56杯目「奇妙なカフェ」
吉樹と柚子の2人と一緒に散歩をしていると、1軒のオシャレなカフェを見つけた。
まだできたばかりだろうか。外観から内装まで全部がピンク色に染められたカフェで、ラブリーな空間を演出していたのだが、中にいる店員はメイド服姿だ。
足をピタッと止め、カフェに入りたそうに店内を見つめていると、吉樹と柚子が僕の様子に気づく。
「あず君、何してるの? 行くよ」
「もしかしてそこに入りたいの?」
黙ったまま首を縦に振った。
「だーめ、ここは女の子が入るカフェでしょ」
「何でそう思うの?」
「だって建物が全部ピンク色だし」
「僕もピンク色好きなんだけど」
「前々から思ってたけど、あず君は女の子になりたいの?」
「僕は男だけどピンクが好きなの」
店内を見回すと客は女ばかりだ。まるで男はピンクを好きになるなと言わんばかりである。変な固定観念が僕の心を一層傷つける。1人だと日本人恐怖症があるし、できれば複数人で入りたいのだが。
「ほーらっ、行くよ」
「あぁー、僕のカフェがー」
「あんたのカフェじゃないでしょ」
柚子が僕の服を摘みながら僕を連れていく。
おもちゃを強請る子供と、無視して子供を連れていく母親のようだった。
「そういえば、あず君はバリスタになりたいって言ってたけど、何のためなの?」
ようやく諦めて一緒に歩くようになると、柚子が僕に話しかけた。
「世界一のバリスタになりたいからだ」
「ふーん、何で?」
「コーヒー業界をメジャーな業界にしたい」
「それはどうして?」
「――あるコーヒー農園の話なんだけどさ、そこで採れるコーヒー豆がもうめっちゃ美味くて、今までで最高と言っていい味なんだよ」
「あず君はそれ飲んだことあるの?」
「あー、一応サンプルを飲ませてもらったことがある」
「「へぇ~」」
2人とも興味津々に僕の話を聞いていた。
葉月家の人も楠木家の人も大のコーヒー好きである。
「その農園は不作続きで、輸入業者から足元を見られて安い値段で買い叩かれてた。これは明らかにコーヒー業界そのものの地位が低いと見なされてるからこそ起こりうる現象なんだと思ってさ、そこで僕が世界一のバリスタになって、コーヒー業界をメジャー業界に押し上げれば、もうそんなことは起きなくなるんじゃないかって思ったわけよ」
「確かにコーヒー業界ってマイナー業界だもんね。私も友達とカフェに行くことがあるけど、みんな有名ブランド以外は全然知らないから、話が合わないことがあるの」
柚子が嘆くのには理由がある。僕も柚子もコーヒーに関して言えば、オタクと言っていい領域だ。
親戚の集会で僕が1人で座っている時は、よく柚子の方から話しかけてきて、コーヒーの話に移る。ということはゲイシャも知っているのだろう。ただ、柚子の方から身内以外にコーヒー好きを口にすることはない。カフェが好きな女子は多いが、コーヒーが好きな女子は少なかった。
少なくとも柚子の周りでは、コーヒー好きはマイナーな存在であった。
「柚子は何になりたいの?」
「私はこの街に活気を取り戻したいし、最近は婚姻率とかカップリング率も下がってきてるから、ここで婚活パーティをする会社に入ろうかなって思ってる」
「そんな会社あるんだ」
「えっ、知らないの?」
「だって結婚とか考えたことないし、僕はお姉ちゃんみたいにモテないから」
「なよなよしてるからじゃないの?」
「ぐさっ! そんなこと言ったってー、しょうがないじゃないかぁー。未だに次の期末テストに怯えるくらいなんだからさー」
「ていうかその性格を受け入れてくれる人とつき合えばいいんじゃねえの?」
「あー、そっか、その手があったか。じゃあそうしよ」
「はぁ~、先が思いやられる」
好きな人の好みに合わせるなんて愚の骨頂だ。
自分を押し殺して何になるってんだ?
