63杯目「団結する者たち」
リハーサルをするための場所を確保できたのはいいが、いくつか不安要素があった。
日本で使っていた時の食材と、ここで確保できる食材に違いがあることだ。
エスプレッソとミルクビバレッジはともかく、シグネチャードリンクにとっては味を左右する重大なポイントだ。とは言っても、使っていたのは持ち運びが可能なシロップ。ゲイシャと一緒に管理を徹底した上で運んでいた。冷やした状態でいくつかに分けて運ぶのだが、この作業がまた大変なのだ。
「俺はヘンリック・ラーセン、ここのマスターだ」
「俺はラース・ペーターセン、普段はここで働いてるんだ」
「葉月梓、普段はバリスタやってるんだ。よろしく」
「アズサハヅキ……もしかして日本から来たのか?」
「うん。WBC日本代表として来た」
「あー、君も参加者だったのかー」
璃子もファビオたちもヘンリックとラースの2人と挨拶を済ませた。2人は背が高めで、白い肌に金髪のショートヘアーでバリスタらしい格好をしているデンマーク人だ。
夜になると、カフェ・クリエイティブが閉店する。
早速借りたエスプレッソマシンを使い、ゲイシャの味を確認する。閉店する前にスーパーまで牛乳を買いに行っていた。いくつかある牛乳を細かくチェックする。その中からきっちりと高温殺菌されたものを採用することに。幸いにもゲイシャに合う質の高い牛乳を手に入れることができた。
シグネチャーの食材はリハーサルのために余分に持ってきておいた。早速プレゼンのリハーサルをしながら、コーヒーをファビオたちやヘンリックに提供した。
WBCでも3つのカテゴリーのコーヒーを4杯ずつ合計12杯提供する。
日本人がいなかったこともあり、変な緊張はなかった。
璃子には時間を計ってもらうことに。
「プリーズエンジョイ」
全部で12杯のコーヒーを提供する。
「凄い。甘味と酸味が同時に襲ってくる。まるでオレンジだ」
「これが噂のゲイシャか。今までのコーヒーと全然違う」
「だろ? 俺はこれが手に入ってからずっと育て続けてるんだ」
「プレゼンを通してアズサとファビオの二人三脚でコーヒーを宣伝したい気持ちが伝わってきた」
ヘンリックもラースもゲイシャコーヒーの味に驚いていた。
プレゼンの後にそれぞれのコーヒーの味を聞いた。
「――実力も味も申し分ない」
「そりゃ良かった」
「でも今のままじゃ、優勝は厳しいね」
「どういうこと?」
「君は何のためにここに来てる?」
「ファイナルまで行って、ファビオのコーヒー豆をみんなに宣伝するためだよ」
「他の人は純粋にコーヒーの奥深さを提供しに来ている。コーヒー豆の宣伝のためだけに来ているようじゃ到底彼らには勝てない。実力や品種も大事だけど、バリスタたるもの、何よりお客さんが店で寛げるだけのホスピタリティがなければ駄目だ」
「ホスピタリティ!? ……それが僕に足りないってこと?」
「そうだな。君がこの大会に何のために来ているか、ちゃんと考えることだ」
「……」
バリスタにおけるホスピタリティとは、すなわち客への心遣いのことだ。
言われてみれば、僕は愛想笑いは全然できないし、客への心遣いなんて全然考えてなかった。
ただひたすら勝つことばかりを考えていた。
僕はバリスタとして1番大切なものが欠けているのかもしれない。JBCでの他のバリスタの立ち回りを思い返すと、みんなセンサリージャッジに寄り添っていた。センサリージャッジの顔は見なかった。病気とはいえ、これじゃホスピタリティなんてあったもんじゃない。作り笑顔で競技に臨んでもすぐにバレることを伝えると、ヘンリックからは作り笑顔なんかしなくても、コーヒーを愛する気持ちを前面に出せば自然と笑顔になることを告げられた。
何のために来ているかと言われても、正直に言えば、結果を残せれば、葉月珈琲もブリランテ・フトゥロ農園も価値を見直してもらえると思ったからである。
――でもそれじゃ駄目なのか?
