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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第4章 有名バリスタ編
78/500

78杯目「出発前の新発売」

 5月中旬、遂にシグネチャー用に使っていた食材の調整が終わる。


 期間限定でWBC(ダブリュービーシー)で使ったシグネチャーを1杯5000円で提供する。すぐ在庫切れしないよう、1日20杯までにしたのだが、開店時間から1時間後には売り切れていた。


 ベルガモットの味を強く感じるため、これを『ベルガコーヒー』と名づけることに。


 嬉しい知らせとしては、仕入れた分が全部売り切れた上に、1杯5000円にしても飛ぶように売れたため、店の経済は十分すぎるほど潤っていた。


 ――親の借金を全部返すのが今年の目標だ。


 借金を返すまでは親戚に睨まれ続ける。返す時は一括で返す。そしてもう二度と借金はしないと心に決めた……元々借りたのはうちの親だけど。


「――これ美味しい」

「当然だろ。世界一のコーヒーだからな」


 シグネチャーを発売し始めた頃、閉店間際にお袋が葉月珈琲にやってくる。シグネチャーが発売するという情報を流してからは、開店30分前から並ぶ客もいた。1日20杯しかないこのコーヒーを客が求めているばかりか、しばらくは開店前後を中心にラッシュが続いた。店の営業が始まってから僅か1時間足らずで、シグネチャー20杯分を外国人観光客たちが飲み干していった。お袋のために特別に1杯だけこのシグネチャーを淹れた。花屋でのパートを務めるお袋にとって、5000円の出費はかなりの痛手だ。けど息子が淹れた世界一のコーヒーのためなら痛くないらしい。


「私はあず君が優勝してなくても、これが世界一のコーヒーだって思うなー」


 お袋が僕の淹れたコーヒーを見つめながら嬉しそうに呟く。


「えっ、何で?」

「だって、自慢の我が子が淹れてくれたコーヒーなんだもん」

「昔っからずっと僕を叱ってきたお袋の言葉とは思えないな」

「私だって褒めるべきところはちゃんと分かってるつもりだけど――」


 この時はカウンターを挟んで僕とお袋の2人きり。厨房ではリサと柚子が一緒に調理している。


 来月からは夏シーズン限定メニューを覚えている最中なのだ。


 シーズン毎に定番商品の『レギュラーメニュー』の他、季節限定の『シーズンメニュー』というものを提供している。夏場は主に冷えた料理やスイーツが中心である。冷製カルボナーラにアイスクリームが中心のスイーツだ。コーヒーとの相性も考慮した作りになっている。


 コーヒーと食べ物の組み合わせのことを『コーヒーマリアージュ』という。コーヒーを食事に合わせて選んだり、逆にコーヒーに合わせて食事を考えたりすることで、更に美味しい相乗効果が生まれる。


 マリアージュは結婚を意味するフランス語であり、複数の食べ物を一緒に飲食して相乗効果を生む現象のことを指す。コーヒーと食べ物を上手に組み合わせることで味わいが何倍にも豊かになる。最初はコーヒーしか出してなかった葉月珈琲が、いつの間にかメニューが豊富な店になっているではないか。


「――そういえば、商店街の花屋って今どうなの?」

「今のところはここが繁盛しているお陰で、花屋にも人が来てくれてるの。これもあず君のお陰かな」

「僕のお陰じゃなくて、外国人のお陰だろ」

「でもさー、外国人をわざわざ岐阜まで呼んでこれるあず君って、本当に凄いと思うよ。あたしも何かで世界一になれたらいいんだけど」


 リサがどこか顔を下に向けた。一体どうしたんだ?


