483杯目「ダブルスパイ」
――コーヒーイベント2日目――
この日はJBrCとJCIGSC決勝が行われる。
特に威力を発揮したのは、葉月グループが開発した新しいコーヒーだ。
既に勝敗が決したJBrCを見る必要はない。見るべきはアマチュアチームとの直接対決が注目カードとなっているJCIGSC……と言いたいところだが、決勝に残るような競技なだけあり、僕のバリスタスピリッツが見たいと叫んでいる。観客にとっても葉月グループと杉山グループの対決は会場で見てみたいと思うほどで、コーヒーイベント人気に一役買っていた。
皮肉にも優勝回数勝負がコーヒー業界の発展に貢献したのだ。
会場から控え室まで移動する最中、何度も観客にぶつかりそうになる。気をつけないとぶつかる場所なんて、スクランブル交差点くらいだと思ってた。今の時点でも最多動員数を更新するペースで人が訪れている。うちにとっては最後になるかもしれない最終決戦。たとえ秘密であったとしても、命懸けの戦いであることはみんなの表情を見れば一目瞭然だ。目は口程に物を言うって、本当だったんだ。
お陰で人混みに紛れることができそうだ。ばれずに相手を探れる。
午前10時、JBrC決勝が始まる。
葉月グループのバリスタのみが参加していることからも、レベルの高さが窺える。冷静にコーヒーを淹れながらプレゼンをしているが、心の奥には熱いものを秘めている。
小夜子たちは優勝回数勝負の件を知っているが、アマチュアチームの連中のように、勝利を確信した時点で全てを放り出すようなマネはしない。本気で優勝を目指している。油断なんて微塵もない。
「このホンジュラスゲイシャとコスタリカゲイシャを組み合わせた『ブレンドゲイシャ』は、ハニーフレーバーが他よりも格段に強いのが特徴です。両方の豆の長所を組み合わせ、ローズアロマがよりいっそう強調され、ヘーゼルナッツチョコレートのようなアフターテイストをお楽しみいただけます。果実であるコーヒーチェリーの状態で天日干しすることで、チェリーのような華やかなフレーバーがあることが特徴です。数あるブレンドコーヒーの組み合わせの中でも格段に飛び抜けた味わいです。エスプレッソよりもドリップの方が、甘味をより味覚で感じやすい仕上がりです」
プレゼンを見ていて分かった。優勝はもう決まっている。
どんな競技であれ、今までの経験が諸に反映される。
だがそれを覆せるものがあるとすれば、それは情熱以外の何ものでもない。
真剣勝負の場であることを忘れさせてくれるくらいには楽しめた。
コーヒー以外から香りを添加したコーヒー豆は原則禁止である。2021年からはルールが改正され、発酵過程で風味や香りを添加した『インフューズドコーヒー』が明確な形で厳罰化される運びとなった。競技前にコーヒー豆の検査が行われるようになったのだ。無添加プロセスの線引きが難しく、たとえ無添加であろうとも、プロセスが変わればフレーバーも変わるため、プロセスそのものが添加物と同等の役割であると考える者もいるが、競技用と商業用は別にするべきだ。
JCIGSCも既に決勝が始まり、杉山グループのバリスタから競技が始まった。
別のブースに移動するまで5分はかかるが、歩きの移動にも慣れてきた頃だ。
ダニエルの競技が始まることを司会者が告げると、観客はブーイングで歓迎し、アマチュアチームがプロ契約制度妨害の象徴と見なされていた。1番悪い人間は他にいるってのに、最も目立つ上に、立場が強くない相手にしか文句が言えないのはいただけない。
観客席の後ろにある手摺りに両肘を置き、競技を見守っていると、鷹見が僕の隣に陣取った。
「ここにいたか」
「いいのか? 僕と一緒にいて」
「どうしても伝えたかったことがある……うちの弟が世話になったな」
「ああ、最後の最後に役立ってくれた。大した奴だよ。何も気負う必要なんてなかったのに」
