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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第4章 有名バリスタ編
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72杯目「失った日常」

 明日香との話が終わると、今度は成美が話しかけてくる。


 文化祭で会った時から全然変わってない気がする。


 成美は大学生になっていた。高校生と大学生はあまり差がないように思えるが、授業内容は大きく変わるらしい。必修以外は好きな授業を受けられるシステムだが、大学には行きたくない。基礎知識を蓄えるだけならインターネットで十分だ。選べるとはいえ、僕ぐらいになると全部嫌な授業形式である可能性さえある。わざわざ集団で授業を受ける意味も分からない。


 大学は学歴を買う以外の意味はない。


 以前コーヒーサークルの連中に話しかけられた時、何のために大学に行っているのかを聞くと、就職率を少し上げるためだけに、4年の歳月を費やしている人が多くてびっくりした。


 4年という時間と莫大な学費があれば、どれだけ多くのことができるか。


 もっと頭を使えよと言いたくなるような人たちばかりだった。そのことを成美に話した。成美も惰性で通ってる該当者かもしれないが、そんなことは気にしなかった。


 璃子は修行の課題が一段落すると、休憩しようとキッチンを離れた――。


「確かに言われてみれば、時間の無駄かもねー」

「お兄ちゃんが学校に行かないのは、時代遅れだからって言ってなかった?」

「えっ、何で時代遅れなの?」

「義務教育が始まったのは明治5年で、当時の明治政府の政策が富国強兵だった。要は優秀な兵士と労働者を大量に作る前提の教育だ。今は労働者の価値も段々下がってるし、勉強も仕事も全部インターネットで完結するようになった。にもかかわらず、未だに富国強兵前提の教育が変わっていないのが終わってんだよ。自分たちがどんな教育を何のために受けているのかに疑問すら抱かずに通ってる時点で、皆等しく頭悪い。学校の無意味さを知ってからは学園が舞台の作品が全然面白いと思わなくなったし、昔は技術的な問題で大勢の子供を1箇所に集めるしかなかったけど、今はその必要がない」


 僕に教育事情を語らせると非常に長い。


 図書館やインターネットを駆使していたためか、一応の知識はあった。足りないのは経験だけだ。


「夢を与える立場なのに、夢がないなー」

「夢を夢で終わらせないように現実を知る必要があるし、夢ってのは現実でしか叶わないものだぞ」

「「「ふふふっ!」」」


 優子も明日香も成美も遂に笑いを堪えきれなくなる。どこが面白いんだ?


「これがお兄ちゃんです」

「――あず君が成功した理由がちょっと分かった気がする」

「好きなことに没頭してただけ」

「でもさー、学校がなくなったら『集団生活』ができなくなっちゃうんじゃない?」


 成美が机に肘をつき、手の平に顎を乗せながら疑問を呈する。


 集団生活なんてものは、直接会うことでしか連絡を取れなかった時代の名残みたいなものだ。


 無論、今の時代には通用しない価値観だ。


 ――僕なんて未だに集団生活できないけど、それで困ったことはない。


 インターネットで仕入れの取引ができなかったら、璃子に仕入れを頼んでいたかもしれない。


「集団生活なんてしなくていい。みんな口に出さないだけで、本当は1人の方が気楽だって言える人も大勢いるし、みんながみんな集団生活好きだったら、1人でひたすら食事するだけのグルメマンガがあれだけ売れていることに対して説明がつかないだろ。ああいうのが売れるってことは、本当はみんなしがらみから解放されたいってことだ。自由になりたいんだ」

「言いたいことは分かるけど、食べていけなくなったらどうすんの?」

「食べていくだけなら手段を選ばなければ誰でもできる。この国は人より食料品の数の方が多いんだ。飢える方がおかしいだろ。食えないと思ってる人は、行動しない言い訳を考えてるとしか思えない」