「何であんなに落ち込んでるの?」


 小さな声でリサの表情の理由をお袋に聞いた。


「半分は羨ましいという気持ち。もう半分はあいつだけちやほやされやがってという気持ち。でもリサちゃんを責めちゃ駄目だよ。こういう気持ちは誰でもあるから」

「そんな気持ちを持つ暇があるなら、少しでも上を目指せるようにさ、何かに没頭するなり努力するなりした方がずっと生産的だと思うけど」

「全員が全員あず君みたいにストイックでもないし、そんな風に考えられるわけじゃないから、そこは勘弁してあげて。立派な人は希少価値が高いの」

「僕も自分には甘い方だけどな」


 羨ましいと思う一方で嫉妬心まであるのか。乙女心は複雑って言うけど、こればかりはどんな天才でも迷宮入りしそうだ。それにしても、よくリサの気持ちが分かるよな。


 璃子も凄く察しがいいし、もしかして僕以外みんなエスパー説でもあるのか?


 数日後、今度は珍しい組み合わせの客がやって来る。


 外国人に混ざって鈴鹿がやってくる。彼女はここが物珍しいのか、店の周りをキョロキョロと見渡している。いつもは僕が彼女の店に行く側だが、今回は立場が逆転している。鈴鹿は黒を基調としたオシャレな服装で一段と目立っており、相変わらずミステリアスな雰囲気を醸し出している。


「ふーん、凄く良い店だね。そこにあるピアノを動画投稿に使ってるの?」

「あー、そうだな。うちのお袋がバブルの頃に買った比較的高級なピアノで、この前調律してもらったばっかりだし、音は問題ない」

「確かにこの広さだと、これくらいコンパクトなピアノが限界か」

「そゆこと。だからグランドピアノを買うのは、もっと大きな店に引っ越してからってわけだ。今のところはそれも厳しいけど」

「そう……ところで、いつまで外国人観光客限定にするの?」

「結構色んな人に聞かれたけど、僕としては日本人恐怖症が治るまでは身内限定だ。それにいじめっ子が入ってきたら気まずいだろ?」

「私は別に気まずくないけど」

「えっ、そうなのっ!?」


 マジかよっ!? 僕だったら絶対に耐えられる気がしないぞ!


 何という化け物メンタルだ。僕を迫害した奴は1人や2人どころの規模じゃない。


「学生の時は周りに合わせられる人が1番偉いって教えられるせいで、周りに合わせられない子がいじめを受けたりするけど、学校を卒業すれば、馬鹿なことしてたって気づくものじゃない?」

「僕はあいつらの理解力を信用してないんでね。大人になったところで、人間の本質はそう簡単に変わらない。同級生のほとんどは今大学生だろうから、まだ学生気分の人とかわんさかいると思うぞ。卒業したら今度は会社でいじめを始めるかも」


 1人の人影が見えた。入ってきたのは蓮だった。


「彼も身内なの?」

「厳密に言えば、仲の良い知り合いで、うちの妹の友人だ」

「ふーん、初めまして。私は見尾谷鈴鹿。よろしくね」

「浅尾蓮です。蓮でいいですよ」


 鈴鹿はしばらく蓮と話す。珍しい組み合わせだ。蓮は僕が彼のハンドルネームであるアーサーの名づけ親であることを、鈴鹿は僕をピアニストの道へ誘おうとしていることを楽しそうに話し合っている。


「なるほどねー、名前を西洋風にすれば日本人恐怖症を抑えられるって思ったんだ」

「はい。そうみたいなんですけど、結局効果はなかったみたいで」

「じゃあ名付けられただけなんだ」

「いえ、そうでもないですよ。俺、普段はゲーマーやってるんですけど、ハンドルネームに迷っていた時期だったので、ハンドルネームもアーサーになったんですよ」

「じゃあ結果的には良かったんだ」

「はい。友人とかにはあず君が名付け親だって自慢してるんです」

「有名人からの命名だものねー」


 鈴鹿が笑顔で言うと、僕がいる方向を見ながらキリマンジャロを飲み、まるで家にいる時のように余韻に浸っている。自分の家のように過ごしてもらえるのはバリスタ冥利に尽きる。


 蓮は鈴鹿が飲んでいる銘柄を聞くと、彼女と同じキリマンジャロを注文する。子供にはちょっと苦すぎるかもよと心配しながらも、注文通りキリマンジャロをペーパードリップで淹れた。


