表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第19章 逆襲編
470/500

470杯目「一大決心」

 穂岐山社長は育成部の維持費を集めるべく奔走していた。


 プロ契約制度にはお金がかかる。そのことを誰よりも理解していた。ファイトマネーに実験の経費まで考えれば、費用は膨大なものだ。しかしながら、今回はプロが勝たなければ全てが終わる。アマチュアチームは強いが、あくまでも国内だけだ。あらゆる競技に参加することを想定して、総合力を鍛える訓練が仇となっていたが、この方針は決して間違っちゃいなかった。


 シミュレーションではあるが、葉月グループ側のバリスタ全員の総合スコアを洗い直し、減点された分を総合スコアに加算してみれば、アマチュアチーム全員を上回る総合スコアを記録した。実力ではまともにやり合ったところで、プロには勝てないことを杉山社長は見抜いていた。そこで運営スタッフに杉山グループ側の刺客を送り込み、敵の弱体化を図った。


 作戦は見事成功を収め、葉月グループを敗北寸前にまで追い込んだ。


 中津川さんがメールを終えると、再び社長室のソファーに戻ってくる。


 コーヒー業界は2011年バリスタオリンピック選考会書類選考にて、明らかな不正と思われる選出を行った件が大々的に報道され、トップバリスタによる競技会ボイコット運動が発生し、協会の名誉が再び回復するのは、2015年バリスタオリンピックを待つこととなった。このような不正が行われることを防ぐべく、大会結果に応じて貰えるバリスタポイントが導入されるきっかけとなった。バリスタの強さが視覚化され、上位から自動的に通過する仕組みとなったため、協会側の好き嫌いでバリスタを選べなくなったのだ。根本が選考会に一度落ちたのは、他でもない実力不足である。


 穂岐山社長が電話を終え、再び社長室へと戻ってくる。


「あず君、非常に残念だが、身内の幹部によれば、何人かは杉山社長への不信感を募らせているが、杉山社長を支持する幹部が多数派で、このことを公表せずに弾劾するのは難しいようだ」

「まっ、そうくると思ったよ。身の回りを固めずに不正を行うのは至難の業だ。だったら仕方ない。不正の事実を公にして、杉山社長を弾劾するしかない」

「……本気なのか?」


 戸惑いながらも、覚悟を問うように穂岐山社長が尋ね、社長用の椅子に体重を預けた。困り果てている中津川さんは穂岐山社長を眺めているしかなかった。娘が嫁いでからは、鎖が切れたかのように自由な活動を始めたが、当時の葉月珈琲との取引で不手際があり、一度失った基盤を取り戻すには至らず、中津川珈琲はその歴史を終えた。だが中津川珈琲本店は穂岐山珈琲傘下の店舗として生き延びており、軍門に下ることで、オレクサンドルグループから受け継いだ伝統あるジェズヴェコーヒーを守った。


 ある意味では信用を失うことの重大さを誰よりも理解している人物と言える。


 一度失敗した者は、多くの場合懲りる。一度の失敗で辞任させるのは勿体ないし、見せしめにされた格好となっている後任者が委縮し、何もしなくなるばかりか、保守に走る副作用もある。そんなことを繰り返していては役員会が麻痺を起こし、非常事態になっても動けない組織となる。滅びの一手だ。


「本気じゃなきゃできないだろ」

「しかし、決定的な証拠を掴むのは難しいぞ。杉山社長本人が不正を認めなかった場合は――」

「それでも辞任させるくらいはできる。今こそインフルエンサーとしての影響力を行使する時だ。僕がこの情報をばら撒けば、後は世界中にいるコーヒーファンが勝手に弾劾してくれる。この国で責任を問われたトップがすることと言えば、辞任くらいしかない」