「お兄ちゃん、失礼だよ!」

「いいのいいの、美咲からこういう人だって聞いてるから。そっか……あず君の言いたいことはよく分かった。あず君って、根本的に周りの人と価値観違うよね」

「素直に生きてるだけなんだけど」

「……」


 成美は外を向いたまま口を閉ざす。全く違う価値観に触れたことで思うことがあったのだろう。


「璃子だってさ、普段は僕とか優子の賄い食ってるもんね」

「うん。誰かのお手伝いとかしていれば、ご飯くらいご馳走してくれることが多いし、昔は給料とか全然なかったけど、食べていく心配はしたことないかな」

「――美咲がね、今進路を迷ってるの」

「美咲さんって、お姉ちゃんの同級生ですよね?」

「うん。昔は大学行こうかなって言ってたけど、今はあず君の影響で、真剣に自分の進路を考えてる。私の友達も、あず君の影響で好きなことを始めたっていう人多いの」

「影響なんて与えた覚えはないけど」

「テレビでお兄ちゃんのインタビューを聞いた人たちがそう思ったんじゃないかな? お兄ちゃんってインタビューで人生哲学とか持論とかも話してたから、多分その影響だと思うよ。今のお兄ちゃんは影響力が大きい立場なんだから、失言とかしないでよ」

「それは無理だ。失言と見なす範囲が広すぎる神経質な人とかいくらでもいるし、何を言っても絶対誰かには嫌われることになるから、全員と仲良くすることは諦めろ」


 きっぱり言い返すと、再び店の中が笑いの渦に巻き込まれる。面白いことは何1つとして言ってないのだが、こいつらの笑いのツボがよく分からない。璃子は相変らずタジタジな様子だが、璃子以外はこの状況を楽しむ余裕さえある。彼女たちにとって、僕はおかしなことを言う珍獣か何かなんだろう。


 璃子の修行を見届けると、ヤナセスイーツを後にする。


 夕方を迎え、早く動画撮影がしたくなったが、腹が減ってしまった。サクッと食べようと思い、商店街の外に出ると、1つの店舗が目に入ってくる。


 店の前に自動券売機が置いてある古びた鰻専門店だった。


 大きな木製看板には『うなぎふ』と書かれていた。鰻と岐阜が由来だとすぐに分かった。


 外から中の様子を覗き込んだ。


 ――うん、今は人も少ない。20席中客は3人か。ガラガラだな。


 でもこういう店って案外美味かったりするんだよな。うな重の並1つで2000円か。たまにはこういう飯もいいだろう。2枚の千円札が機械に吸い込まれていき、買える範囲内の商品全てに赤いランプがついた。迷うことなくうな重のボタンを押し、出てきたチケットを持って木造の引き戸を開けた。


「いらっしゃい」


 出迎えてくれたのは白を基調とした調理服のおじさんだった。店内は昭和を思い起こさせる木造の家であり、店長らしきおじさん1人と、若い店員らしき人が1人だった。手早く無駄のない鰻捌きには、どこか職人らしいものを感じた。僕は黙ったまま端っこにある2人分の席に着き、うな重と書かれたチケットを机の上に置いた。やっぱり端っこが1番落ち着く。


 ここからでも厨房で鰻を捌いてから焼く姿を確認することができる。


 数分が経過してうな重が目の前に置かれた。


「おまたせしました。うな重です」


 店長らしき中年のおじさんがうな重を持ってくる。両手で重の蓋を開け、そっと横に置く。


 中には1匹分の鰻が米の上に乗っている。下の層には濃厚なタレがたっぷりとかかり、茶色に染まったパラパラとした米がある。そばに立てられている割り箸を2つに割り、食べようとする。