「最後にコーヒー業界の地位を上げたいって言ってたのは分かるけど、君は何のためにコーヒー業界の地位を上げたいんだい?」
「話すと少し長くなるけど、いいかな?」
「ああ、貴重なゲイシャを提供してくれたんだ。話くらいならつき合うぜ」
「助かるよ」
ブリランテ・フトゥロ農園が長年不作であったこともあり、輸入業者に足を見られたことが元で安く買い叩かれていたことを話す。僕とファビオの利害が一致していることも……。
「それは酷いな」
「こんなに良いコーヒーを安価で買い叩くなんて信じられない。明らかにアンフェアトレードだ」
「ああ、酷いアンフェアトレードだ。つまり僕らコーヒー業界に携わる者たちは、それだけ下に見られてるってことだ。でもコーヒーの魅力を世界中のみんなが知るようになって、コーヒー業界がメジャー業界になっていけば、バリスタ、ロースター、コーヒーファーマーの地位は間違いなく上がるはずだ。そうなればもう安く買い叩かれるようなことはなくなると思う。だから僕はこのコーヒーの魅力を少しでも多くの人に伝えるために、この舞台にやってきたんだ」
無我夢中で熱く語ると、ヘンリックとラースの目の色が変わった。
「それをプレゼンで言ってみたら?」
「――えっ!?」
「うん、今の話は響いたよ」
「ああ、ただコーヒーを紹介するよりも、それをテーマにした方がいいと思うよ」
「ただ、それを実行する上で1つ問題がある。15分という時間の中でコーヒーを淹れながらプレゼンをするには内容が分厚すぎるんだ。コーヒーの紹介に加えて、コーヒー業界の地位を上げたいっていう話を加えると、どうしても時間内に話しきれない」
制限時間内にプレゼンをしながらコーヒーを淹れるとなると、どうしても文字数に限界がある。
マルチタスクが苦手な僕としては、作業パートと説明パートと分けないとうまくいかない。
「作業しながら言えばいいんじゃないか?」
「僕、マルチタスクが苦手で、コーヒーを淹れながら話すのは慣れてるけど、基本的にはどちらかに集中しないと、どっちも中途半端になっちゃう」
「じゃあ俺たちが台本を書くよ」
「台本!?」
「ああ、競技会で作業と説明をきっちり分けた上でコーヒーの紹介とコーヒー業界の話を伝えるなら、台本は必要不可欠だ」
「俺も協力しよう」
「ファビオも?」
「ああ、俺がアズサを通してみんなに伝えたいことはいっぱいあるからな」
「そこはほどほどに頼むよ」
ファビオたちは人が変わったように団結し、僕のためにプレゼンの台本を書いてくれることに。
覚えるのは得意だし、台本を暗記するのは苦痛ではないが、最終的には他の誰でもない自分の言葉として伝えたい。僕はそれを彼らに伝えた。プレゼンを何度もしたためか、既に夜であった。
しばらくの間、カフェ・クリエイティブの2階に泊まらせてもらうことに。
料理はフリカデラというものだった。簡単に言えば、デンマーク版ミートボール。豚挽肉にタマネギを擦り下ろしたものと卵を加えて塩と胡椒を振り、軽く混ぜ合わせて作ったものだ。
「……うまぁい!」
「凄く美味しそうに食べるねー。ファビオから聞いたけど、本当に男なのか?」
「うん。よく女と勘違いされるけどね」
「そりゃロングヘアーで可愛い顔してたら女だって思うよ」
「でも不思議なことにさ、女になりたいって思ったことは1回もないんだ」
「何だよそれ。面白い奴だなー」
日本では不気味がられていたはずの特徴だが、コペンハーゲンでは見事にウケた。このふんわり食感がたまらない。ジューシーな肉厚が、僕の味覚に新しい1ページを刻んだ。
風呂を済ませてパジャマに着替えると、璃子と同じ部屋で2人きりになる――。
「お兄ちゃんって凄いね」
「凄いって、何が?」
「だってさ、人種も性格も趣味も全部バラバラな人たちを団結させちゃうんだもん。きっとお兄ちゃんのコーヒー業界に対する真っ直ぐな想いが、あの人たちの心を動かしたんだよ」
「あれは単に悪徳輸入業者という共通の敵がいたからだと思うけど」
「それでも……ね。私にも伝わったから」
「えっ!?」
璃子が言うと、笑顔で僕がいるベッドに入ってくる。
「寒いでしょ? お兄ちゃんは寒がりだから私があっためてあげる」
胴体に巻きつくように抱きついてくる。
――冷たい。本当は僕をあっためるためじゃなくて、璃子があったまりたいだけじゃねえのか?
