446杯目「泣きっ面に巨石」
早朝、目覚めた僕はいつもと違う部屋の光景に驚いた。
ベッドからムクッと起き上がる。ふと、隣を見てみれば、ブラとパンツだけのあられもない姿でスヤスヤと眠りに就く皐月が横たわっている。
――何でこいつ裸で寝てんだっ!
しかも僕の左手が皐月の豊満な膨らみをブラの下から掴んでしまっている。
この状況を宇佐さんに見られでもしたらまずい!
急いで起き上がり、服を探していると、意外にも椅子の背凭れにかかっていた。スマホを確認し、既に午前10時を回っていることを確認する。
葉月珈琲に行かないと遅刻しちまう……あっ、そういや僕、店経営してねえや。あの家はそろそろ伊織に譲るべきか。いやいや、今はそんなことを考えてる場合じゃない。
物音を立てることなく客用の部屋を出ようとすると、純白のシーツが擦れる音が背後から聞こえた。
「もう目覚めたか」
「……何で半裸で寝てるんだよ?」
「あー、そういや言ってなかったな。私は脱いでいないと眠れないんだ」
「それがパジャマを廃止した理由かよっ! ていうか何でここで寝てんだよっ!? 早く服着ろっ!」
顔を真っ赤にしながら部屋を出ようとするが、拒むかのように腕を掴まれた。
僕の体を反転させ、大胆にも顔を突き出し、いとも簡単に僕の唇を奪った。
唯や伊織とはまた違った味わい……すぐに相性バッチリと判明してしまう自分の理解力をこれほど恥ずかしいと思った日はない。しかも抱きついてきた皐月の胸が襲い掛かる。人間ってこうも簡単に思考停止するものなんだな。ここまで不可抗力な不純異性交遊は初めてだ。
「これでお相子だ。二度と私を疑わないでくれ」
「何でここまで……」
「決まっている。私はあず君が好きだ。バリスタオリンピックをテレビで見たあの時から、ずっと好きなんだ。叶わない恋なのは分かってる。でもどうしても伝えたかった。いつか2人きりで話せる時を探っていたが、やっと話せた。無理につき合えとは言わない。あず君は既に2人の恋人がいるからな」
顔を赤らめ、言葉を発しながらも、どこか残念そうに目を背けた。
「……諦めがついてるなら、何で他の相手を見つけようとしないのかな」
「あず君以外に興味はない。強いて言うなら……仕事が恋人だ」
「無理するな。まだ若いんだからさ」
皐月の体を抱きながら耳元で囁く。皐月は体を震わせ、掴むように抱き返した。
昼食を済ませてから葉月珈琲へと戻ろうと提案された。皐月は今日も出勤日だ。
ふと、僕はあることに気づいてしまった。家に無断で外泊してしまった件だ。ふと、スマホを見た時に気づいた。外泊の時は一言連絡してくれないと困ると唯が言っている。いつもは忘れないが、想定外のハプニングと疲労で連絡どころじゃなかった。皐月の件は既に伝わっている。
葉月珈琲の営業にも多少の影響を与えている。
しばらくは僕が臨時業務をこなしていたが、その間、中山道葉月には赴けなかった。
何人か候補はいたが、いずれも大きな仕事のためにすぐには来られなかった。マスターとしての仕事は伊織に任せていたが、実質的に指揮を執ってしまっていた。千尋は時折バックヤードに戻り、スマホを気にしている。弥生を呼ぶ手もあったが、皐月の状態を悟られてしまっては業務に支障が出る。
扉を開けた途端、真っ先に伊織がオープンキッチンから飛んでくる。
「あっ、皐月さん! 今までどこ行ってたんですか!? 心配したんですよ」
「済まんな、しばらく休養を取っていた。とても働けるような状態じゃなかった」
「……無事に戻ってきてくれて……本当に良かったです」
皐月に抱きつきながら啜り泣く伊織。
「言っただろ。必ず連れ戻すって」
「昨日どこで泊まったんですか?」
「あー、ちょっとだけ寝ようと思ったら朝になってて……」
「あず君ならうちの別荘に泊まっていたぞ」
「「「「「別荘っ!」」」」」
伊織たちが目を大きく開けながら一斉にのけ反った。
「さ、皐月さんの別荘に泊まったって、どうして泊まる必要があるんですかぁ~?」