 ――いきなりとろける食感と甘みが襲ってくる……鰻ってこんなに上手いんだな。しかもその後口に入ってくるタレつきの米と凄く相性が良い。


 はぁ~、幸せだぁ~。


 至福の一時を味わっていた時だった。


「あっ、葉月梓さんですよね?」

「……!」


 声をかけてきたのは、さっき僕に話しかけてきた男だった。


「いやー、まさかこんな所で()()会えるなんて思ってませんでしたよー」


 こんな所で赤の他人からまた話しかけられるとは思わなかったよ。


 ていうかさっさと離れてくれよ……マジでウザい。しかも加齢臭が漂ってるし。


 男を無視しながら黙々と食べ続ける。


「俺は『ジャーナリスト』の蜂谷義和(はちやよしかず)と申します。以後お見知りおきを」

「1人で食べたいから離れてくれるかな?」

「あー、はいはい」


 この蜂谷という人、さっき話しかけてきた眼鏡で赤い服を着た奴と同じ顔だ。


 ということはもしかして……同一人物か?


 蜂谷さんは僕から近い席に座ると、また話しかけてくる。


「さっきはどうも。あなたから色々とお話を伺いたいと思ってたんですけど、サインが無理でしたら、お話だけでも聞かせていただきませんか?」

「……断る」

「そこを何とか?」

「嫌だ」


 きっぱりと断った。だが蜂谷は引き下がらない。


「あの、他のお客様の迷惑なので、お静かに願えますか?」


 見るに見かねた店長らしき人が蜂谷を咎める。この人が蜂谷の相手をしている最中に黙々とうな重を食べ続ける。こいつさえいなければ完璧だったな。


 早めに食べ終えると、渋々とうなぎふを出て帰宅する――。


 メニューを注文したばかりだから当分は出てこれないはずだ。ジャーナリストは人権意識が欠如した人が多い。あんな連中をまともに相手すれば、体力の無駄遣いにしかならない。あいつらはスクープのためなら何でもやるダニのような連中だ。


「はぁ~」

「お兄ちゃん、どうしたの? ため息なんか吐いて」

「当分外に出られなくなった。さっきヤナセスイーツに来てたジャーナリストに目をつけられた」

「さっきの人、ジャーナリストだったんだ。お兄ちゃんも遂に有名税を払うことになったんだね」

「だから世間は嫌いなんだよ」

「じゃあもう買い物できないの?」

「そうだな。ジャーナリストが僕につきまとわなくなるまで、買い物を任せてもいいか?」

「うん、分かった。お兄ちゃんは日本人に話しかけられると恐怖なのにね」

「それだけで済んだらまだマシな方だけど、あることないことを言いふらされて、客を減らされたりしたらたまったもんじゃねえよ」

「マスコミって怖いからねー」


 マスコミじゃない。あいつらは『マスゴミ』と呼ぶべきだ。


 有名人のプライベートのことなんか何にも考えてないだろうし、絶対に弱みを見せてはいけない相手であることは間違いないだろう。あいつらとは極力接しない方がいいのかもしれない。


 しばらくの時間が経つ――。


 12月を迎え、葉月珈琲は毎日のように正午から夕方まで満員になり、利益は過去最高を記録した。


 ある日のこと、僕が動画を撮っていた時だった。


 店にあるピアノを固定カメラで映した状態で何度かピアノを弾き、編集して投稿するのだが、雑音が入っていれば撮り直しになるため、いつも防音してから撮り溜めをする。中には鈴鹿が弾いていたユーレイズミーアップもあった。璃子がヤナセスイーツから戻ってくると、僕はパソコンをカタカタ鳴らしながら撮ったばかりのピアノ動画を投稿する。


