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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第4章 有名バリスタ編
76/500

76杯目「無職の人生論」

 拓也はどこか愛想笑いを浮かべているように見えた。


 僕もバリスタを目指すまでは、正直働きたくないと思っていた。ニートになりたい人の気持ちは痛いほど分かる。ニートになれたならそうしていたかもしれない。


 将来の夢を何度も煽られている内に目標がないといけないと思う自分がいた。無意識の内に、顔のない圧力に屈していた。真由も拓也と同様、僕の遠戚ということで祝勝会に参加させてもらっていたが、2人共僕と同様にコーヒー好きであるため、話し込むように意気投合したことは記憶に新しい。


 真由は拓也ともすぐに意気投合している。


「あず君、優勝おめでとう」

「あず君って本当に人気者だねー。全然話しかけられなかったよ」


 声をかけてきたのは柚子とリサだった。


 2人共外へ出る時はかなりオシャレな格好だ。


 僕の活躍をテレビで見るまでは、無名だった時の僕のことしか知らないから無理もない話だが、僕の有名人らしい姿を見るのはこれが初めてだろう。短めのスカートがよく似合う。


 まだ寒い季節だけど、大丈夫なのかな?


「今は親戚の集会にも出られないけど、いつでも店で会えるだろ」

「この頃ずっと行列だったからさー、全然入れなかった。営業時間6時間っていうのも短いと思うし、そもそもなんで日曜日が休みなの?」

「それ私も思ってた。私としては友人と同じ日に休めるからありがたいけど、どうしてお客さんが最も多く来る日曜日を休みにしてるんだろうってね」

「営業時間を6時間にしてるのも、日曜日を休みにしてるのも、全部体調管理の一環でやってる。労働時間が長かったり、客が多すぎたりすると、過労の原因になって、結果的に休みの日が増えるからな」

「あず君は体力が少ないのが弱点だもんね。まあそれなら分からなくもないか。でもあず君がいない日にお店の営業をしないのも、何だか勿体ない気がするけど」

「あのなー、今はどの客も僕が目当てで来てるし、みんなペーパードリップも満足に淹れられないんだから無理に決まってるだろ。せめて璃子が淹れても一流と言える味になるまでは、僕なしで営業は無理だと思うからさ、僕じゃなくて、葉月珈琲自体が目当てで客が来るようにならないと駄目だ。僕が大会に出続けてるのは、葉月珈琲の名を世に知らしめる意味もある」

「確かに言われてみれば合理的かも。じゃあ法人化は?」

「法人化はもっと稼げるようになってからだ。うちは売上自体は上がってるけど、今年からは人を雇ってるわけだし、最終黒字に抑えるのが精一杯だ。もっと純利益を上げるようになってからじゃないと、下手に法人化しても損をするだけだ」

