59杯目「農園との二人三脚」
決勝当日、僕は美羽の家で目を覚ました。この家にもようやく慣れてきた。
璃子は美羽とすっかり仲良くなっていたが、何だか外堀から埋められているような気がする。美羽はあの日以降は自分の部屋へと戻り、璃子と一緒に寝ていた。美羽の秘密を知ってからは璃子と一緒にしておくのが心配になった。璃子はどちらの性からもモテると思っていたからだ。
基本的に異性からモテる人は同性からもモテるらしい。その逆も然りだ。
美羽の母親の手作りの朝食を食べると、すぐに璃子と美羽と一緒に会場まで歩いて行った。
「いよいよ決勝だね」
「そうだな。まずはここを突破しないと、ファビオに顔向けできない」
「あず君、今日はうちのコーヒーサークルの人たちも来るよ」
「えっ? あの人たちも来るの?」
「大丈夫だよ。みんなあず君の味方だから。全員あず君のチャンネルに登録してるんだよ」
「もうそこまで知られてるのかよ」
「お兄ちゃん、ここまできたら受け入れるしかないよ」
璃子は冷静だな。これもずっとうちの店で接客をしてきたお陰かな。
――そういえば、璃子の進路はどうするんだろうか。3月が終われば中学卒業で、名目上も学生じゃなくなるし、ずっとうちのお手伝いにしておくのもどうかと思うが。
しばらく歩いて会場に着くと、僕はうちの店の制服に着替えた。
「やっぱりあず君と言えば、このピンクの制服だよね」
「うん、凄く似合ってる」
「あったりめーだろ。じゃあ行ってくる」
関係者以外立ち入り禁止の扉に手をかけた。
「――あず君っ!」
美羽が僕を呼び留める。いつもより強い声だった。
「どうした?」
声に反応して後ろを振り返ると、璃子と美羽が笑顔で僕を送り出そうとしていた。
「絶対優勝してね!」
「任せろ」
笑顔で答えると、扉の向こう側へと立ち去った。
競技者用の控え室へと向かった。そこには他にも決勝進出を果たしたした人たちがいた。何人かからゲイシャについて質問をされるが、僕はたまらず端っこへと逃げてしまう。
競技中なら耐えられるが、見知らぬ日本人に話しかけられるのは苦痛だ。競技者は競技開始の15分前にいないと失格になるため、事前に集合しておく必要があり、ランダムに決まった番号順に競技を行っていく。第1競技者は午前からスタートし、第8競技者が競技を終える夕方まで続く。
僕は5番目の競技者となった。競技は昼からだ。基本的には用意したパンフレットに書いてあることを自分流にまとめ上げ、台詞を忘れた場合は最悪自分用をカンニングしながら読める。
正午が過ぎた頃、第4競技者の競技が終わり僕の出番になる。
第4競技者が片づけると、今度は僕専用の荷物や貸し出しの器具がテーブルに設置されるた。
すると、サポーターの璃子が駆けつけ、作業を手伝ってくれた。
美羽は観客席で同じコーヒーサークルの仲間たちの所にいる。
ふと、会場を見渡すと、そこには見覚えのある顔がいた。
「璃子、今唯の顔が見えたんだけど、気のせいかな?」
「えっ、唯ちゃんが?」
今度は璃子が会場を見渡すと、唯の姿を発見する。ジェフも一緒だ。唯が笑顔をふりまきながら両手を振っている。唯の鋭い意見がなければ、このシグネチャーは完成しなかった。僕は茶髪のロングヘアーを後ろにまとめ、何度か女子中学生と間違われていたが、璃子が釈明してくれた。
競技は準備時間15分、競技時間15分、片づけ時間15分である。
コーヒーは既に準備されている。味を確認していると、僕の準備時間である15分が過ぎる。会場には多くの人が集まっていた。大多数が日本人だ。外国人もちらほらいたため、ここで宣伝すれば客足が復活するかもしれない。倒産を免れる最後のチャンスだ。
「それでは時間になりましたので、次の競技者を発表します。第5競技者、葉月珈琲、葉月梓バリスタです。ではご自身のタイミングで競技を始めてください」