 穂岐山社長は窓の外を見つめながらだんまりを決め込む。


 無理もない。せっかく建て直したばかりの信用を再び手放すには、身を切る覚悟が必要だ。コーヒーイベント運営スタッフによる不正が公になれば、世間の信用を失うばかりか、トップバリスタがまたしてもボイコット運動を始める恐れがある。杉山社長はここまで計算ずくだ。不祥事を公表すれば、不正を許したばかりか、不正を助長した杉山社長を弾劾することはできる……が、代わりに傷を背負う。公表しなければ弾劾が難しくなり、次のコーヒーイベントでの妨害工作防止が非常に難しくなる。


 僕らは一大決心を迫られている。


 ジャパンスペシャルティコーヒー協会は伝統という名の保守に染まりつつある。


 会長の権限が強く、良くも悪くも会長の性格が繁栄されやすい。


 幹部の平均年齢が上がっている今、段々と保守的な思想に染まるのは組織あるあるだ。


 失敗を許す勇気が問われている。もう一度やり直すには、代償を払わなければならない。これから穂岐山社長には覚悟をしてもらう。一度ハマった型を破る覚悟を。


 半ば追い出される形で東京から離れたのも、力を持たなかったが故。杉山社長は協会を牛耳ることでコーヒー業界を支配できると考えていたようだが、もっと早くやるべきだった。旧虎沢グループの面倒を見るのに時間を費やしたようで、ようやく協会の乗っ取りに着手した頃には、既に僕がグランドスラムを達成した後だった。いや、むしろそれが狙い目だったとしたら、コーヒー業界の人気上昇を待っていたと考えるのが自然だ。美味しく焼き上がったところで取り上げる。杉山社長らしい手口だ。


 社長室の扉から誰かが黙ったまま入ってくる。


 ――ようやくお出ましか。


「おっと、そいつはちょっと困るな」

「松野君、どうしてここに?」


 中津川さんが疑問の顔を浮かべた。


「いや何、うちの店が丁度真下にありますからね。さっき葉月の姿が見えたもんで、気になって来ちゃっただけですよ。この人がここに来るのは珍しいですから。葉月、話は聞かせてもらったぞ。悪いがそんな証拠を提示されちゃ困るんだよ。俺にもメンツってもんがあるからな」

「松野君、一体どうしたんだ?」

「社長、ノックもせずにすみませんね。どうしてもその証拠を渡されたくないんですよ」

「? このことと松野君には何の関係もないはずだ」

「それがそうじゃないんですよ」


 松野は証拠映像のディスクを取り出すと、手に持ったまま不敵な笑みを浮かべた。


「だろうな。だってあんたこそが――」


 僕はソファーから立ち上がり、音もなく松野に歩み寄る。


「杉山社長の隠し子だもんな」

「「!」」


 穂岐山社長と中津川さんの2人が同時に冷や汗をかく。


「えっ……どういうことなんだ? ……隠し子って」

「杉山社長には隠し子がいた。でも何らかの事情でずっと行方不明だった。それが松野だった。穂岐山珈琲の情報から葉月グループの情報まで、全部杉山社長に筒抜けだった。あの杉山景子がいとも簡単に僕が杉山社長と会う情報を入手できた。つまり誰かが密告していた。最初は千尋だと思っていたけど、千尋が裏切ってからも、うちの情報がずっと漏れ続けていた。世界のトップバリスタが来日する情報をアマチュアチームが知っていた。公表する前だというのに。不自然と思った僕は、餌を撒いた。手始めに穂岐山珈琲に葉月グループの計画を秘密裏に伝えた。一緒に杉山グループの株を買って乗っ取る計画だ。でも何故か杉山社長に知られて先回りされた。となれば話は簡単だ。穂岐山珈琲の誰かがこの計画を流していたってことだ。そんな奴がいるとすれば、隠し子くらいしかありえないだろ」