段々と掛け布団の内側が温まってくる。
僕も寒かったし、丁度良かった――。
温かさに勝てず、僕らは熟睡した。きっと旅の疲れが出たんだろう。空港に着いた辺りから凍りつくような寒さだった。6月とはいえ、北欧は寒いのだ。コペンハーゲンの夏は短い。あと何日経てばここの寒さに慣れてくるのだろうか。璃子にもこの寒さが応えたのだろう。
大会2日前、僕らが起きると、外は朝を迎えていた。セットした目覚まし時計が僕らを起こそうと聴覚に訴えてくる。大会中は必須アイテムだ。途中で電源が切れないように大会前は必ず新品の電池に入れ替えてから行先の時間に合わせて持ってくる。ただでさえ時間にルーズなところがあるため、目覚まし時計は絶対にないといけない。大会に遅刻なんてすれば、今までの苦労が全部台無しだ。
普段から守ってるのは営業時間くらいだろうか。
身支度を済ませ、のっそりとカフェ・クリエイティブの外に出た。プレゼンの練習は閉店してからでなければできない。その間にカフェ巡りをすることにした。ファビオには閉店間際に行くことを伝えておいた。シグネチャーに必要な物は全て持ち歩きだ。これがないとプレゼンが始まらない。
店はいつも通りと言わんばかりに繁盛していた。うちもいつかは当たり前のように繁盛できる店になれるといいのだが、道は険しいようだ。ここで結果を残さずして店には戻れない。
「おっ、やっと来たか。台本書いてみたんだけどさ、こんな感じでどうかな?」
ファビオは既に店内にいた。他の家族は観光へと出かけたらしい。
普段は炎天下の中コーヒー農家で汗水垂らして作業しているのだから、こういう時くらいは観光に興じても罰は当たらないと思う。ファビオたちが作った台本を見た。
「――良しっ、やってみるか」
「えっ! もう覚えたのか?」
「一応な。ご丁寧に秒数まで書いてくれてるし」
閉店後、各種食材を揃えてやってみるが――。
「タイム。時間は?」
「15分36秒」
「駄目だ。全然間に合ってない。それじゃ36点も減点されてしまうよ」
「36点減点ってそんなにまずいの?」
「決勝にいくような人は、時間内に余裕を持って終われる人だぞ」
「――プレゼンしてる時、どこか浮かない顔してたけど、何か悩み事でもあんのか?」
「このシグネチャーなんだけど、今ホットなんだよ」
「それがどうかしたのか?」
「本当はコールドで提供したいんだ」
「あー、昨日言ってたやつか」
どうしてもこのシグネチャーがホットであることに疑問を感じていた。
JBCの時はそれで切り抜けられたが、WBCでそれが通用するかと言えばそうでもない。ジャッジも段違いにレベルが高いはずだ。
「アズサ、このシグネチャーをコールドで提供したらもっと美味くなるって言ったよな?」
「うん。ベルガモットフレーバーはホットよりもコールドで出した方が美味いんだ。でも抽出したばかりのコーヒーを15分の間に冷やして提供する方法なんて――」
「あるぞ」
「……えっ!? あるのっ!?」
「ああ、簡単だ。最初にシグネチャーの分を抽出して、それを氷水で冷やしておけば、10分もあれば冷えるはずだぞ。まだ誰も試してない方法でもあるし、やってみたらどうだ?」
「!」
――そうかっ! その手があったかっ!
