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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第18章 包囲網編
441/500

441杯目「獰猛な牙」

 9月上旬、葉月グループ包囲網の戦いから数日が過ぎた。


 土門はバリスタランドから追放され、鍛冶も二度と経営に関わらせないと約束してくれた。


 違和感しかないが、鍛冶は父親である鍛冶議員とは対照的だ。素直すぎるほど良心的で、駆け引きというものをまるで知らない。こっちの要求をあっさりと呑んだことで、杉山社長と揉めると思ったが、解任されることはなかった。罠の可能性もなくはないが、僕の直感は大丈夫と言っている。


 葉月グループはどうにか土門の陰謀を退けた。オリエンタルモールの株20%を確保し、バリスタランドの経営方針に影響力を持った。下手に陥れられることはない。杉山グループはオリエンタルモールの株の過半数を持っているが、各店舗と密約を結んでいたのはオリオンカフェという神奈川の大手コーヒー会社であることが判明した。杉山グループと何らかの関係を持っているのは間違いないが、今はコーヒーイベントが先だ。10月からのアパルトヘイト政策は没案となり、田辺さんたちはクビを免れた。鍛冶は僕が凄腕の策士と確信したのか、あの日以降はロクに反発すらしてこない。


 鍛冶も本来ならバリスタマネージャーとしてコーヒーイベントに向かうはずだったが、土門の悪行に感づいていたのか、急遽会議に参加した。結局、葉月グループ包囲網が土門の仕掛けた蟻地獄であると知った鍛冶は、土門をあっさり見限った。土門追放の件で杉山社長の頭に血が上ったことは言うまでもない。物的証拠は珈琲屋川崎の更衣室にある鍵の掛かったロッカーに隠れていた。璃子は忘れ物をしたと言って歓送迎会を抜け出し、珈琲屋川崎へと赴いた。ロッカーの鍵を開け、まんまと契約書を手に入れた。閉園後に行われる歓送迎会の間、ほんの1時間程度は清掃員が各店舗から姿を消す。


 歓送迎会を仕掛けたのも璃子だったが、それは清掃員を1箇所に釘づけにするためだった。璃子は存在感を消して一般市民に擬態できるため、外の防犯カメラを誤魔化せる。更衣室に防犯カメラはなく、物を出し入れする際に証拠が残らない。隠し場所としてはうってつけだ。璃子はスタッフホテルの清掃がメインであったため、各店舗の清掃機会こそなかったが、土門の問題行動をバッチリと録音できた。


 食堂で田辺さんと言い争っていた時も、秋風月見に変装していた璃子がスマホの録音機能をオンにしたまま、何度か音声を記録していた。言い争い自体は何度も頻発しており、僕が提案した嘆願書作成計画にも協力してくれた。2枚目以降がアンケート名簿であることは僕も知らなかったが、僕が来た時にはアンケート名簿が完成しているという徹底ぶりで、仮に物的証拠が見つからなくても、アンケート名簿を嘆願書として使い、最悪相打ちに持ち込むプランまで用意していたのだから驚きだ。自分の非を相手の非で打ち消せば、土門は残るが、こっちも咎められない提案だ。物的証拠を2箇所に分けて隠していたとは思わなかったが、相手もかなりのやり手だ。璃子は天井裏点検口の存在に感づいてはいたが、仕事ができるが故に人に頼られることが多く、手を出す機会がなかったところに僕を頼った。


 ここまでを入念に計画し、証拠をしっかりと掴む。探偵より探偵してるよ。欠伸をしながら璃子の家に入り、2階へと上がった。璃子の部屋では水色のパジャマ姿でぐったりとしている璃子の姿がある。どうやら風邪を引いたらしい。部屋中にガンプラのコレクションが立っていて、戦車、航空機、戦艦のプラモデルもあり、生放送ではプラモデルを作りながら対象となる兵器を詳細に説明しているほどだ。