誰かとつき合うなら、趣味が合っても合わなくても好きでいられる相手に決まっている。趣味が合うから好きというのは幻想であり、ただのきっかけに過ぎないのだ。
根拠なんて後からついてくる。
「吉樹は夢とかないの?」
今度は柚子が吉樹に将来の夢を尋ねた。柚子は相変わらず将来の夢の話が好きである。既にやりたいことが決まっている僕からすれば、もはや夢というよりは目標なんだが。
「夢ねぇー、全然考えたことないや。あず君もお姉ちゃんも、やりたいこと決まってていいなぁー」
「いつもテストに追われてたら、夢なんて考えてる余裕ないもんな」
「そうなんだよねー。何のためにやってるんだか」
僕らの散歩は終わった。どれくらい歩いただろうか。
この日は日差しが強くなかったため、日傘は持ち歩いていない。
柚子と吉樹の2人と知っている道に辿り着いたところで別れるが――。
「あず君、今空いてる?」
「空いてるけど、吉樹と一緒に帰らなくていいのか?」
「いいの。吉樹には言っておいたから」
「何か相談でもあるのか?」
「違う違う。あのピンク色のカフェ、行きたかったんでしょ?」
「一緒に行ってくれるのぉ?」
満面の笑みを浮かべ、顔を赤らめながら喜びを表した。
「かっ、可愛い」
「えっ、何が?」
「あー、いやっ、何でもない。ほらっ、行こっ」
「良しっ! やっぱカフェ巡りって楽しいよなー!」
「だよねー。あっ、そうだ。私、この前屋号がないカフェを見つけたんだけど、外国人観光客限定って書いてあって、あれもあれでかなりヘンテコなんだよねー」
「!」
――えっ!? まさかばれたのかっ?
屋号がないってことは多分うちだ。店内を見られていたら終わりだ。
「中はどんな感じだったの?」
「それがさー、私が行った時は外国人観光客の行列ばっかりで、中がよく見えなかったの。何であのお店だけ外国人限定なんだろうねー」
客が多かったということは、繁盛期だった夏場に行ったんだろう。ギリギリセーフってとこか。
「その店に行った外国人観光客から聞いたんだけど、マスターが日本人苦手なんだって。何でも、日本人同士の人間関係の陰湿さに嫌気がさして、外国人観光客限定のカフェを始めたらしい」
「よく知ってるねー」
「まあな、僕もカフェ巡り大好きだから」
そりゃ知ってるよ。だってそこのマスターは僕なんだし。
「じゃあ行かない方がいいかな」
「そうした方がいいと思うぞ。みんなの前で追い出されたら、確実に恥をかくだろうし」
「……そうする」
ホッと一息吐くと、しばらくは柚子と2人きりで歩いた。
「あっ、さっきよりもたいぶ席空いてきたねー。あず君は集団苦手だから丁度良いかもね」
「そうだな。さっき行かなかったのは何で?」
「あず君は平気でも、あんなに可愛らしい所は吉樹が嫌がるでしょ。私も行きたかったから、後であず君が暇だったら行こうと思ったの」
店名は『桃色喫茶』。文字通り可愛いピンクとハート塗れだ。柚子は可愛らしい花柄の扉を開けた。
「いらっしゃいませー。お好きな席へどうぞー」
メイド服姿の可愛い茶髪、肩に届かないくらいのショートヘアーの女性店員が笑顔で挨拶する。制服はメイド服だがメイドカフェではないらしい。
まっ、僕は店員が騒がしいのはあまり好きじゃないから丁度良かった。
オープンキッチンが見やすい位置のテーブル席に腰かけた。ここのバリスタの腕も見たいし、なるべくキッチンが見える位置に座るようにしているのだ。他のバリスタの動きからも学べることは多い。
「こちらメニューとなっております。ご注文が決まりましたら、ここのベルでお呼びください」
「あの、ここって女性専用だったりします?」
「いえ、女性専用ではないんですけど、私、男性恐怖症なので、男性が近寄りにくい設計なんです」
「だったら女性客限定って看板を掲げればいいじゃん」
顔を背けながら愚痴るように呟くと、女性店員が戸惑った。
また思ったことをそのまま言ってしまった。僕の悪い癖だ。
「そ、それはちょっと問題ありかと思いまして」