最初に抽出して冷やしておけばいいんだ。
エスプレッソも、ミルクビバレッジも、シグネチャードリンクも、出す順番も、抽出の順番も決まっていない。決まっていないということは、競技者が自分で決めていいんだ。
時間制限にばかりに気を取られて全然気づかなかった。
僕としたことが……こんな簡単なことにも気づかなかったとは……まだまだだね。
それにしても、このヘンリックという男、昼間のテキパキとしたスムーズな作業といい、コーヒーをコールドで提供する方法を教えてくれたことといい、一体何者なんだ?
「今度はその方法でやってみるよ」
「台本はどうすんの?」
「覚えた内容を別の時間帯にずらす、シグネチャーの分を抽出して、冷やしている間に話せるだろ」
「分かった。やってみろ」
そして――。
「タイム。時間は?」
「15分11秒」
「なかなかいいところまでいったじゃねえか。あと11秒だ」
「もう少し早口で言った方がいいかな?」
「ジャッジはカフェに来ている客だ。あまり早口だと、客も急かされているような気分になるぞ」
「それもそうか」
僕らのプレゼンの訓練は夜遅くまで続く。ヘンリックもラースも、まだ出会ったばかりの僕に辛抱強くつき合ってくれた。特にヘンリックは僕に対する指導に具体性があり熱心だった。
カフェ・クリエイティブで一夜を過ごす。
大会1日前、僕は会場まで下見をしに赴いた。
他にも下見に来ている各国のナショナルチャンピオンが数人ほどいる。中でも注目されているバリスタまでいた。優勝候補のアイルランド代表のスティーブン・ムーアだ。
髭を蓄え、ぽっちゃりしていて、愛嬌が良さそうなおじさんだ。彼は去年のバリスタオリンピックチャンピオンであり、この大会でも優勝候補の1人に数えられていた。
WBC前回チャンピオン、イギリス代表のジェームズ・ジェイソンもいた。
優勝トロフィーを渡すために呼ばれたらしい。見た目は某世界的に有名な魔法使いの少年が大人になったような姿で、トレードマークの丸い眼鏡をかけている。会場までの場所は覚えた。後はプレゼンの練習をするだけだ。僕はまだ行っていない店まで赴き、カフェ巡りをしながら閉店を待ち、暗くなってきたところでカフェ・クリエイティブに戻り、ルーティーンの確認をひたすら繰り返す。
閉店になり、僕は最後のプレゼンの練習をする。
「タイム。時間は?」
「15分4秒」
「うん、まあ許容範囲だ」
「もうタイムを縮めなくていいの?」
「これ以上は技術的に限界だ。それにもう……みんな腹がタプタプだろうし」
「ゲイシャが飲めるのはありがたいけど、今日はもう無理だ」
ファビオたちはもう限界だった。いくら世界最高峰のコーヒーとは言っても、ずっとカッピングしていたら、そりゃ限界にもなるわな。大会用を除くゲイシャの余りも少なくなってきたし、もうこれくらいでいいだろう。食事と風呂を済ませると、疲れていたのか、すぐ床に就いた。
「いよいよ明日だね」
「そうだな。目覚ましもセットしたし、ヘンリックにも起こすように言っておいたから大丈夫だ」
「本当に用意周到だね」
「まあな。こういう時って、備えがないと不安になっちゃうんだよな」
プレゼンがおおよそ決まったのは幸いだった。何度も修正してやっと完成した台本だ。所々に汚い文字で細かいチェックや文字が書かれている。もはや芸術作品と呼んでもいい。
ああ、最愛の恋人よ。僕は君から認められるかどうかの瀬戸際にいる。ここで君から受け入れられるかどうかが決まるんだね。君が僕を受け入れても、受け入れてくれなくても、僕はただひたすらに君を想い続けるだろう。それが愛するということなのだから。
僕は切ない想いをポエム帳に刻むのだった。
「お兄ちゃんどうしたの?」
「璃子には内緒だ」
「コーヒー愛を書き込むのは結構だけど、愛に溺れないようにね」
「……もしかして読んだ?」
「うん、お兄ちゃんが寝てる間にね」
「何で読むんだよぉ~!?」
「読まれる場所に置いたお兄ちゃんが悪い」
「なんか仕返しされた気分だ」
いつの間にか読まれていたとは。興味をそそるようなことは書いていないはずなのにっ!
