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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第4章 有名バリスタ編
77/500

77杯目「商店街で過ごした日々」

 僕は璃子と帰宅して風呂に入ると、そのまま熟睡する。


 唯、リサ、柚子もそれぞれの自宅へと帰っていった。僕は疲れていたのか、この日の夜空が凄く綺麗に見えた。明日からまた店の営業だから切り替えていかないと。


 2月は店の営業に明け暮れ、経営戦略を練っていた。


 ある日のこと、璃子から経営方針についての提案をされた。


「お兄ちゃん、店でゲイシャのコーヒーを売ってみたらどう?」

「売ってもいいけど、かなり値が張る代物だぞ」

「今はどこもゲイシャのコーヒーを売ってる店がないんだって」

「貴重品だからな。ブリランテ・フトゥロ農園からのゲイシャ以外にも色んなコーヒー農園から売り込まれたけど、まだ未知の領域だから、僕でも味をコントロールできるか怪しいくらいだ。だからまずはブリランテ・フトゥロ農園のゲイシャで作ったエスプレッソとカプチーノとシグネチャーを商品にしてみようと思う。これでうまくいったら他のゲイシャも売ってみる」

「じゃあ実現できるんだ」

「シグネチャーの材料を切らしちゃってるし、作り直さないとな。メープルシロップとオリジナルオレンジシロップを作ってから味の確認もしないといけないし、時間かかるかも」


 璃子はシグネチャー用の材料を買い出しに行った。僕が外に出ると有名税がかかりそうで心配だ。


 季節は流れ、3月を迎えると、また拓也がうちに遊びにやってくる。


 既に夕方であり、外国人観光客のラッシュが終わったところだった。この日は拓也をうちに泊める約束をしていた。拓也は何度か親から反対されたようだが、当の本人はまったく気にしなかった。


「よっ、また来たでー」

「いらっしゃいませ。確か今日泊まるんですよね?」

「そうやな。璃子ちゃん制服可愛いなー」

「ありがとうございます。手作りなんです」

「あれっ、拓也また来たの?」

「ああ、家におっても退屈やからな」


 親の反対を押し切ってまで来るということは、拓也はまた刺激を受けたいらしい。


「あず君は大阪行ったことあるか?」

「大阪はJBC(ジェイビーシー)の予選の時に1回だけ行ったことがある」

「よかったら関西での国内予選の時以外も、うちに泊まりに来てや」

「余裕ができたらな」

「じゃあエスプレッソ1つ貰うわ」

「別にいいけど、失業手当が尽きたらどうするの?」

「俺は実家暮らしやから別に問題ないで」


 拓也は開き直ったように笑顔で答えるが、璃子は顔が若干引いている。


 実家に寄生できるなら、僕もそうしていたかもしれないが、今は実家で時間を潰すよりもずっと楽しい生き方を覚えてしまった。だから今の僕にはニートという選択肢はない。


「あっ、拓也さんも来てたんですね」

「唯ちゃんやん。ここの常連なん?」

「はい。今は他の外国人観光客が多いので、夕方くらいにしか来れませんけど」

「確かに夕方を迎えるまでは外国人がいっぱいおったなー」

「ですねー。これで日本人まで来たらどうなるんでしょうか?」

「間違いなく厨房が死ぬな」


 拓也は唯の豊満な膨らみばかりを見ていた。まだ中学生だが、体形は大人のモデル顔負けだ。


 璃子に匹敵するスタイルの良さじゃないかと思うほどだ。


 唯は拓也の視線に気づいている様子であり、恥ずかしそうな顔で目のやり場に困っていた。大半の男はこの反応を見て、自分のことが好きだと勘違いするらしい。


 店の営業が終わり、僕、璃子、拓也が2階へと上がった。


 拓也からはモンスター、魔法、罠をうまく使って戦う某カードゲームのビデオゲーム版を勧められ、言われるままゲームをやらせてもらい、夢中になった。ルールはアニメを見ていたこともあって覚えていた。何を隠そう、僕がゲームを本格的に始めたきっかけは拓也である。