「すみません。この人、社会不適合者なので気にしないでください」
――悪かったな、社会不適合者で。
だが自分の気持ちに嘘を吐いてまで店を営む意味が分からない。嫌いなタイプとは距離を置けばいいじゃないか。何をそんなに躊躇う必要があるのか。もっとドライにいこうぜドライに。
「は、はい。でも幸いなことに、男性は全然来ないので助かりました」
「僕、男なんだけど」
「ええっ!? そうなんですか?」
「悪かったな、男で」
「……あっ、えっと、自己紹介が遅れました。桃色喫茶マスターを務めている船坂椿と申します。椿と呼んでください」
椿は僕より7歳年上で、おっとりしたお姉さんという感じだ。
僕の性別を知らなかったのは、マイページを見なかったからだろう。
「私は楠木柚子で、彼は葉月梓です」
「!」
椿は僕の名前を挙げた途端、更に戸惑いの強い顔になる。
「もしかして、あの葉月梓さんですか?」
「どの葉月梓かは知らないけど、一応僕も数いる葉月梓の内の1人だ」
「そんなにいないでしょ」
「ハンドルネームとかならいると思うぞ」
僕がそんな言い回しをしていると、奥からもう1人現れる。
茶髪のポニテでノリが軽そうな感じの女性店員だった。
「ああ~っ! 葉月梓だー!」
「こらっ! お客様に失礼でしょ!」
「ひいっ!」
「申し訳ございません。失礼します」
椿が慌てて女性がいる所へと向かい、共にキッチンへと引っ込んでしまった。
遠くてよく聞こえないが、きっと接客態度を叱っているのだろう。しばらくすると、もう1人の女性店員がキッチンから出てくる。僕らの元へと申し訳なさそうな顔をしながら歩み寄る。
「先ほどは申し訳ありませんでした。つい気が逸ってしまって」
さっきとは打って変わって別人のような態度である。
「いいんですよ。この人には気を使わなくていいですから」
「おいおい、そりゃないだろ」
「それより、あんたってそんなに有名人だっけ?」
「そんなわけねえだろ。人違いだよ」
間違いない。これは動画を見られたパターンだ。徐々に侵攻してくる知名度の魔の手がっ……もう岐阜にまで迫ってきたというのかっ!
チャンネル名もタイトルも英語にしたはずなんだが、一体どういうことだ?
「えっ、でも私見たことが――」
「それより注文だ。バニラパフェとキリマンジャロ1つ」
「じゃあ私はチョコパフェとコロンビアで」
「は、はい。かしこまりました。キリマ1とコロン1お願いしまーす」
何だよその略称は? コーヒーは記号じゃねえんだぞ。じゃあ何か? ブルーマウンテンを注文したらブルマとでも呼ぶつもりなのか?
「はーい、少々お待ちくださーい」
オープンキッチンで彼女が水出しでコーヒーを淹れ始める。
――あれっ? あの3回注ぎ、僕に似ているような気がする……。
「お待たせしました。キリマンジャロとコロンビアです」
アロマは十分、だがフレーバーにほんのり雑味がある。アフターテイストは悪くないかな。
店を出せるくらいに練習は積んできたんだろうけど、まだまだだね。
「楠木さん、味はどうですか?」
「美味しいですよ。私のことは柚子で構いません。コーヒー淹れるの上手いんですね」
「ありがとうございます。動画を見て習得したものなんですよ」
「動画で習得したんですか?」
「!」
もうこれ確信犯じゃねえか。やばいよやばいよ。
「葉月さんはどうですか?」
「あず君でいいぞ。アロマとアフターテイストは問題ないけど、フレーバーに少し雑味があった。3回注ぎの2回目が遅かったせいかもな。今度は3秒早く、1回目より少なめに注げば改善されると思う」
「もう、お願いだから雰囲気壊さないでよ!」
「だってどうですかって言われたんだもん。僕はコーヒーの声を代弁しただけだ」
「まあまあ、私はこういう感想も大歓迎ですよ。勉強になります」
もう1人の女性がバニラパフェとチョコパフェを持ってくる。パフェの所々にチョコレートでコーティングした細長いビスケットが刺さっている。
過剰に余ってる食材を優先的に使ったのかな?