「流石にブーイングの中で競技をすることは想定してなかった。ホームゲームのはずなのに、完全に飲まれてしまったよ。観客を味方にできていたつもりだったのに、あいつらあっさり寝返りやがった」
「寝返ってなんかいねえよ。世間はいつだって自分自身の味方だ。悪いことをした奴を叩くのも、全部ストレス発散のためで、最初から自分のことしか考えてないし、言うだけ言って何の責任も取らない。だから世間なんて無視安定だ。うちの連中はそのことを学んでいたから、鷹見へのブーイングが聞こえても集中できたわけだ。分かっただろ。これがプロとアマの差だ」
「……参ったな」
つまらなさそうに会場の天井を見ながら呟く鷹見。
彼にはいつも以上に遠い景色に見えるだろう。僕には痛いほど分かる。昔は僕がブーイングを浴びるような立場だった。僕と彼の違いは世間が如何にクソッタレであるかを知っていたかどうかである。競技でも大きく差が出た。鷹見は最終9位で、決勝には届かなかった。いくらこの日のために練習を積もうと、本番で緊張に呑まれては全てが水の泡。たった数日のために1年を費やすことの意味を、鷹見はようやく思い知ったようだ。緊張に強い人間になれて、やっと土俵に立てるのだ。
全く緊張しないわけではない。失敗への恐怖心を誰もが持っていることを受け入れ、開き直れることが必要とされる。誰かの総合スコアとの勝負ではない。自分自身との勝負だ。
「鷹見、君の弟はうちの弁護士が全力で執行猶予を勝ち取ってみせる。お礼と言っちゃあれだけど、杉山グループの内部事情について教えてくれねえか?」
「俺が知っている情報に価値なんてねえよ。杉山社長は内部の人間にも心の内を明かさない。平気な顔をして嘘を吐く狸じじいだ。俺たちだって信用してねえよ」
「千尋がうちのスパイだったこと、誰から聞いたの?」
「えっ、それは――」
鷹見からしばらく事情を聞く。やはり僕の直感に間違いはなかった。
杉山グループは役員と社員の間に信頼関係はなく、ただお互いに利用し合うのみ。安月給の割にハードな仕事を要求されるためか、社員たちはいい加減な仕事ばかりする。彼らの仕事には血が通っていない。それは競技にも表れている。不正でもしなきゃ総合スコアで勝負にならないことは把握済みのようだが、あと1勝できれば決着がつく。もし勝負が拮抗していたならば、相手の方から和平交渉にやってきて油断させたところで、うちの本部株を買い取るつもりだったんだろうが、そうはいかねえ。
葉月グループ本部株は僕と身内だけで独占している。事実上の親族経営だ。誰1人としてうちの本部株を渡す者はおらず、優勝回数勝負に持ち込むしかなくなったのだ。しかも杉山グループ本部株を持つ者には大した忠誠心のない役員ばかりで、中には天下りでやってきた元官僚までいた。
まずは僕の直感が正しかったかどうか、確かめてみるか。
控え室周辺の廊下にはほとんど人通りがない。自分の足音が聞こえるくらいだ。特に競技が始まってからは人の移動がなくなり、次の競技者との間隔が十分に空いている。
控え室に向かうと、すぐそばを里中さんが通りかかる。
「ちょっといいかな?」
「は、はい。どうしました?」
「何でうちの控え室に入ろうとしてるわけ?」
「そりゃあ千尋君に会うためですよ。杉山社長の企みがまた1つ分かりましたから」
「今すぐ戻って杉山社長に伝えておけ。くだらないスパイ行為は二度とするなってな」
「どういうことですかな?」
里中さんが首を傾げながら目を細めると、僕らに気づいた千尋が控え室の外に出てくる。
何だろうと興味津々の近づくが、千尋はすぐに絶望を覚えることになる。こいつのせいで。
珍しく長髪の後ろに髪留めで髪型を固定し、傍から見れば、お調子者の活発な女の子にしか見えない。だが千尋がここにいるのはむしろ都合が良い。今ここでハッキリさせてやる。不本意ではあるが、僕は杉山社長に似ている。相手もうちと同じことを考えているならば、耳の痛い思いをするだろう。