「あず君って、そうやってコーヒーを淹れるんだ」

「うん。僕はコーヒーの声が聞こえる。このタイミングで入れたら美味くなるよって囁いてくるんだ。コーヒーの声に逆らわず丁寧に淹れることで美味いコーヒーができる」

「コーヒーの声?」

「同じ3回注ぎでも、コーヒーによって淹れ方を加減しないと雑味が残ってしまうからさ、こうやってフレグランスやアロマを頼りに、毎回淹れ方を調整してる」

「まるで職人だな」

「職人のつもりだ」

「見尾谷さん、あず君はピアニストよりも、バリスタの道に行かせた方がいいと思いますよ。ここまでコーヒーに対する造詣が深い人はそうはいませんから」


 蓮はバリスタとしての僕が気に入ったのか、あくまでもバリスタとして活躍するべきであると説いているが、欲張りな僕としては、できることは全部やりたいと思っている。


 それに……彼女の希望も早く叶えてあげたい。


「私は無理にピアニストにしようとは思わないの。彼を見ていると、職業の概念自体が古く思えてくるというか、何かが1番得意だからといって、その道だけを進むのは勿体ない気がするの。特にあず君なんかはバリスタもピアノも料理も裁縫も語学もできるわけだし、結果的にそれら全てのスキルを有効に使っていけば、何か1つの職業を名乗ったり絞ったりする必要がないんじゃないかなって思ってるの」


 彼女もまた、人間は複数のレイヤーでできていることを知っているようだ。


 好きな時に好きなことをする人生が1番有意義かもしれない。


「なるほど、新しい発想ですね」

「ふふっ、私は元からこの考えだったわけじゃなくて、彼を見ていてそう思ったの」

「それ分かります。兄を見ていると、今までのやり方とか、物事に対する考え方とかが古く感じてしまう時があるんです。私もショコラティエを目指すかどうかを迷っていた時に、これで食べていけるかなって言ったら、食べていけるかどうかを基準にするなって兄から言われたんです」

「へぇ~、結構深い言葉だねー」


 璃子が鈴鹿と蓮の会話に参加し、人生経験豊富な鈴鹿に色々と相談するように、今までの経験を語っている。鈴鹿はすぐに璃子のことを気に入り、彼女のプロフィールを根掘り葉掘り聞いていた。子供が何かを目指そうとすると、高確率で教師や親からその仕事じゃ食っていけないと言われてしまう。僕も例に漏れず、親からも教師からも何度か言われたことがある。


 食べていけるかどうかを基準にしてしまうと、まず安定性を重視することになる。


 この世の中に比較的安定した職業と言えば、もう公務員しかない。しかし、公務員ですら枠が段々と狭まっているし、正社員もいつリストラされるか分からないし、こっちは仕事ができなければクビもあり得るくらいだ。安定なんて存在しないのに、安定を目指そうとする時点で終わっている。教師も親も子供に対して食って行けるかどうかを基準にしてはいけない。これをやっちゃった時点で大戦犯だ。


 安定していると言われている職業に向いていない子供にこの言葉は苦痛だろう。何なら禁句にしてもいいレベルだ。食えるかどうかを気にし出したら、できることもできなくなる。


 この影響でニートや引き籠りになった人も少なくない。


 ここは社会的責任によるものと認めざるを得ないのだ。


「親と教師の言葉の影響で怖気づいた人多いと思うぞ。僕がやってるバリスタの仕事だって、流行り廃りがあるから安定してるとは言い難いけど、僕は毎日コーヒーが飲めさえできれば、収入源とかは割とどうでもいいと思ってる」

「どうでもいい……と言うと?」

「何というか、僕がこの店をやっているのは、やりたいことだからっていうのもあるけど、基本的にはお金を稼ぐ手段の1つでしかないというか、仮に寝ていても稼げるような状態になったら、多分誰かに店を譲っちゃうかもな」