「……詳しいね」

「儲かるようになれば、法人税が所得税を下回るし、法人化するのはその時だ。今はいかんせん先行投資やら経費やらで、消耗が激しいからしょうがねえよ」


 法人化は何度か考えたことはあるが、店が小さいうちはいつ潰れても不思議じゃない。すぐに撤退がしやすい個人事業主の方が何かと都合が良い。


 だが迂闊な撤退もできない。もうしばらく耐える必要がありそうだ。


「おっ、あず君やん。今美羽さんたちとあず君のことを話してたところや」

「噂をすればってとこか」

「別に悪口とちゃうで。あず君ってホンマ色んな技能持ってるんやなー。羨ましいわー。目を瞑りながらピアノが弾けるってホンマなん?」

「一応本当だ。ていうか目を開けてる方が集中し辛いかな。余計な視覚情報が入ってくるから、目を瞑ってた方が集中できるってだけ」

「ほぇ~、変わってんなー」

「僕に言わせりゃ、平均的な人間の方が不自然だけどな」

「ねえ、拓也君がニートになった理由をあず君にも話してあげたらどう?」


 美羽が自分のポニテを指でクルクル回しながら尋ねた。


 ――あぁ~、遂に聞いちゃったよ。


 この話をするってことは、他の話題が尽きたってことだ。


 美羽の質問を皮切りに、話題はJLAC(ジェイラック)から拓也の過去へと変わる。


 柚子とリサは美月と真白会長と話している。僕、璃子、唯、真由、美羽がいる中で、拓也は覚悟を決めたのか、今までの過去を洗い浚い全部話し始めた。


「俺は高校の推薦で、卒業後にすぐ居酒屋に就職したんやけど、それが運の尽きやったわ。どことは言わんけど、某大手ブラック居酒屋チェーンとだけゆうとくわ」


 まっ、飲食業界はどこもかしこもブラックだけどな。


「俺は高卒と共に居酒屋チェーンで働き始めたんやけど、いかんせんずっと労働ばっかりでな、店長も仕事はしんどいもんやってゆうとったから、そういうもんやと思ってひたすら働き続けたんや。定時になっても帰れないし、始発に載って終電で帰る日々をずっと過ごしとってな、そのペースのまんま2年が過ぎた頃、まるで電池が切れたかのように、営業中に倒れて病院に緊急搬送されたんや」

「えっ!? 大丈夫だったのっ!?」

「大丈夫じゃなかったら、今ここにおらへんやろ」

「「「「「はははははっ」」」」」


 拓也は笑いを取りながらひたすら自分の過去を話す。話す時の声や口調は勇ましいが、顔の表情はどこか悲しそうだった。僕には彼が勇者のふりをした臆病者のように見えた。当時の拓也は過労による適応障害と不整脈になっていて、もう少し搬送が遅れていたら命が危なかったという。そりゃ2年もロクに休まずに働き続けたら、過労死コースになるのは当然だ。むしろ2年持ったのが奇跡とも言える。


 拓也は体育会系であり、高校の時までずっと野球部だった。


 彼自身も体力だけが取り柄と思っていたために、発見が遅れてしまったという。


「会社のせいで入院する破目になったってのに、あろうことか復帰が困難であることを理由にクビにされたんよ。それでもうなんか使い捨てにされた気分になってめっちゃ腹立ったから、親に頼んで訴えることにしたんやけど、証拠を全部揉み消されたせいでな、証拠不十分っていう理由で裁判負けてもうたんよ。失業手当は貰えたけど、結局労災認定はされんかったんや。それでもう二度とこんな理不尽な社会で働きたくないって思ったから、それからはずっと入院歴を盾にニートしてるんや」


 拓也はこの件でグレてしまった上に、今まで働きづめだった反動が重なり、家事を含む一切の労働をしなくなったという。そうか、拓也は絶対に就職しないという信念を持ち続けている僕に自分を重ねていたんだ。どうりで僕に対する共感が強かったわけだ。ずっと社会貢献してきたつもりが、ただ搾取されていただけであることに気づき、働くことに憶病になってしまったパターンだ。


 これはあくまでも氷山の一角に過ぎない。


 日本ではこういう人が人知れず過労死している。これでは働くのがアホらしくなるのも無理はない。我慢は美徳であると教え続けた結果だ。話を聞いて自分の判断が正しかったことを確信した。日本の企業に就職しなくて良かった。拓也は日本社会の不条理に挫折してもなお夢に向かって活躍し続ける僕に刺激を受けた。僕に葬式で会えるとは思ってもみなかったとのこと。


「まあそんなわけやからさ、もう働く気力がないんや」

「そう言う割には、あず君の応援をするために東京まで来てるあたり、行動力はあるみたいだね。本当に何もやりたいこととかないの?」


 事情を知った美羽が人差し指を顎に当てながら拓也に尋ねた。


「今のところはないなー。働くのがあほらしいわ。俺はな、働かないことによって、この腐った社会に対して抵抗してるんや」

「抵抗したら全てが解決するか?」

「……えっ!?」

「そんなことしたって社会は変わらないし、働かずに何のスキルも身につけないまま30代を迎えれば君の市場価値は地に落ちる。そうなってからやりたいことが見つかっても、リカバリーが効かないぞ。その生き方はリスキーだ」

