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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第19章 逆襲編
464/500

464杯目「卒業生の価値」

 凜は自慢げに葉月珈琲塾の宣伝をするように言った。


 愛梨はあからさまに羨ましい顔を見せた。だが結論を言えば、愛梨が入塾する必要はない。


 凜は僕が話した雑学を大層気に入っているようで、受け売りと知りながら話している。彼女はLDの診断を受けており、読み書き計算が大の苦手だ。学生時代はLDによって躓き、学業不振に陥ったことが不登校のきっかけであった。そこに家庭の事情で給食費を払えない問題が上積みした。校内に居場所がなくなったところで、凜の父親が葉月珈琲塾を発見し、入塾に至った。最初こそフリースクール程度の認識だったが、これが凜の人生の分岐点となった。当初の約束通り、凜はトップバリスタとなった。


 凜に一生分の年金を払わずに済んだばかりか、自力で稼げるようになったのだ。読み書き計算が苦手でも実は思ったほど苦労しない。集団組織であれば致命傷になりかねない特徴を隠しながら生きている人はたくさんいる。葉月珈琲塾卒業生の場合、外見が魅力的ならモデル、手先が器用ならラテアーティスト、創造性が豊かなら、コーヒークリエイターとして開発部に就職する者もいる。仕事のやり方にもよるが、どれも読み書き計算を必要としない仕事だ。文字や記号による説明だけでなく、イラストや音声による説明を併用するだけで、定型発達の人と変わらない速度で理解できるユニバーサルデザインが十分に整っている。故に葉月グループでは、障害を持っていても健常者枠で働くことが可能なのだ。


 障害者雇用促進法などいらない。結局戦力にならなければ、職場から蹴り出されるんだ。


 失業した場合の逃げ道がない健常者から無駄に雇用枠を奪う悪法には一切つき合わない。


 特別なサポートを必要としている時点で、ハンデを抱えていると言っているようなものだ。障害者枠で入ってきた人は、労働自体を得意としていない場合も少なくない。ハンデを抱えているならば、ハンデが邪魔にならない仕事、もしくはハンデを取り返してお釣りが出るくらいの恩恵を会社に与えるなどの工夫をするべきだ。戦力になることを証明できない限り、健常者から雇用枠を奪うくらいなら、障害年金や生活保護を受けるのが合理的である。これが葉月グループの公式な回答だ。


 労働者の枠を奪っているのは障害者ばかりではない。老人も定年退職してから働き続けるし、これからロボットやAIといった様々な要素が労働者の代替手段として活用されていく。人件費削減のための企業努力がこれほど進んでいる中で、労働者であること以外に稼ぐ手段を持たない者が貧困化していくのは当然だし、戦力外は隠居暮らしを当たり前にしていくことが重要なのだ。


「あず君、私葉月珈琲塾に入りたいっす。バリスタの仕事を習得できるコースがあるなら、ショコラティエの仕事にも活かせると思ったんすよ」

「優子に教えてもらえばいいんじゃねえのか?」

「それは無理な相談っすよ。優子さん、ここんとこずっと出かけてばかりで、私よりも仕事の方が大事みたいっすから。迷惑はかけられないっすよ」

「分かった。じゃあ仕事終わりに通ってみろ。すぐ近くなのが幸いだったな」

「はい。頑張るっす」


 ビシッとドヤ顔で敬礼を決める愛梨。凜は宣伝に成功したのか、上機嫌に愛梨と肩を組んでいる。幼少期から学習する機会だけじゃなく、何歳になっても学習をやり直せる機会も必要だ。