千尋が気づいている可能性がないわけじゃない。
それにしたって信用しすぎだと思うが……。
「どういうことも何も、あんたが杉山社長に千尋の寝返りを伝えた張本人だろ。調べはついてんだ。千尋が最初っからスパイとして杉山グループに潜り込んでいることを知っていたのはあんただけだ。千尋は簡単には自分の秘密を人にばらさない。葉月グループにいる身内を除けば、知っているのはあんただけだ。つまりばれたんじゃなく、あんたがばらしたってことだ。さっき杉山グループの人事部長と会って話を聞いたら、あんたから聞いたと言った。どういうことか、説明してもらおうか」
「あず君、何言ってるの。里中さんに限ってそんなこと――」
「ふっ、こうも易々とバレるとはねー。人事部長も口が軽い。そうだ。私がバラした」
さっきまでの穏やかな性格から一転し、人を舐め腐ったような顔に豹変する。
「えっ、そんな。嘘でしょ……里中さん、村瀬グループ時代からずっと取引先だったじゃん」
「今は葉月グループの一味にすぎない。千尋さんが葉月グループのスパイだったように私も杉山グループのスパイだった。村瀬グループの情報が何故筒抜けだったのか、やっと分かったんじゃないかな」
「――やっぱりそうだったんだ」
不敵な笑みを浮かべる千尋。
「知ってたのか?」
「まあね。何となく感づいてはいたから、しばらくは泳がせておいたんだけど、あず君が先に証拠を掴むとは思わなかったよ。流石は勇者指揮官だね」
璃子しか知らない表現までできるとは、やはり情報は共有していたようだ。
「まあ、今更知ったところで手遅れ。アマチュアチームがたった1回でも葉月グループのバリスタに勝ち越せば、葉月グループは杉山グループに吸収合併される。契約は守ってもらうよ。はははははっ!」
里中は高笑いしながら控え室を去っていく。余計なことをしちまったか?
とはいえ、これ以上つまらん邪魔をされるのは不愉快だ。
「里中さんがスパイってことを見抜いたのは立派だけど、何で人事部長に聞いたなんて嘘吐いたの?」
「バレてたか。人事部長は鍛冶茂雄が担当していた。鷹見弟から聞いたんだけどさ、もし鍛冶茂雄が選挙に受からなかった場合、保険として杉山グループ傘下に入って、人事部長になる予定だった。先代の人事部長はクビにする予定だった。つまりまともな人事がいない。那月の適性を見抜いたのは、会社を乗っ取る前は専務と人事を同時に担当していたからで、そのことを里中が知らなかったのは、杉山社長と情報を共有していなかったからだ。逮捕されて空きが出ている人事部長がばらしたって言った時から怪しいと思ってた。千尋は人事部長の不在を知りながら、話を合わせていたんだよな?」
「もちろん。内部事情はおおよそ把握してたよ。言ったじゃん。一生あず君についてくって」
嬉しそうに歯を見せながら千尋が言った。
生き生きした顔を近づけながら抱きついてくる。
「何だよ。どうかしたか?」
「今だけこうしていたい。ずっと会えなかったからさ」
「なんか変だぞ。今日の千尋」
「僕はいつだって変だよ。みんなと全然違うし、違いを認められたことなんて……全然なかった。いっそのこと、みんなと同じだったらどんなに楽だったかって思った日もあったよ。葉月グループに入るまではね」
「みんな同じは楽だけどさ、それだと変えるべきものだって変えられないし、周囲の奴だって、本当はある程度我慢してる。でもみんなは僕ほど我慢してない。変人としての生き方も悪くねえぞ。世の中を変えられる人だから変人なんだ。むしろ誇れ」
千尋は僕から離れようとしないばかりか、締めつける力が更に強くなる。
今分かった。千尋がずっと生き辛い思いをしてきたのは理解者がいなかったからだ。