「ぐうの音も出ない正論やけど、もうやる気ないんや。未来なんかどうでもええし、後は散々俺を苦しめたこの国が滅ぶのを願うだけや」


 拓也はこの国を心底嫌っていた。


 働けど報われないこの気持ち……僕にもそんな時期はあった。


 ニートになったことがないが、何故かニートの気持ちが理解できる。


 この謎の理解力には僕自身も驚くばかりだ。無職は誰でもなる可能性がある以上、とても他人事とは思えないのもあるが、こいつの絶対に働きたくないという信念は、昔の僕に通じるものがある。


「僕もこの国が嫌いだし、働きたくないと思ってる」

「せやろ。だから働きたくないんや。こんな国に税金なんか払いたくないわ」

「仕事というより遊びだと思ってる。拓也はコーヒーブレイクを仕事だと思ってやったことあるか?」

「いやいや、コーヒーブレイクって休息やろ」

「僕にとってバリスタという職業は、仕事、趣味、特技、生活、休息、これら全部の要素が混ざった夢のような職業だ。コーヒーを楽しみながら、コーヒーを飯の種にして、休む時もコーヒーを飲む。働くとか働かないとか、僕にはそういう概念がない」

「なんかゆうてること滅茶苦茶やな」

「あず君は仕事とプライベートの境界線がないってことでしょ?」

「そういうことだ。苦役だと思ってやっている内は本当にやりたいことじゃないと思うし、最初の職場が合わなかったくらいで、落ち込む必要もないと思うぞ」


 説得するように言うと、拓也は黙ってしまう。


 いつの間にか、僕と拓也の2人だけになる。美羽たちは璃子たちと仲良しそうに話している。拓也と一緒にいる時は遠慮がちな表情を浮かべながら彼の話を聞いていたが、拓也から離れると笑顔が戻る。


 あれは流石に拓也がネガティブすぎたかもな。


「……俺はどないしたらええんやろ」


 拓也が少し高めの天井を見上げながら呟く。


「見返してやればいいじゃん」

「見返す?」

「うん。今まで拓也を侮ってきた教師も同級生も店長も、みんなが手の平を返すくらい活躍して見返してやればいいんだよ。僕も茶髪であることを理由に散々酷い目に遭わされてきたし、起業してから何度も店を潰しかけた。だから拓也の気持ちも全く分からないわけじゃない」

「……あず君はそれでも何で諦めなかったん?」

「一言で言えば、信念が挫折に勝ったからだ。失敗すればするほどに、この方法では駄目だという発見をすることで最適解に辿り着ける。それを知ってからは失敗が怖くなくなった」

「それは誰が教えてくれたん?」

「コーヒーだ。僕は何万回もコーヒーを淹れてきたけど、段々とそれぞれのコーヒーに合った最適な淹れ方を覚えていった。コーヒーの声に背くと、それが嫌な雑味や苦味になって現れる。コーヒーは僕の駄目なところを味で教えてくれた」


 コーヒーのお陰で挫折を乗り越える信念を手に入れた話を例に拓也に人生の楽しみ方を説いた。拓也の境遇はとても他人事とは思えなかった。下手をすれば、僕がそうなっていたかもしれないから。


 彼はきっと、人生に失敗した世界線の僕なのだ。


 単なる思い込みと言われればそれまでだが、僕にはそう思えてならない。だから拓也を放っておけなかったのだ。普段は人に興味なんて持たないはずなのに、僕らしくもない。


「あず君の夢はコーヒー業界の地位を上げることやったな?」

「うん。今はバリスタの地位が低いけど、いつかは子供たちが、アスリートやアイドルを目指すような感覚で目指すような職業にしたい。拓也の境遇には同情するけど、せっかく生まれてきたのに何もしないという選択肢はないと思う……拓也が僕に会いに来たのは何で?」