 葉月珈琲塾には特に規定されたコースがない。


 コースは塾生自らが作るものという方針からである。自分のやりたいことさえ決められない奴は、生活保護でも受けて隠居すればいい。変化の時代を生きられるのは、正解のない世の中で自分なりの最適解を確立できる者だけだ。人生設計の最適解は人の数だけある。誰かが規定する余地などない。カリキュラムも1人1人に合ったもので、共通しているのは1000個の課題をこなせば卒業できるという点だけで、1000個の課題の内、10個は試験形式の大きな課題であり、最後の課題として卒業試験がある。合格するまで何度も受けられるが、3回までに合格できなかった場合、葉月グループに優先枠で雇用されなくなる。一発で卒業できるのは10人に1人という狭き門だ。


 ちゃんと学習してきた人しか卒業できない仕組みだからこそ、卒業生に価値があるのだ。


 卒業を難しくした理由は他でもない。かつてFランに通っていた吉樹から話を聞いた時のことだ。


 Fラン卒は事実上の中卒である。理由は簡単だ。高校の時点で勉学に苦戦している人たちが、大卒の資格を買うためだけに、最後の砦としてやってくるのだ。吉樹に連れられ、授業内容をふんわり見た限りではあるが、真面目に出席していれば猿でも受かるほど簡単なものだった。何故か出席点の配点が大きく、テストに至っては教科書やノートに書いている内容を書き移すだけの簡単な作業だが、それでも当たり前のように落ちる人がいるのだから驚きだ。Fラン卒の大手就職率が低いのは、中卒とほぼ変わらないレベルであることを見透かされているからだ。企業だって馬鹿じゃない。


 吉樹の履歴書も子供が書いたような内容だったが、勉強以外には一生懸命だ。たまたま受験を耐える能力が低かっただけである人も少なくない。才能はあっても学歴で取りこぼされ、単に頑張り方を知らないだけで、知った瞬間に開花する人もいる。むしろ1周回って、うちでなら通用するかもしれない。


 大きな板チョコを注文する。まだできたばかりのピスタチオ味だ。


「イートインかテイクアウトか、どちらにしますか?」

「じゃあテイクアウト――」

「2人共イートインにする。ねっ、あず君?」


 凜がウインクをしながら僕に抱きつく。


「お、おう……別にいいけど」

「私も同じチョコにする」

「了解っす」


 愛梨は敬礼を決めてからピスタチオチョコレートの大きな板を取り出した。


 カウンター席の反対側にある窓際の席に腰かけた。外を見渡せるオシャレな設計だ。店内は以前より広くなり、隣の家が空いたことで増築し、50人程度が居座り、大半の客はテイクアウトを選択する。チョコレートは巨大な板チョコがメインであり、他のメニューを習得するまでは、これだけで商売をするとのこと。板チョコだけではあっても、混ぜる食材の種類が豊富であれば、飽きられることはない。


 提供されてから食べてみる――コペンハーゲンで初めて食べたあの時と同じ味だ。


 チョコとピスタチオの相性が良いことを初めて知った時、世界の広さを見た。多分それは璃子も同様だろう。璃子が経験してきた技能は見事に継承されている。璃子が再現してみせた風味をそっくりそのまま受け継ぐだけじゃなく、新たに自分を象徴する新たな風味を開発している。肩まで届くくらいの波打っている黒髪を靡かせ、ピスタチオチョコレートにカプッと歯型をつけて少しずつ音を立てて平らげていく。ほっぺが落ちる様子が見て取れるくらいに美味しそうに食べる横顔を見ているだけで食欲が湧いてくる。味わいを意識せず、ただ美味いものを食いたいという思いだけで食べているのだ。プライベートでは味の分析などせず、純粋に飲食することに躊躇がない凜を羨ましく思う自分がいる。


 ――何で僕、こんなことを考えてるんだろうか。


 この気持ち、どこかで味わったことがあるような……。


 思い出せない。そう感じながらも、ピスタチオチョコレートを食べた。自分の胴体くらいある板チョコを1枚ずつパキパキと割り、1切れずつ口に頬張っていく。板チョコは冷やしている方が美味い。板チョコは常温で販売されることが多いが、ここは璃子の好みが反映されている。