にっこりと笑いながらようやく手を離すと、一瞬だけ寂しそうな顔を浮かべ、控え室へと戻る。千尋の言っていたことが正しければ、彼はJCCに参加する。バリスタオリンピックの敷居が高いと感じる人でも気軽に参加できるよう形を変えた総合格闘技だ。バリスタオリンピックでは惜しくも結果を出せなかった千尋にとってJCCはリベンジができる数少ない機会だ。入れ替わるように明日香がやってくる。久しぶりの再会だ。
「やっと解放されたな」
「はい。うちのちーちゃんが迷惑をかけました」
「迷惑なもんか。あいつはあいつなりに貢献してくれた。不器用だけどな」
「――私とちーちゃんが結婚した理由、知ってますか?」
「親父に孫の顔を見せるためだろ」
「……やっぱりあず君にだけは話してたんですね」
「好き同士で結婚したんじゃねえのか?」
「周囲はそう思ってます。でも本当は片想いですらない、ただの友達です。ちーちゃんは昔っからずっとあず君に夢中で、あず君が喜んだとか、あず君がカッコ良かったとか、毎日のように話すんですよ」
「うわ……聞かされる方の身にもなってほしいよな……ん? じゃあ千尋って――」
明日香が僕の唇の前に人差し指と中指で塞いだ。
「それは言わない約束ですよ。私は本当のちーちゃんを受け入れた上で結婚生活を続けています。ちーちゃんは私のことも、子供のことも、家族として愛してくれています。ちーちゃんはあず君と一緒にいる時が1番楽しいみたいで、あんなに生き生きとした姿を見せてくれるのは、あず君のお陰なんです」
指を離したかと思えば、何かを憂うように顔を下に向ける明日香。
――複雑な家庭環境って、こういうことを言うんだろうな。
僕に一生ついてくって、そういう意味だったのかよ。下手をすれば命の危険もあったってのに、千尋は危険を顧みることもなく、葉月グループを勝たせるためだけに行動を起こした。通常の信頼関係だけではまず成り立たないし、不自然とは思っていたけど、千尋は自分が消される覚悟までしていた。
グループのためじゃなく、他でもない僕のために。
とりあえず千尋について深く掘り下げるのはよそう。問題はむしろ明日香の方だ。
何だかこっちが悪いことをしているように思えてくる。からかいの対象として、主に伊織ばかりを選んでいた理由がやっと分かった。どこの誰にも悟られたくなかった。けど明日香にはバレたようだ。
「何でそんなことを僕に?」
「ちーちゃんから本当の自分をさりげなく告げるように言われたんです。あず君なら信用できるって」
「相変わらずめんどくせえな。堂々と生きりゃいいのに」
「この国だと、少数派の人間がどんな扱いを受けるか、あず君なら知ってるはずです。多数派の人たちが思っている以上に生き辛い。私だってそうです。決して好きになることのない異性とばかりお見合いをさせられて、本気で告白しようと思っていた璃子さんも浅尾さんに取られて、どんなに苦しんだか」
珍しく愚痴るように両頬を膨らませる。
おいおいおいおい、寄りによって明日香もかよ。
何だろう。明日香が苦しんできた責任の一端が僕にもあるように思えてならない。璃子が無事に蓮とカップリングできたのは、僕が終始受け身な性格だった蓮の背中を押したからでもある。
もっとも、それは同様に受け身であった璃子のためだ。璃子は人間関係に関しては徹底した受けに回る癖が身についている。自分からは絶対人に話しかけないし、僕も一度は見習ったことがあるくらいの人嫌いだ。処世術と言ってしまえばそれまでだが、自分から行動を起こさなければどうにもならない。
「……なんか済まん」
「いいんです。璃子さんにはとっくに告白して玉砕済みですから悔いはないです。ちーちゃんは私を苦しみから解放するためにプロポーズしてくれたんです。私がこんなことを言うのもあれですけど、もっと璃子さんを大事にしてください。あんなに兄想いで、人の幸せを心から喜べるような人、世界中探しても、どこにもいませんよ」