「うまく説明できんけど、テレビで初めて見た時から刺激を受けたんや」


 拓也は僕に刺激を受けていたものの、どうすればいいのかが分からないままだった。


 彼にはそれなりの知識はあるが、知識を吐き出せる場所がない。


「拓也は就労支援施設にいるんだっけ?」

「ああ、興味あるん?」

「1つ疑問があるんだけど、何で就職する気がないのに、就労支援施設にいるわけ?」

「うちの親にぶち込まれたんや。俺の意思で行ってるわけじゃないんやけど、定期的に行かないと親が怒るからな。退院してしばらくしてからずっと就職しろの一点張りでなー、それで週に何度か行ってるんやけど、そこでもなかなか馴染めないんや」

「馴染めない?」

「何というか、クラスに1人はいるような問題児ばっかりが集まる場所でな、そこでみんな就職に向けて訓練をしてるんや」

「訓練ってことは、実際に現場まで行って業務をこなすとか?」

「いや、そういう本格的な訓練とちゃうねん。感情のコントロールをする訓練とか、多少理不尽なことがあっても怒らないようにするための訓練とかや」

「えっ!?」


 感情のコントロールをする訓練? どういうことだ?


 ――そういうのは小学生の内に済ませておくものじゃないのか?


「俺も度々参加してるんやけど、これがもうなかなか難しくてなー。俺は普通にできるけど、他の奴はと言えば、これがもう全然できないんよ」

「そんなんで就職とか大丈夫なの?」

「もう3年以上居座ってる奴もおるからなー」


 ――何だ? そのやる気のない内容は? 本当に就職する気あるのか?


 クラスに1人はいる問題児がたくさん濃縮されていて、3年以上居座ってる人がいるって聞いた時点でもうやばい連中な気がしてきた。というかそいつらの就職先の人たちが可哀想に思えてくる。


「でも居心地はええんやで。9時から5時までずっとパソコンとか使い放題や」

「そのパソコンで就活するの?」

「いや、遊んでるだけや」


 それただのネカフェじゃねえか! うちの店も僕専用のネカフェみたいなものだけど、遊び目的でパソコンを使ったことはないし、ネカフェと呼ぶには相応しくない。


 だがここまでやる気のない就労支援施設と聞くと、逆に興味が湧いてくる。


「お兄ちゃん、そろそろ帰った方がいいと思うよ」


 璃子が後ろから僕の肩をツンツンとつついて話しかけてくる。


「えっ、もうそんな時間だっけ?」

「早く帰らないと、明日の業務に支障が出ると思うよ」

「それもそうか。美羽に途中で抜けるって伝えておかないとな」


 僕は璃子と共に美羽がいる所まで歩き、途中帰宅を伝えた。


「えーっ! もう帰っちゃうのー?」

「明日も仕事がある」

「美羽、そう言うな。あず君にも仕事があるんだから」

「はーい」


 美羽は残念そうな顔で僕らを見送る覚悟をする。


 穂岐山社長は僕が優勝したこともあり、すっかり上機嫌になっていた。


 自分の会社の社員でもないのに、まるで身内が勝ったかのように喜んでいる。他のコーヒー業界の関係者に対して、僕と一緒に過ごした話なんかを自慢している。そんなに誇らしいとも思えないが、僕と一緒に過ごしたことは、誰かにとっては物凄く自慢できることになっているらしい。


 誰かに肖ろうとと思ったことはない。そんなことをしても、誰かになれるわけじゃない。自分はあくまでも自分でしかないのだ。自分は誰かにはなれないし、他人は自分になれない。だがどうしてもありのままの自分を愛せない人が、この世にはいるらしい。