 カードゲーム版は定期的にお金がかかるため、ビデオゲーム版に夢中になっていた。カードゲームは人と関わらないといけないし、他人と接しなくて済むこっちの方がずっと気楽だ。


「めっちゃうまいやん」

「アドを取っていけば何とかなるな」

「なあ、今度大規模なオフの大会があるんやけど、一緒に出えへんか?」

「誰とも話さずに済むならいいぞ」


 いつもの動画投稿が終わった後で拓也と遊びまくった。


 こうして誰かと一緒に遊んだのって何年ぶりだろうか。普通の高校生や大学生はいつもこんな風に遊んでいるのだろうか。久々に失った日常を取り戻したような気がした。


 度々拓也に誘われては、某カードゲームのビデオゲーム部門のオフ大会に出ることに。


 3月下旬、多くの人が卒業シーズンを迎えた頃だった。


 葉月珈琲の新年度は1月だが、日本の新年度は4月からである。


 自分が日本人であるという感覚はすっかり抜け落ちていた。璃子も似たような状態だ。僕らは日本では非日常とされる日々を過ごしている。毎日多くの外国人に囲まれ、1日の中で最もよく使っている言語は英語だ。日本国内でこれほどの非日常を過ごしている人間も珍しいだろう。


 いや、もはやこっちの方が日常かもしれない。


 3月下旬、日曜日を迎え、久しぶりにヤナセスイーツへと赴いた。


 スフレチーズケーキが食べたくなったのだ。


 ヤナセスイーツの自動扉が開き中に入る。璃子と優子がすぐに気づいた。


「あっ、あず君、ひっさしぶりだねー。あれから全然来なかったもんねー」

「まさかマスゴミに目をつけられるとは思わなかったからな」

「ちょっと遅れちゃったけど、JLAC(ジェイラック)優勝おめでとう」

「ありがとう。それにしても、最近外国人が多いな」

「うん。前にも言ったと思うけど、あず君の店が繁盛するようになってから、うちの商店街にも外国人が来るようになって、お陰で何とか食い繋いでるの」

「それは良かった」

「わざわざ岐阜まで来てから、あず君のお店の事情を知って、仕方なく商店街を回る人なんかもたくさん来るようになったよ」

「それ日本人規制法に助けられてるよな?」

「うん……皮肉だよね。あず君が迫害を受けなかったら、うちの店は今日まで持ってたのかな?」


 ――おいおい、不吉なこと言うなよ。迫害に遭う意味なんてない。


 迫害を受けずに、商店街が賑わいを取り戻すのが1番に決まっている。


「僕がどんな目に遭おうと、ヤナセスイーツの運命は変わらない。どっちに転ぶかは、結局優子の腕次第だぞ。いくら人通りが多くても、人気がないと意味がないからな」

「それもそっか……あたし次第なんだよね」

「お兄ちゃん、ザッハトルテがうまく作れるようになったの」

「マジでっ!?」

「うん。優子さんが私のスイーツを店頭のショーケースに並べることを認めてくれたの」

「本当はもっと時間がかかると思ってたんだけど、思ったより習得が早いから、うちの主戦力になってもらうことにしたの。給料出すって言ったけど、給料はお兄ちゃんから貰ってるからと言って全然受け取ろうとしないの。困っちゃうよねー」

「ただでさえ食材費をお兄ちゃんに払ってもらわないといけないくらい店の経営が厳しいのに、給料なんて貰ったら……店が潰れちゃうかもしれないと思うと、受け取る気になれませんよ」

「璃子は本当に他人本意だな。貰っときゃいいのに」

「お兄ちゃんが自分本位すぎるだけだと思うけど」


 まっ、それを言うなら、人は誰しも自分本位で生きてると思うがな。そうでなければ、他の生き物を捕食してまで生き延びようとは思わない。自分本位に生きるのは、もはや本能と言っていい。


「あれっ、あず君久しぶりー」

「俺らはあず君の活躍を見るのが、今の楽しみなんだよー」

「えっ、嘘っ! あず君来てるの?」

「あっ、本当だっ!」


 葉月商店街の人たちが集まってくる――いつもとは違った光景だ。


 日本人恐怖症を発症した時、あからさまに怖がったおじさんもいた。


 今は目を合わせなければ大丈夫だが、何であの時はあんなに怖がってたんだろう。


 もうあの時のことを過去と思えるくらいには改善したのかな?