――みんな外国人みんな外国人みんな外国人みんな外国人。
拍手を送られながら自己暗示を済ませると、ようやく落ち着いた。今までやってきた練習通りに英語で具体的な説明をしながらゲイシャという新たな可能性を説くことを考えた。作業は迅速かつ丁寧に。今までは知っている人が応援に来るなんて全然なかったし、どこか新鮮だった。去年までに出たバリスタの大会は現地でいきなり本選だった。国内予選があるタイプは初めてで緊張もあった。
あの人たちにとって僕はかなりの変わり種だっただろう。参加者で唯一、一般の人には分かりにくい英語のプレゼンをしたり、当時はほとんど普及していないゲイシャを使ったのだから。だがそんな僕が決勝まで来られたあたり、ジャッジは公平である知った。決勝の時も外国人の観客がいたため、主に外国人たちに語りかけるような感覚で英語のプレゼンを丁寧にやろうと思った。
マイクを装備したところで深呼吸を済ませた。
「タイム。僕は去年革命的なコーヒーに出会った。それはゲイシャという品種だ。他のコーヒー以上に甘味や酸味が強く、フルーツの味を強く感じるため、僕がこれを初めて飲んだ時は飲むフルーツとさえ思った。今回はパナマ、ブリランテ・フトゥロ農園のゲイシャを紹介していこうと思う」
パナマゲイシャを英語で紹介すると共に早速エスプレッソから抽出を始める。ヘッドジャッジやテクニカルジャッジが競技開始と当時に動き出すが、無視しながら無心で競技に臨んだ。
「このコーヒーからはオレンジフラワーのようなフローラルアロマが感じられる。このエスプレッソのフレーバーはベルガモット、アフターにはブラッドオレンジを感じる。スプーンで5回掻き混ぜてから飲むこと。使用したスプーンはケースに入れること。プリーズエンジョイ」
すぐにカプチーノを淹れ始める。
ミルクピッチャーに入った牛乳にスチームノズルを入れて温め、スチームミルクを作り上げる。
「高温殺菌された牛乳で淹れたこのカプチーノのフレーバーは、オレンジアイスクリーム、アフターにはマンダリンオレンジヨーグルトを感じる。牛乳の甘味に加えて、パナマゲイシャが持つ柑橘系の強い酸味が特徴的で、これらの味をお互いが高め合っている。プリーズエンジョイ」
僕はパナマゲイシャが持つ風味特性を述べながらラテアートを描いた。
容器は小さめであるため、いつも通りハートのチューリップにした。
最後のセンサリージャッジにコーヒーを提供する。
「次はシグネチャードリンクを作っていく。これを開発する上で1番悩んだのは、何をコーヒーに合わせるかではなく、コーヒーが持つ個性を引き出すことだった。ただ食材を混ぜ合わせるだけではコーヒーが持つ個性を殺してしまい、ただ甘いだけの飲み物になってしまう。それだとより簡単に作れるジュースの劣化であると感じ、僕は食材に工夫をした」
開発段階では甘みの強い蜂蜜を使っていたものの、それだとジュースになってしまう。メープルシロップと完熟したオレンジを切ってシロップ漬けにして作ったオリジナルのオレンジシロップを注射器で正確に分量を計り、4ショット分のエスプレッソに少しだけ投入し、最後にこのドリンクをブレンダーで混ぜた。甘味は元から強いため、それぞれのシロップは甘さ控えめのものを採用している。風味を伸ばしつつ、このコーヒーの弱点であるボディの弱さをカバーする。
潰したオレンジを使うことで、このコーヒーのメインフレーバーであるベルガモットの風味特性を最大まで引き上げる。ブレンダーで満遍なく混ぜることでマウスフィールが格段に良くなり、優しくクリーミーな味わいになる。別の容器に移し、用意した4つのシャンパングラスに4人分均等に淹れた。
「このシグネチャードリンクのフレーバーは、ベルガモット、マーマレード、ブレンダーを使ったことでクリーミーになり、アフターにはチョコレートやキャラメルが感じられる。プリーズエンジョイ」