「寂しかったんだ。ずっと1人でいたからな」
「ハウスキーパーがいるのに寂しいのかよ」
「私の半裸を見たこと、言ったらどうなるかな」
耳元で嬉しそうに囁く皐月。
「……まあ、誰でも寂しさは感じるよな……あはははは」
逆らう術はなく、ざっくりと昨日の事情を説明する。
唯も合流してどうにか納得はしてくれたが、伊織はずっと疑いの目を向けたままだ。
しかも皐月は数日間ずっと無断欠勤だ。葉月グループでも当然許されない行為だし、場合によってはクビもありうる過失だ。皐月がこうなったのは僕にも責任の一端はあるし、反省の色も見える。基本的に社員の処分決定権はマスターが持ち、マスターの処分決定権は人事が持つ。
「伊織、それにみんなも、心配をかけて本当に済まなかった。二度とこんなことはしない」
「まっ、そういうわけだからさ、今回だけは温情処分にしてやってくれ」
「……駄目です。ここ数日間、あず君は皐月さんの代わりに働いてくれていたんですよ。しかも何の連絡もなしに無断欠勤を続けたんです。本来ならクビになってもおかしくないんですよ」
「……全ては私の甘さが生んだ結果だ。処分は甘んじて受け入れよう」
「美羽さんからの伝言です。皐月さんは今年の終わりまで、中山道葉月マスターを務めてもらいます」
後ろを向きながら処分を告げると、オープンキッチンへと戻っていく。
皐月はホッとした笑みを浮かべ、カウンター席に着く。今日から年末まで皐月はここで営業できなくなるが、客として来る分には問題ない。それでも平気な顔で居座れるあたり、肝が据わっている。
伊織も成長した。処分を与えつつ、情勢が悪化している場所に最も有能な人材を派遣するか。
皐月に中山道葉月の状況を一通り説明する――。
中山道葉月は営業を再開したものの、売り上げはお世辞にも良好とは言えず、客足は途絶えたままだ。以前の偽装ストライキのことは忘れ去られているが、プロ契約制度反対派を中心に来店を拒否している状況に変わりはなく、土門が珈琲屋川崎のマスターに就任してからは、包囲網が比較的緩くなったが、まだ他の店からはマークされているようで、あからさまに中山道葉月のメニューよりも商品を安く設定しているのだ。売り上げランキングは最下位を抜け出したばかりであり、47都道府県の41位である。他のコーヒー会社よりもブランドが強く、自力があることに加え、神崎と成美がうまく立ち回ってくれているようだが、トップバリスタでもなければマスターとしての経験も浅い2人だけでは限界があるようだ。伊織は自分で下す処分に自信がなく、美羽に意見を仰いでいた。
美羽は皐月の処分を既に取り決め、伊織に伝えていた。
1ヵ月以内に戻らなければ、長期無断欠勤による懲戒解雇となる。戻った場合はマイナー店舗への降格処分の一環として、特に売り上げの芳しくない中山道葉月のマスター就任となった。さながら左遷のような扱いだが、今の中山道葉月はマイナー店舗の中でも最下位に位置する店舗だ。今の皐月には丁度良い処分だろう。皐月の才能には美羽も重々承知だ。次世代トップバリスタと見込んでマスターの経験を積ませる意図もあったが、こんな形で就任とはな……。
「中山道葉月マスターか。悪くない話だ」
「皐月さん、必ず戻って来てください。私、ずっと待ってますから」
「あたしも待ってる。何があったかは知らないけど、二度と無断欠勤なんてしたら駄目だよ」
「ああ、分かってる」
「那月ちゃんは来年移籍するんじゃないの?」
「あっ、そうだった。えへへ」
那月が片目を閉じながら、舌を出してお道化てみせる。
結局、那月は独立する道を選んだ。独立とは言っても葉月グループ内での傘下独立であり、将来誕生予定となる、メジャー店舗マスターを目指すこととなった。オープンまでには時間がかかるだろう。メジャー店舗の地位を与えるとは言っても、傘下となるマイナー店舗を最低1店舗以上持つことが条件となる。必要があれば他のメジャー店舗傘下のマイナー店舗から異動させることもできるが、このままメジャー店舗が10店舗にまで到達すれば、またシステムを考え直す必要がある。