 相変らず触られるのは無理だ。1人でいるのが1番楽なのは変わらない。


「あず君のこと聞いたよー。過去のトラウマで日本人が怖いんだってねー」

「俺、全然事情を知らなかったから、てっきり意地悪で店に日本人を入れないもんだと思ってたんだ。悪かったなー。俺たちの不徳の致すところだ」

「……いいんだよ……分かってもらえれば」


 商店街の人たちはようやくタイムラグで僕の事情を知ったらしい。それまでは大雑把にしか僕の情報が伝わっていなかった。親父やお袋や金華珈琲のマスターが僕の事情を細かく説明してくれたらしい。


 人が集まってきたことに危機感を覚え、ケーキを買うとすぐにヤナセスイーツを後にする。


 4月以降は店が更に軌道に乗り、利益が上がり始めた。


 久しぶりにゲイシャのコーヒーも店で出すようになり、エスプレッソもカプチーノもそれぞれ1杯3000円とした。いずれもブリランテ・フトゥロ農園のゲイシャだ。


 ワールドバリスタチャンピオンの宣伝効果は絶大だった。この時期に海外の番組でもうちの店が取り上げられ、それを知った人たちが挙って店に来てくれた。一度宣伝に成功すれば、後は他の人が勝手に宣伝してくれる。僕はそれを実感することに。今年は主にフランス人の客が多かった。彼らと会話をするためにフランス語を習得していたが、この頃には彼らとの日常会話には苦労しなかった。


 この日も僕、璃子、リサ、柚子の4人で店を回していた。


 客は大勢いたが、4人もいるお陰で1人あたりの負担が減った。ラッシュが終われば3人でも回るようになるし、より早く璃子をヤナセスイーツで修行させることができる。


「あず君って、言葉の習得早いね」


 柚子がフランス語で接客していた僕を見て不思議に思った顔だ。


 得意分野の1つである言語の習得に触れてくる。


「ヨーロッパの言語はどれか1つ覚えれば、他の言語の習得は比較的容易だ。英語圏の人から見たフランス語とかドイツ語とかは方言みたいなものだし、基本的には話す方を重視してる。単語の勉強はあんまりしてないから、話す方はできても、書く方はあんまりできないし、外国に行った時は知ってる単語しか分からん。意外だろ?」

「ふーん。それを考えると、英語が苦手な他の人とは対照的だよね」

「あいつらは英語が苦手なんじゃない。自己主張するのが苦手なんだ。小さい時から間違っちゃいけないとか、正確に伝えないといけないとか、自分の意見を言うことがはしたないとか、変な固定観念があるせいで、なかなか言葉が出てこないってわけだ。間違ってもいいから伝えようとする意思っていうのがあいつらにはないんだ」

「確かに言われてみれば、日本人ってメンタルブロックが多すぎる気がするね」

「でも通訳がついた途端、急にハキハキと話し始めるんだよなー。あいつらに足りないのは、語学力じゃなくて自信なんだよ」


 言葉を自転車に例えるなら、通訳は補助輪のようなものだ。言ってしまえば、あいつらは補助輪がなければ自転車を漕げない子供だ。意思疎通なんてどうにでもなるのに。


 ふと、中3の時の英語の授業を思い出した。


 絶対にアイキャンって言わないといけないって教わってたし、インとかオンとかを入れる穴埋め問題も実にあほらしい。あんなのどれ入れたって通じるってのに。相手の理解力を馬鹿にしすぎだ。