「――そうする。じゃあな」
逃げるように控え室へと入った。明日香は入ってこないようだ。
千尋は奥の方で、小夜子たちへの指導に専念している。JCCは大会5日目だ。余裕があるとは言えないが、まずは味方を勝たせなければ意味がない。これからファイナリストとして初めての決勝に臨むというのに、うちのバリスタは緊張を楽しんでいる。強化合宿の成果がようやく表れたようだ。うちが強化合宿で最も鍛えてきたのはメンタルだ。傷つきやすくて全身急所剥き出しな状態で大会には出られない。感情がある以上、傷つかずにやり過ごすのは無理だ。故に傷ついても平気な人間にする必要がある。いくら才能があっても、挑戦するだけの度胸がなければないのと一緒だ。敏感さと同じくらい、鈍感さは武器だ。世の変化には敏感であれ。されど自分の傷には鈍感であれ。
人の成長が止まるのは、悪い意味でリアリストになった時である。
里中はもう僕らの前には現れないだろう。
僕も杉山社長も考えることは同じだった。奇しくもダブルエージェントを送り込み、お互いに敵の内部情報を送り続けていた。だが千尋の言葉を聞く限り、最初から気づいていたようだ。
重要な情報は一切漏らさなかったという言葉は、里中に向けて言った言葉だったんだ。まるで人を手の平で転がすようないけ好かない側面もあるが、千尋は自分から進んで悪役を演じられる度胸がある。一見無鉄砲にも見えるが、計算ずくなのがあいつらしい。
JCIGSCで遂に葉月グループの競技が始まった。
僕ぐらいになると、特に光る競技を見せた人はすぐに分かる。
チャンピオンオーラを全身に纏い、圧巻の覇気が声に出ている。
「今回私が選んだのは、コロンビアの『アビシニア』です。元々はエチオピアのアビシニア高原という2000メートルから3000メートルの高原地帯を発祥とし、コーヒーの生産に適しています。アビシニア西南部のカファ州周辺がアラビカコーヒー発祥の地であると考えられています。ハニープロセスで作られたこのコーヒーは、エスプレッソに適した粘性と質感をもたらします。これを葉月グループ傘下の葉月酒造が独自に開発した日本酒と組み合わせていきます。1口目にパイナップルやネーブルオレンジのような酸味を伴う甘さが特徴で、最後にハニーオレンジを感じていただけます」
コーヒーに合わせる前提の日本酒は辛さが控えめで風味を損なわない工夫が凝らされている。
本来の日本酒の味を崩さずにコーヒーと組み合わせられるか心配だったが、品種との相性を考えて選べば真価を発揮することが判明した。全ては葉月データに蓄積された膨大なコーヒーデータのお陰だ。風味を数値化してフレーバー座標に換算することで最適な組み合わせを導き出すことができるが、データのみに頼らず、最後は直感と粘り強さでこの究極の風味に辿り着いた。ゲイシャやシドラに負けない風味のコーヒーを目指した結果でもある。特定の世界最高峰の品種にばかり頼るバリスタが後を絶たない中、葉月グループのバリスタは独自路線を進み、直感と数字を用いた総合力勝負に出た。
ダブリンの大学で世界初のコーヒー学科主任となったアリスの援助もあった。化学物質を一切使わないオーガニックコーヒーの開発を行い、プロセスを多様化することで、自然な味わいを維持しながら競技にも商業にも向いたコーヒーブランドが徐々に形成されつつある。今やコーヒーファンで葉月の名を知らない者はいないと言えるが、それは優勝回数勝負があってこそ。命懸けの勝負をしているからこそできた。負ければ全てが終わると思えたからこそ、いつもならできない実験も思い切ってできた。
コーヒーが僕に与えた試練は、業界自体の生存を問うものであった。
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