ずっとカフェのマスターやってると、こういうことばっか考えちゃうんだよなー。
「どうぞ、バニラパフェとチョコパフェです」
「うわぁ、可愛い」
柚子がパフェを見ながら笑顔になる。どうやら可愛さフェチらしい。
少し時間が経つと、僕らは2人共コーヒーとパフェを平らげた。柚子が席を立ってお手洗いに行く。そこにもう1人の女が椿の目を盗んでやってくる。
「あのっ、揖斐川花音です。花音と呼んでください。動画投稿してますよね?」
「――そ、そうだけど、僕、目立つのは好きじゃないからさ、できれば言いふらしたりしないでくれると凄く助かるんだけど……」
「はい、分かりました。私、いつもあなたの動画見てます。応援してますね」
「お、おう」
花音は僕より1歳年下で璃子より年上。グラマラスなボディだ。そして何より……でかい。
頭より先に体が動くのが悩みの種らしい。
弱ったなぁー。まさかファンに会ってしまうとは。ここも危険地帯だ。当分外出は避けるか。
そんなことを考えていると、柚子が戻ってくる。
「おまたせ。じゃあ行こっか」
「うん、早く行こう。もう暗いからな」
「?」
僕らは勘定を済ませ、桃色喫茶を後にするのだった。
時間はあっという間に過ぎていった――。
12月がやってくる。店を営業しながらシグネチャーの開発に勤しんでいた。
しばらくしてクリスマスの時期を迎えた。
唯、優子、ジェフ、カールの4人に加え、小夜子、美咲、紗綾、香織の4人もやってくる。葉月珈琲は無宗教であるため、恒例行事の習慣はないのだが、クリスマスには小夜子たちを中心にプレゼント交換が習慣化されていき、まるで忘年会のように人が集まった。
「みんな本当に変わらないねー」
「小夜子だって変わってないでしょ」
「何だか学生時代に戻ったみたい」
「そういえばさー、みんなは進路とか決まったのー?」
香織が唐突に進路確認をする。クリスマスの時くらい過去も未来も考えたくないってのに。
他人のプライベートがそんなに気になるのか?
「私はまだ決まってないなー」
「私も決まってない」
「あたしもかな。特に何もなければ大学まで行く予定だけど」
「あたしねー、高校卒業したらミュージシャンやってみようかなって思ってるのっ!」
「ミュージシャン? それまた何で?」
「――あず君の影響かな。何度か歌手のオーディションを受けたことがあるんだけど、なかなか合格できなくてさー、それで夢を諦めかけてた時に、あず君がバリスタになったことを知って、諦めてる場合じゃないなって思ったの。だからあたし、ミュージシャンになることにしたっ!」
この4人の中で進路が明確に決まっているのが香織だけか。
あとの3人はこのまま惰性で大学行きだろうな。大学を卒業した後も何も決まらないみたいなことにならないといいが、何故こうもこの国はやりたいことが分からない人が多いんだろうか。こんなことを言うと怒られるかもしれないが、成人した時点でやりたいことが分からない人を見る度に驚かされる。
10代の内にやりたいことを見つけて、20代になる頃にはその道のプロになるのが当たり前だと思っていた。僕自身がそうだったし、好奇心と行動力さえあれば、すぐにやりたいことを見つけて叶えられるものだと本気で思っていた。故に成人してもやりたいことが見つかってない人を見ると、どうしてもマジかって反応をしてしまう。大人が1+1を答えられなかったら、信じられないって反応をすると思うが、それと大体同じ感覚である。世の大人たちを見て分かった。僕は本当にラッキーだったんだ。
やりたいことをすぐに見つけてプロになれる人の方が少ない。
世の中のレベルって……案外低いのかもしれないな。