「あれっ、気に入らなかった?」

「そうじゃねえよ。凜みたいに素直に喜べたらいいのにって思ったんだよ」

「何それ、まるで私が何も考えてないみたいじゃん」

「考えなくていいんだよ。仕事中じゃないんだし」

「あず君は寝てる時以外()()()()()だもんね」

「――そうかもしれねえな」


 力なく答えた。確かに美味いが、喜び方さえまるで分からない。


「あっ、お兄ちゃん」


 自動扉が横に開くと、見覚えのある顔と視線が合う。


「璃子、何でここに?」

「愛梨ちゃんの腕前を確かめに来たの。しばらくは完全監修を担当することになってね」

「完全独立した店舗だってのに、随分贔屓目だな」

「私にとっては最初の愛弟子だからね。お兄ちゃんだって愛弟子を妊娠させて一緒に住んでるじゃん」


 ジト目で僕を見つめながら軽く腕を組む璃子。


「凜ちゃん、ちょっと席外してもらってもいいかな。お兄ちゃんと大事な話があるの」

「は、はい……」


 テーブル席に腰かけた凜をカウンター席に追い出すと、すぐに僕の隣に腰かけた。


 いつの間にか肝が据わっている。凜は愛梨とすぐに話し始めた。


 スマホで簡単に申し込みができることを愛梨に伝え、早速入塾の手続きを踏んでいる。


 AIに相談しながら仕事をこなしていくシステムが葉月グループにも導入され、葉月グループに所属する者たちの誰もがAIの世話になっている。愛梨も最初は驚くだろう。教師なんかよりずっと教えるのがうまいAIに葉月珈琲塾のカリキュラムを記憶させておくだけで、後は勝手に効率良く課題を出しながら教えてくれるし、家にいながら課題をこなすこともできるため、将来的にはオンラインに移行して全国中の子供に葉月珈琲塾の理念を叩き込むことができる。不登校の制約だが、将来使うことのない勉強に割く時間はないため継続する。もっとも、愛梨には関係のないことだ。


「お兄ちゃん、バリスタランドを乗っ取った件だけど……」

「ど……どうかしたか?」

「よくやってくれたね。偉かったよ、お兄ちゃん」


 嬉しそうに僕の板チョコの1切れを取り上げ、口に頬張りながらウインクをする。


「あの堅物共を味方につけるのにどれほど苦労したか。あんな仕事は二度と御免だからな」

「大丈夫、もう面倒な勧誘は必要ないよ。葉月グループがバリスタランドを乗っ取ったことで、情勢は確実にこっち有利に傾いたんだから」

「バリスタランドを乗っ取ったくらいじゃ、情勢は変わらない気がするけどな。主な恩恵と言えば、杉山グループ本部株を30%奪ったことくらいだ。あの作戦に何の意味があるってんだ?」

「意味はあったよ。杉山グループを支えてきた実力派の本部長が退職したの。全国チェーンを管理していた人がいなくなったことで、今頃は応急処置に追われているはずだよ」

「まさか……バリスタランドを乗っ取ったのは、杉山グループの体力を削るためか?」

「そゆこと。お兄ちゃんが取り上げた本部株は、全部杉山グループの役員が持っていたもので、まさか最下位になるとは思わなかったのか、杉山社長は慌てて役員たちから無理矢理本部株を奪い取ったの。もしこのまま放置したら、お兄ちゃんと結託して杉山グループを乗っ取られると思ったんだろうけど、見事に引っ掛かってくれた。疑心暗鬼な人ほど引っ掛かりやすい撹乱作戦なの。契約内容を他の役員たちに話すこともできないし、役員たちは当然不信感を抱く。当分はこっちに手を出せないと思うよ」


 小悪魔のような笑みを浮かべ、板チョコをまた1切れ奪った。


 ボリボリと食べながら、愛梨の腕前を確かめている。愛梨だけじゃない。他のショコラティエたちの腕前も確かめているようで、頷きながらも眉間にしわを寄せ、疑問の表情を浮かべている。