 いつも以上に体力も気力も使い果たし、ベッドの上に天井を見ながら横たわっている。


「お兄ちゃん、どうかしたの?」

「明日からコーヒーイベントだからさ、ちゃんと礼を言っておきたかった。ありがとな」

「別にいいのに……」


 顔を赤らめながら目を背ける璃子。可愛い。


 ショコラティエの仕事をしばらく休んでまで潜入していた。本来の璃子は集団生活の場で人に囲まれながら過ごしているだけで相当なストレスを感じる。人と関わる生活とおさらばするために選んだショコラティエの仕事は璃子に幸福を与え、同時に依存させた。しばらく依存から抜けていると、反動で倒れてしまうことも少なくないが、璃子の場合は好きな仕事から離れ過ぎた反動よりも、対人関係によるストレスと推測できる。清掃員の仕事よりも、対人関係の方に気を使っていたことは言うまでもない。


 璃子は安全な場所から参謀として活動する方が合っているようだ。


「僕がいなかったら、璃子が天井裏を覗いてたのか?」

「そうかもね。土門さんの弱みを握った噂を広めた後、土門さんが向かった場所を捜査しようと思っていたら、作戦を実行した直後にお兄ちゃんがやってきて、土門さんがいた部屋を掃除するって言い出した時は焦ったよ。最後の日だから、好きな場所を掃除させてほしいって駄々捏ねるから、つい勢いに任せちゃったけど、見つかっていたら、正体までばれるところだったんだよ」

「あはは……そうだっけ?」


 愛想笑いを浮かべると、璃子はため息を吐きながら目を閉じた。


 葉月グループの代表たちは、コーヒーイベントのため東京へと向かった。


 強化合宿の参加者全員が予選通過を果たしたが、アマチュアチームと同じ土俵に立っただけだ。葉月グループからは50人近くのバリスタが参加したが、通過できたのは16人、いずれも主力ばかりだ。花音が通過していたのは意外だった。JBC(ジェイビーシー)予選だけでも厳しいのに、それも珈琲菓子葉月からの出場で通過するのは快挙と言っていい。


「無茶はするもんじゃないなー。人と関わる仕事なんて二度と御免だよ」

「璃子、歓送迎会って、自分の送迎会を兼ねていたとか?」

「よく分かったね。秋風月見は全国各地を転々としてきた32歳のフリーター。次の就職先が決まったらすぐ辞めるっていう契約だし、9月からは来れないってみんなに言っておいたから、この姿でも当分はバリスタランドに行けないかもね。1年も過ぎれば、大半のスタッフが入れ替わってると思うけど、もうみんなが圧政に苦しむこともなくなって……本当に良かった」

「変装のためにわざわざスレンダーブラまで買うなんて、ホント徹底してるよな」


 ベッドの下に落ちているスレンダーブラが目につく。


 人前では真面目できっちりとした性格だが、他人が入ってこない自分の部屋は散らかり放題だ。


 璃子は必要以上に共感性が高く、アルバイトたちの境遇にシンパシーを感じていた。中山道葉月だけでなく、アルバイトたちのことも助けたくなったのは璃子らしい判断だ。目立たないキャラクターを演じようと、外では地味な服装だが、最近は景色と一体化できるようになったようだ。


「……そろそろ東京に行ったらどうなの?」

「明日になったら行く。コーヒーイベントまでにこの問題を解決できて良かった」

「お兄ちゃん、もう無茶はしないでよ」

「分かってるって。今回のコーヒーイベントで勝ち越せれば、勝機はこっちに向くはずだ」

「強化合宿の成果が出るのは、まだ当分先だよ」

「えっ……何で?」

「人が育つのは簡単じゃない。お兄ちゃんが1番よく分かってるはずだよ」

「……」


 これ以上は何も言えなかった。黙ったまま部屋から出ると、そっと扉を閉めた。


 もうこんな無茶はさせられない。僕の力不足が招いた結果だ。今は休んでてくれ。


 少なくとも、バリスタランドでの活動を邪魔されることはなくなった。変に悪い噂を広められることもない。中山道葉月は9月から営業再開となったわけだが、売り上げは依然として最下位だが、まだ勝機はある。ここから盛り返すのは僕の仕事だ。大局的な見地は璃子に及ばないかもしれねえ。けど限られた範囲で切り抜けるなら僕の方が得意だ。璃子は慣れない仕事をしてまでスタッフホテルのバイトを助けた。今度は僕が中山道葉月のバイトたちを助けなくてどうする。