「相変わらず鋭いな。そういうところ、マジでムカつくぜ。いつから気づいてた?」

「杉山社長に隠し子がいることを知った時から怪しいと思ってた。杉山社長は何年も前から穂岐山珈琲を乗っ取る計画があった。自分の子供を相手の社長の子供と政略結婚させる策を得意としている。あんたは穂岐山社長の娘である美羽に何度も近づいてはアプローチしていたけど失敗した。美羽が楠木家に嫁いでからは、直接乗っ取る計画に変更して、今度は皐月と結婚させようとした。松野、あんたが皐月に交際を申し込んでいたことは皐月本人から聞いた。それで確信が持てた」


 皐月は多くの男性から交際を求められていた。


 意外なことに、皐月にアプローチした男性の中には僕の知り合いもいた。アプローチリストは宇佐さんが隈なく調べ上げた。リストの中には松野もいた。大手の令嬢とつるんでいる行動を怪しいと思い、宇佐さんに調べさせた結果、驚愕の事実が発覚した。松野は東大卒ではあるが、家はあまり裕福ではなかったのだ。東大卒は親が裕福であることが多く、格差社会の象徴となっていた。貧困でありながら進学ができたということは、誰かによってただならぬ支援を受けていたことが見て取れる。


 杉山社長であるならば納得がいく。彼には男子の後継者がいないのだから。


「美羽と皐月にアプローチしていたのは、杉山社長からの指示なんだろ?」

「ああ。言うことを聞かないと、色々と面倒なんでね」

「コネ就職をしなかったのは、里親がそこまでの義理がないと感じたからだろ?」

「そこまで調べられてるのかよ。参ったな。仮にも養子に出したのであれば、親子関係は解消するべきだって、親父とお袋がうるさかったからな。杉山社長は社長令嬢と結婚したが、その人とは別にいた元カノが妊娠していたんだよ。その子供が俺ってわけだ。俺の本当のお袋は、俺を生んですぐに死んだ。杉山社長は結婚を円滑にするために、秘密裏に俺を養子に出した。その後も俺が大学まで進めるように援助してくれた。でもそれが今の親父にバレて就職活動までは支援してもらえなかった。コネ入社でもできたら、生活は楽だったかもしれねえけど、それだけは俺のプライドが許さなかった。誰かに手取り足取り支援してもらってばかりの生き方なんて、モルモットと何ら変わらねえからな」

「何で今まで正体を隠してたわけ?」

「バレたらクビになると思った。ただでさえ杉山社長も令嬢たちも嫌われ者だ。俺が本気で葉月に勝つにはしっかりと育成部からのサポートを受けて挑む必要がある。杉山社長が穂岐山珈琲を乗っ取ろうとしていることが分かった時は驚いた。最初は吸収合併されてから杉山珈琲の社長になる予定だった。なのに社長が育成部を分社化したせいで、俺はここに残らざるを得なかった。しかも俺がマスターを引き継いだはずの店舗は全部蛻の殻で、必要な設備が全部売却されたり壊されたりして、建て直すのに時間がかかったせいで、一緒に移動せざるを得なくなった。とんでもないことをしてくれたもんだ」


 松野がここにやってきた理由は他でもない。


 僕と皐月が鷹見弟に接触したことを知り、うちに来るタイミングを計っていた。


 杉山グループ側の人間とつるんでいない限り、僕の様子を心配することなどまずあり得ない。この建物に入る時、松野がマスターを務める穂岐山珈琲岐阜支店の目の前を手にディスクを持ったまま横切った。目論見通り、松野が引っ掛かってくれた。


「選考会の時、辞退してまで根本を代表にしたのは?」

「根本を杉山珈琲のアマチュアチームに入れるためだ。優勝できなかったら責任を取ってもらうと言って杉山社長に根本を推薦してもらった。根本もプロ契約制度によって会社に大きな負担がかかっている自覚はあるみたいだからな。もうこの話はいいだろ。ばれちまった以上、俺がここにいる理由はない」