「そんなことしたら、お客さん来なくなるんじゃないの?」

「それくらいで来なくなったら、その程度の店だったってことだ。だからさ、僕としては店を誰かに継がせるまでに、何もしなくても客が継続的にやってくる店にしておきたいってわけだ。結果的に有名人になったけど、本当はこの店を有名にしたかった」

「お店もそれなりに有名になってると思うけど」

「じゃあ僕がいなかったら、この店に来るか?」

「……来ない……かな」


 ――まあそういう反応になるわな。


 この店は間違いなく僕依存の店になっている。


 今のままでは僕が働き続けなければ、店の存続自体が危ういのだ。最悪僕が病気とかでぶっ倒れても継続的に客に来てもらうにはどうするべきか、それが今後の課題になるかもしれないと直感する。


 5月下旬、僕は店の営業が終わるとラテアートの練習をしていた――。


 ある日のこと、店仕舞いをしようとしていた時、吉樹が入ってくる。


「もう店閉めるんだけど」

「あず君、今日泊まらせてくれないかな?」

「……別にいいけど」


 吉樹は大学へ進学し、大学生活を満喫していた。


 理由を聞いてみれば、逃げの進学だった。高卒は就職の時に不利になるらしく、少しでも良い条件の会社に就職するために、進路の決断を4年も先送りにするクソシステムってどうにかならないのかな?


 吉樹も旧態依然とした教育の被害者なのだ。


 そんなことを考えながら、吉樹と一緒に時間を過ごす。僕はいつもより張り切っていたのか、料理を璃子と吉樹に振る舞いながら大学生活を根掘り葉掘り聞こうと思った。大学生と接する機会はあんまりないから貴重な情報源になるだろう。そうやって自らの進路が間違いでなかったことを確認したかったのかもしれない。僕も自分が正しいと思わないと気が済まない弱い人間なのだ。


 机には3食分のカルボナーラが置かれている――昔作ったものよりずっと本格的だ。


 食事をしながら、まず行くことのない大学の話をした。


「大学で何勉強してるの?」

「基本的に普通科だから、何でも満遍なくやる感じかな」

「普通科とか1番いらないと思うけど」

「えっ、何で?」

「文字通り普通と呼ばれている人間になるからだ。そんな奴は世の中に山ほどいるし、普通の人に近づけば近づくほど希少価値がなくなっていくから、就職の時不利になると思うぞ」

「えっ! 就職不利になっちゃうのっ!?」

「人事の立場になって考えてみろよ。吉樹は今の自分を雇いたいと思うか?」

「……うーん、びみょー」


 素晴らしい。実に正常な反応である。


 大企業の人事とかって、こういう人を山ほど見てきてるんだろうな。社会に出た時のことを具体的に考えていない人ばかりで、しかも就活時には全員ほぼ同じ格好だ。そうなると人事側の心理としては、やっぱりずば抜けた人を採用したくなるものだが、そのずば抜けた人自身が周りと違うことをリスクであると考えていることも多いため、見破るのが大変なのだ。


 ポテンシャルなんて、一度やらせてみないと分からないのに、やらせる前に採用するかどうかを決めるのだからもはや無理ゲーだ。本当は人事なんていらないのかもしれない。


「少なくとも、僕が一般企業の人事だったらまず雇わない」

「じゃあどうすればいいの?」

「自分の将来を人に委ねてる時点で駄目だ。自分のことくらい自分で決めろっての。僕が自分の人生を自分で築いてきたようにな」

「うーん、そう言われても、将来のことなんて全然分からないよー」

「何で吉樹みたいに、将来のことを決められない人が多いんだろうね」

「璃子ちゃんまでぇ~」


 吉樹は机に肘をつき、手で頭を抱えながら嘆いている。


 璃子はサラッと辛辣な台詞を言うことがある。


「悪魔の洗脳の成果だろうな……なあ吉樹」

「ん? 何?」

「学生の時は上の言うことに従えみたいな従順性ばっかり教えられてきたかもしれないけど、今の社会は従順性じゃなく主体性を求めてる。今の内に自ら考え行動する術を習得しとけ」