来年からしばらくは準備期間となるため、珈琲菓子葉月のマスターとして経験を積んでもらう。
「どんな店を建てるんだ?」
「まだ大まかな方針しか決まってないけど、バリスタとバリスタ以外の道を両方究めやすい店舗にしようと思ってるの。ただのマルチスキルじゃなくて、世界で通用するくらいの才能を複数併せ持った人を輩出する店舗にしたい。普通の人がやろうとすると、両方中途半端になっちゃうから、ある程度の才能と意欲を持っている前提になるけど、他にもあたしみたいな人がたくさんいることを知ったからね」
「複数併せ持った才能か――あっ、そういやこの前、ジェシーと会った時なんだけどさ、欲を言えば本当はバリスタと画家を両方究めたいけど、流石に難しいって嘆いてたな」
「えっ、それ本当?」
「ああ、本当だ。才能だけなら十分だし、環境さえ整えてやれば、できるかもしれんぞ」
「へぇ~、じゃあ誘ってみよっかなー」
ウキウキと八重歯を見せながら那月が言った。まさかここで歯車が噛み合うとはな。
教育先進国でさえ、どれかの才能に特化することには長けているが、様々な分野の合わせ技を糧とする術は発想としてまだ弱い。ここまでできるのは、もはやギフテッドの領域だ。那月は頭脳的なギフテッドではなく、技能的なギフテッドの土壌を作ろうとしている。多才な人間を1人でも多く輩出するためというよりは、1人でも才能を取りこぼさないようにするためだが、皐月はその理由を聞いた。
那月の父親、栗谷社長はバリスタとパティシエの才能を持っていた。
しかし、栗谷社長はバリスタを諦め、パティシエとして生きていくことを選んだ。理由は専門学校のシステムにあった。たった1つの特技を磨く専門学校は数多くあるが、才能ある分野全てを磨ける教育システムが存在せず、結局パティシエに絞らざるを得なかった。再び自分の店を構えて落ち着いた頃、内心では那月を応援していたことを明かした。
他にも同じ境遇の人がいるかもしれないと那月は考えた。そんな人はたくさんいる。数多くの才能が、将来使うこともない勉強のために発見する機会さえ失われている。那月がやりたいのは才能の再開発である。何歳からでもやり直せて、才能を発見する試行錯誤の機会があれば無気力ニートなんて出てこない。積極的に働くことを拒否して趣味に没頭できる高等遊民は別にいいが、八方塞がりで居場所がなくなり、追い詰められるように家に引き籠り、無気力ニートになってしまうのは社会が悪い。
「面白いメジャー店舗になりそうだ。楽しみにしているぞ」
「ふふっ、期待して待っててね。まずはお互い、マスターとしての経験を積まないとね」
「もう那月と一緒に仕事することもないのか。何だか寂しいな」
「そんな落ち込まないの。きっとまた、一緒に仕事できる日がやって来る。バリスタでいる限り、全ての道はコーヒーに通じているんだから」
「――そうだな」
那月が豊満な膨らみを皐月の後頭部に押しつけると、皐月は涙を拭い、笑顔で返事をする。
短い間だったけど、一緒に仕事をしながら切磋琢磨した仲だ。店にいる時は仲間で、外にいる時は優勝を争うライバルだ。人という原石が問題とぶつかることでしか磨かれないのだとしたら、引き籠りなんて勿体ねえよ。皐月だって同じものを感じていたはずだ。
処分に納得した皐月は葉月珈琲を出た。
少し間を置いてから、入れ替わるように大勢の客が雪崩れ込んでくる――。
午後6時、今日の営業も無事に終わり、客たちは満足して帰っていった。
桃花、那月、桜子が真っ先に着替えてから帰宅する。一時の思い出は、客たちにとっては最高のサードプレイスとなっている。家庭でも職場でも言えないことを、ここでは平然と言えてしまう。世界一のコーヒーを飲みながら語らう光景は、僕が夢にまで見た理想のカフェを見事なまでに体現していた。トップバリスタしかいないメジャー店舗だからこそ為せる業だ。