「お兄ちゃん、夕食は?」

「今日はいらない。もう食べたから」

「……この頃夕食早いね」


 璃子がその場に座り、寂しそうな声で言うと、自分の分だけの夕食を作り始める。


 僕は商品の仕入れや動画投稿などの作業が終わり、酷く疲弊しきっていた。


「ここんとこずっとラッシュ続きだったからな。利益が出せるのはいいけど、流石に2人じゃキツくなってきたし、夕食は早く済ませるようにしてる」

「じゃあ人を雇ったらどう?」

「バイトかー、まあでも、人件費を払えるくらいの余裕は出てきたし、来年から募集してみるか。育成とか指導とか大変そうだけど」

「身近に住んでる外国人とかを雇うの?」

「いや、バイトを雇うなら身内から雇った方がずっと確実だ。まずはリサか柚子を雇ってみるか。時給1000円+出来高で」

「何でリサか柚子なの?」

「リサも柚子も大学生だから休日も多い。小中高の連中は平日が全滅だし、大学生しかない」

「なるほど、じゃあリサと柚子に言っておくね」


 璃子はすぐ2人にメールを送る。相変わらずこういう時の行動は早い。しばらくして2人からOKの返信が来る。後は働けそうな曜日を確認するのみ。


 クリスマスがやってくる――。


 この日は店を貸し切り状態にし、僕、璃子、リサ、ルイ、レオ、エマ、吉樹、柚子、小夜子、美咲、紗綾、香織、唯、優子、ジェフ、カールが集まってくる。


 いつもよりずっと豪華な面々が揃っている。この中で初対面の人に対しては、それぞれが自己紹介を済ませた。これだけ集まると、初対面同士の人も少なくない。うちの店の予定は事前に動画サイトのマイページで通知されるため、外国人観光客たちには必ずすぐ伝わるようになっているのだ。


 例年のクリスマスよりもずっと賑やかだった。


 椅子が足りなかったため、余っている椅子を次々に持ってきて座らせていく。


「それじゃ、あず君の今後の活躍を期待して、カンパーイ!」

「「「「「カンパーイ!」」」」」


 それぞれが近くにいる人たちとグラス同士をくっつけてから少しだけ口に含む。


 例年通りのプレゼント交換会も行われた。


 クリスマスパーティの参加費は、1人3000円コースか6000円コースから選択する。3000円コースはクリスマス限定メニューとオリジナルシグネチャードリンクがついてくる。6000円コースは3000円コースのメニューに加え、エスプレッソかカプチーノを飲み放題できる権利がついてくる仕様である。流石に全部飲み放題にすると利益度外視になるため、料金は取ることに。


 シグネチャーは大会用に作ってはいたものの、結局使用しなかったもので、みんな3000円コースを注文したが、唯に優子に他の大人たちは6000円コースを注文してくれた。リサたちと小夜子たちがコーヒーの入ったグラスを机に置き、クリスマス限定メニューを食べながら楽しそうに話す。


「あたしたち、ずっとあず君が店を経営していることを知らなかったので、最初にテレビにあず君が映った時はビックリしたんですよ」

「私たちはもう知ってたんですけど、テレビで見た時は流石にビックリしましたし、同時に親戚にバレたなって思いました……」

「何かずっと怪しいって思ってたけど、本当にいつも驚かせてくれるよ。普段は隠し事とか全然しなかったあず君が隠し事をするようになったから」

「でも友達からワールドバリスタチャンピオンが出てくるなんて、本当に凄いなって思いますよ。のうのうと思考停止したまま学生やってる自分があほらしくなってきます」


 テレビで僕の優勝が報道されたことに驚きを隠せなかった人は多いようだ。ニュースの見出しには史上最年少かつアジア人初の18歳ワールドバリスタチャンピオンと大々的に載っていた。


 しかもご丁寧にあいつらが入店できないはずの葉月珈琲の住所まで表示してくれた。その時のコメンテーターが決勝で戦った内の1人だった。あの時はどうなるかと思ったけど、結果オーライだ。


 そんなことを考えながら、調理後の余韻に浸っていると、リサと柚子が話しかけてくる。


「あず君、雇ってくれるって本当なの?」

「本当だ。来年から時給1000円+出来高でどうかな?」

「それはいいんだけど、どうして?」

「2人だけじゃ限界が出てきた。今まではそこそこのラッシュだったら僕と璃子で捌けたけど、営業開始の正午から夕方あたりまで毎日ラッシュ続きで、客が全然絶えないからさ、これは流石に人手がいるって思ってたし、この頃動画と両立するために食事を早く済ませることも多かったからさ、璃子と一緒に食事できる機会が少なくて、平日の璃子は6時に出て9時くらいに帰ってくるけど、それだけじゃ修行の絶対量が少ないと思ったからさ」