 アイリショコラは創業からまだ1年ちょっとしか経っていない。優子が1年間完全監修したくらいじゃ足りないことがよく分かる。ショコラティエはパティシエ以上に専門性が強い。パティシエ兼任でショコラティエを務めている人も多く、特化している人の人口は少ない。璃子がワールドチョコレートマスターズで優勝できたのは、ショコラティエに特化していた分、有利だった事情もある。


 アイリショコラは基礎を覚えた後、ショコラティエに特化した人間を作る養成所も兼ねている。


 コーヒー会社の多くが杉山グループ側から離脱したことで、元から身内以外の人間を一切信用しない杉山社長はより一層不信感を強めた。身内以外には容赦なく疑心を向け、部下たちは常に緊張感が漂う状況を生きなければならない。しかもバリスタランドにいた各都道府県代表店舗スタッフの半数以上が退職してから葉月珈琲塾に入塾し、地元のカフェでアルバイトをこなしながら葉月グループへの就職を目指すこととなった。既に実績ある者については転職を認め、マイナー店舗の戦力不足が一気に解消された。プロ契約制度を廃止するはずが、むしろプロ契約を促進する土壌となってしまったのだ。


 葉月珈琲塾自体が葉月グループに入った後通用するための研修という役割も兼ねているため、入社したばかりでも葉月珈琲塾卒業生の場合は研修いらずとなる。育成してから入社するため、各店舗マスターの負担を軽減することにも貢献している。今いる各都道府県代表店舗にいるバリスタまでもが、実績次第で葉月グループに転職することを希望しているのだ。


「バリスタランドにいる役員の話によると、バリスタランドはうちから本部株を奪ってから、ショッピングモールとして生まれ変わらせる予定だったの」

「やっぱりそうか」

「何か心当たりでもあるの?」

「日本一広いテーマパークにしてはスペースを使い切れてない。空いている場所がたくさんあったんだけどさ、アトラクション用の施設として、5階建ての建物がたくさんあった。鍛冶議員は最初こそ大規模なショッピングモールを本気で作るつもりだった。でも途中で計画が変わって、より多くの土地を買い漁ることになったのは多くのカフェを集めるためだ」

「じゃあこれは知ってる? 杉山社長は全国から大勢のバリスタを集めた後、採算が取れなければ1年後に、大規模なショッピングモールに建て替える計画をしていたことが分かったの。集めたバリスタは左遷組で戻る場所がない。お役御免になれば全員クビ。このご時世だと、一度クビになれば、即戦力でもない限りまず雇ってもらえない。もしお兄ちゃんが誘いに乗っていなかったら――」

「これから次世代トップバリスタを目指す連中は、一斉に根絶やしにされていたってわけか」

「そゆこと。お兄ちゃんが誘いに乗れば、葉月グループを沈めるための蟻地獄になるし、誘いに乗らなかったら、次世代を担うバリスタ絶滅収容所になっていたってわけ。あくまでも推測だけど、一斉失業させた後、プロバリスタを目指そうとした末路として、テレビでも大々的に報道されていただろうね。杉山グループは情報通信業ともグルだし、もしそんな報道がされていたら、誰もプロバリスタを目指そうとは思わなくなるっていう筋書きだったと思う」

「やっぱり只者じゃねえな」

「自分がどんな相手に喧嘩を売っていたか、よーく分かったでしょ?」

「こんな奴がコーヒー業界の覇権を握ったら、この世の終わりだな。それでこそ、倒し甲斐がある」


 璃子が僕に顔を近づけると、両肩を掴みながら無理矢理視線を合わせた。


「お兄ちゃん、全然懲りてないよね?」

「十分懲りたよ。でも今度はこっちがあいつらを懲りさせる番だ。杉山社長はこの国で多大な影響力を持っているんだ。そんな奴を倒したとなれば、たとえ権力者であっても、二度と葉月グループに喧嘩を売ろうとは思わなくなるはずだ」