冴えないしくじり都市郊外から始まった葉月珈琲は、いつの間にか世界有数のカフェとなっていた。
僕はこんな宝物を見捨てようとしていたんだ。
守りたい……何としてでも。
着替えようとバックヤードに戻った時だった――。
「あっ、ちょっと……」
千尋は慌てた目を地面に向け、伊織が1枚の『株券』と思われる紙を拾い上げた。
「千尋君、これは一体何なんですか?」
血相を変えた伊織が冷たい声で尋ねると、千尋は隙を見てすぐに取り返した。
「……あーあ、ばれちゃったもんはしょうがないかー。株券だよ。杉山グループの本部株」
「どうして千尋君が杉山グループの本部株なんて持ってるんですか?」
「どうしてって、乗り換えるために決まってるじゃん。葉月グループは優勝回数勝負で4勝10敗、逆リーチで1敗も許されない。勝てるわけないよ。だから潰れる前に乗り換えた。僕は当たり前の判断をしただけだよ。葉月グループは次のコーヒーイベントが終わる頃には杉山グループの手に落ちる。僕は投資家でもあるからね。これから大きくなる企業に投資するのは当然だよねー」
「どうして希望を捨てるんですか?」
「希望を捨てたわけじゃないよ。新たな希望を掴んだだけ。先月のコーヒーイベントが終わった後、杉山社長に寝返ることを伝えたら、本部株を10%もくれたよ。しかも後を継いだら、本部株を全部くれるんだよ。僕も随分と評価されたもんだねー」
千尋はニヤケ顔を見せながらハキハキと答えた。
妙な恐怖が背中を吹き抜け、両腕は震え、開いた口が塞がらないまま額に冷や汗をかいた。
嘘だ……千尋は一生僕についてくとまで言ったんだ。なのにどうして……。
しかも跡を継ぐって、じゃあ杉山社長が娘を千尋に嫁がせようとしていたのは、千尋に跡を継がせるためだってのかよ。まだ千尋のことを諦めていなかった。やはり村瀬グループに近づいたのは、最終的に吸収合併して、千尋を自分の陣営に引き込むつもりだったからか。こんな隠し球を持っていたとは……またしてもやられた。皐月が言った通り、内部から崩壊させる作戦できたか。
「……自分が何をしているか分かってるんですか? これは立派な裏切り行為です。千尋君は無期限出勤停止ですっ! ……本当は……クビにしても足りないくらいです」
「ふーん、まっ、別にいいけど。もうこれっきりだね。残り少ない期間、必死に足掻くんだね」
「! ――酷いです……千尋君がこんな人だったなんて……あああああっ! うっ……ううっ」
大粒の涙をボロボロと流しながら伊織が言った。
千尋はそんな彼女を無視しながら素通りする。
伊織は深く傷つき、肩を落とした。ただでさえ皐月の離脱だけでも心を痛めていたのに、ようやく立ち直ろうとしたと思ったところに千尋の裏切りが発覚した――泣きっ面に……巨石ってとこだな。伊織の心は今にも押し潰されそうだ……僕が後ろから抱きしめていなければ。
「! ……あず君……んっ!」
僕は何も言わず、首を振り向かせた伊織の唇を奪った。キスは相手を興奮させるだけじゃない。興奮している相手の気分を鎮める効果もある。サンプルは3人しかいないけど。
頬を伝うように撫でながら、涙を指で拭き取った。
子供のようにプニプニしている頬を優しく圧迫すると、今度は赤面する。この歳になって、やっと怒りと照れ隠しの違いが分かるようになった。
「……心配すんな。千尋のことは僕に任せろ。伊織はいつも通りに働けばいい」
「――はい。ううっ! ……ああっ!」
事件性のある悲鳴を上げながら苦しそうに蹲った。
「伊織? ちょっと、大丈夫? 誰かいるかっ!? 伊織っ! 伊織っ!」
伊織は呼吸が荒く、唯の通報ですぐさま病院へと搬送された――。
救急車に乗せてもらおうと考えたが、唯に引き留められ、彼女が代わりに同伴する。
マスターの仕事がそんなにきつかったのか? それとも同僚の無断欠勤や裏切り行為が精神的に辛かったのか? 精神ばかりか、肉体にまで異常をきたすほど、ストレスを受けたってのか?