「考えとく。あず君がそう言うなら、そうなんだろうね」


 吉樹が僕の言い分を流すように答えた。


 あっ、これはまずやらないやつだなー。


 吉樹が考えとくと言って何かを始めた試しがない。後になって困るのは自分なのに、どうしてこうも他者依存のマインドを維持し続けるのか。学校も会社も頼りにならなくなった今、学び方も稼ぎ方も自分で考えていくべきだというのに、何故こうも保守的になれるのか……。


「実を言うと、私も昔は何でも周りの人に決めてもらっていたけど、お兄ちゃんを見ている内に、自分の好みとか、自分らしい生き方とかを自分で決められないことに違和感を持つようになって、それに気づいてからは、自分のことは自分で決めるようになったの」

「まっ、他人に決めてもらうのは楽だし、大半の人はそうするけど、自分の好みと違うって気づいた時には年を食ってた……みたいなことになる場合が多い。そうなる前に気づける人はラッキーだと思うぞ」

「……自分の将来は自分で決める……か。僕にもできるかな?」

「できるよ。主体的に生きることを忘れなければな。一度でいいからさ、もっとこう、自分勝手に生きてみろよ。何か見えてくるはずだからさ」

「じゃあ……そうしてみようかな」


 僕らは夜中まで語り尽くして就寝する。


 吉樹とのお泊り会が終わると、翌日の昼に彼はそそくさと帰っていく。僕が親戚の集会への参加を解禁されたら、今度は僕が吉樹の家まで泊まりに行ってやるか。


 月日は流れ、6月がやってくる――。


 WLAC(ワラック)開催の1週間前、出発のため準備に追われる。


 決勝までいけば更なる宣伝になるだろう。基本的に宣伝第一のスタンスである。WBC(ダブリュービーシー)でも結局宣伝になっちまったし……無論、ジャッジへのホスピタリティを忘れてはならない。これはコペンハーゲンで学んだことだ。競技となるとポイント稼ぎにばかり目がいきがちだが、ジャッジも人間であり、競技中は立派な顧客であると考えるべきだ。


 自分がジャッジをする側で、自分自身の競技が良いと思えるかを想像できるかが重要なのだ。


 出発当日、僕は璃子と柚子と共に空港まで赴く。


 ケルンは以前行ったコペンハーゲンから少し遠い所にあるドイツの都市だ。


「ねえ、もしかしてケルンも寒かったりする?」

「ヨーロッパは基本的にどこも寒いぞ。北海道よりも緯度が高いからな。でも行く時はいつもサマーシーズンだから、そこまで寒くないと思う」

「だといいけど」


 柚子はヨーロッパの気候を心配していた。


 慣れない海外生活でバテる人も少なくない。


「基本的には競技の時に準備を手伝ってもらえればそれでいい。柚子も大会が終わったら一緒にカフェ巡りとチョコ巡りしようぜ。今回は以前と違って余裕があるし、たっぷり堪能できる」

「ドイツにもチョコあるもんね。なんかやる気出てきたかも」


 璃子は空を見てニヤけ顔になりながら、チョコ巡りを楽しんでいる自分を想像する。


 ちょろい。チョコが絡んだ時の璃子は本当に扱いやすい。


 海外に行く際、僕はカフェ巡り、璃子はチョコ巡りが恒例の趣味になった。どこへ行っても好きなことはやめられないわなー。ヨーロッパなどに行く時は比較的厚着で行くが、日本のサマーシーズンは暑いため、厚着になるのは現地に着いてからである。


 僕らは電車を使って空港まで赴き、手続きを済ませた。この時間に行けば、大会3日前にはケルンに辿り着けるはずだ。今回は流石にホテルに泊まろう。遠征した時に何度か民家に泊まっていたこともあったが、個人的には特別訓練が必要でないならホテルの個室に泊まりたいものだ。


 こうして、僕らは空港からケルンへと旅立つのであった。

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