 帰宅して幸せな時間を過ごした僕は、両手に花を添えながら就寝するのだった――。


 ――コーヒーイベント1日目――


 朝早くから東京へと向かった。葉月珈琲には多くのユーティリティー社員がいる。


 敗退が決定したら、原則すぐに戻る決まりだが、同じ店舗の仲間がいる場合は残ってもいい。


 俗に伊織ルールと名づけられ、葉月グループの仲間意識の強さを物語っている。


 数時間後、見慣れた大都市のビル群が見えてくる。タクシーから降りて会場に向かうと、たくさんの人だかりができていた。千尋たちは競技の準備中だ。関係者以外立ち入り禁止の控え室にはもう入れない。いつしか僕は観客席からバリスタを見守る立場だ。他のメジャー店舗からも人を駆り出し、バリスタサポーターを目指す者たちが千尋たちのサポートに回っている。エスプレッソマシンやグラインダーを取り出して作業ステーションに設置する。コーヒーマシンのコンディションを確かめるべく、何度も念入りに抽出している。競技で話す台詞はパンフレットを見ながら話す方針へと変わっていった。台詞を覚えるよりもシグネチャードリンクのアイデアに集中する策に打って出た。


 コーヒーイベントはバリスタオリンピックに倣い、1週間にわたって行われる。


 1日目はJBC(ジェイビーシー)JLAC(ジェイラック)準決勝、2日目は決勝。3日目はJBrC(ジェイブルク)JCIGSC(ジェイシグス)準決勝、4日目は決勝。5日目は長く、JCTC(ジェイクトック)JCC(ジェイシーシー)が決勝まで行われ、8月時点で既に決勝まで終えているJCRC(ジェイクロック)の結果発表が行われる。6日目はマイナー競技会が行われ、JAC(ジャック)JSC(ジャスク)JCI(ジェイシーアイ)が行われる。7日目は世界大会のないマイナー競技会が行われるが、杉山社長がジャパンスペシャルティコーヒー協会の会長に就任してからというもの、協会の主催ではない数多くのマイナー競技会を広くコーヒーイベントに引き入れている。


 協会側に参加費を払うことで、あらゆるマイナー競技会がコーヒーイベント内で開催されるようになったのだ。無論、全ては利益のため。コーヒーイベントが人気になれば、杉山珈琲にとっても利益だ。


 打算の副産物と言ってしまえばそれまでだが、数多くの競技会を見れるようになった。


 この日は小夜子、紗綾、花音、凜、響、桜子、皐月が参加する。


 僕ぐらいになると、サポーターに指示を出しながら、最後の練習を繰り返す様子を見るだけでおおよそのコンディションが分かる。響と皐月はいつもと表情が変わらない。何度も参加し続けている響はともかく、皐月は最初から脚光を浴びること自体に慣れているが、それは子役モデルであったところが大きい。皐月はポルタフィルターにコーヒーの粉を入れた。いつものようにフリーポアラテアートを描き始めた。3Dラテアートで使った脂肪分の多い牛乳とは対照的に、通常のラテアートは脂肪分の少ない牛乳を使用する。国産牛乳は国内予選でのみ使えるため、優勝したらすぐに世界大会で使用される牛乳で練習をしたものだが、果たして皐月はそこまで気づいているのだろうか。