課題となるコーヒー12杯分を全て提供した。
「僕はこのブリランテ・フトゥロ農園のパナマゲイシャを広め、コーヒー業界の地位をメジャー業界へと押し上げることを目的としている。飲んでくれてありがとう。タイム」
経過時間は14分58秒、ギリギリだった。
作業パートと説明パートを分けられたのはいいが、それだと言えることが少なくなってしまうことに懸念を持っていた。農園の宣伝以外はフレーバーなどの説明をするのが精一杯だ。何のために宣伝しているのかまでを全然説明できていなかったのが気がかりである。
「お疲れ様でしたー」
司会者の人が僕に労いの言葉を送り、インタビュアーがやってくる。
「皆さん、彼は見た目が女の子っぽいですけど、立派な男性です」
「「「「「あはははは!」」」」」
そこ笑うところじゃないからな。
僕が少し沈んだ表情になると、唯たちの表情も沈んだ。
「準決勝の時もそうだけど、パナマゲイシャで作っただけあって、凄く個性的なシグネチャードリンクだねー。まだ飲んでないから、ちょっと飲ませてもらうねー」
インタビュアーがシグネチャーの余りを飲み、目が飛び出るような表情だ。
「確かに最初はベルガモットの風味がくるねー。しかも後からほのかな甘みが伝わってくるし、後から伝わってくるこれがキャラメルの風味かな?」
「うん……そうだけど」
ジャパンスペシャルティコーヒー協会に選ばれた人なだけあって舌は敏感なようだ。
「凄く見た目若そうに見えるけど、君って今いくつなの?」
「……17歳」
「皆さん聞きました? これだけずば抜けたシグネチャーを作ってるのにまだ17歳ですよ! かなり伸び代がありますよねー!」
そんなこと言われなくても分かってるっつーの。
ていうか僕のことを強調しないでくれるかな?
理由は他でもない。僕の存在が知れ渡れば、やがて親戚の耳にも届いてしまう可能性が高い。バレたら怒られるだけじゃ済まない。日本人はすぐ相手に年齢を聞く悪い癖がある。歳を聞かれたくない人もいるだろうに。相手の歳が分からないと言葉使いに困るような奴は個人的に三流だ。
何でそういうところまで考えられないのかな?
――想像力が足りないよ。
「わざわざ農園まで足を運んで、コーヒー農園と二人三脚で出場するバリスタは他にもいるけど、葉月バリスタは何でそこの農園まで行ったの?」
「……ゲイシャに興味があったし、コーヒーが持つ可能性を知りたかったから」
「へぇ~。何だか緊張しているみたいだけど、全然目を合わせてくれないねー」
「……」
ただ質問に答えるだけのインタビューが続いた。
他のバリスタはただ質問に答えるだけじゃなく、自分の意見も言っていたが、どれもベターな回答で尖りが全くない。少しでも尖ったことを言えば、また迫害を受けるものだと思っていたのか、淡々と質問に答えるだけだった。少し緊張している素振りを見せ、早く終わることをひたすら祈った。
「第5競技者、葉月梓バリスタでしたー!」
ようやくインタビューが終わり、司会者が終わりの合図をすると、すぐに片づけを始める。
僕のJBCにおける競技が終わりを告げた。
「お兄ちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」
「今すぐ帰りたい」
悲しい顔で嘆くように呟く。
「結果発表までもう少しだから」
「片づけが終わったら、他の競技者の競技を見に行こうよ」
「別にいいけど」
片づけを済ませ、ホッと胸を撫で下ろした時だった。
「あのっ、サインいただけませんか?」
「! こっ! 来ないでっ!」
「えっ?」
数人いる日本人の1人が急に話しかけてきた。咄嗟に璃子の後ろに隠れて妹の盾を作った。
これがレディファーストの本質である。どうやら自己暗示の効き目が切れたらしい。