 松野が冷めた顔を僕に向けながらディスクを両手に持つ。


「おっ、おいっ! ちょっと、待て! それは――」


 細長く硬い円形がパキパキと折れる音が部屋に響き渡り、ガラスの破片のように床に散乱する。


「なっ、何てことをしてくれたんだ君はっ!」


 穂岐山社長が席から立ち上がり、慌てた様子でバラバラになったディスクに駆け寄った。


「失礼しました。しばらく謹慎してきます。何ならクビでも結構ですよ」

「……」


 松野が扉に手をかけて部屋を出ると、扉を閉める音が、僕にはいつもより小さく聞こえた。


 店を出る松野に、根本は驚きを隠せないはずだ。根本の正体には恐らく最初から気づいていた。最初に根本に会った時には、既に師匠と愛弟子という関係にあった。松野の愛弟子として根本の面倒を見ていたのは、共に敵側の息子というある種の汚点に、後ろめたいものを感じていたからとしか思えない。


 ディスクの欠片を見つめながら肩を落とす穂岐山社長。


「まさか……松野君が裏切り者だったとは」

「こんなことだろうと思った」

「君はやけに冷静だね。まあしかし、うちの主力がこうもあっさり抜けてしまっては、今年も穂岐山珈琲から世界大会に進出できるバリスタは出てこないかもしれません。社長、このままでは本社を取り返すどころではないかと」

「……そうだな」

「何、もう諦めちまうのか?」

「証拠映像のディスクは見ての通りバラバラだ。修復はまず無理と言っていい。せっかく杉山社長を退けられると思っていたんだが、残念だ」


 僕はバッグから()()ディスクを取り出し、ビデオデッキに入れた。


 ビデオを作動させると、再びさっきと同じ光景が大きな画面に映る。


 10分前に戻ったような感覚に襲われ、穂岐山社長も中津川さんも開いた口が塞がらない。リスク分散は基本中の基本だし、何より僕らが相手にしているのは、手段を択ばない連中なのだ。


「! ……たまげたな。ディスクをもう1枚持っていたとは」

「コピーだったか。相変わらず抜かりがないね」

「証拠ってのはな、ちゃんと予備用に複製しておくもんだ。誰かに証拠を提出する時は、どんなに信用できる奴であってもコピーを渡す。トランプゲームをする時、たとえ友達が相手であっても、カードはちゃんとシャッフルするだろ? それと一緒だ。これで相手は……証拠を隠滅できたと確実に思い込んでいるはずだ。後は僕に任せてくれ」


 ビデオデッキに入っていたディスクを回収し、ケースに入れてから穂岐山社長に手渡した。


 用は済んだ。僕がここに来た目的は敵を油断させ、穂岐山社長に反旗を翻す動機を持たせるためだ。


 空が暗くなり、雨雲が太陽を覆い隠す。最初こそポツポツ降っていた雨は徐々に勢いを増し、屋内にいても音が聞こえるくらいだ。社長室を出た先にはエレベーターがあるだけで誰もいない。どうやら盗み聞きはされていなかったようだ。帰宅しようとエレベーターを使い、1階まで下りると、穂岐山珈琲岐阜支店で数人のスタッフの姿が窓越しに見えた。


 今のところ、穂岐山珈琲系列の店舗はここにしかないが、本店とは決して言わない。


 スタッフは全員で6人。うちの様式を真似ているようだが、某ビデオゲームのパーティが6匹であることが由来であることは僕以外に誰も知らない。6人パーティは理に適った人数だ。通常のカフェは多くても50席程度の規模である。50席程度の店を回す場合、すぐに提供できる軽食がメインであっても最低3人は必要だ。4人いれば1人は清掃に回れるし、5人いれば1人はバイヤーに回れるし、6人いれば誰かが休んでもカバーに回れる理想値と言える。