 アマチュアチームの連中がぞろぞろと入場する足音が聞こえる。午後からの競技者だ。


 観客席に腰かけ、一息吐いたところで、見覚えのある老人が歩み寄ってくる。


 目を向けた先には、杉山社長が佇んでいる。


「これはこれは、葉月社長じゃないか。隣失礼するよ」

「あんたと話す理由はどこにもないけど、なんか用でもあるわけ?」

「随分と不愛想だな。何かあったのかね?」

「あんたが送り込んだペットの面倒を見てたんだ。今度ペットを送る時はちゃんと躾けておけ」

「ペットとはとんでもない。土門君の件は不幸な事故だった。あれは彼が勝手に起こした暴走だ。それにしても想定外だよ。まさかオリオンカフェが仕組んだ契約書をあっさり見つけてしまうとはね。君は私が思っていた以上に恐ろしい男だ」

「そりゃどうも」


 あっさりなんてもんじゃねえよ。土門の件でどれだけの時間と労力を奪われたと思ってんだ?


 中山道葉月が最初から土門に狙われていたのは確かだ。


 永久追放したことで邪魔される危険はなくなり、密約の契約書を各店舗のオーナーに突きつけた。もしこれ以上邪魔をしたら、容赦なくペナルティを課すことになると釘づけした上で合意を得た。珈琲屋川崎は中山道葉月に対する営業妨害により、ロイヤリティ100%のペナルティを課された。これは僕からの要望で実現したわけだが、他の店舗にとっても大きな見せしめとなった。


 コーヒーイベントまでに解決できなかったら、僕がここに出席している間、ペナルティ込みで本部株を乗っ取られていたかもしれない危険と紙一重の戦いだった。恐ろしいのはどっちだよ。表面上は全て僕の仕業ということになっているが、僕1人でどこまで誤魔化せるか。


「誰かは知らないが、君の陰には優秀な参謀がいるようだ。君1人であれだけの策を講じられるとはとても思えない。あくまでも私の勘だがね。ましてや怒りに任せて契約書にサインをするような輩にしては、作戦が巧妙に出来過ぎている」

「……お互い様だろ。そっちにだって優秀な参謀が――」

「いないんだよ。残念ながらね。杉山グループには言った通りに動くだけの駒しかない。土門君なら十分な働きをしてくれると思っていたんだが、自らの言動で揚げ足取りにされるようでは杉山グループの後継者には程遠いな。だが土門君なら立派な後継者候補に育ってくれるだろう。凄腕の()()()()が見つかったからね」


 ――何でそこまで教えてくれるんだ? 開示してもいい情報なのか?


「おやおや、杉山社長に葉月社長じゃありませんか。ご無沙汰しています」


 眼鏡をかけた老人が話しかけてくると、断りもなく杉山社長の隣に腰かけた。


「土門社長じゃないか。どうかしたのかね?」

「いえいえ、ちょっと顔を覗かせただけですよ。葉月社長、この前は息子が世話になったようで」

「土門ってことは、土門剛輝の親戚か?」

「ええ、剛輝は私の息子です。私は土門剛太郎(どもんごうたろう)。株式会社オリオンカフェの社長を務めております。以後よろしく」

「まさかそっちの方から出向いてくれるとはな」

「では私は席を外そうかな」


 杉山社長がのっそりと立ち上がり、騒めく会場の中へと消えていった。


「凄腕のバリスタと聞いているよ。でもまさか、経営者としても手腕を発揮するとはね」

「あの後お坊ちゃんはどうなったのかな?」

「渋々とした顔で戻ってきたよ。まさか剛輝が独断で密約を結んでいたとは思わなかった」

「あんたも知らぬ存ぜぬか。親が親なら子も子だな。どうせお咎めなしなんだろ?」

「剛輝は降格処分にした。葉月グループを侮って不祥事まで起こしてくれたお陰で、バリスタランドから収益が入らなくなってしまったからね。うちの役員から珈琲屋川崎のマスターに降格したよ」