「つまり、璃子にもっと修行させたいんだ」

「そゆこと。リサと柚子が来れる日は璃子を修行に行かせられる。僕は人手が増えて負担が減る。2人は小遣いを稼げるようになる。一石三鳥だ」

「そこまで考えてるんだ」

「まあな」


 2人共あっさり納得したようだ。大学生がバイトをするのは個人的にどうかと思うが、今はこの2人しか平日の昼間から働いてくれそうな身内がいない。決して安くはない学費で時間を買ったのにバイトをするのは、自分の時間を安く売る行為以外の何ものでもないのだが、大学の授業よりかは、社会に出た後で役に立つ知識と技術を提供できるだけの自信が僕にはある。だが問題は英語力だ。


 リサは英語に堪能だが、柚子は文法こそできるものの、正確に発音しないといけないという刷り込みによってなかなか話せなかった。話すのが無理なら作業に徹してもらうしかないか。


「柚子、英語話せるか?」

「話せるけど」

「そうか……えっ?」

「何? できないと思ってたの?」


 柚子が信用がないのかと言わんばかりのジト目で僕と視線を合わせた。


「……うん」

「私も吉樹も日常会話くらいならできるよ。エドガールさんに教えてもらってたし、婚活イベント会社に入るなら、外国人の相手もしないといけないと思ったから」

「それは助かるな。話しながら作業するのは大変だからさ」


 この前柚子が外国人と話してた時は、単語を思い出しながら文法を組み立てていた。


 てっきり英語は苦手だと思っていたが、相手の理解力に合わせて話そうとしていたとのこと。


「あたしも将来のこと考えないとなー」

「えっ! まだ決まってなかったのっ!?」


 おいおい、20歳(はたち)を過ぎたいい大人が、まだやりたいこと決まってないのかよ。


「リサって確か料理得意だよね?」

「うん、今じゃお母さんと同じくらいできるようになったよ」

「じゃあさ、将来の夢が決まるまでの間、うちで料理やらないか?」

「ここで料理担当をするの?」

「そうだ。どの道進路が決まらないままだと、大卒で無職になっちゃうし、本当にやりたいことが決まるまでの中継ぎとして働く。どこからも内定が貰えなかった時の保険になる。どう?」

「それいいねー。じゃあそうしよっかなー」

「その調子だと、ずっとここにいることになりそうだけど」

「いいじゃーん。それはそれであたしが決めたことだし、きっと何とかなるよ」


 リサは笑いながら柚子の肩に手を回してウインクをする。


 楽観的でお調子者なところは全く変わっていないようだ。


「ところでさ、大輔と優太はどうなの?」

「それが……2人共リーマンショックの影響で無職になってしまって、今も職を探し続けてるの。あず君雇ってあげたらどうなの?」

「今はそんなことできるような状態じゃねえだろ。ただでさえ親戚の集会は出禁になってるし、こればかりはどうしようもねえよ」

「でも、心配なんでしょ?」

「これ以上あの2人の機嫌が悪くなったら、借金返済を急かされるかもしれないからな」

「ふふっ、正月の親戚の集会が終わったら、またここに来るね」


 柚子はニッコリと笑い、リサと一緒に他の人たちの会話に混ざっていく。


 おじいちゃんが生きていたら、今頃ここに混ざってくれていたかもしれない。未だかつてない寂しさを堪えながらコーヒーを口に含む。今はこの賑やかな空間を見ながら余韻に浸りたい。


 夜を迎えると、クリスマスは無事、お開きになるのであった。

気に入っていただければ、

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蜂谷義和(CV:山寺宏一)

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