 この時はラッシュも多かったが、僕はそれを逆手に取り、カプチーノが注文されるとラテアートの練習も兼ね、課題である花を描いた。世界大会まであと2ヵ月、プレゼンは必要最小限でいい。プレゼンのことは考えなくてもいいが、ルールは前回と一緒だし、集中力が必要だ。


 店の営業が終わった後はデザインカプチーノの練習だ。


 たった1日から3日のために何ヵ月も費やす。それが大会というものなのだ。


「そういえば、あのシグネチャーはいつから飲めるようになるの?」


 キッチンで調理をしていると、1人の外国人観光客からシグネチャーをリクエストされる。


「あー、あれね。一応やろうと思えばできるけど、まだ値段が決まってないんだ。通常のゲイシャでも3000円だから、シグネチャーだともっと高くなるけど、それでもいいかな?」

「世界大会で結果を残したドリンクだ。たとえ1杯1万円だって払うよ」

「そんなに需要があるなんて知らなかったな。混ぜる食材の調整を終わらせてから出すようにするよ」

「ああ、その時になったら呼んでくれよ」

「多分期間限定になると思うけど、好評ならレギュラーメニューにするかも」

「そうかい、楽しみに待ってるよ」


 心待ちにしてくれてる人がいたんだ。食材が足りるといいけど。


「ねえ、日本人客にもゲイシャが飲みたい人いるんじゃないの?」

「あいつらはここがどんなメニューを出してるか知らないし、知らせたところでお預けプレイになるだけだから知らせなくていい。知らない方が幸せなことだってあるんだ」

「私もそれ、飲みたくなってきたな」

「柚子は飲んだことあったっけ?」

「シグネチャーは初めてかな。コーヒーに混ぜたことがあるのは牛乳と砂糖くらいだし」


 柚子はシグネチャーに興味を持ったらしい。ほとんどのコーヒー通はシグネチャーの極意を知らぬまま一生を終える。それを考えると、柚子はとてもラッキーなコーヒー通なのかもしれない。


 午後9時、すっかり客のいなくなった金華珈琲へ赴いた。


 夜にコーヒーを飲むと、眠れなくなると分かっていながらも飲みたくなる。それほどにまで僕にとっては魅力的なのだ。店内に客は僕1人、厨房にはマスターと親父がいる。ついこの間までは、店員よりも客の方が少ない光景は珍しくなかった。


 こういう光景って、店側からすれば、想像するだけで泣けてくるんだよな。


「この頃ずっと店が閉まる直前に来るよねー」

「他の客がいると声をかけられるからね」

「お前が有名人の仲間入りをしてから、色んな人に説明するのに時間も体力も浪費しちまったよ。親としては複雑だけどな」

「僕を学校に行かせ続けた代償を今払ってると思えば安いもんだ」

「僕も学校は嫌だったなー。僕や和人さんくらいの世代は体罰とか当たり前のようにあったからねー。今の方がまだ良心的に思えるかなー」

「それももうすぐいらなくなる時代が来る。今まで学んできた知識のほとんどがインターネットや外の世界で学んだことだから、学校や会社に行かなくても、学習や仕事ができるようになると思う」


 僕としてはインターネットが普及してから生まれたかったけど、後の時代に生まれていればコーヒー業界における先駆者にはなれなかったかもしれない。それを考えれば、インターネットが普及する前の不便な時代に生まれたのは、ある意味幸運だった。


 何者も先駆者には勝てない。先駆者以外は全員、モノマネ芸人の域を出ないと思っている。


「お前なー、それで全員が飯食えると思ったら大間違いだぞ。終身雇用がなくなったら、食えない奴が出てきて大変なことになる」

「まだそんなこと言ってんの? 終身雇用は確実にどこかでなくなるぞ。昔は転職者=裏切り者みたいな方程式があったけど、今じゃ転職者ってだけで叩く人はほとんどいなくなっただろ。もはや定年まで同じ会社に居座ってる人の方が少数派になってるはずだ」