「はぁ~」


 僕の両肩を掴んでいる璃子の握力が急速に弱まった。


 璃子はコーヒーイベントを待たずして、杉山グループを疲弊させようとしている。


 杉山グループに余裕がなくなったところで、アマチュアチームへの援助をやめることはない。うちを吸収合併できれば、いくらでもリカバリーができる。あくまでも生きるか死ぬかだ。戦わずして勝ってきた璃子ならではの戦略ではあるが、それでは不十分と思っている自分がいる。相手を弱体化させて勝つのは戦略の基本。確かに正しい戦い方ではある。だが本当にそれでいいのか?


 まともにやり合って勝てる相手じゃないのは分かってる。


 しかし、そんなやり方でうちが勝ったとして、それがプロバリスタと確信を持って言えるのか?


 戦争ならともかく、競技であれば弱体化している相手に勝つなど、手加減して勝たせてもらっているようなもの。かつての僕は多くのライバルたちと正面からぶつかり、勝利を収めてきた。僕との勝負から逃げる奴なんていなかったし、僕が誰かとの勝負から逃げたこともない。


 漠然とした不満がもやもやと脳裏に襲い掛かる。


 何かが違うと思い、納得がいかない。


 よく味わうこともなく、ボーッとしたままチョコを口に放り込む。


 璃子はこれ以上話さず、席を離れて愛梨と話している。


 凜は時折首を振り返って僕を見る。窓越しに光の反射で凜の仕草が筒抜けだ。


 心配しているのがすぐに分かった。他のバリスタは僕のように競技の勝ち方に拘りを持っているのだろうか。うちのバリスタたちにも関係のあることだ。後になって事の真相を知った時、うちの主力たちは何を思うだろうか。最悪不戦勝もあり得るだろうが、それで勝っても納得がいくだろうか。


 ピスタチオチョコレートを食べると、余韻に浸りながら帰宅するのだった――。


 2025年4月15日、三女の葉月燈(はづきあかり)が生まれた。


 伊織の陣痛が始まったことを知った僕らは急いで市内の病院へとタクシーで向かう。


 少し前から入院していたが、遂に生まれると思うとドキドキする。まさか複数の女性との間に子供を持つことになろうとは。唯が子供を生む時も、こうやって慌てて病院に向かっていた。


 病院に着いた時、伊織は既に出産を終え、伊織が寝ているベッドの隣にある小さなベッドで、1人の子供がスヤスヤと寝静まっている。さっきまで泣いていたようだ。


「あず君、無事に生まれましたよ」

「よくやった。めっちゃ可愛いじゃん。燈、これからよろしくな」

「ふふっ、もう名前決めてるんですね。あっ、唯さんに皐月さん。来てくれたんですね」

「何言ってるんですか。伊織ちゃんも燈も、家族の一員なんですから。出産おめでとうございます」

「おめでとう。可愛いな。目元が伊織によく似ている」


 皐月が言った通り、燈は目元が伊織にそっくりで、まだ短いが黒髪だ。


 黒髪に生まれてきたことに安堵を覚えている自分に少しばかり腹が立った。


 これから日本で少年時代を生きていくハードルに大きな違いがあるのは、やはり国内から差別や偏見が取り除けていないからだ。紫だって茶髪を黒髪に染めるよう担任に言われたのが不登校になる決め手となった。上の子はホームスクーリングながらも立派に育っている。


 本人がどんな道を選ぶかは分からないが、燈なら学校に行かせても大丈夫な部類と直感する。


「伊織、分かってるとは思うけど、当分は育児休暇だからな」

「……はい。心配しないでください。コーヒーイベント前には復帰しますから」


 渋々遠慮気味に呟く伊織。本来なら今すぐにでも復帰したいと目が言っている。


 生粋の働き者だ。しばらくは僕が面倒を見よう。

読んでいただきありがとうございます。

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