 全ては自己肯定感の低さによるものだろう。


 自己肯定感のある人間は誰かに肖ったりしない。自分に自信がないと言っているようなものだ。それにしても、拓也のように無気力で何もしない人間が増えるのは好ましくない傾向だ。それは生きているとは言えない。死んでないだけだ。生まれてきたからには何かを達成して唯一無二の存在になりたい。それが生者としての本能的な欲求ではなかろうか。しかし、拓也を含むニートと呼ばれる連中からはその覇気が全く感じられない。きっと余程のことがあったに違いない。少なくとも、甘えでそうなったのではない。原因が分かればどうにでもなるが、彼らに原因を求めるのはナンセンスだ。


 僕、璃子、唯、リサ、柚子の5人は美月の家を後にする。


 後ろを振り返ると、美羽たちが手を振っている。しばらく歩いて東京駅の近くまで辿り着くが、人がいっぱいで、急に気分が悪くなった。


 群衆はたとえ外国人ばかりであってもきつい。


「美月さんの家、凄く大きかったね」


 柚子が話し相手欲しさに語りかけてくる。


「それがどうかしたか?」

「あず君もああいう家に住めるようになるんだろうなって思ったの」

「家が大きけりゃいいってもんじゃねえぞ。掃除とか大変そうだし」

「あのねー、ああいう家に当たり前のように住めるような人たちから、あれだけたくさんちやほやされてるのに、何とも思わないの?」

「思わない」

「あず君には欲がないな~」

「僕にも欲はあるぞ。できれば僕じゃなくて、うちの店を好きになってほしいとか」

「あず君の身内と外国人しか入れないお店を好きになれるかな?」


 リサが僕の弱点を突くように指摘する。流石にそこを突かれると弱い。


「お土産でも買っていくか」

「あっ、誤魔化した」

「まあまあ、あず君が言ってるんですから、お土産買いに行きましょうよ」


 唯が僕を庇うように味方する。思えばずっと僕の味方で居続けてくれた。ここまで献身的な人も珍しい気がする。僕らは東京都内のデパートで土産物を買った。みんな自分たちの小遣いと相談しながら買い物をしていった。僕はコーヒーの器具が売っているコーナーにいた。


「やっぱりここにいましたね」


 唯が僕を見つけて嬉しそうに声をかけてくる。スーパーやデパートなどの商業施設に行く時は、優先的にコーヒーの抽出器具やコーヒー豆が売っている場所まで赴く。


 どうやらこの習性はお見通しだったようだ。


「あず君は今日ずっと拓也さんとばかり話してましたね」

「ニートと話ができる機会はそうそうないからな。僕も下手すりゃあんな風になってたかもしれない。もっとあいつらの生態が知りたくなった」

「私としてはちゃんと働いてほしいと思いますけど」

「唯は僕が働かなくなったら失望するか?」

「そっ、そんなことありませんよ! 私にとってあず君はずっとヒーローですから!」


 ヒーローか……聞こえはいいけど、ヒーローって大変なんだぞ。


 常に誰かの期待に応え続けないといけないし、絶対的な強さを誇示し続けないといけない。これを常に続けるのは、もはや呪いと言っていい。アニメや映画に出てくるヒーローたちは、もしかしたらこの呪縛から解放されることを、心のどこかで望んでいるのかもしれない。


 変に見栄を張り続ける辛さだ。


「僕は誰かの期待を平気で裏切るような人間だぞ。それでもヒーローと呼ぶのか?」

「はい。私はあず君に期待はしていますけど、絶対に応えてほしいとも思いません。もし応えてくれたらラッキーくらいの感覚です。それに期待を裏切る姿が好きな人もいるんですよ。ですから……ずっとありのままのあず君でいてください」


 ありのままの僕……か。唯のこの言葉には、救われるものがあるとさえ思える。変にプレッシャーのかからない期待のされ方だと思うし、唯だったら……僕のファンとして認めてもいいかもしれない。


 予定よりも時間が過ぎ、ようやく全員がお土産を買い終えた。


 すっかりと日が暮れた頃に、僕らは岐阜行きの電車に乗るのだった。

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