そう思わずにはいられなかったが、それで慢心する僕ではない。いつだって手加減したことはない。その結果が今だ。美咲たちはもう10代後半なのに何もやりたいことを見つけられずにいた。これも恐らく悪魔の洗脳のせいだろう。常に勉強を強いられ、少しでも失敗をすれば怒られる。あんな教育を受ければ好奇心も行動力も減退していくし、自分のやりたいことなんて考える余裕すらない。
特に真面目な人ほど考えない労働マシンになる。成人してもやりたいことが見つからない原因は他にないだろう。あるデータによれば、日本の20代の好奇心はスウェーデンの60代と同じ水準らしい。日本の教育を受けると、好奇心の老化が単純計算で3倍になるということだ。
嫌なことばっかさせてたら、そりゃそうなるって。
「唯ちゃんは将来の夢とかある?」
「私はバリスタを目指してます。できればあず君の下で修業させてもらいたいんですけど」
「それまで店が持つかな?」
「お兄ちゃん、そーゆーリアルな話はなしだよ」
「へいへい……」
「バリスタになった後はどうするの?」
「あず君のように、色んなバリスタの大会に出ようと思ってます」
「へー、もうそこまで決まってるんだー。凄い」
僕よりも優秀なバリスタや、うちの店よりも待遇の良い店なら他にある。
それでもうちで修業したい理由は何だ?
「うちに入りたい志望動機は何?」
「えっと、あず君と一緒にいたいからです」
「そうじゃない。うちでバリスタになりたい理由を聞いてるんだ。うちはコーヒーが心底好きな人じゃないと雇わないからな」
「あず君、そういう意地悪なこと言っちゃ駄目だよー」
優子が唯を庇うように僕を咎める。エスカレーター式に自営業を継いでる人には分からねえよ。僕も人事なんてやったことはないが、無能であれば不採用に限る。
「冗談だ。うちは面接なんてやらない。もし誰かを採用するとしたら実技試験にする。本気かどうかはそいつの自信作を見れば分かる。だから心配すんな」
「それはそれで心配なんですけど……」
「でも言ってることは何も間違ってないぞ。うちの国でもそんな理由じゃ雇わないからな」
今度はカールが僕を庇うように言った。
頑張りますと言っていれば採用される国の方が珍しい。
ただ働きたいだけの人なら腐るほどいる。その中で他と差別化を図れる人じゃなきゃ、採用しようとは思わない。とは言っても、修行するだけなら別にいい。
「じゃあプレゼント交換始めますか」
「そうだね。あず君もプレゼント用意してくれた?」
「じゃあシグネチャーの無料チケットとかどう?」
「それいいね。実質3000円分だもんね」
いくつか完成させたシグネチャーをクリスマス限定メニューである肉料理と一緒に出していた。好評ならレギュラー化も考えている。だがもう少し煮詰めたい。プレゼント交換が始まった。それぞれが持ってきたプレゼントに番号をつけてくじ引きをするというものだ。前回は小夜子の可愛いリボンが当たったが、今回はどうだろうか。僕は紗綾が持ってきた手編みのマフラーを当てた。しかもピンク色だ。
ふわふわしたマフラーを早速首に巻いてみる。
「紗綾、ありがとう」
「ふふっ、凄く似合ってるよ」
「でもあず君に当たらなかったらどうしてたの?」
「その時は2つ目をこっそりあず君に上げる予定だったから大丈夫だよ」
「相変わらず抜け目ないね」
紗綾が他の女子を出し抜こうとする癖は相変らずのようだ。クリスマスは無事にお開きとなり、みんな一斉に帰っていく。年末年始の1週間程度は毎年の如く店を閉める。
休める時に休んどかないと、来年まで体力が持ちそうにない。
クリスマス回です。
ここからあず君が日本でも知られるようになっていきます。
船坂椿(CV:佐藤聡美)
揖斐川花音(CV:南波みみ)