 7人以上だと人数余りを起こしてしまうことは実験で実証済みだ。


 店舗はジャンルによって最適な規模というものがある。カフェを開く前、様々な規模のカフェを視察してみたが、最も客の収まりが良かったのは50人規模の店舗だった。以降は葉月グループ系列店舗の基準となった。店舗が狭ければ、人気店舗となった時に行列ができすぎて困るし、広ければそれだけスタッフを雇わなければならず、売れなかった場合のリスクが大きい。ここは多くの店舗が苦戦を強いられてきたと言えるポイントだ。どこまで無駄を削れるかを検討するのも立派な設備投資である。起業する前、建築に詳しい親父が手取り足取り教えてくれたのが役立った。


 松野は根本に事情を説明し終えると、すぐに店を発ってしまった。


 ため息を吐き、店の壁に背中をもたれさせる根本。


 松野の正体を知ったことは表情を見れば分かる。千尋に裏切られた時の伊織と同じ顔だ。店内では他のスタッフが接客を担当し、根本は注文を受けると、考える暇もなくコーヒーを淹れた。熱湯を3回に分けて投入したばかりのドリップコーヒーを途中でフィルターから外し、見事なまでに雑味を消しているのが見て取れる。客足は以前よりも改善した。まるで嫌がらせのように周囲に建っていた杉山珈琲系列の居酒屋カフェが全て撤退したのだ。もちろん穂岐山社長にも話した。バリスタランド岐阜県代表店舗として出店するにあたってこれまでの経緯を話し、当面は穂岐山珈琲を資金援助する形で合意した。


 大きな恩を売った。杉山社長の私物と化した協会を取り返せるのは、かつて会長としての経験を持つ穂岐山社長をおいて他はいない。第1次政権では、幹部たちからの反対を押し切って、多くのバリスタ競技会の国内予選を開催し、日本のバリスタが世界へと羽ばたく土壌を作った実績もある。


 杉山社長が協会幹部となってからは、改革の反動から反発する者たちを巧みに利用し、会長の座から引き摺り降ろしたのが事の真相である。


 僕は根本の様子を見守りつつ、スマホでタクシーを呼び、帰宅するのだった。


 数日後――。


 穂岐山社長に動きがあった。不穏な証拠ディスクを杉山社長の元に送りつけるや否や、コーヒーイベントのルール変更をあっさり認めたのだ。


 通常の運営スタッフとは別に、会場毎に3人の監視役を葉月グループ側から派遣し、見張らせることを認めさせ、運営スタッフによる妨害工作を事実上牽制する格好となった。これでもう二度と同じ手は使えないし、鍛冶議員も選挙が迫っていることもあり、下手には動けない。この間に全ての証拠を掴んでしまいたい。鍛冶議員のことだ。感づいたからには、解散総選挙が終わった後、全ての証拠を消すところまでが読めた。うちとの不可侵条約を平気で破るような奴だ。次はどうするのかさえ分からない。


 杉山社長と鍛冶議員のどちらかだけでも排除できれば、十分勝機はあるんだが――。


 ベッドに突っ伏したまま、隣で寝静まっている伊織の髪を撫でた。


 至近距離から冷たくも静寂な鼻息が肌に伝わる。子供の泣き声に起こされ、しばらくは睡眠時間が大きくずれてしまい、昼間にロクな活動ができない事態となった。この世で最も忙しいのは母親だ。年中無休で常に仕事があって、心安らぐ時間があるとすれば、子供がやっと寝静まった時くらいのもので、普段から家事に追われていて、いくらでも体が欲しくなるのだ。


 ――やっと分かった。唯が事実重婚を認めてくれたのは、父親と母親だけでは子育てができないためでもある。ただでさえ仕事や家事だけでも忙しい。住み込みのハウスキーパーを見て、役割分担を思いついたと見て間違いない。誰もが一度は考えることかもしれない。


 実行に移せたのは、普段の僕に触発されてだろうか。


 伊織の負担が少なくて済んだのは唯のお陰だ。彼女もまた、母親の大変さを知っている。

読んでいただきありがとうございます。

気に入っていただければ下から評価ボタンを押していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