぽいけど、それでも好きなのか?」

「そんなの関係ない。私にとっては無問題だ。何の問題もなくあず君を愛せる。私は男も女もその他も関係なく愛せるからな」

「「ええっ!」」


 璃子と柚子が同時に目を点にしながら驚いた。


 ていうかあんたもかよ。見境ないのかどうかは知らんが、好きなのは確かなようだ。可能な限り尊重してやりたいが、結婚したいと思うほど好きになってしまうのが、この人たちの困ったところだ。


「悪いけど、君の気持ちには応えられない」

「――私じゃ駄目なのか?」

「駄目ってわけじゃないけどさ、僕は結婚制度自体廃止してほしいって思うくらいには結婚制度が嫌いだから、どう頑張っても結婚はできない。それに僕は君のことをよく知らない。どんな人かを一通り分かってからじゃないと判断できない」

「……そうか」


 ディアナは酷く落ち込んだ様子だった。


「じゃあ、これから私のことをいっぱい知ってくれ。それでも駄目だったら諦める。私にチャンスを与えてほしい。この通りだ」

「ディアナ……」


 頭を下げて懇願されるが、彼女の気持ちには応えられない。僕は今、コーヒーに夢中なんだ。


 日本人とつき合えないなら、外国人とつき合うという手もありっちゃありだ。彼女も真剣にバリスタを目指しているみたいだし、パートナーとしては申し分ないのかもしれない。


「仲の良い知り合いとかでもいいなら、つき合ってもいいけど」

「ああ、構わない」

「お兄ちゃんはどこに行ってもモテるね」


 璃子がジト目になりながらボソボソと僕に向かって呟く。


 こればかりは自分の力ではどうにもならない。不可抗力ってやつか。


「あの、もしよかったら、明日チョコ巡りに一緒に行きませんか?」


 柚子がディアナに同行することを提案する。


「気持ちは嬉しいが、私は大会が終わったらすぐアムステルダムに戻らないといけないことになってるんだ。明日には店の仕事があるからな。じゃあな」

「そうですか。ではお元気で」


 ディアナは帰国する旨を伝えて去っていく。チョコ巡りを終えたら、日本に戻らないとな。


「1店舗だけチョコ巡りするか」

「本当!?」


 璃子が目をキラキラと輝かせながら確認してくる。チョコのことになると目がないな。


「本当だ。じゃあ行くか」

「……うんっ!」

「あず君もたまには気が利くとこあるんだね」

「たまにじゃない。いつもだ」


 無事に優勝を果たし、残すは璃子と柚子とのチョコ巡りを残すのみとなった。


 こうして、ケルンにも葉月梓の名前が刻まれたのだった。

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