「男の子なのに恥ずかしがり屋なんですね」
「だよねー。めっちゃビビってるし」
「すみません。うちの兄は人見知りなんです」
「あー、だから目を合わせずにプレゼンしてたんですねー」
「そうなんです。なのでサインは勘弁してあげてください」
「分かりました。葉月さんのプレゼン凄く面白かったので注目してますねー。あの、良かったら葉月さんのお店を教えてもらえませんか?」
「えっと、うちの兄は社会不適合者なので、特に日本人の方と相性が悪いんです。申し訳ありません」
璃子がそう言うと、連中の顔色が変わる。今のは璃子のミスだ。
今は店なんてやってないって嘘を言えば良かったのだが、璃子もすぐミスに気づく。
「何で日本人と相性が悪いんですか?」
「えーと……うちの兄は過去のトラウマで、日本人が苦手になってしまったんです。なので普段は外国人観光客限定にしてるんです」
「それって差別ですよね?」
話しかけてきた日本人の1人が冷たい声で言った。
「日本人にも色んな人がいますし、その中から良い人だけを選んでつき合えばそれでいいだけだと思うんですけど、それでも駄目なんですか?」
「駄目だっ!」
「どうしてですか?」
「……客が店を選ぶ権利もあるし、店が客を選ぶ権利もある。咎められる謂れはない!」
そっぽを向いて璃子を盾にしながら威嚇するように答えた。
「そうですか。じゃあもういいです。行こっ」
「今時差別するなんて終わってるよねー」
彼女たちは呆れるように吐き捨てると、その場を去っていく。
終わってるよねーじゃねえよ。そもそもあいつらとの関係は始まってすらいないのだから。あいつらにとってトラウマは甘えでしかないんだろう。この頃の日本人は精神病に対する認識が進んでいなかった。ただの差別と見なされたのはそのためである。
――終わってるのはどっちだよ?
あいつらに注目されたところで、僕には何のメリットもない。そればかりか、親戚にばれるリスクが増大するだけだ。店の場所は言わなくて済んだが、代償として顰蹙を買ってしまった。噂好きなあいつらのことだし、明日には知り合い以上の連中に話しているだろう。むしろ好都合だ。
連中の言うことも正論ではあるが、相手がトラウマ持ちであれば話は別となる。虫に刺されて入院した人が、また別の種類の似たような虫を見れば、たとえその虫が無害であっても警戒する。
僕はまさにそんな状態なのだ。
「お兄ちゃん、ごめん」
「璃子は何も悪くないよ。気にすんなって」
観客席へ向かい、唯たちに迎えられると、肩の荷が下りたかのように腰かけた。
既に次のバリスタが競技の準備をしているところであった。
「あず君、お疲れ様です」
「唯、お陰で助かったよ」
「凄く良い競技でしたよ。私もいつかあの舞台に立ちたいと思いました」
「唯ならできる。僕ができたんだから」
「あず君はさっきの人たちと何を話してたの?」
美羽が不思議そうにさっきのやり取りを聞いてくる。
一般の人同士であれば、まず成立しない会話だったが、あれはあれで彼女には面白いネタになる。
「サインを求められて、それを断ったら、今度は店の住所を聞かれて、正直に理由を言って断ったら差別だって言われた。相変わらず身勝手な連中だよ」
「あず君の事情を知らない人からすればそんなもんだよ」
「そうですよ。たとえ全世界があず君の敵に回っても、私はずっとあず君の味方ですから」
唯は抱擁するような口振りで僕の左腕を両手で抱き、肩に届いているくらいのつやつやとしていて、ふんわりした柔らかく色の薄い茶髪を僕に押しつけてくる。
「唯は優しいな」
「あず君は私に希望を与えてくれたんです。だから私、ずっとあず君についていきます」
「!」
唯が言うと、美羽が一瞬驚いた表情になる。前にもこんなことを言われた気がする。デジャブ?