「確かにそうかもね。僕も昔はコーヒー会社に勤めてたんだけど、周吾さんに気に入られてね。それで思い切って周吾さんが経営していたこの場所で修業を重ねることになったんだよ」


 おじいちゃんの後を継いだマスターはホスピタリティに溢れている。


 おじいちゃんが特に気にしていたポイントだ。おじいちゃんはバリスタとしての才能よりも、接客態度や心地の良い空間を提供できる人を優先的に雇っていたらしい。


 僕には意味が分からなかった。お世辞にもマスターにはトップバリスタとしての才能がない。ホスピタリティは完璧だけど、そこ止まりというか、最先端を追求していく探求心がない。


「何でおじいちゃんはマスターを気に入ったのかな?」

「いやー、それは僕も聞いたことなかったなー」

「親父は分かる?」

「そうだな。マスターはバリスタに必要なものを持っているからじゃないか。才能は大事だが、それ以上に大事なのはバリスタとしての心構えだ。ただ作業が早くて新しいコーヒーを生み出せるだけのバリスタをトップバリスタとは言わない」

「死ぬ直前のおじいちゃんから心構えは三流だって言われてさ、ずっと気になってた」

「「!」」


 つい思ったことを弱音を吐くように呟いてしまう。


「僕は客に最高の空間を提供できてるのかな?」

「できてなかったら、毎日ラッシュが続くはずがないよ。僕の見立てだと、あず君は今まで見てきたどのバリスタよりも群を抜いているし、ここに時々やってきた外国人からも悪い噂は聞かないし、もっと自信持って。あず君も十分にトップバリスタだよ」


 マスターは冷静に言いながらも、笑顔でガッツポーズをして励まそうとする。


「……そうだな」


 おじいちゃんが何故この人を次のマスターにしたのかが少し分かった気がする。


 束の間の平和を過ごし、金華珈琲を後にするのだった――。


 季節は流れ、5月を迎えた。


 ゴールデンウィークの日曜日、親戚の集会後だった。いとこたちが留守番をしていた僕の家までやってくる。僕はみんなから店の状況を詳しく聞かれた。


 親戚一同の借金を返せるかどうかが店の売り上げに懸かっている。


 いとこたちも度々店に来るようになった。最初はみんな値段の高さに驚いていたが、週1回程度なら通えるそうだ。エドガールのおっちゃんが一緒の時は代わりにお代を出してくれるため、そこまでの負担にはならない。うちに貢いでくれるのは嬉しいけど、無理はさせたくない。


「あず君、来月の世界大会だけど、私も連れて行ってくれないかな?」


 柚子が真剣そうな顔で言った。何故だろうかとすぐ気になった。


「旅費は僕とサポーターとして連れていく璃子の分を確保するのが限界だから、どうしても行きたいって言うなら自己負担になるけど、それでもいいなら別に構わない」

「じゃあ一緒に行かせてもらうね」

「もしかして、そのためにうちでのバイトに応じたの?」

「うん。私……まだ一度も世界に出たことがないから、知見を広めるために海外まで行きたいの。でもうちの親は大学があるから駄目って言ってくるし、どうしても外に出てみたいのにね。だから困ってたんだけど、あず君ならどうにかしてくれるかなって」

「だったら親の意見を無視して行けよ。もう成人してるんだからさ、自分で判断くらいできるだろ?」

「……ふふっ、まさかあず君にそれを言われるとはね」


 こうして、WLAC(ワラック)には璃子に加え、柚子もついてくることに。璃子にはサポーターとして付き添ってもらう。それだけでも大きなメンタルケアになるのだ。


 人のことを言えるほど、まだ自立できてないのかもしれない。


 僕は店の顔として、新たなコーヒーを売ることになるのであった。

気に入っていただければ、

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