「永久追放処分にしたはずだけど」

「バリスタランドの経営には関わらない。だがバリスタランド内の店舗で勤務することまでは禁止されていない。剛輝には経営の修業をゼロからやり直してもらう」


 おいおいおいおい、追放したのに戻ってくんのかよ。


 嫌な予感が僕の背筋を通り抜けた。また釘づけにされるのか……。


 何を企んでいるのか分からない以上、今後も定期的に中山道葉月に赴くしかあるまい。第2ラウンドは既に始まっていた。だが今はコーヒーイベントに集中しないと。


「これだけ言っておく。今度またうちに喧嘩を売るようなマネをしたら容赦はしない。杉山グループをぶちのめした後で始末してやる。お坊ちゃんにも伝えておけ」

「おやおや、あなたは何か勘違いをしているようだ。オリオンカフェはバリスタランドからの撤退が決定した。珈琲屋川崎も今月からオリオンカフェから独立したよ。珈琲屋川崎が何をしようとオリオンカフェには何の関係もない。どうせペナルティ100%なら、撤退したところで結果は同じだからね」

「その場合は本部株20%のペナルティになるはずだぞ」

「心配御無用。オリオンカフェはオリエンタルモールと密約を結んでいる。仮に撤退してもペナルティはない。どうやら君は私の手には負えないようだからね。健闘を祈ってるよ」


 土門社長が黙ったまま立ち上がり去っていく。


 最後の逃げ道まで用意していたか。他の店舗には撤退ペナルティがあるようだが、安易に撤退されたら商売にならないってことか。杉山グループに不信感を抱いているコーヒー会社もあるし、企業を厳選するのがそれだけ大変ってことか。蜥蜴の尻尾切りとはまさにこのことよ。


 珈琲屋川崎は分社化により独立した株式会社となり、土門が社長を務めている。経営の修業と言っていたが、その意味がやっと分かった。撤退ペナルティがない時点で杉山社長とつるんでいることは明白だ。他はただの従順な犬、だがオリオンカフェだけを特別扱いしている理由は何だ?


 ――確かめておく必要があるな。


 午前10時、予選を勝ち抜いたバリスタたちの競技が始まった。


 葉月グループと杉山グループが覇権を争っていることなど知らぬまま、千尋たちにアマチュアチームの連中が全力を尽くしている。昔は一度に多くの競技会が同時に行われていたが、今は日程に余裕がある。1つ1つの競技会を集中して見やすくなっているのはありがたい。


 だが全ての日程を見守ることはない。マイナー競技会にも葉月グループのバリスタが参加しているが、本命のバリスタたちが競技を終えれば、僕はすぐさまバリスタランドへと向かわねばならない。今こうしている間にも、土門がまた良からぬことを考えているかもしれない。既にオリオンカフェの管轄下ではない以上、土門が何をしてもオリオンカフェの責任にはならない。


 あのクソ親父、狂犬を躾けるどころか野に放ちやがった。


 成人した子供がしたことの責任を親が取る必要はないが、これにも例外は存在する。社会に多大な迷惑をかけることが容易に想像できる子育てをした場合、もしくは生きる力を育ててこなかった場合だ。自分の後を継ぐ経営者として育ててきたつもりなんだろうが、その実態はただの独裁者、牙を抜かれた犬どころか、獰猛な牙に翼まで生やしているモンスター。しかも杉山グループの後継者候補と聞いた時は肝が冷えた。あんなのが日本を代表するグループ企業の後を継いだら、この世の終わりだぞ。


 杉山グループには何人もの後継者候補がいる。競争相手が見つかったとは言っても、どうせロクでもない奴に決まっている。あれだけ巨大化した組織を経営していくのは並大抵の人間では無理だ。力だけで人がついてくることはない。土門は虎沢と似ている。競争に勝って人を蹴落とすことだけを教えられ、人の心を持たなくなった悲劇のモンスター。


 あいつらは資本主義の限界そのものである。


 行き過ぎた競争ほど、人の心を蝕むものはないのだから。

読んでいただきありがとうございます。

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土門剛太郎(CV:小川真司)

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