午後10時、沈んだ顔の唯が家に戻ってくる。伊織は体の状態が悪く、治療のため病院に泊まり、明日には下るであろう診断を待つことに。ため息を吐きながら椅子に座り込む唯の姿を見ると、伊織の事情を尋ねる気さえ失せてしまった。聞くのが怖い自分がいた。もしかしたら重大な病気にでも罹ったのかと想像するだけで吐き気がする。以前から伊織は怒りっぽくて寂しがりだ。大好きなコーヒーを飲むことさえ避けていたし、メンタルはまだ改善の余地ありか。伊織には重荷を背負わせてしまった。
「唯、今日はもう寝ろ。お疲れさん」
「はい。あの、一緒に寝てもいいですか?」
「もちろん……無事を祈ることしかできない自分が憎い」
「大丈夫ですよ。あの様子ならきっと」
再び椅子から立ち上がり、階段を上っていく。
僕も後を追うように階段を上がり、部屋に戻って一息吐く。食欲なんてなかった。
子供たちを寝かせた後、唯と一緒に風呂に入り、自室に連れ込む。服を着る隙を与えることもなくベッドの上に乗り上げ、心の傷を癒すかのように後ろから豊満な膨らみを揉みしだいた。相変わらずでかい。形が綺麗で柔らかい。唯は最初こそ驚いたが、すぐに受け入れた。揉むほどに息が荒くなっていく唯の唇を奪い、体を仰向けに押し倒し、覆い被さった。汗やら何やらでベッドのシーツを汚してしまい、後始末をしてから風呂に戻ってまた深く繋がり、ヘトヘトになってからベッドに戻ってくる。
伊織のことを心配している割には余裕が見られた。
多分気づいている。でも知ることを先延ばしにしたい自分がいる。
思ったより脆いんだな、僕って……。
「はぁはぁ、なんかもう頭が真っ白だ」
「そりゃそうですよ……はぁはぁ」
「千尋のこと、どう思ってる?」
「戦略的には正しいと思います」
「やけに冷静だな」
「あず君だって冷静じゃないですか」
「いつかこんな日が来るんじゃないかって思ってたら、すぐにやってきたからな」
少しばかり体が冷えた。危機的状況だってのに、妙に落ち着いていられる。
葉月珈琲から欠員が3人も出たのは痛いが、こんな時のためのユーティリティー社員だ。まずは伊織の復帰を願うばかり。それまで中山道葉月には行けない。皐月に処分を下したばかりだってのに、どうしてこうも立て続けにハプニングが起こるのか、理解が追いつかない。伊織のことを心配しつつ、今後のことを考えるので精一杯だ。情勢は悪化の一途を辿るばかりだし、本当に大丈夫なのか?
掛け布団に入り、唯と温め合うように抱き合い、熟睡するのだった。
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