知らない内に周囲の人たちに希望を与えていたらしい。誰かから希望を感じたことなんてなかった。希望を感じないということは、きっと誰かに希望を与える側なんだろう。そんな気がしてきた。
全員の決勝が終わると、集計が終わってからファイナリスト全員が司会に呼ばれ、低い順位の人から名前が発表されていく。最後まで名前を呼ばれなかった者が優勝だ。この時も自分の名前を呼ばれるのが怖かった。ファイナリストにはなれたし、多くの外国人に対して宣伝になっただろう。
最善なのはWBCで宣伝ができることだ。僕は最後の2人に残った。
さっきまでと同じノリの演出で2位が発表される。
そして――。
隣にいたバリスタの名前が発表され、その瞬間、僕の優勝が確定した。
「今年のジャパンバリスタチャンピオンシップ優勝は、葉月珈琲、葉月梓バリスタです!」
会場は拍手喝采となり、声援まで送られた。
小さな声で良しっと呟きながら、満面の笑みで小さくガッツポーズを決めた。
ファビオ……やっぱりあんたのコーヒーは最高だよ。
結果発表が終わると表彰式が始まり、最後に僕の名前が発表されてトロフィーが渡される。国内予選は10万円の賞金が出るが、世界大会では賞金が出ない。
だが僕は微塵も気にしなかった。
「最後にWBCへの抱負をお願いします。マイクの前までどうぞ」
ええっ!? また喋るのっ!? ……もう帰りたい。
「WBCも……頑張るよ」
唯の顔を見ながら、彼女に語りかけるように顔を赤くしながらも恥ずかしそうに一言だけ述べると、すぐに避難するようにマイクから離れた。
「以上をもちまして、ジャパンバリスタチャンピオンシップ全日程を終了させていただきます。皆様、今一度競技者たちに盛大な拍手をお願いします」
こうして、今年のJBCが終わった。
お開きになった後は、会場から続々と人が出ていく。
6月にコペンハーゲンで行われるWBC日本代表としての出場権を得た。
またしても6月に世界大会とは。
WBCは開催時点で18歳以上になっていないと出場できない。
開催日は僕の誕生日より後であり、一応出場資格はあった。もう少し開催が早かったら出場すらできなかったこともあり、この時は冷や汗をかいた。準優勝した人はワールドラテアートチャンピオンシップに出場できるらしい。この時は専用の国内予選がなかったため、準優勝者にこの大会に参加させるという処置だったが、優勝していなかったら、こっちの大会で店の宣伝をしていたかもしれない。
この頃はバリスタとサイフォンの大会しかなかったが、後に他のバリスタ競技会も出てくることに。
「あず君、おめでとうございます!」
唯、美羽、ジェフ、コーヒーサークルの連中が僕の周りに集まってくる。
「やったじゃん。おめでとうっ!」
美羽が勢い良く僕に抱きついてくる。
「美羽もありがとな。早速帰ってファビオに報告する」
「待って! これから一緒に祝勝会しようよ」
「えぇ~。この社畜共の巣窟から早く出たいんだけど」
「ゲイシャ」
「……分かったよ」
しょうがないからつき合ってやるか。
無事に優勝できたわけだし、WBCの時の分は絶対に確保しておかないと。
「祝勝会って何時からあるの?」
「午後6時からだ」
「終電に間に合うかなー?」
「いいじゃん。どうせ店には常連以外は人が来ないんだから」
「はぁ~、今日もお泊りかー」
美羽の誘いに乗って祝勝会につき合うことに。
僕以外の人が優勝したら、美羽に誘われなかったのかな?
「優勝できなかったらどうするつもりだったわけ?」
「その時は優勝した人の祝勝会にあず君を誘ってたよ」
「……どの道かよ」
「でも私はあず君が優勝するって分かってました。だってオーラが違いますもん」
「初めての出場なのに、ベテランみたいな競技してたもんね」
「君らは仲が良いんだな」
国内予選が終わると、祝勝会という名目で穂岐山珈琲でのバリスタパーティーが行われるとのこと。大会に出場したバリスタたちの交流もあるらしい。
パーティーか……やだなー。
これはまた一波乱ありそうだと、確信するのだった。
国内予選は無事に突破です。
泊まる場所を美羽に頼りすぎたかな。