最愛の恋人を愛しく思っているだけなのに、何故こうも辛いのか。
愛しという字は、平安文学では愛しと読ませていたそうな。
愛とは辛く悲しいものなのだ。それを分かっていながらつい繰り返してしまう。まるで中毒患者のようにやめられない。それほどにまで僕を夢中にさせたのだから、責任は取ってほしいな。
――本当に君は……罪な女だ。
意識が段々遠のいていく……僕らはぐっすりと眠るのだった。
――大会1日目――
身支度を済ませると、ヘンリックの言葉を胸に会場まで赴いた。コーヒーを愛する気持ちを前面に出すには、僕自身が持つコーヒーに対する想いを伝える必要がある。
「台本の内容は覚えたか?」
「何とかな」
「そうか、俺は店があるから見に行けないけど、応援してるからな」
「ありがとう。じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい」
この時、JBCの時とはガラリと違うプレゼンに変わっていた。
できる限りセンサリージャッジに寄り添うことにしたが、ホスピタリティを究めるのは難しい。
僕のプレゼンは岐阜で生まれ、東京で育ち、コペンハーゲンで成人したのだ。
まるでうちの店にいる時のような、リラックスした気持ちで迎え入れてやろう。
「私はどうすればいいの?」
「璃子はJBCの時と同様に、サポーターとして荷物を出したり、片づけたりしてくれればそれでいいからさ、今回もよろしく頼むぞ」
「それはいいけど、ミスしないでよ」
「大丈夫だ。心配すんな。プレゼンの練習なら十分したし、制限時間内にシグネチャーのエスプレッソを冷やす方法も分かった。課題は全部克服したんだ。これで無理だったら……僕才能ないよ」
「お兄ちゃんだけズルいなー、そんな言葉使っちゃって」
「僕は胸を張れるほどコーヒーを究めてきたからな」
「私だってそれを言えるくらい……チョコレートを究めるから」
璃子も成長したな。こんなことを言えるくらいには修行をこなしている。璃子の将来が楽しみだ。
会場に着くと、まるでお祭り騒ぎのように人がたくさん集まっている。世界各国から色んな人たちが競技者、もしくはサポーターとして入国している。観客たちにとっては一時的なテーマパークのようなもので、僕も東京大会に来た時も同じ気持ちだったからよく分かる。
これ、もしかしたら日本人も来てるんじゃないか? やばい、何だか心配になってきた。あいつらに来られるのは逆効果なんだが、あいつらはそれを知らない。
WBCは51ヵ国から51人のナショナルチャンピオンが参加した。上位6人が決勝に進出し、その中から頂点を競うというかなりハードなものだった。当時のWBCには準決勝がなかったため、余裕を持った競技はできない。
たったの4日間で僕の人生が決まってしまう。大袈裟かもしれないが、そんな気がしたのだ。
せめてファイナルまで進出してトロフィーを勝ち取りたい。
今の僕には……手ぶらで帰る場所などないのだから。
ひたすら訓練回です。
しばらくはコペンハーゲンでの話が続きます。